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90 決意


帝の元を辞した公賢(きみかた)と千鶴は、ナンテンと比丘尼(びくに)の待つ場所へと戻ってきた。

そこには、菊鶴と鶯がいて、その横には、見たことのない武士のような男が立っている。


「千鶴っ・・・!!」


真っ先に駆け寄ってきたのは、菊鶴だった。千鶴を抱き寄せると、


「よかった。無事で・・・」


肩が小刻みに震えている。


「・・・お師匠さん。」


千鶴も、ギュッと肩を抱いて、


「心配かけて、ごめんなさい。」

「いいんだよ。あんたが無事なら・・・」


千鶴の身体を離した菊鶴と目が合う。今では、体格差はほとんどない。向かい合うと目線は同じ高さになる。


千鶴は、菊鶴の両腕をしっかりと掴んで、


「でも、私、まだ、やらなくちゃいけないことがあるんです。」


菊鶴が、その艷やかな美しさを称えたまま、少し困ったようにこっちを見ている。


「私、やらなきゃいけないことが・・・」

「わかってるさ。」


菊鶴が、千鶴の言葉を遮った。千鶴の頬に垂れた一房の髪をかき揚げ、耳にかけながら、


「わかってる。あんたにしか出来ないことが、何か、あるんだろう?」


菊鶴は、千鶴の横に立つ公賢を、意味ありげに、ちらりと見上げた。千鶴がいなかった間に、何かを聞いているのかもしれない。


「千鶴が、やらなきゃいけないことがあるってのは・・・それは、あんたにしか出来ないことだってのは、分かっちゃいるんだが、それでもやっぱり心配で・・・」


それから、ゆっくりと、何度も首を振った。


「ごめん。どういう顔して、どういう気持ちであんたを送り出してやればいいのか、分からんないのさ。やっぱり、所詮、あたしは親じゃないから・・・」

「そんなこと、ありませんよ。」


即座に否定したのは、比丘尼だった。


「この子を育てたのは、あなたでしょう?あなたは、立派な親ですよ。」


諭すようでも、説教くさい言い方でもない。ごく自然に、菊鶴の存在を肯定している。


千鶴も、菊鶴を抱きしめた。


「お師匠さん、今まで、育ててくれて、ありがとう。」


大丈夫。

この人からも、たくさんの愛情をもらった。

今の千鶴があるのは、菊鶴のおかげだ。


胸には、強い決意が宿っていた。


「私、行きますね。」


それから、ゆっくりと身体を離した。


その様子を見ていた公賢が、ナンテンの方を振り返った。


「さて、随分と力を増幅させましたねぇ。」


毛を一撫でして、耳をカリカリと掻いた。


「もう少し、頑張れますか?私と千鶴を運んでもらいたいのです。今度は、ちょっと遠くまで。」

「わかった。」


ナンテンが千鶴のほうを見た。

千鶴は頷き、腰から剣を抜いた。刃を手の甲に当てようとすると、比丘尼が遠慮がちに、


「あの・・・」


と声をかけた。


「あの・・・私も、連れて行ってもらえませんか?」


公賢が、両方の眉を大きく釣り上げた。めったに感情を顕にしない公賢にしては、珍しく、分かりやすく驚いている。


「いえ。貴女は、ここに・・・」

「見届けたいのです。この結末を。」


比丘尼は、キュッと唇を結んで、じっと公賢を見つめている。引く気はない、とその目が言っている。


それで、分かった。

ひと目見たときから、心の奥底に引っかかっいたこと。

それが、今、するりと抜けて、千鶴の脳裏に現れた。


「・・・いいじゃないですか。」


千鶴は、自然に、口にした。


「一緒に行きたいなら、一緒に行きましょう。ナンテン、連れていける?」

「えっ!?」


返答に困ったナンテンが、公賢を見ると、


「千鶴!何故あなたがそんなことを!?」

「だって・・・・・・家族、なんでしょう?」


千鶴は、公賢と比丘尼を順番に見た。


「たぶん、私と比丘尼は家族・・・お祖母様、かな? 前に公賢様が言っていた、3代前の祖先。帝の血縁の。」


返答に迷う公賢とは対象的に、比丘尼は、ふわりと笑った。


あぁ、やっぱり。


笑顔が言っている。正解だ、と。

見たことないはずの、その笑みが懐かしい。


「気づいていましたか?」

「部屋に、菊の意匠をあしらった鏡がありました。私の櫛と同じ。」


比丘尼の部屋で、目を覚ましてすぐに見つけた。それで、気がついた。この人は、自分と関係がある人なのだと。


でも本当は、それより、もっと前。

ひと目見たときから、心のどこか、身体に刻み込まれた何かが、反応していた。


「私は、あなたの母を産み、そして、育てられずに手放しました。あなたの母を身籠ったときは、いろいろと苦しんだこともありましたが・・・今は、そのことの意味を見極めたい、知りたい、と思います。」


