表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
320/357

第六十一章 冬季野外実習~二日目~ 10.キャンプハウス:ラウンジから娯楽室

 ~Side ドルシラ~


 将来の方向性について悩んでいたところ、そこへふらりとやって来たネモさんが相談――で、いいのですわよね?――に乗って下さいまして、()(てつ)も無い怪説を()(ろう)して下さったので、悩みなどどこかへ吹っ飛んでしまいました。もしもネモさんの仮説が正しければ、火魔法そのものの考え方を一新しないとならないほどの大問題です。


 正直、荒唐(こうとう)()(けい)な話にしか思えないのですけれど……その身を(もっ)荒唐(こうとう)()(けい)を体現していらっしゃるネモさんが言うとなると、発言の重みも違ってきます。虚心(きょしん)に検討する必要があるでしょう。

 上手くすると強い手札を一枚得る事ができますし、そうでなくても火魔法の精度が一段上がる気がします。……ウジウジと凹んでなんかいられませんわね。


 自室に引き取り次第訓練を――と、内心で意気込んでいたのですが……そこにカルベインさんが登場なさいました。


「よぉカルベイン、来るなり何をキョロキョロしてんだ? 捜し物でもあるってのか?」

「ネモか……ラウンジ(ここ)って何かゲームの(たぐい)は置いてなかったか?」

「ゲームだぁ?」


 ……カルベインさんのおっしゃる〝ゲーム〟というのは、卓上遊戯の事ですわよね? そういうのって、ラウンジに置いてあるものなのですかしら。……言われてみれば、置いてあってもおかしくないような気もしてきましたけど……少なくともレンフォール家では、そういう遊戯の(たぐい)が置いてあるのは……


「そういうのって、娯楽室とかに置いてあるもんじゃねぇのか? 宿舎の案内板にも、ちゃんと『娯楽室』ってのが書いてあったぞ?」


 ……やっぱりそうですわよね。「娯楽室」に娯楽道具が置いてなかったら、何のための「娯楽室」なのかという事になりますもの。「娯楽室」としてのアイデンティティの危機ですわ。


「確かにそうなんだが、数が足りないんだよ」

「あ? カードの札が欠けてるとか、駒が揃ってないとかか?」

「いや、そうじゃなくてだな……」


 カルベインさんがおっしゃるには、娯楽室に集まった生徒の数が多過ぎて、備えてあるゲームが足りないのだそうです。


「で、ひょっとしたらラウンジにも何か無いかと思って来てみたんだが……」

「いや……見てのとおり、そういうなぁ何も無ぇな」

「そうか……」


 失意のカルベインさんと連れ立って、()(くず)しにそのまま娯楽室へ行く事になりました。学園実習用の宿舎にどんな「ゲーム」が置いてあるのか、少し好奇心も(うず)きましたし。……そう言えば、寮にも娯楽室がありましたわね。(わたくし)は行った事はございませんけど。


「あ? 寮の娯楽室も(おんな)じだってのか?」

「あぁ。多分だけど、長年の間に札や駒が足りなくなって処分されたのが結構あるんだろうな。そのせいで寮の娯楽室も、慢性的な不足状態だ」

「んなもん、自分で持ち込みゃあいいだろうが」

「……自分で持ち込むにも、まずゲームの入手が難しいんだ。実家のを勝手に持って来るわけにはいかないし、自分で買おうとしたら親父の雷が落ちる。〝学業を本分とすべき学生の分際で、遊戯に(うつつ)を抜かそうとするとは何事だ!〟――ってな」

「……おぅ……」

「そして仮に、そういう苦難を乗り越えてゲームを入手した者がいたとしても、それをむざむざ娯楽室に提供すると思うか?」

「……しねぇだろうな」

「だろ?」


 そんな他愛も無い事を話しながら娯楽室へと足を運ぶと、そこには〝ゲーム〟を待ち構えていたと(おぼ)しき方々がいらっしゃいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
紙とペンがあれば、色々遊べるのにな~。とりあえず『○とX』を交互に書くやつと、『紙飛行機』を教えとこう!(笑) 手遊び系もいいけど、リアル欧米人には『あっち向いてホイ』が物凄く苦手な人が多いそうな………
ベエゴマやらメンコやらあや取りやら 安上がり遊具に興じるような年齢じゃないかなぁ。 この際、難易度別に思い思いのコマを設定して 手作り双六なんて教えてあげれば案外盛り上がるかも。 作り手のセンスが光り…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