表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/356

第二十九章 暗くなるまで待って 6.パニックルーム 02:40~02:47

 ~Side ドルシラ~


『ヴィクさん、外がどうなっているか、判りまして?』

『んー ごちゃごちゃしててー よくわかんないー』


 どうやら突入して来た賊と乱戦になったようですわね。敵味方入り乱れての混戦となると、幾ら感覚の鋭いスライムでも、区別するのは無理なようです。


「レンフォール嬢、部屋の外の戦況は?」


 マヴェル様がお訊ねになりましたけど、錯綜(さくそう)しているようで判らないとお答えするしかありませんでした。


「さすがに乱戦になったら無理か……」

「スライムに敵味方を区別しろと言うのが無理でしょう」

「と言うか、僕らにだって判るかどうか怪しいよね」

「……少なくとも、戦闘の音は近寄って来ていません。このまま食い止められるのでは?」


 エルメインさんはそうおっしゃいますけど、


「問題は、逃がさずに捕縛できるかどうかでしょう」


 マヴェル様はその先を案じておいでのようです。

 エンチャントで固めたこの部屋に、しかも親衛騎士団と一緒に立て籠もっていれば、どれだけ手練(てだ)れの刺客であろうと、辿(たど)り着くのは難しいでしょう。


「……どっちかと言うと、ネモが無茶をしないかどうかの方が懸案事項じゃないか?」


 ……カルベインさんのおっしゃるとおりかもしれませんわね。皆さん考え込んでおしまいになりました。


『なんだか けむーい』


 ……ヴィクさん? どうかしましたの?


『なにかねー もえてるみたいー けむりがきてるよー?』


「……煙だと?」

「キャンプハウスは防火のエンチャントで固めた筈だぞ?」

「いや……建物以外の可燃物には付与(エンチャント)してない。そっちが燃え始めたのかもしれん」

「だが……建物が火に包まれるような事は無いだろう?」

「問題は煙だ。空気清浄化のエンチャントは一応かけてあるが……煙に巻かれるまでは想定していなかった」


 ……こちらにも想定外の事が起きたようですわね。


「……()むを得ん。マット、グロス、外の様子を確認に行け。何かが燃えているようなら、できるだけ消してこい」

「「はっ!」」


 マクルーア隊長は親衛騎士二人を外に出す決断をなさいましたけど……手が足りませんわね。


「お待ち下さいな、マクルーア隊長。(わたくし)とヴィクさんも参ります」

「レンフォール嬢?」

「無茶だ!」

「ご厚意はありがたいが、これは自分たちの任務です。()(けん)の方のお手を(わずら)わせるには及びません」


 邪魔だから引っ込んでろ――という意味ですわね? けれど、(わたくし)も伊達や酔狂で名告(なの)り出たわけではありませんのよ?


「マクルーア隊長、ここまで煙が来ているという事は、部屋の外は煙に覆われている可能性もありますわよね? 視界の利かない状況で、どうやって様子を確認するおつもりですの?」

「――しかし……」

「ヴィクさんでしたら、煙を通して周囲の様子を探る事ができますわ。そしてヴィクさんにお願いする以上、【従魔術】が使える(わたくし)が同行するのは必然ですわよね?」

「……ですが、あまりにも危険では?」

「物理攻撃も魔法攻撃も無効化できるヴィクさんが、護衛に就いて下さいますのよ?」


 マクルーア隊長は(しばら)く逡巡しておいででしたけど、


「……隊長、ここはレンフォール嬢の申し出を容れて下さい」

「……マヴェル殿?」

「我々も魔導学園の生徒であり、それ以前に貴族の末席を汚す者です。いつ、何を()すべきかの判断については、子供の頃から叩き込まれています。何より、そのヴィク君がいれば、不意討ちも魔法攻撃も心配無用です。……万一の時の責任も、我々が取ります」

「…………マット、グロス、命に替えてもお嬢様をお守りしろ!」

「「はぃっ!」」



 ――02:47 ドルシラ・レンフォールを含む三名、室外偵察を強行――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