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七つの国に架かる橋《加筆修正作業中》  作者: くるねこ
番外編 ノクティス
37/60

5

以前、9・10として掲載していた物になります。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。






 三時間ばかしの掃除を終え、アパートを出た。

排水溝に汚れた水を流して書類を持って一端屋敷に戻った。

執事がボケーっと暇なのだろう草むしろをしているのを見つけ、書類を渡しておこうと足を踏みだすと目の前に知らない光景が広がった。


三年前以来の遠くの風景に立ち尽くす。



 目の前をリクガメが歩き、スカート丈の短いご婦人が足場の悪い道を慣れた様子で歩くのに比べクリスタルがきゃあッと声を上げているところだった。



 「おい、どうした?」


肩を掴まれ瞬きすると目の前は屋敷の玄関に戻ってきた。


「あ、いえ、なんでもありません。今頃無事にナトラリベスに着いた頃かと考えていた物ですから」

「ああ、そうだな。寄り道してなかったらもう付いているだろうな。あそこは泥の上に道があるからズボンのすそが毎度汚れて選択が大変なんだよな。」


あなたの膝に着いた土埃も朴っておくと落ちなくなるから何とかしろ。

なんて言いたげに視線を送るとパンパンと叩き落としていた。


 「この書類、お願いします。旦那様のお名前で契約するのですよね?」

「そういってた。支払い用の通帳はもうできているから明日それと持って行ってきてくれ。」

「かしこまりました。これから家具選びと花屋さんへ挨拶へ行ってまいります。」

「その格好で?」

「この服装以外になにを着るんですか?」


年がら年中メイド服。

私服なんてパジャマしか持っていない。

幼いころは母が買ってくれてはいたが結局着ることなく、ほかの使用人の子供へあげてしまった。


「私服がないのは知っていたけど、外で暮らす服って何か用意できてるのか?」

「お給料をもらってから考えようかと、どうせ仕事中は汚れやすいのだと店主もおっしゃっていましたから」

「……これやるから服買ってこい。」


鍵の次は巾着袋を渡されるがこのタイミングで渡される物なんて察しが付くため受け取る前に触らない。


「結構です。私はこの服気に入っていますから、これで十分です。」

「その服はこの家の使用人の服で合って、お前の服じゃない。外で使用人が働いているなんて噂が出たら旦那様の評判にもかかわる。」


そう言われるとなにも返せない。


 手をつかまれ、手のひらを上に向けられ、強制的に巾着袋基、財布を渡される。

これで一着だけ安い物を買ってくればいいや。

何着買えなんて言われていないし、と、


「ありがとうございます。」


不機嫌な言葉で返してしまうのは自分らしくないとも思うが、今はそんな気分だ。


「言っておくが最低でも五着は買ってこい。」


見透かされていたのかとふてくされた顔をしているだろう自分に冷静に戻れと暗示をかけ、

「では、行ってまいりますのでこれをお願いします。」


と、バケツと雑巾を渡す。

執事はそれに引っこ抜いた雑草を入れ始めた。


 町に戻り、ふらふら進むこと三十分弱で花屋に到着した。


「あれ、ノクティスじゃないか。仕事は来月からだぞ?」


丁度一か月後からの勤務開始は相談済みだ。


「はい。無事クリスタルが昨日卒業しまして、今日から新居の準備に入ったのですがご挨拶がてら、仕事着についての相談を」


クリスタルは店番のためさほど汚れる仕事ではない。

店番に見目の良い娘を使うと客が来やすい。

特に男性が、なのでクリスタルは店番と早々に決まった。

もう一人、店長の姪が一緒に店番をするなり、交代で休憩に出るなどするらしい。


 私の仕事は主に裏方、仕入れた花の水揚げや、鉢物の植え替えなど、やることは多いが屋敷以外で、学校を覗いた場所で人と話した経験がない私に店長は店番に回したかったというが別に見目が良いわけでもない眼鏡娘をクリスタルのお守り役なんて給料の出ないような仕事をさせるために雇ったのであれば、接客の少ない裏が良いと希望した。


