第五十五章 お子様と私 2.サムシング・ワンダフル
今回解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。ちなみに、この話の舞台は地球ではなく異世界です。なお、著作権に配慮して歌詞の記載は最低限としておりますので、適宜脳内で補完して下さい。それでもなおヤバそうなところがありましたら、ご指摘下さると幸いです。
~Side ネモ~
「いや待てネモ、下品という最大の問題点に目を瞑っても、それだと男児にしか受け容れられないだろう。性的不平等の種を蒔くような行為は容認しがたい」
(「あの……コンラート……問題はそこじゃなくて……」)
「なるほど……性差別的な歌は確かにいかんな」
(「何でしょう……おっしゃってる事は正しいのですけど……こう、どこか激しく道を間違えてるような感じが……」)
しかし……キ○玉以上に訴求力の強い歌詞となると……
「やはりウ○チかな?」
「ウン○だろうな」
エルのやつは頷いて賛意を示してくれたんだが、
「違いますっっ!!」
アグネスからの猛反対を喰らった。
いや、だけどなアグネス、ガキの感性なんて大体がこんなもんだぞ?
「あの……エル君、ネモ君……一応ここは王都なんだから、あまり顰蹙ものの歌が流行るのは拙いんだけど……」
「きょ、教会としても……そういう歌の震源地という汚名を被るのは……ちょっと……」
「それにネモ、この間は王都の特色がどうとか言ってただろう。下品な替え歌が流行っているのが王都の特色……などという評価が固まるのは困る」
……ジュリアン・アグネス・コンラートから異議が呈された。注文の多い連中だぜ。
「……とりあえず、ネモさんがご存知の歌の中から、条件に合いそうなものを探してみませんこと?」
「……おぃお嬢、何で俺を引っ張り出す?」
「私たちが知っている歌だと、そもそも条件に合うとは思えませんもの」
……つってもなぁ……淡々狸の直接の本歌になったのは、「煙草屋の娘」とかいう歌らしいが……そっちの方は俺は知らんしなぁ……
他に子ども向けの替え歌っていうと……呑兵衛さんの赤ちゃんが風邪引いたから、慌てて酒で湿布した話――とかか? あれなら色んなバージョンがあった筈だ。
「あの……賛美歌の替え歌は……」
うん? これも賛美歌だったのか? だったら……
〝結んで縛る〟……のは教育上悪いとして、〝盗んで稼いで〟ってのがあったな。〝店を開いたら(サツの)手が入って、手が後ろに廻った〟――ってな感じの歌詞だから、これなら道徳教育上も問題無いだろう。
「いえ……ですから……」
――マジか!? これも元ネタは賛美歌なのか!?
「……ネモが知ってる替え歌は、賛美歌を茶化したやつばかりなのか?」
……酷ぇ言い掛かりだ。単なる偶然だ。
「……おぃネモ、教会に含むところがあるのではないだろうな?」
「それはマヴェル君の考え過ぎじゃないかな。単に賛美歌が広く知られているから、替え歌が作られ易く広まり易いだけだと思うよ」
エルの失言からコンラートのやつが妙な勘繰りを回して絡んできたが……そこはアスランが収めてくれた。ジュリアンも宥めてくれたようだな。
しかし……そうなると俺の知ってる替え歌って、ひょっとして悉くNGなんじゃねぇか?
お正月――は、こっちじゃ話が通じんだろうし、ドレミ――もちょっとなぁ……
鬼のパンツ――は、そもそも「鬼」の事を知ってないと意味が通じんし……「オーガ」と翻訳するにしても、こっちのオーガがパンツを穿いてるかどうかまでは知らんしなぁ……。間違ったオーガ像を植え付けるわけにはいかんから却下だな。
「ク○イ河マーチ」――の替え歌は……こっちのガキどもがゴリラとチンパンジーを知ってるかどうかが判らんし……「歪曲子守唄」もチビどもにゃ共感できんだろうしな。
「だから……替え歌から離れろ、ネモ」
「この際その方が良いかもしれないね」
「まともな子供向けの歌って、ネモ君は知らないんですか?」
「心外な言い方だな。子供向けの歌ぐらい知っとるわ。ただ……それがアレ以上にガキどもに受けるかどうか、そこが確信持てんだけだ」
唱歌とか童謡とかは知ってるが、ガキどもが自発的に歌うかってなるとなぁ……
長年歌い継がれてきたっていうなら、イギリスの「マザーグース」とかもあるんだが……アレもなぁ……何つーか、やけに不穏な歌詞が多いんだよな。
「十人の小さなインディアン」だとか、「誰が駒鳥を殺したのか」とか、「オレンジとレモン」とか……「リジー・ボーデンの歌」ってのもあったな。両親惨殺事件をモデルにしたっていう。
……やっぱりあれだな。唱歌とか童謡とかのカテゴリーに拘らず、子供受けしそうな歌をピックアップすべきだな。例えば「帰って来た○っ払い」とか……
「あの……賛美歌でないにしても、あまり不謹慎なのはちょっと……」
あれは替え歌もなぁ……ムショ帰りの掻っ払いが〝監獄良いとこ〟なんて歌ってるからなぁ……いや、服役の勧めと言えん事も無いんだが……
(「……でも、面白そうな歌ではあるよね」)
(「……後で詳しく訊いておきます」)
「マザーグース」の中では比較的穏健な歌に、「ジョージィ・ポージィ」ってのがあったな。〝女の子には~〟ってやつ。
「悪い遊びが流行りそうだね……」
「そういう不道徳なのは……教会としてもちょっと……」
「軽犯罪を煽りそうな歌は控えろ、ネモ」
つくづく注文の多い連中だぜ……
あとは……何を言ってるのか歌詞の意味が判らん歌なんかも、面白がって歌ってたっけな。「デンデラ龍」とか「ずずいとずっ転法師」とか「悪茶端茶No茶」とか「空海摩尼摩尼」とか……どれもこれも説明に困るな。却下だ。
他には……
【参考文献】鳥越 信(2005)「子供の替え歌傑作集」 平凡社.280pp.
※一部は作者の私的な伝聞による。




