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七つの国に架かる橋《加筆修正作業中》  作者: くるねこ
番外編 ノクティス
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 仕入れから戻り、開店準備をしてからパンを気って適当に野菜を挟む。


 地下室が涼しいことから肉や魚の保存が一日二日持つようになり、さらに火を通してしまえばさらに数日保存できる。

地下室が食品や材料でいっぱいになる日が来るとは思わなかった。

整頓ができていないため、木箱や棚を置きたいと思っているがそれすら買いに行けない。


 「おはようございます!」


ダイニングテーブルで一人、サンドウィッチを食べていると昨日の声がした。


「おはよう。早かったわね。」

「朝飯食って飛んできました。」


シルバが元気に答えるが隣のモウスは眠気に負けそうな顔だった。


「私がまだ朝ご飯中だから、少し待っててもらえる?」

「掃除します!」


真逆な二人が着たものだと思う。

昨日の夕方はあまりしゃべらなかったシルバが朝は元気なのだから教える側は二人を分けて教えていたのだろうか。

それとも見習いになったばかりということはまだ何も教わっていないのか。

おいおい聞いて行こう。


「それじゃあ、表の掃き掃除と店内の床掃除お願い。ほうきは階段下の収納にあるから」


私室スペースから店に顔を出し、二階への階段下を指さす。


 私もいそうで食べ終わり、掃除を終わらせた二人に店の説明をする。


「灰魔術師の判断で処方できる薬と診断書がないと処方できない薬は解っているかしら?」

「はい。医薬品との分類は習っています。」


眠気は飛んだのか、モウスが真面目に答える。


「私は一様、白魔術師の見習いの資格もあるから診察程度ならできます。なので、継続して医薬品を求めるお客さんは月に一度、診察をしてから渡すようになります。」


以前は資格がなかったため三か月までとしていたが月に一度の問診などの診察を経て、六か月に伸ばした。

何か気になることがあれば病院へ行くことを進め、変化がなければ最大六か月まで、継続的に薬を出すことにした。


「継続何か月目、何度目の処方、今までの市販薬の服用履歴などはお客さん一人一人にカルテを作っているので、出した場所に必ず戻すように、時々チェックして、名前順に並んでいるが確かめてください。稀に家族が取りに来ることもあるので間違えないように」


二人がメモをしていくがここは書かずとも覚えてもらわないと接客が任せられない。


「次に市販薬ですが薬棚にラベリングしてあるので軽度ならば渡してしまって構いません。ですがやはり重度の場合は医者を進めるように、私でも診察できますが痛みに関することは特に専門分野がいいわ。頭が痛い、お腹が痛いも同様ね。」

「なぜですか?」


シルバがメモから顔を上げて聞く。


「もちろん風邪でも本来ならば病院へ行った方がいいのだけれど軽い物ならうちで出せます。その際の関節が痛いというのは諸症状であり、悪化する可能性を秘めた体からのサインです。動かずに休めってことね。市販薬は軽度や初期症状には聞くけれど、重くなればなるほど医薬品でなければ治らない物が多くなります。私たちだけの判断では処方できない物は医者へ行かせてください。」

「ただの頭痛や腹痛でもですか?」

「モウスはこの国の産まれじゃなさそうね。」


そういうとびくっと体が動く、深くは聞かない方が良いだろうか。


「この熱気、地熱、食中毒が隣り合わせの土地であるカルミナでは腹痛が起きた場合、脱水か、食中毒が疑われます。脱水は腹痛までくると点滴の必要があり、安静に寝かせておかなければならず、その設備がこの店にはあるので、これは病院へ行かせなくても大丈夫。そもそも、もう動けないでしょうし。食中毒はもうトイレから出てこられなくなるでしょうし、吐いた物、排せつした物には食中毒を引き起こした病原菌がいます。こんなところで吐かれると処理できないので衛生環境の整った病院へ急ぎ輸送します。そのタンカーは診察台が変わりになるようにタイヤが付いているから、いつもは動かないようにロックしてあるので、動かす場合は気を付けて」


二人は少し頭をかしげている。

この話も近いうちに体験するだろうからその時にわかるだろう。


 「薬もらえる?」


老婆がドアを開けて入ってくると見習い二人を見て


「やっと新しい人雇ったのね。いっつも一人で忙しそうで」

「シルバとモウスです。今後は店番を任せることも増えますのでよろしくお願いします。」


老婆は木札を見せる。

そこには名前があり、


「一度でも来店したお客さんはこうして木札を持っているの。ここには名前があって、これを頼りにカルテを探して、もし、複数名来店したら先に木札を預かって、来店準に並べてこのカウンターのここに、置いておいて」