 なので、クリスタルの服はもう屋敷で用意してある。

あとは自分の物なのだが何を着るのがふさわしいがわからない。


「そうだな。今着ている服だと邪魔になることが多いからズボンが良いんだが、女の子にズボンを履かせるのはな……。」


この島の文化として女性はロングスカートで足を見せるのははしたなく、結婚し、夫に見せる以外ではまずありえないといわれている。

男性の服装はとやかく言われないが女性への目は厳しい。

さらにズボンなんて腰回りがはっきりとわかる服装もふさわしくないといわれているが


「私には奴隷印がありますのでズボンを履いていても労働者と同じ扱いです。」


奴隷なのに動きにくいロングスカートが許されるのは屋敷使えのメイドや主人に飼われているような奴隷ぐらいだろう。

ナトラリベスの第一王女はこの身の女奴隷を複数連れて歩くというし、その服装は貴族の令嬢の様だという噂だ。

それ以外の女奴隷は動きやすいズボンで髪も短いが帽子や頭巾に押し込んでいることも多い。


 そうなると働くのに髪は邪魔になるだろう。

切ってしまおうかと現在腰まで伸ばし、首の後ろで一つにまとめてある髪を肩に乗せて、どこで切ろうか人差し指と中指ではさんでいると


「せっかく伸ばしてんだから切らなくていいだろ。そうだな。荷物置きのロッカーがあるからそこで着替えてくれていい。男女別で用意あるから心配するな。」

「お心づかい、ありがとうございます。」


では、着替えることを視野に入れ、シャツを二枚とズボンを二枚、スカートを一枚用意すれば毎日選択することになるが何とかなるだろう。

はじめの一か月だけだ。大丈夫だろう。


 「よかったらあたしのお下がり着る?」


店の奥から出てきたのは頭巾をかぶってはいるが可愛らしいワンピースの女性。

私よりも年上だろうが、クリスタルよりは幼く見える。


「あなたが来月来る新しい人ね。あたしはリリアよろしくね。」

「ノクティスと申します。ともに入りますクリスタルともどもよろしくお願いいたします。」

「確かに接客には向かないわね。堅苦しいもの」

「リリア!」


店長に怒られてもリリアさんは楽しそうに笑っていた。


 お言葉に甘え、お古をもらうことにした。

大きな麻袋に入れられてきた満タンの服はまだ着られる物ばかり、おそらくワンシーズンか、二シーズンほど前の服がほとんどだろう。

私の趣味ではない物が多いがそれが我慢だ。


「こんなにたくさんありがとうございます。」

「まだまだたくさんあるから、働き始めたらまたいくつか持ってくるわ。いらない物はそのまま処分に出してくれていいから部屋の中洋服だらけで困ってるのよ。」


さすがスペールディア家に花をおろし、さらに複数の貴族からの贔屓のある店の看板娘だ。クリスタルほどではないがあふれるほど服があるようだ。


