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眼力無双~目つきで苦労する異世界転生。平穏なモブ生活への道は遠く~  作者: 唖鳴蝉
第一部 一年生一学期~裏腹な新生活の始まり~
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第一章 学園入学 1.入学と記憶

 ~Side ネモ~


 『運命の騎士たちナイツ・オブ・フェイツ


 生前の日本でそれなりに人気のあったゲームだ。王族・貴族から平民・盗賊まで、様々な出身の主人公が苦難を乗り越えて成り上がっていく、まぁ正統派のゲームと言っていい。選んだ主人公ごとに隣国との戦争やら、敵味方に分かれて戦う事になる親友やら、魔王の復活やら、ヒロインとの恋やら駆け落ちやら、神の試練やら、ダンジョンの攻略やら……とにかくそれぞれに盛り沢山のルートがあって、やり込み派にも人気があった。キャラクターのヴィジュアルが女子にも受けたせいで、色々と薄い本も出ていたらしい。俺はそっち方面には(ごう)も関心が無かったんだが……(ごう)の深い前世の妹が沼に()まっていたんだよな……


 そして、そういった層の熱い要望に応える形で発売されたのが、「運命の騎士たちナイツ・オブ・フェイツプレリュード」。「運命の騎士たちナイツ・オブ・フェイツ」の主人公たちの若い――というか幼い――頃の学園生活を描いたゲーム、所謂(いわゆる)恋愛系ゲームだ。普通にヒロインを攻略するだけでなく、ヒロインとしてプレイしてイケメン各氏を攻略する事もできる他に、条件を満たせば同性のキャラすら攻略する事ができるというもんで、そっち系の腐兄腐女子からも熱い支持を得ていたらしい。

 前世の妹がすっかり(はま)って、毎日のように熱の籠もった報告やら感想やらを聞かされていたせいで、やった事も無いのにゲームの内容だけはすっかり憶えちまった。――自分でも嫌になるほどな!


 ……だから、学園に入学した時――と言うか、制服を見た時に気が付いた。


 ――ここ、「運命の騎士たちナイツ・オブ・フェイツプレリュード」の舞台だ。


 少し濃いめのベージュを基調とした制服で、袖口と(えり)だけが焦げ茶色。(えり)はステンカラーっていうのかエドワーディアンカラーっていうのか、ぶっちゃけ折り返しの付いた詰め襟みたいなやつだ。「鋼○錬金術師」に出て来る軍服みたいな感じだな。前はボタン留めだが隠しボタンになっていて、上二つ分のボタンは留めずに前を開けるスタイル……間違い無い。ゲームに出て来る魔導学園の制服だ。


 ラノベなんかじゃ定番になってるゲーム転生だが、まさか自分の身に降りかかってくるとは思わなかった。この世界がゲームだと気付いた時には呆然としたもんだが……()く考えてみると、俺がゲームの中に封じ込められたって説明には無理がある。現にこうして益体(やくたい)も無い事を考えてるって事自体が、俺が自我を持った存在である事、プログラムなんかじゃない事を証明している。〝我思う、故に我あり〟ってやつだな。それに第一、神様は俺を別の世界に転生させるって言ってたんだ。ここが現実の世界だってのは間違い無い筈だ。

 そうすると次に考えられるのは、神様がゲームに似せてこの世界を創ったって可能性だが……幾ら神様が全能で暇でも、そんな真似を態々(わざわざ)なさるとは思えん。となると残る可能性は、〝ゲームの方がこの世界に似せて作られた〟って事になる。

 俺がこの世界に転生したのと同じように、この世界から日本に転生したやつがいてもおかしくない。そいつが前世の――つまりこっちの世界の記憶を持っていて、それを参考にしてゲームを作った……ってのはありそうな話だ。

 言い換えると俺は、ゲームという形ではあるが、この世界で起きる事、起き得る事の情報を知っているという事になる。転生者特典ってやつかもな。この知識を上手く利用すれば、平穏無事に立ち廻る事もできそうだ。ありがとう、神様。


 そうなると……問題になるのは情報の(しん)(ぴょう)(せい)だな。ゲームを作ったやつがどれだけ正確な情報を持っていたか、もしくは、ストーリーのために事実と違う展開になっている部分が無いかどうか。今の俺にとっては重要な問題だ。

 今のところ地理や国情、噂で聞いたキャラクターの説明なんかは、俺の知る限り完全に一致している。……という事は、主人公たちがゲームと同じような運命を辿(たど)る可能性を無視できないという事だ。


 学園篇である「運命の騎士たちナイツ・オブ・フェイツプレリュード」は乙女ゲーだが、それでもしっかり物騒なイベントが揃っている。(こん)(じょう)こそ平穏無事な生涯を送りたい俺としては、そんなイベントに巻き込まれるのは願い下げだ。

 幸いにして俺のキャラはゲームに登場しない、所謂(いわゆる)モブだ。主人公たちに関わらないようにしておけば、必然的に面倒なイベントを回避する事ができるだろう。つまりは俺の希望どおりに、平穏無事なモブ人生を送れるというわけだ。案外、神様もそれを見越して、俺をこの世界に転生させたのかもしれんよな。


 ちなみに、こっちでも入学式は四月だった。正式には芽生えの月(ジェルミナ)とかいうらしいけど、俺の育った田舎も含めて、普通に四の月で通っている。ともあれ季節がゲームと同じという事で、今後起きるであろうイベントの予測が立て易くなったのは朗報だ。いや、正確に言えば、こちらの新年は冬至を基準にしてるとかで、前世の西暦とは十日ほどのずれがあるみたいだが、体感的には誤差の範囲だ。


 そして……薄々気付いてはいたが、ピカピカの新一年生の群れを見てその事実を再確認した。


 ――こっちの十二歳児、めっちゃ大人っぽいわ。


 ゲームの方では、乙女ゲーとしての要望からか、大人っぽいヴィジュアルのキャラが多かったんだが、こっちの世界でもそうなのは人種的な特徴とかか? そう言えば、結婚年齢も低かったし……全体的に早熟なんだろうか。


 ……まぁいい。益体(やくたい)も無い事を考えていても始まらん。

 それよりも、今後のイベントスケジュールを確認しておくべきだろう。まだイベントの全ては思い出せていないんだが、確か入学後にクラス分けのための簡単な面接があった筈だ。キャラの一人がその場ではっちゃけた発言をして、結果Dクラスに廻されるという展開があったのを憶えてる。


 ……そう、クラス分け。今後の俺の安泰を考える上で最も重要なイベントが、この後()ぐに控えているわけだ。

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[気になる点] >となると残る可能性は、〝ゲームの方がこの世界に似せて作られた〟って事になる。  俺がこの世界に転生したのと同じように、この世界から日本に転生したやつがいてもおかしくない。そいつが前…
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