第四十六章 歳末ガラクタ市~学園編~ 2.掃除を終えて
~Side ネモ~
二学期最後の闇の日、日本風に言えば土曜日、この日は大掃除の後で学園の不要品市が開かれる事になっている。どんなもんが持ち出されるのか判らんし、クラスのやつらに言わせると〝面白くない〟ものが大半らしいが……貧乏人の俺としちゃあ、何であれ物が安く手に入るってんなら、その機会を逃すつもりは無い。
――なので! 邪魔臭い大掃除なんぞ、さっさと終わらせるに如くは無い! いざ【浄化】!!
「おわぁ……」
「これがネモの本気の【浄化】か……」
「凄い……あっという間に教室がピカピカ……」
クラスのやつらは大喝采だが、アーウィン先生は渋い顔だな。先生は騎士団出身の体育会系だから、こういうバグ技みたいなのはお気に召さないんだろう。
でもね先生、ここは王立魔導学園なんです。魔導学園の生徒としては、寧ろ正しい行為じゃないかと思うのですよ。
『よし、それじゃ行くぞヴィク』
『おー』
気合いを入れて見て廻ろうとしたんだが……
「……何でお前らが蹤いて来るんだよ……」
班員がゾロゾロと後に蹤いて来やがった……
「Aクラスは不参加じゃなかったのかよ?」
「うん。参加はしないけど、見学はしようと思って」
「考えてみれば、CクラスやDクラスの生徒が何を欲しがっているのか、考えた事は無かったからな」
「俺は普通に興味がある」
エルはまぁ解るが……他の連中は面白半分だな。CクラスやDクラスの連中の事を考えると、あまり好ましい事じゃねぇんだが……班長として一言注意しとくか。
「……あまり前にしゃしゃり出んじゃねぇぞ。C・Dクラスのやつらがブルっちまうだろうが」
「ネモが参加する時点で今更だろう」
……おぃエル、言ってくれるじゃねぇか。
故郷で猟師さんたちに教わった、隠形の術を舐めんなよ? 伊達に【狩りの心得】ってスキルを持ってるわけじゃねぇんだ。本職の猟師さんたちにゃ及ばねぇが、気配を断って存在感を稀薄にするくらいはできるんだよ。……気を入れてやる必要があるから疲れるけどな。
むんっと気配を弱めてやれば、エルも同じようにして見せた。……こいつ、結構負けず嫌いだよな。
(「……確かに、注意しないと気付けないけど……」)
(「一旦気付いてしまえば判りますね」)
(「エルも本気で気配を断ってはいないから……」)
(「いえ……エルさんはまだいいのですけれど……ネモさんの方は……」)
(「元々存在感があるのを、無理矢理に隠してるせいなのか……」)
(「人としては認識できないけど……何かモザイク画面が動いてるみたいで……」)
(「一言で云えば奇観だよね」)
(「何と言うか……却って目立ってるような気も……」)
(「多分……ネモ君も本気で隠れたら別なんだろうけど……」)
(「まぁ、気付かれなければよしという事なんでしょう」)
何か後の方が騒がしいが……どうせ大した事じゃないからほっとくか。疲れるから隠形を解いて――と。
お、エルのやつも元に戻したか。
『マスター ちゅうとはんぱなおんぎょうは かえってめだつよー』
……ヴィクにも駄目出しされたし、このまま普通に行くとするか。