 花屋を後にし、一度アパートに服を置きに行くことにした。

そこに、


「あれ、まだこんなとこにいたの?」


執事がいた。

実は私、彼の名前を知らない。

見習いか執事としか呼んだことがない。

と、いうか執事とも呼んだことないかもしれない。


「花屋へ挨拶に言ったらたくさん服をいただきまして、屋敷よりも近いのでこちらに置きに来たんです。あなたはなぜここに?」

「大家さんの書類不備について話をしにね。にしてもたくさんあるな。どれも似合わなそう。」

「私もそう思いますがいただけるのなら感謝です。なので」


そう言って巾着を返した。


「いいのかよ。趣味じゃないんだろ?」

「仕事着ですからお古で十分です。あなたのお金を使う理由もありませんから心遣いだけ感謝しています。」

「あなた、あなたって名前知らないわけじゃないだろ。名前で呼んでくれよ。」


だから知らないんだよ。

なんて今更言えないため記憶を巡ってみるが父がなんて呼んでいたかなんて全然思い出せない。おかしいな。


「あなたで十分でしょう。名前なんて長いでしょうに」


自分もクリスタルも長いと思っている。

だからつい、そういってしまうが


「俺はギー、誰よりも名前が短いと自負しているんだが」


ああ、そうだ。

変な音の真似でもしているのかと思っていたあれが名前だったんだ。

今更気付く。


「ではギー、そこをどいて頂戴。荷物が運び込めないわ。」


名前で呼ぶとつい敬語もどこかへ行ってしまう。


「鍵開けてやるよ。」


そう言って、私のエプロンのポケットをあさり、鍵を出すと新居のドアを開けてくれた。


 ギーは屋敷へ戻っていき、私は本来の目的の家具探しへ出る。


 家具に関してはすでにクリスタルと相談済みで彼女は二段ベッドに憧れるというので部屋は狭いため要望を聞き入れた。

その代わり、シングルは今の半分だというとおどろかれる。

こっそり私の部屋のベッドに寝かせてみたが


「狭いけど、そんなに寝返りを打つわけでもないから大丈夫よね。」

「寝返りを打った時に落ちる可能性は柵のついたベッドを選べは済む話よ。」


と、いった会話をしたのは二週間ほど前だ。


 あとは物書き用に机といすが必要かと思ったが食事用に二人掛けのテーブルを置けばそれで十分だろう。

クローゼットとタンスで二人分の服も入るだろうし、あとは大きな家具は必要ないだろう。


 町の家具屋へ入り、私は固まる。

思っていたより家具が小さかった。

私の基準が屋敷にある物だったというのもあるが、私の部屋にはクリスタルが小さいころに使っていた勉強机と使用人は皆同じシングルベッド、クローゼットはなく、いつもハンガーに服着せ、壁にかけていた。