千鶴は、比丘尼の手をとった。


「ね?公賢さま。ナンテン。」

「オイラは大丈夫だ。」


公賢は、大きく、ため息をついて、


「・・・ちょっと遠いですよ?」


それから、懐から紙片を取り出し、口許にあてて、何事かを呟いた。小さく九字を切ると、ぽぉっと紙が光った。


それを、ナンテンにペタリと貼り付ける。


「すごいっ!なんか、めっちゃくちゃ力が湧いてきたっ!!」


興奮するナンテンに、千鶴は手の甲の血を分け与え、


「行きましょう。」


まず、比丘尼をナンテンの背に乗せた。

それから、皆に別れを告げようと振り返ると、


「千鶴っ!」


それまで、ずっと黙って見守っていた鶯が、手に何かを持って一歩踏み出した。大事そうに腕に抱かれた、白と緋色の布地は、千鶴が幾度も手を通してきたもの。


「白拍子の衣服です。ほつれたところは全て直しておきました。」


洗ってくれたのだろう。白色が、新品のように輝いている。


「これ、要るんでしょう?」


やや躊躇いがちに、差し出した。

踊れない千鶴を知っているはずなのに、それでも、いつかのために、信じて用意してくれていたんだ。


千鶴は、血がつかないように、手の甲を布地で縛ると、


「ありがとう。鶯の君。」


両手で丁寧に、抱くように、鶯から受け取った。


「必ず、無事で戻ってください。」


鶯が、そっと、千鶴の腕に手を添える。指先と声は震えていた。


「ついていくことはできないけれど・・・絶対に、無事で・・・」

「・・・うん。」


千鶴は、服を片手に抱え直し、残った手で、鶯を抱きしめた。



帝は言った。


ーーー今、そうである者たちが、この先も、永遠に導かれ、支配される者たちではない。


だから、これは多分、今の鶯と、それから、何百年、何千年先にいるだろう鶯のための戦いでもあるのだ。



「必ず、戻ります。この騒ぎ、ちゃんと全部収めてきますから。」


それから、全員に向かって頭を下げた。


公賢が、皆と一緒にいた、見たことのない大柄な男に声をかけた。


朝雅(ともまさ)どの、ここは頼みますよ。」

「あぁ。芦高王子は掴まえた。あとの二人は、あんたに任せる。」


二人の短いやり取りが済むと、千鶴はナンテンの背に乗った。


上から比丘尼が千鶴の腕を引き上げながら、


「千鶴。貴女には、道中、私たちの昔話を聞かせねばなりませんよ。」

「はい。」

「長い話になりますよ。」

「大丈夫です。」


最後に、公賢がひらりと飛び乗り、掛け声をあげた。


「さぁ、行きましょう。出雲へ!!」



◇  ◇  ◇



「千鶴は、神の子です。」


その言葉を聞いたとき、惟任(これとき)は何の冗談かと思った。

しかし、それを口にした張本人、安倍公賢の目は全く笑っていなかった。


そもそも、こんな冗談を言う質の人ではない。

ならば、真面目な話なのか。


公賢は、返答に困る惟任の様子など気にせず、淡々と話を続ける。


「正確には、神の孫、です。」



それは、福原に向かう道中のことだった。公賢は、惟任とともに歩きながら、自分の過去について話し始めた。


結局、あとで、あれは公賢が作り出した虚像だったと分かったわけだが、わざわざ共に歩いたのは、自身の話をするためだったのだろう。


「千鶴どのが、その・・・公賢どのがお慕いされていた方の孫だということは、分かりました。しかし、それが何故、神の孫だということきなるのですか?」


