表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

七玉館殺人事件flag12〜生還と別れ

 死ぬかと思ったぜ。

 俺は声を出すこともできず肩で息をしていた。どうやらガラスでかなり派手に切ったらしく、手が血まみれだった。

「尾頭は!?」

 声が出るようになるとすぐに俺は叫んだ。鎌で切られたんだ。大丈夫なのか?

「ここですよ」

 尾頭の声が聞こえた。……あれ? 無傷?

「自分で助けておいてなんですか、それ。トリック浮かばなかったんで断念しましたけど、やっぱり事件について嗅ぎまわってるって気づいた時点で殺しとけばよかったですね」

 いや、リアル殺人犯が言うと怖いからそういう話すんなよ。っていうか、お前、鎌で頭、真っ二つに……

「何の話ですか?」

 尾頭は不思議そうに首をかしげる。

「だから言ったのです。死神は現世のものに直接物理的な影響を与える事は出来ないのです」

 プーシャがおれの背後に立って言った。じゃあなんだったんだよ、さっきの鎌は!?

「これを切り落としたのです」

 プーシャの手の中には、死亡フラグが握られていた。布の色が白くなってるが。それって手動で切り落とせるのか?

「普段はできないのです。ただ、死亡フラグの色が白くなったときは切り落とせるのです。今までこれで死亡フラグを逃れた人は狼牙さんにも言った『その上を行く別の法則』をかち当ててたんですけど、尾頭さんに関しては助けたいっていう狼牙さんの思いが通じたみたいです」

 そうか、よかった。

「じゃあ、忘れないうちに狼牙さんの死亡フラグも外すのです!」

「ちょっと待った!」

 鎌を振り上げるプーシャに向かって俺は叫んだ。俺は死神から物理的な影響受けるだろうがっ! まかり間違ってここまで来て死亡とかはごめんだぜ。そっとやれ、そっと!

「これは失礼したのです」

 プーシャは改めて鎌で死亡フラグを切り落とした。多分そっとやってくれたんだろうが、俺の立場からしたらヒヤヒヤもんだったぜ。

「ちょっと、風祭君? さっきから独り言多いけど大丈夫?」

 あ、ああ、大丈夫だよ。

「じゃあ、私はそろそろ帰るのです。他のお仕事がたまってるのです」

 そうか。お前の仕事がたまってるってなんか嫌だな。とりあえず気をつけて(あの世に帰るのに何に気をつけるのか全く想像もつかないが)帰れよ。

「……狼牙さんが何で死神が見えるのか、わかった気がするのです」

 なんだよ、いきなり。

「きっと、狼牙さんは『生』をとても大切にしているのです。だから、死にたくないし死なれたくないのです。――白い紙の上の黒い点がよく見えるように、『生』を一生懸命に生きる狼牙さんだからこそ、『死』の象徴である死神や死亡フラグが見えたのでだとおもうのです」

 そうカッコよく表現されるとなんか照れるな。

「では。今度は狼牙さんの寿命がきたときにお会いするのです」

「――当分会わないことを願ってるよ」

 言い終わらないうちに、プーシャはあらわれたときと同じように、突然消えていた。プーシャが立っていたちょうどその方角の雨雲の隙間から、本当なら拝めなかったはずの朝日が顔を出している。

 ――もちろん死にたくはないけど、本当は、プーシャにはまた会いたいんだけどな。


次回は「七玉館殺人事件編」のエピローグ的な話になります。

その次から新しい事件に入っていけたらなあと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