 これなら食事用に予定していたローテーブルを二人用のダイニングテーブルにしても部屋には十分入る。

小物置場のキャビネットや化粧台もおけるだろう。

私が驚くぐらいだからクリスタルはもっと驚くだろうな。

なんて思いながら家具屋の店主に欲しい物を説明していく。


 家具の搬入が三日後に決まり、あと必要なのは調理器具だろうか。

それとも外食の方が安く済むかといろいろ考えながら町を歩く。

物価は使用人たちから教えてもらっているが屋敷で見る金額よりもはるかに安い。

だからと言って給金が多いわけではないのだから、生活に支障をきたす買い物はできない。


 クリスタルに案内できるように道を覚えながら散策して歩く。

途中、やさしい声が聞こえたと思ったらそこには薬屋があった。

老夫婦が客と何やら楽しそうに話をしていた。











 最低限必要だろう調理器具をコックに聞き、食器とともにそろえる。

じゅうたんがシーツ、カーテンも必要でお店に向かい、近くにランプのお店を見つけスタンドライトを買った。

そんなこんなで準備に追われ、クリスタルの卒業式から三週間、旦那様とクリスタルを乗せた馬車が戻ってきた。


「お帰りなさいませ」


と、使用人一同で出迎えるとクリスタルはまっすぐ私の元まで来て手を取る。


「これ、お土産ね。」


そう言って渡されたのはピアスだった。

でも、私には穴が開いていない。

クリスタルもそれは解っていることだと思ったが彼女の耳に光るものを見て納得した。


「イヤリング良く落とすって言うでしょ。ピアスなら落ちにくいし、色違いにしたの。どおかな?」

「ありがとう。穴をあけたら言うわね。」

「待ってる。」


給料が出たらまずはピアスかと、服より重要なことができた。


 リリアさんにもらった服には当たり前だがズボンはなく、ロングスカートを数枚、切って縫って、見た目スカートと変わらないようなズボンを作った。

これならロッカーで着替えなくてもいいだろう。

あとはシミが付いて捨てると言っていたテーブルクロスで数枚頭巾を作っているとバンダナでもいいのではとメイドに言われ、また何枚か用意する。

このテーブルクロスは新居にも持って行って必要な時に作れるようにしようと荷物をまとめ、私の物はすでに運び込んである。

クリスタルの衣類や生活に必要な物も新しく後宮している間にタオルなどがないことに気付き、急いで買い足したのは一昨日のことである。


 今晩屋敷で過ごし、私とクリスタルは明日から新居で暮らすため、今晩は使用人も一緒にという、彼女の希望で立食形式で夕飯を使用人も混ざって取ることになった。






 翌朝、大きなベッドで寝られるのも今日までということでゆっくり寝かせていると


「どうして起こしてくれなかったの⁉」


と、昼前に飛び起きてきた。


「旅行で疲れているでしょうし、今日は引っ越しもあるけどあなたは特に準備する物もないでしょ。だから寝かせていたのよ。」

「人を厄介者みたいに言わないで」


 昼食を食べさせ、持って行く荷物の確認をするが必要な物があればいつでもとりに来られる。


 クリスタルの追加の荷物を持ち、今日は町娘風のワンピースのクリスタルを旦那様含め皆が見送りに出てくる。


「何かあればすぐに大家さんでも隣の部屋のギーやサリーに声をかけるんですよ。帰りが遅くなるようならノクティスと二人で寄り道せずに帰ること、掃除はこまめにしてくださいね。虫が湧くとこなんて見たことないでしょうからきっと卒倒されてしまうわ。ああ、あと…」

「そこまでだ。いつまでたっても出立できないじゃないか。」


クリスタル付きの最年長のメイドが心配で言葉が止まらな一方で旦那様は冷静にクリスタルを見ていた。


「馬車でも話したが生活に苦しくなってもそれは自己責任だ。ノクティスのいうことをよく聞き、収入に合った生活を送るように、男性を部屋に入れないように、それがいくらギーやサリーであっても緊急時以外は」

「旦那様、出立できません。あと、工事などで時々業者が入ることがあるそうなので男性を入れないというのは難しいです。」


旦那様は押し黙った顔をする。


「それじゃあ、行ってくるわね。ひとまず、一年ぐらいは帰ってこない予定だから」

クリスタルは手を振って門をくぐっていく。私もそれについて屋敷を出た。


 歩いて十分。

ヒールの足元のクリスタルは舗装されているとはいえ、レンガ道にもう疲れた様子だった。

「仕事用の靴はヒールの無い木靴だから歩きやすいはずよ。」

「でも木靴苦手、でもブーツになると暑いし」


ヒールのあるサンダルを履くことの多いクリスタルにとって靴やブーツは歩きにくい物ではあるが下町と呼ばれる庶民の生活圏を歩くことがなかったクリスタルにとってはヒールがある気にくい物だと今初めて知った。と、いう様子だった。