レジ横のスペースを指さす。

そこには箱があり、木札が並べられるようになっている。


「今日も肩腰の湿布ですか?」

「そう。でも、若い子二人も教えるのは大変ね。」

「せっかく来てもらったので、たくさん勉強してもらわないと私は自分の時間は取れませんからね。」


湿布を出しながら答えるがこれといって自分の時間が欲しいわけではなかった。

寝る前に本や刺繍をすることはあるがさほど意味のあることではない。


「薬の引き出しに値段の紙も入っているからそれを千切って、カルテに貼ります。清算はカルテを見ながら、薬の確認もして、渡してください。」


老婆が買えると次々とお客が来る。

市場帰りだったり、これから仕事へ行く人たちだったりが買いに来るのだ。


「奥から椅子を持ってきて、あの辺に座って、少し店の様子を見学していて、朝の時間が空いたら、レジから初めてもらうから」


二人はダイニングテーブルから椅子を持ってきて、階段前辺りに座っていてもらう。


 木札をもらってカルテを開き、症状、求める薬を聞く。

のどが痛い、微熱がある、腰が痛い、いつもの薬を、子供が転んだ、足をくじいた。

そんな人たちに時々カウンターから出て問診や触診して判断し、薬を選ぶ。


 バタバタしたのは少しの間、なのだが、見習い二人は茫然としていた。


「どうしたの? 大丈夫?」


頭パンクしそうなのか聞こうと思ったがやめた。

それは失礼だろう。


「いえ、城では客が来ないためこんなにあわただしいのは軍の演習直後ぐらいなんですが人数がそこそこいますので、ノクティス様みたいになんでも一人でできるわけでもなく、なんだが、すごいなって思ってしまって」


どうやら城の灰魔術師は得意分野で分担しているようだ。

薬屋によってはそれもある。

飲み薬しか置かないところや傷薬しかない場合もある。


 「その、ノクティス様って嫌なのよね。呼び捨てでいいわよ。言葉も堅苦しいの手間だから早く慣れて、楽しくやりましょう。」

「ですが、妃候補の方を呼び捨てになんて」


モウスが渋るその横で


「師匠と呼んでもいいですか?」


シルバはこれはいい考えだといわんばかりの顔で言う。


「師匠ってほどのことは教えられないかもしれないわよ。」

「いいえ、師匠はもしかしたら城の灰魔術師五人分の力があると思うのです。」

「城の魔術師は六人しかいないけどな。」

「そうなの?」


そんなに少なかったんだ。

サンスの両親の死後に大量に雇用したと聞いていたためそんなものかと思ってしまう。


「見習いは多いのですが年に一人ぐらいは何かしらの理由で辞めてしまうんです。」


結婚、妊娠、家族の不幸、家の跡継ぎ、ケガ、病気、仕事が続けられないという口実として言っているようにも聞こえる理由で退職するらしい。


「でも、お城なら稼ぎはいいんじゃない?」

「見習いの俺たちするらいい給料もらっているんで、それなりの生活ができるだけもらっているはずなんですがなんででしょうね。」


そのうちゲラダ王子にでも聞いてみるかと思いつつ、仕事の説明を始める。


 「まず、出勤したらお店の掃除とこのタンクの補充をしてほしいの。」

「水ですか?」


入り口横のタンクを見てシルバが聞く。


「補給水っていうただの水だと飲んだだけ排せつされるのに比べて体内に残りやすい水というか飲み物を無料で、店に来てくれた人には飲んでもらっていて、目安は症状がないなら一杯、汗を掻いたなってことなら二杯、少しめまいや頭痛がするようならゆっくり三杯飲んでもらうのが良いかな。もう材料は混ぜてあるものはここと」


そういいながらタンク下の棚を開け、木箱の中の粉を見せる。


「あとは地下にもあって、ここのが無くなったら取りに行って、地下のもなくなりそうなら作ります。」

「作り方は?」

「地下の箱に書いて貼っときます。まずはこれを軽く混ぜてからタンクに十杯、計量カップで測って入れてください。あとは上に蛇口があるからひねってもらってタンクの中に線があるからそこまで溜めたら、混ぜて、完成。毎日作り替えるから夜はこれを洗う作業もあるからね。」


