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七玉館殺人事件flag7〜聞き込み:空西悟

「もしもし、空西? 俺。風祭だけど」

「おお、オッス」

 あっけらかんとした調子で電話に出た空西に、なんだか罪悪感を覚える。実を言うと、俺が一番疑ってんのは空西なんだよな。別に動機が思い当たるわけじゃないが、大津や尾頭に比べるとこいつは度胸据わってるし。

 でも、この落ち着いた様子を見ていると、予想ははずれた気がする。度胸が据わってる代わり、嘘がつけない性格は空西の最大の長所だ。人を殺した後にこんなあっけらかんとしていることはまずありえないだろう。

「聞いてくれよ風祭! 明日の練習について尾頭に連絡したらあいつ、『道着忘れたから参加できません』なんていうんだぞ? 合宿なのにあり得ねえだろ、いくらなんでも」

 お前、世間話はいいけどな、俺から電話かけたんだからとりあえずおれのよお兼聞けよ。

「悪い悪い、で、要件って何だ?」

「いや、さっきの事件について訊こうと思ったんだけど……」

「なんで風祭がそんな探偵みたいなことしてるんだ?」

 突然勘ぐられて背筋に冷たいものが走る。受話器の向こうから空西ににらまれたような感じだ。もちろん、実際はいつもの調子で笑っていたのかもしれないが、やっぱり多少でも犯人の可能性を考えていたのかもしれない。落ち着いて、さっき尾頭に言ったのと同じ言い訳をすれば大丈夫だよな。

「いや、警察への連絡担当だよ、全員の意見をまとめておこうと思ってな」

「何でお前なんだよ。そういうことやるべきなのは部長の俺だろ?」

 意外に鋭いな、空西。

「いやいやいやいや! 空西は結構ショック受けてるだろ。絶対。ほら、部長と顧問ってことで亀山先生とも俺達以上に交流あっただろうし?」

「狼牙さん。深呼吸です」

 相当言動が不審だったのだろうか、プーシャにたしなめられた。

「いや、それほどでもねえけど」

「何で人一人死んだのにそれほどでもねえんだよ」

 確かにそれほどでもなさそうな空西の声に、逆に勘ぐる。『何が起きても気分はへのへのカッパ』なんだろうか?

「もちろん俺は殺ってないが、動機ならある、からな」

 は? おいおい、冗談はよせよ。

「冗談じゃないさ。……そうか、風祭は知らねえんだな。亀山の裏の顔」

「裏の顔? どういうことだ?」

「まあ、一年の時から理系で部活以外で交流がなかったお前なら知らねえのも無理ねえな。だがな、亀山ってのは一癖あるセン公だったんだよ。俺だけじゃなく、大津や尾頭もそれなりの動機持ってるはずだぜ」

「なんだって?」

 俺は耳をそばだてた。あの先生が? 信じられないな……。

「まず、俺の動機だけどな。俺さ、高二の進級ん時、実は地理の単位が足りなくてさ。本当なら進級できなかったんだ。そン時に亀山が何とかしてくれるって言うから、俺、頼んじまったんだよ。そン時はまだ今のお前みたいに『いい先生』だと思い込んでたからな。だけどもな、高二んなってから、亀山は俺に金要求するようになってな。いわゆる『ユスリ』ってやつか? ま、困ってたけど後二年弱ぐらい耐えればいいわけだし、いざ家計が苦しくなったらやめるって手もあったから、もちろん殺しちゃいねえけどな」

 オイオイ、いきなり本格的な動機が出てきたぞ。

「じゃあ、他の二人の動機は?」

「聞いた話だが、尾頭はどうやらオンナがらみの恨みがあったらしい。好きな子を亀山にとられたんだとよ」

 尾頭のオンナ? 初耳だな。いったい誰だよ。

「さあな。俺は知らねえよ。本人に聞いてみればいいじゃねえか」

「嫌だよ!」

 殺人の動機としてはちょっと弱そうだが……。

「尾頭さん、実は恋に夢中になるタイプだったんじゃないです?」

 首ったけってやつか。それも尾頭のキャラと違うような……。

 しかし、こうもポンポン動機が出てくると、逆に俺が仲間外れみたいだな。大津はどうなんだよ。

「クラス違ったから良く知らねーんだけど、大津はセクハラ受けてたらしいな。理系に移った理由も暗記科目が苦手ってタテマエになってるが、実際は亀山から逃げたかったってのが大きいみてえだ」

 そうなのか。まあ、大津は胸こそないけどそこそこスタイルいいし、セクハラしたい気持ちも同じ男としては理解できるけど。

「お前、そんなこと言ってっと、次殺されるかもしんねーぞ」

「なんだよ空西、お前、大津の事疑ってんのか? 友達は信じないと」

 って、さっきまで空西疑ってた俺が言えたことじゃないか。

「んなコト言ったってな、お前も見ただろ? 亀山のダイイングメッセージ――」

 ダイイングメッセージって、尾頭と九厘さんが言ってたアレか!?

「ああ、だってアレ……」

 空西は口ごもった。

「うーん、気づいてないんだったらいいか。他に証拠も何もないし……。悪ぃ、なんでもねえ!」

「おい、どういう意味だよ、話せよ」

「なんでもねえって!」

 ガチャン! ツーツーツー……

 突然切られた。

「マジかよ、現場状況について何も聞き出せてないのに……」

「狼牙さんがどうでもいいこと聞き出そうとするからです」

 どうでもよくないだろ、ダイイングメッセージは。最後の力を振り絞って残したんだから。

「だからって同じことをいろんな人から何度も聞く必要はないのです」

 たしかにそうだけど、あんな言い方されたら誰だって気になるだろ?

「自分で考えればいいのです。空西さんにわかったのなら狼牙さんにもきっとわかるのです」

 と、言われてもな。


えーと、無駄に時間かかってしまいましたが聞き込みがようやく終了です。

あとは情報整理だけですが、読者の皆さんは犯人、わかりましたか?

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