表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
299/359

第五十七章 特活の日 2.雪下ろしの合間に

 ~Side ネモ~


 〝除雪作業の実習という目的に(かんが)みて、一般に行なわれている以外の方法による除雪作業を容認する事は、学園としてもできかねる。ゆえに【収納】による裏技的除雪を禁じる〟……と言い渡された筈のこの俺は、(もっ)()校舎の屋根の上で、雪下ろしの作業に励んでいる。……【収納】のスキルをフルに使って。


「いやまぁ建前(たてまえ)建前(たてまえ)として、屋根の雪下ろしは毎年手間だったからね。ネモが参加してくれるのはありがたい」

「はぁ……」


 上機嫌でそう(のたま)っていらっしゃるのは、郊外キャンプの時にもお世話になった、博物学のオーレス先生だ。今回の雪下ろしの当番らしい。


 いやな……前世の日本でも、北国での屋根の雪下ろしは重要な作業だったからな。理屈としては解るんだよ。……俺だけ「建前(たてまえ)」から()(もの)にされてるのが、どうにも納得いかんがな!


「いや、雪下ろしの作業中に、下を生徒が通りがかったら大惨事になりかねんのでね。先生たちが毎年気を遣って作業していたんだが……今年から(・・)はネモが【収納】スキルで参加してくれるので、大分楽になるわけだ」


 ……今後も俺が参加するのは既定の方針なんですか。そうですか。


「無論、その分は考課に色を付けさせてもらうとも」


 まぁ……【施錠(ロック)】の件でも先生方には苦労を押し付けてるみたいですから、俺としても協力するに(やぶさ)かじゃありませんけどね。


「ネモは雪下ろしに慣れているようだね?」

「そりゃまぁ、実家でもやってましたし」

「あぁ……やはり【収納】でかね?」

「スキルが発現してからはそうですね。それ以前は普通のやり方で」


 故郷じゃ除去した雪は、川や湖に捨てていた。綺麗な雪は水甕(みずがめ)に移して、飲み水や生活用水に使っていたけどな。

 俺に【収納】スキルが生えてからは、一部の雪は保存して、夏場のおやつ代わりにしてたもんだ。弟妹(チビ)たちが大喜びしてたっけ。去年の夏も、俺が帰省している間は出してやれたんだが……俺がいない間はどうしようもないからなぁ……

 ……ゼハン祖父ちゃんの伝手(つて)で雪用のマジックバッグを確保……は難しいか。

 実家にゃ盗賊から取り上げたマジックバッグを渡してあるが、普通に買えば結構な値段するらしいからな。……俺は少し前にアウトレット品を、只同然の捨て値で手に入れたんだが。……アレを実家に渡すのは色々と(まず)いか。


「暑気払い用に雪を保存とは……ネモの【収納】はかなり大きいようだね」

「さぁ……(はか)った事が無いので解りませんが……そもそも量れるもんなんですかね?」

「その辺りは工夫次第だろうが……私も専門ではないので、確言はしかねるね」


 ……俺の【収納】のポテンシャルは、普通よりかなり大きいみたいなんだよな。

 だが、そんな事を気楽に明かすわけにもいかん。ここは話題の転換を試みるか。


「マジックバッグとかを使えば、保存しておく事はできるんじゃないですか?」

「だから……唯でさえ貴重なマジックバッグなのに、たかが雪のために使うわけにはいかんのだよ。……貴族の中にはいるかもしれんが」

「あー……貴族……」


 ジュリアンとかは享受してそうだな。あんなんでも王家の一員だし。けど……


「学園では利用してないんですか?」


 前世の日本じゃ冬の雪を貯蔵しておいて、夏場の冷房に使うとかって話があったんだが。

 ……思い出したぜ。節電と二酸化炭素の排出を減らす目的で試験的に導入したら、北国から雪を運ぶトラックや列車からの二酸化炭素排出量が、冷房による削減量の約三倍になった……って叩かれてた事があったっけ。

 けどまぁ、地産地消(?)で利用する分には、問題無いと思うんだがな。(いやしく)も「魔導」学園なんだから、マジックバッグくらい自前で作れるんじゃないのか?


「あれは素材が高価なんだよ。()して校舎を冷やし得るほどに、大量の雪を保管するとなると――ね」

「あ、そうなんですか?」


 マジックバッグの作り方なんて、まだ授業でも教わってないからなぁ。


「まぁ、マジックバッグは用意できんとしても、雪を保存するにはもっと簡単な方法があるわけだ。……()(むろ)という方法が昔から――ね」


 ――てなわけで、俺が【収納】した雪は、その「氷室」に持ってって保管するんだそうだ。学園もやる事はやってるんだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