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第三十八章 創立祭~楽日~ 5.中等部学科見学あれこれ

 ~Side ネモ~


 従魔が店頭……じゃなくて、教室の前に並んでいたのは、やっぱり生徒たちが就活の一端として自分の従魔をアピールしてたらしい。


 王立魔導学園とは言っても、卒業生の全てが国に雇われるってわけじゃない。いや、学園としては優秀者の全てを囲い込みたかったらしいんだが、さすがに他の貴族家から苦情が積み上がったんだとか。なので卒業後の進路を巡って、生徒たちも自己アピールが必要になるんだそうだ。初等部を卒業後にそのまま就職するやつも多いが、中等部に進学したやつも、大抵は中等部卒業後にそのまま就職――ってルートが一般的で、高等部に進むのはごく少数らしい。ま、教官とかの養成も必要なんで、毎年何名かは高等部に進学するらしいが……庶民の俺には関係無い話だな。ユニークスキルがバレさえしなきゃ、初等部卒業後にそのまま冒険者って流れだろう。


 従魔術科はいいとして、他の学科はどうアピールしてるんだ? ふと、それが気になった。具体的には本草学や博物学なんかだが。

 ああいった学科だと、手土産代わりの業績ってのは、新資源の発見とか開発になるんじゃないのか? そんな大ネタを、たかが学園祭で公表したりしないよな?


 それが気になってギルベールに訊いてみたんだが、創立祭は貴族側からの顔見せって面が大きいらしい。学生側からのアピールは卒業祭が本命なんだと。言われてみれば納得だな。


 ま、細かい事ぁ気にせずに、ざっとだけ見物していくか。



・・・・・・・・



 ……ざっと廻って思ったんだが、醗酵(はっこう)とか(じょう)(ぞう)とかに関する学科が無いみたいだな。魔導学園の守備範囲から外れるのかもしれんが……どうも、醗酵(はっこう)が生物によるものだとの認識が無いような気がする。金属が錆びたり石が風化するのと同じカテゴリーだと見なされてる……てか、ぶっちゃけ微生物って概念が無いんじゃないのか? 初等部の「生物学」も、動物学と植物学の基礎という感じで、菌類は植物扱いだったしな。


『マスター はっこうって なにー?』

『あー……何て言えばいいのか……果物の汁を放っておくと、酒になったりするやつだな。白パンを膨らませるのもそうだが』


 確かあれもイースト菌……パン酵母の働きによるものだし、醗酵(はっこう)と同じ扱いでいいよな。


『あー しろいぱんー ふくらむよねー』

『ヴィクは黒パンの方が好みなんだっけか?』

『マスターがつくってくれるぱんなら どっちでもー』


 ……可愛い事を言ってくれやがって。よーし、張り切って作ってやるからな。


『わーい♪』


 ……いや、まぁ、それはそれとして……この様子じゃ俺の【料理】スキルも地球仕様って可能性が捨て切れんな。[醗酵(はっこう)促進]なんて項目があったりするし。()(かつ)な事を口走らないよう、今後は注意しといた方が無難か。



・・・・・・・・



 中等部の錬金術は、新素材や特殊素材、化学薬品の開発・発表という感じで、中々楽しめた。中等部の授業は、素材の強化や錬成・変換など、実践的な内容が中心となるらしい。地道な作業が続くから、才能よりも性格適性が重要だって耳打ちされたけど。

 初等部の授業は、基礎的な化学という感じの座学なんだよな。まぁ、前世の化学のお復習(さら)いを兼ねて聴いてるが。


 もしもこっちに進むとしたら、探してみたいものや作ってみたいものは幾らでもある。発熱繊維とかプラスチックとかゴムとかな。前世にあって現世に無いものはたくさんあるし、それらを実用化するだけで食ってけそうだ。


 ……いやいや、何と言ってもここは魔法の世界だからな。現代科学の再現だなんてみみっちい事を言わずに……そう、反撥係数が1以上で、次第に高く跳ねるようになる物質とか。……デ○ズニーの映画にあったよな。……或いは、重力を遮断する物質で宇宙へ飛び出すとか。……ウェルズの小説だったっけな。……水に反撥して浮かぶ前に滑って行く撥水素材で船を造ったり……


 ……そこまでぶっ飛んだものでなくても……単純に脱臭剤とかはどうだ? 魚醤の臭い消しにも使えるし、民間……では無理としても、貴族とかに需要がありそうだし。夜光虫やウミホタルを材料にした蓄光素材とか、冒険者に需要がありそうだよな。……【点灯(ライト)】の魔法で済ませてる場合が多いけど、魔力を使わない蓄光素材なら、それなりに売れると思うんだが……


 あ、半透膜とかはどうなんだ? ……いや、完全な生体膜とかじゃなくても……例えば、袋状にして酒を入れたら、水だけ通してアルコールを通さないとか……濃縮されて度数が高まるんじゃないのか? ……加圧してやる必要があるかもしれんな。あと、異臭成分や雑味成分まで濃縮されると面倒な事になるか。


『マスター おなかすいたー』

『お、そういやそろそろ昼飯時か』


 ……確か、初等部の学生とかが小遣い稼ぎに出店だか屋台だかををやってたな。丁度頃合いだし、初等部の学生が出している屋台で昼飯にするか。

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