比丘尼は、かつての帝の娘。確かに、帝はもともと、神の血をひいていると言われているけれど、それをもって神の孫ーーーというのは、いくらなんでも暴論だ。


それなら世の中、神の子どもだらけだ。


「まさか、その狼藉を働いた男が神だった、とでも言うつもりじゃないでしょうね?」


自分も大層な身分ではいが、その男は、どこの者とも分からぬ、ならず者だ。


しかし、公賢は、惟任の疑義には取り合わず、


「古事記を読んだことは?」

「ありません。」


あるはずなどない。貴族とは、所詮名ばかりの地下人。教養とは無縁だ。


「有名な話くらいは知っていますが。」


僅かばかり残った惟任の意地が、そう付け足させた。


「古事記において、神はしばしば、様々なものに、擬態します。」


それは例えば、旅人だったり、猪だったり、はたまた矢だったりーーー様々なものに身を窶して、時には、気に入った乙女のところに忍び込むのだという。


「まさか、狼藉を働いた男もそれだ、とでも言うおつもりですか?」


あまりにも荒唐無稽な話だ。いくらなんでも飛躍しすぎている。

公賢らしくもない。


「私も、あのとき逃げた男は、森で山犬に襲われたーーーと思ったのです。」


でも、長じてから思い返してみると、実際は違ったのだという。


その男は、山犬に襲われて死んだのではなく、もっと前に命絶えていた。おそらく、崖か何かから、足を踏み外して。


「山犬たちの中に一匹だけ、黄金色の毛並みの大きなものがいた。それが、おそらく、あの男の姿を借りたのでしょう。」


それが山に巣食う神の一種だったというのだ。俄には信じがたい話だが、公賢は、真面目だった。



「・・・・千鶴どのが・・・神の子。」


惟任が、ふいに呟くと、


「ん?何か言ったか?」


足元から、声がした。


惟任の足元ーーー文字通り足の真下には、巨大な蛇の形をした青嵐(せいらん)の中将がいた。


惟任は、中将の蛇の身体の上に、中腰の姿勢で乗っていた。

側には、寄り添うように、もう一匹、斑模様の蛇がいる。


今、惟任は、二匹の蛇とともに、千鶴たちの元へと向かっている。



時は遡り、頭中将が消えた後の福原でのこと。


拘束を解いてもらった黒拍子が、自由になった身体を確かめるように腕と首をコキコキと回した。


「ここは私に任せ、公賢どのは、急ぎ都へ。」


惟任は、繰り返し揺れる地面の上で、均衡を保ちながら、黒拍子に刀を向けた。


「頼みましたよ、惟任。」


返事と同時に、公賢の姿が、頭中将と同じく、陽炎のようにゆらりと消えた。

そして、後には、紙片が舞う。


それで、公賢もまた、作り物だったのだと知る。数日共に過ごし、あれだけ直ぐ側にいた惟任でさえ、気づかないほどに精巧な。


公賢はたぶん、都にいるのだ。それなら、あちらは公賢と朝雅にまかせて、自分はここで、自分のなすべきことをする。


惟任は、刀の柄を握り直した。


「さぁ、来いっ!黒拍子!!」


刀身をすらりと黒拍子にむけた惟任に対し、黒拍子は、肩をすくめて、降参するように両手をあげた。


「いいや、ここで終わりさ。」

「・・・っな?!」


黒拍子は、鳩尾の傷を庇うように立ち上がり、


「俺は、ここで、お終い。もう、お役御免さ。」

「どういうことだ??」


黒拍子は、足元に落ちている紙片を摘み上げた。その紙切れは、元は頭中将だった。


