ギャル、疲れました。
朝起きて、メイクして髪を巻いて朝ごはん食べて学校へ行く。それって何気ない毎日だけど私は疲れを感じちゃわない?毎日同じことの繰り返しって飽きちゃうもんだよね。見た目こんなバッサバッサのお化粧してバリヤ張って外面作らないと人前に出ることも誰かに話しかけることすらもできない私。
「おはよう莉絵、そういえば今日さ新作のアイス食べに行かない?ほら、莉絵ここ気になってたでしょ!!」
ほらみて!と椅子に座った途端近寄ってきた学校でよくつるむクラスメイト。
へぇ、いいねなんて返しながら頭の中ではどうでもいいと冷めたような私がいる。
そんな事は決して悟られないように今日も、楽しみ早く放課後になんないかなーなんて言ってみる。
正直、めっちゃどうでもいい。
いやそもそも、私全然アイス好きじゃないし。どっちかというと和菓子の方が好きだし。
どうせ、食べる前に映えとか言って写真撮んでしょ面倒臭い。
あーやだやだ、めんどくさいな早くお家に帰りたい。
頬杖つきそうになってしまって慌てて携帯をいじる方へシフトする。だってこれがギャルっぽいし?なんかね。見栄え的に。
心の中で溜息をつきながら、昨夜読んでいた物語を思い出す。確かあれは異世界転生の話だっけ。
現実とはかけ離れた世界のお話は読んでいる時だけその中の主人公になれたような気持ちになってとても楽しく感じる。けれどこんなことは勿論学校では言えない。まるでオタクだと言われるだろう。書店に売られているコーナーにはライトノベルと書かれている場所にあるからとてもじゃないが学校近くの書店では買えそうにない品ばかりだ。今の私はクラスメイトと書店に行ったとしても雑誌を真っ先に取る。
それが、ここで求められている私の姿だから。
でも異世界が本当にあるなら行ってみたい。
自由気ままに生きて誰かの顔色を伺って自分の好きなものを押し殺す生活とはおさらばしたい。
そしてあわよくばイケメンでお金持ちの人と巡り会いたい。まぁ、これまた夢の話なんだけれど。
「ねぇ、莉絵聞いてる?」
「え、なに?ごめん、ここのアイス美味しくてつい夢中になっちゃった」
もう、と拗ねるように頬を膨らませるクラスメイトに愛想笑いを浮かべて笑う。ちゃんと聞いてよねーとまた何度か聞いたことのある話に相槌を打ちながら気付けばアイスを食べ終わってしまっていてもう帰ろっかと店を出て歩く。
そういえば、今日はライトノベルで今読んでる新刊が出るんだっけ。ちょっと遠回りになるけど後でこの子と別れてから隣駅の書店に行こう、なんて考えながら横断歩道の信号を待つ。
チカチカと青が点滅している横断歩道。今走れば間に合いそうだな。
「莉絵」
「んー?」
「私ね」
ーその先は聞こえなかった。
余りにもゆっくりとスローモーションかのように身体が揺れたから。
あ、これはやばいって瞬時に思った。
だって、私は突き飛ばされたから。
さっきまで一緒にアイスを食べて笑いあっていた彼女に。
最後に大きなクラクションと共に聞こえたのは。
「大嫌いだったよ」
と、余りにも悲しい言葉だった。