表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/370

第五十五章 お子様と私 3.シャル・ウィ・シング?

今回も解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。

 ~Side ネモ~


『マスター ネコのうたはー?』


 ……猫? 「猫○んじゃった」とか「山寺のお師匠さん」とかか?


「何か猫が気の毒だね……」

「……ネモさんは猫に怨みとか執着でもありますの?」

「いや? 別にそんなつもりは無いぞ?」 


 ちゃんと犬の歌だって知ってるしな。犬のお(まわ)りが……アレも仔猫が泣いてるんだっけか……そう言や「トム○ジェリー」でも鼠に噛み付かれたり叩かれてたし……何か()(びん)だな、歌の猫。

 ……いや……ドラド○子猫……じゃねぇ、「ド○猫大将」とか「黒猫の○ンゴ」とかもあったから、そう一概には言えんか。


「……単なる歌だけじゃ弱いのかもしれないね。他の遊戯とか……振り付けがあるのはどうなのかな?」


 ふむ……前世で言うと「○ンポ○パン体操」とか「ヒョッ○リ(ひょう)(たん)(じま)」とか「our踊り」とかか? 〝節制せぃと、酔い酔い言い〟――ってのもあったな。〝お前はト○になるのだ~〟とか合いの手を入れて。

 あとは縄跳びしながら歌うやつとか。確か……

 〝お帰りなさいお嬢さま。ちょっとお年頃〟……何か違うな。

 他には……「無い無い音頭」とか……


「『無い無い音頭』?」

「……随分と虚無的なタイトルだね」

「ネモ、それはどういう歌なんだ?」


 ――いかん! また口に出てたか!?


「……えーとだな……遠い他国の六無ナントカ(はやししへい)ってやつが愚痴ってた歌で……確か〝親も無し 妻無し子無し版木無し 金も無けれど死にたくも無し〟……だったかな」

「……そんな厭世(えんせい)的なのを、子供に歌わせるのはちょっと……」

「子供が将来を悲観しそうだね……」


 ふぅ……何とか有耶無耶(うやむや)にできたみたいだが……問題は何一つ解決してねぇんだよな。ガキどもに受けそうな歌って、一口に言われてもなぁ……

 大体、前世の俺がガキの頃歌ってたのも、歌謡曲とかじゃなくて……いや、ちょっと待て。


「おぃアグネス、今更訊くのも何だけどな、問題のガキどもってなぁ幾つくらいなんだ?」


 うろ憶えだが……ガキんちょにとって歌い易い歌ってのは、発育段階によって違ってた筈だ。前世で妹が幼稚園の年少さんだった頃、お袋がそんな事を話してたような気がする。

 確か……メロディーがシンプルで繰り返し(リフレイン)が多くリズムが取り易い歌、擬音が含まれる歌、アスランが言ったように手遊びや動作が伴う歌……だったっけか? 低年齢向けのアニソンなんかも、そういう点を考慮して作曲するって聞いたような気がする。……そういや、今でも憶えてる歌が結構あるよな、アニソン。

 まぁ、それはともかくとして――


 どうなんだとアグネスを問い詰めた結果、返って来た答ってのが、


「年少さんから年長さんまで、ほぼ万遍無く――ですね」

「「「「「………………」」」」」

「処置無しだな、こりゃ」

他人(ひと)(ごと)みたいに言わないで下さい!」


 アグネスはプンスカしてるが……そう言われてもなぁ……


 どうしたもんかと一同揃って頭を抱えていたら、アスランのやつが……


「……故国(くに)にいた頃の記憶なんだけどね……評判の高い芝居の一座がやって来た時、その芝居で歌われる歌が、(ちまた)流行(はや)った事があったんだけど……」


 あー……前世で言うアニソンみたいなもんか。……いや、地球でもギルバート&サリヴァンの歌劇なんてのは、結構ファンが多いって聞いたな。ミュージカル映画のナンバーとか。……教えてもいいんだが、追及されると面倒だな。あと、テレビ番組なら〝老練、老練、老練――〟とか「雷鳥」とか。


「国の(きも)()りで劇団でも呼ぶかい?」

「いえ、そこまでなさらなくても……教会で子ども向けの劇か何かを見せるとか、その程度でもいいんじゃありませんこと?」


 ――お? 話がそっちに転がったか。なら、俺もその流れに乗っかるとするか。


「だったらもう一歩踏み込んで、その劇をガキどもに()らせるか?」


 学芸会のお稽古だってんなら、繰り返して歌わせる口実にもなるだろうしな。


「……悪くないかもしれないね」

「けど……策の成否は劇次第――って事にならないかな?」

「それはもう、子供に受けそうな演目を選ぶしか無いんじゃないかな」

「そうすると……勇壮な冒険ものでしょうか。もしくは、英雄叙事詩的な」

「……おぃマヴェル、そんな雄大なもん、ガキどもに()らせるのは無理じゃねぇか?」

「物語を通してやるわけじゃない。()く知られた話のさわりの部分だけなら、できない事も無いだろう」

「なるほど……勇者様やお姫様が大勢登場するお話なら、子供たちも喜びそうですね」

「それと――格好良い(かたき)(やく)だな」


 俺としちゃ当たり前の意見のつもりだったんだが……他のやつら、揃って白い眼を向けやがった。全員の意見を代表するような形で、コンラートのやつが言うには……


「……ネモ、少しは考えろ。仮にも悪人を讃えるような芝居を、(いやしく)も教会が、それも(がん)()()い子供に演じさせるわけにはいかんだろう」

「そっちこそ勘違いするなマヴェル。肝心なのはその芝居と歌が、ガキどもに受けるかどうかだろうが。そもそも俺は、別に悪を賛美しろって言ってんじゃねぇ。善玉が善玉として輝くためには、その壁として立ち塞がる(かたき)(やく)がショボくちゃ話にならねぇ……そう言ってるだけなんだがな」


 善玉(ベビーフェイス)が輝くのは、魅力的な悪役(ヒール)あってこそ――これは譲れん。前世の経験でもそうだったんだからな。

これにて本章は終幕です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 『老練、老練、老練~』に噴きました(笑) ネモ君、これはダメだよ、日本語に訳したら『追い立てろ、追い立てろ、追い立てろ~』で、その後『イヤッハァー!』って雄叫びと同時に…
懐いなぁ、チャカチャカ娘。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