「俺は昔、主ーーーあんたたちが頭中将と呼んでいる、あの男に拾われた。助けられ、養ってもらった恩がある。だから、俺は決めた。あの男がいいと言うまでは仕える、と。」


黒拍子は、長い爪で掴んだ紙片をクルクルと弄びながら、


「でも、もういいんだ。」

「もういい、というのは、頭中将に仕えるのをやめた・・・ということか?」


黒拍子は、「あぁ。」と頷く。


「さっき、この紙が俺の縄を切るとき、あの男の声が聞こえた。ここでお別れだ、と。」


黒拍子が、紙片を挟んでいた爪をパッと開いた。すると、紙は指からこぼれ落ち、風に乗って、空に舞い上がった。


「俺は、もう自由だ。だから、あんたたちと戦う道理もない。まぁ、ホント言うと、ちょっと戦いたい気持ちもあるけど・・・」


名残惜しそうに言ってから、「でも、駄目さ」と首を振る。


「たぶん、俺じゃ、あんたにかなわない。あの白拍子の女を喰えないのは残念だけど・・・」


その言葉に、惟任が、ぶわりと殺気を滲ませる。


「冗談だ。」


黒拍子が、牙ののぞく大きな口をぐにゃりと歪めて苦笑した。


「いや、ホントは結構本気だけど・・・でも、ほら、やっぱり俺はあんたにはかないそうにない。」


また、両手で、軽く万歳した。


「ともかく、俺はもう、あんたと戦う気はない。もう、誰のためにも戦わない。俺は、俺の好きなように生きていくんだ。」


それだけ言い終えると、黒拍子は、地面を蹴って高く飛んだ。深い傷を負っているとは、思えないほどの跳躍を軽快繰り返し、あっという間に姿が見えなくなった。


残された惟任は、呆気に取られて、立ち尽くしていた。


すると、


「あの・・・刀を仕舞われてはいかがですか?」


斑の姫が言った。

姫は、まだ座り込んでいるが、随分と顔色が戻っている。


「・・・・あぁ」


惟任は我に返り、刀を鞘に収めた。それから、斑の姫と青嵐の中将の様子を確認してから、


「私は、とりあえず、都に戻ります。」


まだ夜明け前だ。今から出れば、翌日の夕刻までには着くだろう。


本当は千鶴を探したいのだが、なんの手がかりもない現状では難しい。公賢と合流するのが得策だ。


「お二人は、しばらく、ゆっくり休んでください。」


青嵐の中将と斑の姫にそう告げて、踵を返すと、


「待ってくれっ!!」


青嵐の中将が惟任を呼び止めた。


「君が、行くのは・・・都じゃない。」


惟任が青嵐の中将の顔は、苦しげに歪んでいて、まるで頭痛のときのように、自分の頭を抑えていた。


「君が行くべき場所を・・・公賢どのから聞いている。君を連れてくるよう、頼まれていたのだ。」

「青嵐の中将が私を、連れて行くのですか?」

「左様。その場所への地図は、術によって、私の記憶に刻まれている。私は、君をそこに連れて行かねば()()()()。」

「ならない・・・?」


義務のような表現が気になり、問い返すと、斑の姫が、


「一種の・・・願掛けのようなものを、かけたのでしょう?」

「願掛けですか?」


まだ青嵐の中将が蛇だったときに、公賢は、呪を施した。もし中将が自分を取り戻したら、この話を思い出す様に仕掛けていたのだという。


「何かをなし得たら、何かを差し出す。そう条件をつけることで、もとの願いを叶いやすくするのです。今回の場合は、青嵐の中将が記憶を取り戻すことができたら、代わりに惟任どのを決められた場所まで連れて行く。それを、まだ記憶のない中将に誓わせたのです。」