 掃除が終わったら少しお遣いへ行ってもらうとして、仕入れのメモを渡すから市場の薬草テントへ持って行ってほしいというと市場を二人は知らなかった。

これはもしかしたらと思い、


「ねえ、二人って元奴隷だったりする?」


シルバはハハッと笑い、モウスの顔は一気に暗くなる。


「言い方が悪かったわね。」


私は白衣を脱いだ。

長そでの白衣の下は袖なしの服が多く、腕には包帯がまかれている。

包帯を外すと解放印があるのを見て、二人は


「王子の話、本当だったんだ……」


と、もらす。

来てはいたようだ。


「私も元奴隷だからあなたたちが嫌いなわけじゃないなくて、逆に歓迎しているわ。その年で奴隷ではないようなら、」


ギーと同じ、ゲラダ王子や国によって解放印を買われた身なのだろう。


「俺は昔ナトラリベスにアクアムから売られた身で、奴隷の収容期間を知らなくて、仲間と逃げたんだです。」

「仲間?」


カウンターや窓などの掃除をしながら聞く。


「元は貴族の屋敷に務める親の手伝いをしていました。アクアムでは珍しい人間の妻を取った旦那様が奥さまのために建てた陸上の屋敷に同じく陸と海のハーフである父が雇われたんです。でも、お嬢様が五歳になられてすぐに国王により財産はすべて没収、奥さまは水首刑(すいしゅけい:海底につながる紐に首を通し、放置されるアクアムではお仕置き程度の刑罰。)で亡くなり、旦那様は姿を消し、使用人とお嬢様はナトラリベスに売られました。」


アクアムの民ウミューシュは誇り高き種族。

ウィーンドミレとはまた違った差別意識を持っている。

人間こそが敵であるとすることから陸地に住むのは貿易関係の仕事をしていたり、大使館に務めていたりするような者であり、ウミューシュは皆海の中だ。


「子供だけで五、六人知らないグリゼオと思われる子もいましたがみんなで逃げました。それで、カルミナで保護されたんです。」


ああ、もしかしてあの記憶だろうか。

遠くが見られる私の力で逃げる子供を見たのはもう十年近く前の話だろうか。


「皆、無事だったの?」

「いいえ、途中ではぐれた者が半分、俺はお嬢様と二人、ゲラダ王子が偶然通りかかり、助けてもらいました。それからは城の下働きをさせてもらっています。見習いが足りないから手に職を付ける意味で初めて見ないかといわれたのが、ここに来たきっかけです。」


そうなると市場を知らない意味も分かった。


「あなたのお嬢様は今どうしているの?」

「王女付きの侍女をしています。年が近いので友人の様だと言っていました。」


 話が一段落付いたところでドアが開いた。


「ノクティス、今日は必ず城に来いよ。」


と、言いながら入ってきたのはギーだった。


「お客さんがいたらどうするの? 城へはいつも通り店の様子を見ていくわ。二人は今日来たばっかりで任せるわけにもいかないし」

「ドレスの調整に来いってよ。」

「あなたが合わせれば?」

「気持ち悪いこというなよ。」


コップ片手に蛇口をひねり、補給水を飲んで、コップをシンクに置いたと思うと


「じゃあ、伝えたからな。モウスもがんばれよ。」

「はい!」


早々に帰っていった。


 「モウスはギーと仲いいのね。」


シンクに置かれたコップを洗い、雑巾もすすぐ。


「島外から売られてきた自分を見習いに推薦してくれたのがグローリア様ですから」

「そう。じゃあ、あれのためにも頑張らないとね。仕入れの話に戻るわね。」

シルバと違い、聞いてほしいわけではないようだったため仕事の話に戻る。

 「明日朝、少し早いのだけれど市場へ行くから頑張って起きてね。」

「はい。」


モウスが返事をするがその後にため息が出る。

やはり朝は不得意なようだ。


「仕入れの時に手間なんだけど私のごはんの食材も買ってきてほしいのだけれどお願いしてもいい?」

「いいですよ。」


シルバが元気に返事をくれるだが、


「あれ、でも妃候補なら、三食城ででるんじゃ?」

「食べに帰れないのよ。だから今まで城の私室も使ったことも入ったこともないのよね。もったいないわよね。豪華なご飯が食べたいわけじゃないけれどふかふかベッドで寝たいわよね。この家のもゲラダ王子が用意してくれただけあっていい物だけど」