 「ここがアパートよ。」


一階には食堂が入り、二階に六部屋、三階に四部屋と大家さんの住居がある。

建物の横にある門を開け、階段を上ると防犯のためここにも鍵がある。

閉める度に鍵が閉まってしまうそうで、出入りには注意するように言われたことを伝える。

中に入って二階の一番手前にあるのがギーの部屋でその隣が私たちの新居だ。

さらに隣をサリー、馬丁が住んでいる。


 ギーが屋敷に住まない理由は知らないがサリーには家族がいる。

さらに妻と娘は下の食堂で働く大家さんの親戚らしく。

その伝手でギーもここに住んでいるらしい。


 鍵を開け、中に入ると


「わあー」


と、歓喜の声を漏らす。

使用人部屋を見ているためか庶民の暮らしはこんなものだと解っているようで文句は口にしなかった。


「入ってすぐにキッチンがあって、奥に浴室とトイレ、寝室と私室は解れてないから荷物をあふれさせないようにね。」

「多分大丈夫。」


そういいながらクリスタルはクローゼットを開けた。

中には町娘の服がぎゅうぎゅうに入っている。


「ノノの服は?」

「ベッドの下に箱に入れて押し込んであるわ。クローゼットもタンスもキャビネットも化粧台もクリスタルの物しか入っていないから好きに使って大丈夫よ。」

「ノノの荷物それだけなの?」


ベッドの下をのぞき込みながら聞かれる。


「着替えがあれば十分だし、化粧もしないし、クリスタルは休みの日に出かけるでしょうけど、私はお屋敷に行くぐらいしか出かける用事もないから」

「そう、何か欲しい物があったら言うのよ。二人で暮らすんだから」

「わかっているわ。そうだ。食事は作る? それとも下で食べる?」

「働き始めてからじゃないとそのあたりはよくわからないわね。でも作るなら食材を買いに行かないといけないのか。」


花嫁修業の一環としての習い事に料理とあったが主に作るのは菓子類で火を使うことは少なかったクリスタルは不安気な顔をする。


「コックに簡単な物は習ってきたからしばらくはそれで行きましょう。仕事がどの程度忙しいのかも店長の口でしか聞いていないし」

「そうね。じゃあ、お買い物行きましょうか。」


初期費用の一部として遠面の生活費はもらっている。

給料日までの一か月無一文というわけにはいかない。


「市場なんて初めて、楽しみね。」

「買うのは食品だけですからね。」

「もう、わかっているわよ。」


何ていいながらクリスタルは靴を履き替え、玄関へ向かった。


 市場があると言っていたが、そこには点々といくつか商店があるだけだった。


「あれ?」


二人で首をかしげてしまう。


 その後もいろいろ動き回ってみるが市場はなく、仕方なく花屋で聞いてみることにした。


 「市場は朝と夕方だけだもん。」


リリアさんがさも


当たり前でしょ。


と、いう顔で言うため知らなかったとは言えずにいると


「まだこの生活を始めたばかりのお嬢様たちには知らないことの方が多いんだよ。リリアさんが案内してあげたら?」


ギーと同じぐらいだろう年の青年が奥から出てくる。


「そうだね。店長! あたしちょっと出てくるからリーファに店番任せるね。」

「はいよ」


何て声が奥から聞こえる。


「いいんですかお店開けちゃって」


と、クリスタル歩き出すリリアさんに付いて行き聞く。


「平気平気、あたし給料出てるわけじゃないから、ほかで収入あって、ここはお手伝い。だからあたしが出られない日は店が開けられないから困ってたの。リーファはまだしも、ほかのみんな花屋なのに顔怖いから」


確かに以前来たときの奥から顔を出した人は厳つく、日焼けもしていて屈強な戦士の様だった。


「元奴隷も多いってのもあって店番任せるには顔怖いし、傷だらけだし、無口だし、の三拍子なわけ」

 「ほかの仕事って?」

「王家に個人的に花を生ける職人として週に三回とパーティーの時のテーブル花とかの用意もしているからなかなか忙しいんだよね。今日も朝から行ってきて、さっき戻ってきたところなの。多分店長、何か仕事でやり残したことがあることを思い出して出ていったんだろうな。なんて、思ってるだろうよ。よくやるから」


これを聞いて、クリスタルの目が輝く


「それにあたしが付いて行くことってできないんですか?」


なんて言い出すため止める。


「あなたはリリアさんの変わりに店番として雇われたのよ。一緒に行けるわけないでしょ。」

「そうだね。あたしも下っ端だから誰か連れていくわけにもいかないし、ごめんね。」

「いえ、出すぎたことを申しましたわ。」


 その後、町の散策をして、夕方の市場で食材をかってリリアさんと別れた。


「夕飯楽しみ」

「あまり期待しないでね。」

「でもキッシュでしょ。ノノが作るアップルパイもおいしいからキッシュもおいしそう!」


まだ作ってすらいないのに、と思いつつ、食堂横の階段を上っていく。








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