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序  章 1.生と死の狭間にて

凝りもせずに異世界もの――と言われるかもしれませんが、新作です。今回は少し目先を変えて、ゲーム風世界への転生ものとなります。どこかで見たような設定と思われるかもしれませんが、ご笑覧下されば幸いです。

 思えば損な人生を送ってきたような気がする。


 両親からも数少ない友人からも口を揃えて言われたが、どうやら俺の目つきはあまり(よろ)しくなかったらしい。そのせいでやんちゃな連中に絡まれる事も多かったんだが、大概は俺が睨み付けるだけで解決した。……白目を()いて卒倒されたり、或いは(ひざまず)いて命乞いをされる形でだが。

 稀に、極々稀に、俺の視線に耐えて挑んでくる猛者(もさ)もいたが、幸か不幸か俺のステータスはそれなりに高かったらしく、数発の打ち合いでけりがついた。全て正当防衛が認められたため、俺が凶状持ちになる事は無かったが。

 ……けどな、不敗のモアイとか、メデューサの転生者とか、和製バックベアードとか、妙な二つ名が付いた事は……いや、その二つ名のままに生涯を終えた事は、悔やんでも悔やみきれない。


 そう……俺は死んだ。


 落石にバスごと潰されたんでは、目つきとかステータスとかの出る幕は無かったわけだ。まぁ、死後に葬式の場面を見る事ができて、こんな俺のために泣いてくれた者が思ったよりいた事が……少しだけ、嬉しかった。


 ――で、死後の転生だかなんだかを待っている間に……どうやら俺の目つきがまたしてもやらかしてくれたらしい。

 説明をしようとした天使っぽい人が、俺の顔を見て(おび)えたようにへたり込んだんだよな。天使にまで(おび)えられるのかと、内心でショックを受けていたんだが……


 ……そうしたら、やけに気合いの入った兄ちゃんがやって来て、俺に喧嘩を売ってきた。えらく気合いの入った兄ちゃんで、〝目を()らしたら殺られる!〟と思ったから、俺も負けずに睨み返した。

 随分長いこと睨み合いを続けていたような気がするが、そこへやたらに威厳のある爺さんがやって来て、俺と兄ちゃんの間に割って入った。どういう事かと訊かれたのでこれまでの事情を話したら……物凄く謝ってくれた。

 何でもあの兄ちゃんは、俺が天界にカチ込みをかけてきたと勘違いして、天使たちを護るために飛んで来たらしい。ただの粋がったツッパリかと思っていたら、見かけによらず好い兄ちゃんだったようだ。……フラフラと抱えられるようにして退場して行ったが……大丈夫だろうか。


「魂だけの身で、二百年も闘神と睨み合うだけの事はあるのぅ……」


 目を()らさないように必死になっていたので気付かなかったが、あの兄ちゃんと睨み合っている間に、下界では二百年という時間が過ぎていたらしい。魂だけになっていたせいなのか――全っっっ然気が付かなかったよ。いやホント。


「しかし……今のお主を普通に転生させるのは……ちと(まず)いのぉ……」


 そう言えば、元々は転生だとかそういう説明を受けるところだったよな。ドサクサに(まぎ)れてすっかり忘れていた。

 ちなみに、この爺さんはなんと最高神らしい。早呑み込みで喧嘩を売ってきたあの兄ちゃんと違って、偉い人というのはやっぱり道理を解ってくれるもんだ。


「褒めてもらったのはありがたいが……これは完全に(わし)らの落ち度じゃからのぅ。そのせいで、お主の魂が変質してしもうた」


 ……それはどういう事かと訊ねたら、下界時間で二百年もの間闘神と睨み合いを続けた結果、俺の魂にガン付けが刻み込まれてしまったらしい。目つきの悪さで生前色々と貧乏籤(びんぼうくじ)を引いてきた俺としては、次の人生では目つきをどうにかして欲しかったんだが……


「すまんのぉ……眼力を緩和するどころか、強化する事になってしもぅたようじゃ」


 魂のレベルでガン付けが刻み込まれてしまった結果、俺が威圧感を放つ事は避けられなくなったらしい。それもこれもあの兄ちゃんの早とちりのせいだと思うと腹が立つが……


「……すまんが少し威圧を抑えてはもらえんか。天使たちが(おび)えてしまうでの」


 ……いかん。気付かないうちに不機嫌オーラが漏れていたようだ。生前もこれのせいで色々と面倒に巻き込まれたんだ。平常心、平常心……あ、そうだ。


「だったらせめて、腹立ちを抑えるスキルか何かを貰えませんかね? 目つきの悪さはもう諦めるとしても、そのせいでまた面倒に巻き込まれるのは極力回避したいんで」

「ふむ……(もっと)もな話じゃ。解った。転生に当たってはその手のスキルを付けておこう」


 おぉ、最高神自らチートを約束してくれるとは……やっぱりこの爺さ……神様はいい人だ。


「人ではないんじゃが……それに、これはトラブル回避のためのオプションであって、お主への詫びにはなっておらん。ついでに言うと、チートというほどのものでもないしの」


 そうなのか? トラブルに直面しても冷静でいられるというのは、充分にチートな気がするが。状態異常耐性とかいうんじゃないのか?


「まぁ、恐怖耐性と言えん事も無いが……とにかく、その他にも幾つか力を与えておこう。本来お主が転生する予定じゃった世界よりも、少しハードな世界へ送る事になったでな。その補償と思ってくれればよい」


 ――うん? どういう事だ?


「お主の威圧……存在感が大きくなり過ぎたのでな、それなりに力強い世界でのぅては騒ぎになりそうなのじゃよ」


 あぁ……要するに、さっきのような事の繰り返しになるわけか……


「そういう事じゃ。少しばかり荒事上等の世界になるのでな、それに対応できるオプションを付けておくというわけじゃ」


 荒事上等ねぇ……具体的にどういう世界なのか訊いても?


「うむ。お主にイメージし易いように言えば、所謂(いわゆる)『剣と魔法の世界』というやつじゃな」


 おぉ……それはまた……ラノベなんかにある異世界転生そのものだな。


「まぁ、そんな世界に送らねばならなくなったのは、全てこちらの落ち度じゃ。それなりの手当てはしておくのでな、願わくば後悔の無い人生を送ってくれ」


 神様が「願い」なんて言葉を使っていいのかとも思ったが、ともあれこうした経緯(いきさつ)を経て、俺は異世界に転生した。

・当分の間は連続更新といたします。明日もこの時間帯に更新の予定です。


・拙作「従魔のためのダンジョン、コアのためのダンジョン」 「スキルリッチワールド・オンライン」 「転生者は世間知らず」 「ぼくたちのマヨヒガ」 「死霊術師シリーズ」 「なりゆき乱世」 「SROプレイヤー列伝」も、宜しければご一読下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み直していて気が付きました。前書きの1文字目からギャグなんですね。「懲りもせず」じゃなくて「凝りもせず」とは。肩も凝らないで書いているお話だと・・・。
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