「寮のベッドなんかには比べられないんでしょうね。」

「あなたたちは寮なの?」


なんだか、お城の見習い生活について気になってきた。


「灰と白の合同の見習い寮があります。見習いから昇格しても住んでいる人いますけどね。」

「共同生活も楽しそうね。」


お屋敷にいたときは起きれば必ず誰かがいた。

今は夜になれば一人だし、朝起きても誰もいない。


 お昼を三人で取っていると外に雨が降り出した。今日は客入りが少なそうだな。と思い、


「午後は地下とかの説明もするわね。」

「はい!」


 雨脚の強い日だった。

そこから夕方まで急ぎのお客さんしか来ず、レジをゆっくり二人に教えられた。


 「それじゃあ、ちょっと言ってくるけど、急患が入ったら門番に言って、飛んで帰ってくるから」

「解りました。行ってらっしゃい。」


練習用のカルテを作り、お客が来ない間、二人でシミュレーションしているように言った。

私がいる前でだと恥ずかしそうでぎこちなかった。

そのほか薬の値段の巻紙にハンコで値段を入れる作業を伝え、私は城へ入った。


 また白衣を着たままで着てしまい、第三の門前で久しぶりに通行許可証を使う。

夕飯には余裕のある時間、建物に入るとオーギュームさんに声をかけられた。


「お疲れ様ですノクティス様、見習い二人はどうですか?」

「今のところは何とも、今日は客が少なかったので、帰ったら雇用形態についての話もしないといけませんし、」


廊下を進み、階段を上がり、また廊下、また階段、一つの部屋の前に止まるはで長かった。


「こちらがノクティス様の私室となります。メイドを呼んでまいりますので――」

「いいですよ。さすがにこの格好ではいけないので着替えるだけで、メイドを使うほどじゃありません。」

「かしこまりました。では、お食事の準備ができましたら呼びにまいります。」


オーギュームさんが部屋を出ていく。


 室内は絢爛豪華という言葉がふさわしいぐらいにきらびやかな部屋で落ち着かない。


 給湯室、お風呂場、トイレ、そしてクローゼットではない衣裳部屋があった。

ドレスの山は絶対着ることのない無駄の長物でおそらくほかの候補よりは少ないのだろう、

ところどころ開いている場所がある。

この開いているようなスペースだけで十分だと思ってしまう。


 私は無難な、ストレートなワンピースを選ぶ。

一枚上から羽織り、ひとまず、給湯室でお湯を沸かす。


 棚を見ると紅茶が山のように種類があり、さらにハーブティーやスパイス、コーヒーにホットチョコの粉もあった。至れり尽くせりだな。

これでミルクラウンもいたら最高だな。

と思いつつ、紅茶を入れる。

家で買っているミルクラウンがいつの間にか二羽に増え、気が付いたら卵を抱えていることに驚いたのはつい先ほど、家の中の案内中だった。

庭で放し飼いではあるが、ミルクラウンは野鳥ではないためどこかの家のペットが逃げてきたのかと思い、お客さんに聞いたりしたが飼い主は現れず、このまま増えても庭で畑作業がしたいという私の思惑とは裏腹にミルクラウン牧場になってしまう。


 この部屋の家具は豪華はベッド、隣にサイドチェストと化粧台があり、衣裳部屋へのドア、廊下となり、ベッドの反対側はチェスト、大きな花瓶があり、テラスのある窓。窓の前には小さなテーブルと一人掛けのソファーが一組置かれている。

ベッドのある側の向かいの壁にはこの国の地図が壁にかけられ、その下に廊下側から給湯室、飾り棚が三つ、浴室のドアで窓、窓の前にも飾り棚と机がある。

引き出しを開けると特になにも入っていなかった。

クリスタルの場合だと化粧台に入りきらない化粧水などを風呂上りにすぐ付けられるように浴室の前の棚へ入れたり、パジャマを入れたりすることもある。

タオルと一緒にお風呂場の棚へ入れる人もいるが湿気を吸うためパジャマは外の方が好きだ。


 地図の前、ベッドの向かいのスペースにはソファーにローテーブル。

テーブルに紅茶を乗せ、時間をつぶそうと思っていると座った途端にノックがされる。


「はい?」


何だろうと思いつつドアを開けると


「ゲラダ王子より、暇つぶしによかったらと論文をお持ちしました。」


渡されたのはすっかり参加できなくなっている会合が発行している論文誌。

ありがたいことに王子主催だった会合までさかのぼり、用意されていた。


「ありがとうございます。助かります。」


持って来たのはおそらく執事見習いと思われる男性、シルバと同じぐらいだろうか。


 紅茶片手に論文を読むこと小一時間、誰も呼びに来ない。

夕飯時は過ぎているのにどうしたのだろう。

朝も昼も軽いもののためお腹空いた。

見習いたちは何とかやっているだろうか。

雨脚は依然として強く、外の出る物は早々いないだろうがあまりに待たされるなら帰ろうかなと立ち上がるとノックの音がした。







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