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第六十一章 冬季野外実習~二日目~ 8.キャンプハウス:ラウンジ~ネモの魔法講座~(その1)

 ~Side ネモ~


「お嬢、言いたくなきゃ答えなくてもいいんだが……お嬢の魔法適性は何だ?」

「隠す必要もありませんわ。圧倒的に火ですわね。お(しるし)程度に風属性への適性がありますけど。……あとは【従魔術】くらいですかしら」


 新たな属性の魔法を修得するって線は消えたか……いや、


「お嬢、一応訊いてみるんだが、【生活魔法】はどうなってる?」


 確かお嬢も【生活魔法】の訓練に励んでいた筈だ。何かの折に聞いた憶えがあるしな。いやまぁ、【生活魔法】でターゲットを凍らせるような真似はできん筈だが……一応確認しておいた方が良いだろう。


「あまり捗々(はかばか)しくはありませんわね。火魔法との相性が悪いのか、【着火(イグニッション)】は相変わらず使えませんし。【施錠(ロック)】は(わたくし)には難し過ぎるようですし。……どのみち【施錠(ロック)】については、学園上層部から秘匿するようにとのお達しがあったので、今や修行するのも(はばか)られますものね」


 あぁ……雪山の件で、【施錠(ロック)】を使うのは控えるように言われたしなぁ……掏摸(すり)をとっ捕まえた時にも言われたんだが、今回はあの時どころじゃなくヤバいってんで、俺のところにも自粛の要請が来たんだよな。まぁ、〝できる範囲で前向きに善処する〟と答えておいたんだが。


「【点灯(ライト)】は――明るさを強くする事はできましたわね。目潰し程度にはなるかもしれませんけど、下手をすると味方まで巻き込みそうで難しいですわね」


 あぁ……フレンドリー・ファイアを避けて敵だけに目潰しを喰らわすには、集束光にする必要があるからな。あれは慣れないとちっと難しいかもしれん。ただまぁ、代案が無いわけでもないんだよな。


「……何か工夫がありまして?」

「お嬢、俺が【施錠(ロック)】で雪崩(なだれ)を止めたのを見てただろ? あの時俺は、離れた位置で【施錠(ロック)】を発動させて雪崩(なだれ)を止めたわけだ。それと同じように、【点灯(ライト)】を――自分の目の前じゃなくて――敵の目の前で発光させる手がある。言うなれば遠隔発動ってやつだな」

「遠隔発動……ですの?」

「あぁ。説明がちと難しいんだが……要は魔力を魔法にしないで放って、遠間で魔法として完成させるわけだ」

「……そんな事ができるんですの?」

「コツを掴むまではちと大変かもしれんがな。コツさえ掴めば何て事は無ぇよ」


 そう言うと、お嬢は考え込んじまったが……別にこれが本命ってわけじゃないんだよな。大本命はやっぱり氷結の魔法だろう。


「お嬢、俺は魔法には詳しくないんで訊いてみるんだが……雪とか氷の魔法ってのはあるのか?」

「……なぜ、〝雪や氷〟なんですの?」

「何、こないだの雪山以来、やけに雪崩(なだれ)にご(しゅう)(しん)みたいだからな。……で、どうなんだ?」

「……一部の水魔法使いが、氷を出したりする事はできるそうですわね。あと、魔獣の中には氷属性のブレスを吐くものもいると聞いていますわ」


 ……それって、魔法で出した水や風の温度を下げてるだけじゃないのか? ゲーム本編でお嬢が使ってたのとは、ちと違ってるような気がするんだが。

 確か前世で腐界の住人(いもうと)から見せられた「運命の騎士たちナイツ・オブ・フェイツ」の資料集には、お嬢が対象を凍らせる魔法を放つと書いてあった筈だ。……あぁ、氷や冷気を召喚するんじゃなくて、敵を直接に凍り付かせる、そんな魔法だったように思う。けど……お嬢の口ぶりだと、「氷魔法」とか「氷属性」とかは知られてないっぽいんだよな。……ふむ。


「ネモさん、重ねて伺いますけど……なぜ、〝雪や氷〟なんですの?」

「あぁ……いやなお嬢。お嬢の適性が火に偏ってるんなら、それを発展させる方向で考える方が良いんじゃないかと思ってな」

「……火と氷だと真反対ではありません?」


 いや、俺が問題にしたいのもそこなんだけどな。


「その質問に答える前に……お嬢、すまんが教えてくれ。火魔法ってのはどうやって熱を……炎を生み出してるんだ?」


 露骨に根源的な質問をぶつけてみたせいなのか、お嬢は面喰らった様子だったが、


「……魔力によって炎を生み出している……単にそう教わっただけですわね」

「直接火を生み出してるんだな? 熱じゃなくて?」

「……熱? いえ……熱気を生み出しているわけではなく、飽くまで火を生み出していますわね」


 ふむ……熱じゃなくて、火を直接に呼び出してんのか。実際に俺が使ってみた感じでもそう思えたが……火魔法の(たい)()であるお嬢の言葉だから、これは正しいと受け取っていいだろう。俺の火魔法が未熟なせいじゃないって事だ。

 まぁ、「熱」という漠然とした概念よりも、「火」の方がイメージし易いだけ――っていう可能性もあるわけだが……

 けど、ちょっと類推(アナロジー)を働かせりゃ解るよな。水魔法は水を、土魔法は土を生み出し操る魔法だ。魔法ってのが同じ理屈で動いてんなら、火魔法が生み出してんのも――熱じゃなくて――火って事になる道理だ。


 これが火じゃなくて熱を呼び出してるってんなら、幾つか可能性のある説明も考え付いたんだが……

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