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七玉館殺人事件flag10〜証拠

「尾頭様ですか?」

 ああ。シルエットの背も胸も、あるほうにごまかすのは簡単だが、無いほうにごまかすのはまず無理だ。小柄なお前以外だったら、いくらなんでも先生が大津と思い違うことはない。それに、ビワ買ってきたのだってお前だろ。きっとダイイングメッセージを残しやすいようにしたんだろう。

「待ってくださいよ! 今日雷が鳴ってるのはたまたま天気予報が外れたからで……」

 尾頭、残念だがその釈明は通らない。今日は満月だ。満月は雷と違って月齢カレンダーから完璧に予想できる。

「だいたい、風祭先輩がいうアリバイだって、隣の部屋から聞こえて来た笑い声だけでしょう? それならテープでも……!」

 言うと思ったぜ。

「尾頭、なんで俺がテープでごまかされると思うんだ?」

「それは、風祭先輩は同じ時間にやってる連続ドラマを見てるから……」

「なんでそんなこと覚えてるんだ?」

 九厘さんの呼び出し方から、犯人が七玉館の壁が音を通すことを知っているはずだ。しかしこれは逆に大津のアリバイを産み出してしまう。

 だから、テープの可能性を残すために、この時間帯に大津と別の番組を見ている俺を隣の部屋にしたんだろ。

 さすがに連ドラが野球中継で中止になるのは予定外だったみたいだけどな。

「そんなのたまたまですよ! 証拠はないんでしょう?」

 証拠は今のところない。だが、どこにあるかは見当ついてる。

「け……見当?」

「尾頭の立場から予定外だったはずのことが、連ドラの中止の他に二つある。ひとつは、合宿場所が無人島であるにも関わらず――」

 言ったところで突然銀色の円盤が俺めがけて飛んできた。慌てて交わす。

 壁にぶつかって跳ね返り、九厘さんの手元に戻ったその円盤は――お盆?

「私がいるので無人島ではないんですけど」

 九厘さん、すみません! っていうか、どこでそんな必殺技チックな特技を身につけたんですか!? 危うく死ぬところでしたよ?

「――とにかく、それなのに大津がミニスカートをはいてきたことだ。

 さすがにスカートは用意してなかったお前は焦ったはずだ。だが今までの推理でわかるとおり、この事件のトリックは実行できる日がかなり限られる。今更中断するわけにはいかなかった。だから大津とお前が確実に共通で持っている道着を着て犯行を行った。

 そしてもう一つの予定外だったことは、この嵐だ。

 たぶん返り血のついた服は部屋の窓から海に捨てる予定だったんだろうが、窓を開けたら雨が降りこみ、音で隣の部屋の大津に気づかれる可能性がある。だから、いまでも持ってるんじゃないのか? 帰り血が付いた道着をな!」


「ご名答です」


 力ない答えが返ってくる。今まで推理小説なんか読むと犯人を追いつめるのってきっと気持ちいいだろうなと思っていたが、実際に経験してみると軽い罪悪感すら感じるな。ああ、逃げたい。でも死亡フラグまだ消えてないみたいだし、逃げたら盛大にこけて頭打って死にそうだから我慢。

「尾頭、何でこんなことを!」

 空西が叫ぶ。確かに先生を殺した動機に関しては空西が言っていたけど、大津に罪を着せた理由がわからねえよな。

「――大津先輩が、好きでした」

 尾頭の口から出た言葉に、俺は一瞬耳を疑った。


とりあえず、トリックまで終了しましたので、

純粋に本格ミステリーを求めて読んだ人(タイトル的にいないとは思いますが)で、

人情話とか動機とかどうでもいいよって人にはここで完結ってことで。

まだまだストーリーは続きますよ。

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