第二十六章 郊外キャンプ~二日目~ 1.危険な食卓
~No-Side~
翌日は午前から雨となった。
「え~……本日の午後の実習は、予定を変更して……」
固唾を呑んで〝自習〟という言葉を待ち構える生徒たちであったが、彼らの甘い期待は裏切られる事となった。
「調理実習?」
「それって昨日もやったんじゃ……」
――という生徒たちの声に、
「あんなものは料理とは言わん!」
――と、言下に道破するオーレス教授。
確かに、薪に火を着けて湯を沸かし、干し肉をぶっ込んで煮た程度のものを「料理」と主張されたら、プロの料理人たちが嘆くだろう。……たったそれだけの事に大騒ぎを演じる羽目になったのは、これ全て生徒たちに原因がある。
「そもそも、湯を沸かすだけであんな騒ぎを起こしておいて、簡単な講義で済ませられるとでも思ったのか?」
調理のなんたるかを徹底的に叩き込んでやる――と言わんばかりの剣幕に、自覚のある生徒たち――特に主犯――は黙って項垂れるしか無いのであった。
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「――で、本日のメニューは二部構成で、第一部が昼食の支度を兼ねた野営食の調理実習、第二部が保存食作りか」
「保存食の方は、明日以降の野外実習に持参させるという事らしいね」
「明日に予定している野外実習では、一応水と堅焼きビスケットは支給されるらしいけど」
「それ以外にボリュームのあるものが欲しければ、今日のうちに頑張って作れって事か」
「干し肉とか、そっち系のものを作るみたいだけど……」
「失敗したら、明日腹を壊すか、食いっぱぐれるだけって事だな」
それはさぞかし身が入る事だろう――と、第二部の授業に思いを馳せるネモ班の面々。
「ま、その前に昼飯代わりの野戦食だな」
「……野営食じゃなかったかい?」
「似たようなもんだろうが……おっ、先生の説明が始まるぞ」
ネモの言葉どおり、実習担当のオーレス教授によって、第一部の説明が始まった――生徒たちの運命を告げるものとなった説明が。
「昨日の自炊準備の時に……そして一昨日の移動の最中にも、各自何らかの食材を採集したと思う。それらの全てを使い切ったわけではないだろうから、残っているものを前のテーブルに提出するように。我々が講評を加えた後で、それらを用いて昼食を作る。素材次第でメニューも変わるというわけだ」
オーレス教授の説明に続いて、本草学担当のクロード教官から補足説明が入る。食材が不足した場合は、教官たちが用意したものを付け加えるので、量が不足する事は心配しなくてよい。また、料理の手間を省くため、今回は全ての食材を一括して調理する――と。
オーレス教授の説明を聞いて顔色を変えていたネモ班の面々――ネモとエルの二人を除く――であったが、続くクロード教官の補足説明を聞くに至って、一様に黙って俯いていた。
――その態度に不審を抱きはしたものの、総括責任者のオーレス教授はそれ以上深くは考えず、運命的なその台詞を口にした。
「では――最初はAクラス、ネモ班から!」
……数瞬後、講義室を絶叫と恐慌が支配した。