32
カルミナのマグマが止まったのはさらに数か月後の事だった。
その頃には仮のアクアムの国政は出来上がり、各国との連携も滞りなく進められていた。
徐々に変わっていくカルミナの気候に身体が慣れてきた頃、国内では第一王子ゲラダ様が王位にはつかず、アヌビス様に譲ると公表、民を驚かせた。
理由は明らかにされず、妻、ノクティスと共に城で白魔術師の一人として働くことになった。
今回の出来事をきっかけに島内では奴隷をはじめとした人身売買についての規制をする法案について話し合われ、その先頭にはバーバリ様が立っていた。
奴隷として島に入り、今までどこの国にも属していなかったグリゼオは蛇王アナ様のたっての希望と話し合いの末、ナトラリベスの民となる事が決まったが島内移動は自由。
各々が好きな国へ行き、生活している姿を見ているようになったのはさらに数年後の話である。
上空を竜王が旋回するカルミナ。
この日、国民にとって喜ばしい、アヌビス様の結婚式が行われた。
誓いの言葉に誓いのキス。
純白のドレスを身にまとった花嫁の背中には竜王を思わせる翼が生えていた。
この国は新たな歴史の光を明かし、まだ見ぬ道を進み始めた。
「サンクトゥス、今までの人生で自分の判断が間違っていたと思う事はないか?」
「そうですね。始めて貴方に会ったあの日、その顔を叩かなければこんな結末はこなかっただろうと思っています。それに関しては間違った選択をしなくてよかったです。」
「お前ってやつは…… まだ結末なんて来ないぞ。これからさらに長い時間を共に過ごすのだからな。」
すこし照れているその顔はとても愛おしかった。
「大おばあ様嘘ばっかり、ティアリサム山が噴火なんてするわけないじゃない。」
「そうだよ。竜王は一人なんでしょ。」
小さな子供たちに囲まれながら一冊の本を閉じる。
きらきらと光る灰色の髪がロッキンチェアに子供たちが触れる度に揺れる。
「アクアムが島だったなんてありえない。」
「ここにマグマが流れてたなんてもっと嘘」
楽しそうにキャッキャ騒ぐ子供たちの頭にしわのある男性の手が触れた。
「おばあ様、それでは行ってまいります。」
「宜しくお願いしますね。平和な島国である為に」
アヌビス様によく似た初老の男性。
彼の面影のある子供たちを抱き寄せ
「さあ、今日はこれから国際会議よ。他国の王子、姫様たちに挨拶をしに行ってらっしゃい。お父様とお母様のようにこの国の代表としてお行儀よくね。」
「さあ行こう。私の天使たち。」
初老の男性に連れられ、子供たちは部屋を後にした。
窓から見る国の姿が大分変った。
あれから百年以上の時がながれた。
竜の血が混ざるこの国の王族は長い時を生き、今では島のトップともいえる。
今後、竜王がいなくとももう、何の心配もない。
「アヌビス様、子供たちはいい子に育ちましたよ。もう少しだけ、見守らせてくださいね。あと少し、少しの時間だけ」
劇的に短い最後で申し訳ありません。
これにて本編完結となります。
番外編にゲラダとノクティスの結婚に至るまでの話を書こうと思うのですがその前にいろいろと書きたいものもあるのでしばらくお待ちください。
最後まで読んでいただきありがとうごさいます!




