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第三十八章 創立祭~楽日~ 2.従魔術科(その2)

 ~Side ネモ~


 従魔とその主が入り口にずらっと並んでるのを見た時には、どうしたもんかと思ったが……ギルベールが何とか場を収めてくれてたんで、俺たちは従魔術についての説明を受けている。説明と言うか……法律・規則・慣習に絡んでの、従魔術師ならではの失敗談みたいなのを中等部の先輩方から聞かされてるんだが……これが面白い上に参考になる。これだけでも来た甲斐があったってもんだ。

 あ、先輩方にはフランデルが取りなしてくれたようで、従魔たちも一応は警戒を解いてくれた。……まだ完全には気を許していないみたいだけどな。


「……やっぱり餌代とかは大変ですか」

「強力な従魔になるほど、そこは覚悟しないとね」

「強い従魔っていうのは、大抵が肉食性だからね。常に新鮮な魔獣の肉とかを確保しないといけないから」

「マジックバッグとかは必須だよね。……ネモ君は【収納】を持ってるんだっけ?」

(つくづく)(うらや)ましい話だ……」

「しかも、その従魔が好き嫌いの無いスライムだという……」

「【収納】スキルは不要よね……」


 そうは言いますけどね、先輩方。俺もヴィクも新鮮でない食べ物を好んで食べようとは思わないわけで。……いや……肉とかは熟成させた方が美味いケースもありますけど。


『あー マスターがじゅくせいさせたおにくって おいしいよねー』


 ……うん。その通りだけど……今は黙っていような? 先輩方に知られると、また面倒臭そうだし。


『わかったー』


 幸いにして、俺とヴィクの念話は気付かれなかったみたいだ。……【念話】の秘匿性について、後で確かめておく必要があるな。


「……で、従魔術科の生徒は、狩りの時間が単位として認められているわけだ」

「まぁ、従魔の種類にもよるんだけど」

「大体何人かで連れ立って狩りに行ってるよね」


 ほぅほぅ、それは知らなかった♪


「……多分だけど……ネモ君の場合は無理だと思うよ」

「スライムは食べ物の好き嫌いが少ない事は、従魔術師でなくとも知ってるから」


 ……だよな。そう上手くはいかんか。


「そもそも、ネモ君は従魔術科に来るの?」

「……昨日の様子じゃ難しいかと……」


 思わず微妙な口調でそう言ってやると、あぁやっぱりという顔をされた。……何人か、ほっとしてる様子の先輩もいるな……少しは隠そうとかしてくれませんかね。


「そうすると、従魔術ギルドへの登録はどうなるのかな?」

「従魔術ギルド?」


 一体何の事だと思っていたら、ギルベールが説明してくれた。一応ギルドを()()ってはいるが、従魔術師同士の交流と協力を目的とした、小さな互助会みたいなもんらしい。


「ネモ君はまだ【従魔術】が生えたばかりだからね。(しか)るべき講習も受けていないし、従魔術()名告(なの)れる段階でもないから、当面は気にする必要は無いよ」


 詳しい事はフォゼカイアの爺さんに聞けと、意味ありげな言い方をされた。

 ちなみに、後で爺さんをとっちめたら、俺はまだ従魔術師としては見習い以下だし、何よりヴィクの事があるので、当面は知らんぷりをしておけとの事だった。

 ……まぁ、将来的に従魔術師としてやっていけるかどうかは――主に俺の目つきのせいで――難しいからな。


 しかし……従魔術の講義か。

 どんな内容なのか訊いてみたら、生物学の他に獣医学のような内容を含むらしい。従魔が体調を崩した時とか、自分で手当をする必要があるからだと。……まぁ確かに、ヘルファイアリンクスとかを診てくれる獣医は少ないだろうな。

 だが、そういう事なら、俺も講義を受講したいもんだ。フォゼカイアの爺さんをせっつくか。


「あとは……野生の魔物と区別するために鑑札が必要なんだけど……スライムはどうでしたっけ?」


 ――鑑札? またぞろ知らん話が出てきたぞ?


「あぁ、その件だけどね……念のために冒険者ギルドや警衛隊にも確認してみたんだけど、スライムの場合については前例が無いそうだよ」

「……は?」

「そもそもスライムを従魔にするケース自体が少ないし、ペットの場合は室内飼いが基本で、普通は連れ歩いたりしないからね」


 あと、スライム用の鑑札というものが用意も想定もされてないというのが実情らしい。そりゃまぁ、そうか。……いや、ラノベとかじゃ割とそういう話も出てくるんだが……こっちの現実では用意されてないらしい。敢えて言うなら、飼い主である俺が鑑札を持ち歩く事になるようだ。


「まぁ、当面は気にしなくていいと思うよ。何かあれば上の方から言ってくるだろう」


 そういう事にしておくか。


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