「誓うと、どうなるのですか?」


「誓願を立てることで、記憶の鍵が外れやすくなります。青嵐の中将の記憶を呼び覚ます手助けとなる術をかけた、というほうが分かりやすいでしょうか。」


なるほど、それが願掛けか。

青嵐の中将の記憶が戻ったから、中将は誓いに従って、惟任を公賢に指定された場所まで、連れて行かなければならない。


「しかし・・・大丈夫ですか?あまり遠いところだと・・・」


今の今まで、記憶がなかったのだ。加えて、斑の姫のために、妖力を分け与えている。


「なんのっ!・・・これしき。」


青嵐の中将はフーッフーッと荒い呼吸を繰り返した。そうしているうちに、徐々に落ち着にを取り戻したようで、頼もしく頷いた。


「私は大丈夫なのだが・・・」


斑の姫を見た。


「一人で都まで、戻れますか?」

「いいえ。私も行きます。」


斑の姫は、ふらつく足を抑えて、立ち上がった。慌てて青嵐の中将が手を添え、介助する。


「だめですよ、あなたは。とても連れていけない。」

「嫌です。私も行きます。」


幼い子どもが駄々をこねるように、嫌だ、嫌だと首をふって、


「もう、青嵐の中将のお側を離れたくはありません。二度と・・・」


青嵐の中将の手を強く握リ、熱い眼差しを向ける。青嵐の中将が包み込むように抱きしめ、大きな手で頬を撫でた。


惟任は思わず顔を逸らした。

大人の女性が、こんなふうに感情を顕にして、恋い慕う様を、初めて目の当たりにした。


自然と、千鶴のことが思い浮かんだ。

あんなふうに千鶴を抱きしめたいと思い、そんなことを考えた自分に恥ずかしくなる。


「・・・分かった。」


しばらくすると、青嵐の中将が、諦めるように言った。


「一緒に行きましょう。ただし、私の側で、私から絶対に離れないこと。」



そうして、大きな蛇に姿を変えた青嵐の中将は、今、惟任を背に乗せ、公賢に告げられた場所まで疾駆している。


道は山の中を縦断するような獣道で、中将は、シュルシュルと這うように進む。


惟任は背の上で、中将の動きに合わせて、中腰のまま、右に左に加重を変える。

もう一匹の蛇は、そのすぐ横にピタリと寄り添うようについてきている。

時折、互いが互いを、気遣うような仕草をしながら。


この二人は、本当に愛し合っているのだ。



惟任は、公賢から千鶴のことを聞かされた時、「神の血を引く娘」という事実を、どう受け止めていいのか分からなかった。


あの日、神社の境内で踊っていた小さな少女は確かに、神がかっていた。


しかしーーー


踊りをやめて、こちらを振り向いたときに見せた、あの蒸気した頬は?

襲われる鶯のために剣をふるう、あの正義感は?近衛府にまで侵入する友情は?

話をしているときに、時折、見せてくれる笑顔や照れた顔は?

そして、踊れなくなるほどに傷ついた、あの心は?


千鶴どのは、人間とは違うのか?

千鶴どのは・・・


「千鶴は、人間です。」


惟任の迷いを見透かしたように、公賢が言った。


「千鶴の生い立ちがどうであろうと、千鶴にどんな血が混じっていようと、彼女自身は、今を生きる人間です。」


ハッとした。

公賢の目は真っ直ぐだった。微塵の揺らぎもなく。


「だから、惟任。あなたは、あなたの気持ちを大事にしなさい。」

「はい。」



公賢の言われて、あらためて心に決めた。

自分の気持ちを大事にする。


だから、惟任は向かう。

千鶴を助けるために。



間に合わなかったなんて後悔は、もう、しない。


絶対に、間に合わせる。



あと5話です。

4月中には完結できそう。。。

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