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第三十一章 冒険者ギルド 2.素材売却

「あぁネモ、その前に、お(めえ)が帰って来んのを待ち構えてた連中がお揃いだ」


 ギルマスから待ったがかかったんだが……


「……ひょっとして、各ギルドの……?」

「ひょっとしなくても、さっきからお待ちかねですよ」


 ……メデューサボアを狩った事がどっかから漏れたのか? ……まぁ、生徒は全員知っているし、別に口止めもしなかったわけだが……


「いや? 単にお(めえ)のこったから、手ぶらで帰って来る筈が無ぇって待ち構えてたみてぇだぜ?」

「ネモ君、信頼されてますねぇ」

「……信頼ですか? これ」


 まぁ、来てくれた以上は無駄足を踏ませるわけにもいかんからな。売れる分はさっさと売っちまうか。従魔術講習とやらの費用も稼がなくちゃならんしな。



・・・・・・・・



「……メデューサボア……また、シャレになんねぇ代物を……」

「さすが、『蛇狩り職人』の称号は伊達じゃありませんね……」


 ギルマスもサブマスも複雑な顔をしているな。俺としては、単に肉を狩ったという感覚なんだが……


「……ネモ君、早めに矯正しておくのがギルドとしての義務だと思うから言いますけど、そろそろ自分の規格外っぷりを自覚した方が良いですよ?」

「メデューサボアってなぁCクラス、場合によっちゃC+クラスの魔獣だぞ?」

「間違っても、登録前の見習いが単独で狩るようなものじゃありませんからね?」


 いや……そう詰め寄られてもなぁ……


「狩り方さえ解っていれば、それほど面倒な相手じゃないんですけどね」


 噛み付きが届かない距離からナイフを投げて、頭を落としちまえば終わりだからな。


「……そんな離れ業、できるやつが何人いると思ってんだ」

「ただ倒すだけなら、距離をとっての魔法攻撃という手もありますけどね。蛇系の魔獣は見つけ出すのが難しいんですよ」

「大抵は奇襲を受けて後手に廻る事になるからな。……お前は()く先手を取れるな?」

「そこはまぁ……慣れというしか無いですねぇ……」


 【眼力】が覚醒する前から、蛇公は()く見つけてたからな。第六感とかESPとか、何か特殊な才能なのかもと思ってたが、感知系のスキルは生えなかったし……親からは〝進化した食い意地〟だろうと言われたもんだ。


「……それにしても……スキップジャックヴァイパーまで売っ払っちまってよかったのか?」

「まぁ、折角来てくれた職人さんたちをがっかりさせるのもアレですからね」


 キャンプで捕まえた蛇どもは、メデューサボア以外は小物ばかりだったからな。帰路に捕まえたスキップジャックヴァイパーも提供したわけだ。進行中にとっ捕まえたから、血抜きとか解体とかやってる暇が無くって、そのまま【収納】して持ち帰った分だ。解体の手間そっち持ちなら丸ごと譲ると言ってやったら……職人さんたち、(えら)くヒートアップしたんだよな。

 ……何でもマムシスキップジャックヴァイパーの血とか肉は、薬膳料理だか何だかの材料としても一級品だったらしい。故郷じゃ何度か食べた事があるし、精が付くのは知ってたけど、そこまで高級品扱いされてるたぁ思わなんだ。


「まぁそれも、新鮮なものという条件付きなんですけどね」

「ネモは【収納】持ちだからな。何の問題も無ぇわけだ」

「しかし……ネモ君はまだ見習いの身でありながら、蛇絡みで随分と討伐ポイントが貯まっていますね」


 ……討伐ポイント?


「ギルドとしては、見習いに討伐依頼を受注させるわけにゃいかん。けど、勝手に狩るのを禁止するわけにもいかんからな」

「そういう場合は非公式にポイントを記録しておいて、登録後の成績に加算するんですよ」

「今は見習いだから静かなもんだが、来年に仮登録すると……」

「えぇ、指名依頼が殺到するかもしれません」

「は? ()登録者相手に指名依頼?」


 何を言ってるんだこの人たち――と思ったが、


「別に禁止されてるわけじゃねぇぞ? ただ、そんな頓狂な依頼を出すやつがいなかっただけだ。……これまではな」

「けど、ネモ君は既に蛇狩りの技量で定評がありますからね」

大水蛇(ヘイラーダ)の素材を持ち込んだ時にゃ……連中、狂喜してたからな」


 帰省した時に狩った大水蛇(ヘイラーダ)の素材は、一部は帰りしなに寄った町で売っ払ったんだが、幾つかは王都のギルドにも廻したんだよな。去年十一歳の時に狩った分も、皮とかは残してあったし。……予想した以上の高値で売れて驚いたよ。地元で売るより三割以上は高く売れたからな。


「当たり(めえ)だ。そもそもこの辺りにゃ、大水蛇(ヘイラーダ)の『素材』なんて廻って来ねぇからな」

「全部地元で消費されて、こっちに来るのは『製品』だけなんですよ」

「それが丸々一頭分、『素材』の形で持ち込まれたんだぞ? 職人どもの鼻息が荒くなんのも当然だろうが」

「あの件で益々(ますます)ネモ君の株が上がりましたからねぇ」

「買い被らないで下さいよ。所詮(しょせん)は蛇相手に稼いでるだけの小僧なんですから」

「何言ってやがる。大きな声じゃ言えねぇが、ディオニクスって大物があっただろうがよ」

(おもて)沙汰(ざた)にできませんから、公式にも非公式にも記録に残せてませんけどね」


 ……そう言やあったな、そういうのも。


「どの道だ、ネモだって蛇しか狩れねぇわけじゃあんめぇ? 他の魔獣どもだって、どんと来い――なんだろ?」

「魔導学園の生徒で見習いという立場から、狩る機会が無いだけなんでしょう。そのくらいは皆解ってますよ」


 ……まぁ……狩れないわけじゃないけどな。

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