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☆六等星★RUN AWAY☆  作者: 業務用☆ワセリン
純白の焔姫《ジュンパクノホムラヒメ》
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第2話 運び屋ジョニー②

黒髪長身で端整な顔立ちは、青龍刀を下げるには少し整いすぎていた。そのミスマッチが余計に目立つ原因だ。が、そのお陰で青龍刀は威嚇の意味を最大限に発揮する。


「…三日も過ぎてるらしいけど……待ってるのかなお客さん。」


ジョニーは優しい…否、商売根性だ。そしてプライド、運び屋としてのプライドがある。さらに、運び屋は主に裏仕事なのだから、信用こそが全てだ。三日遅れても、現れたか現れなかったかでは信用の落ち方が違う。

待ち合わせの港酒場、〈ボロいローブと白い髪が目印〉。本当にそんなんでわかるのか…甚だ疑問だ。どんな汚いバァさんだろうかと考えつつ酒場に入る。ジョニーは服装と青龍刀が目印だと言い渡してある。

ドアを開ける。木の軋む音…ドアではない、床板だ。強く踏み込まれた木の床が、強引に湾曲して軋む音。瞬間、鼻先から伝わり後頭部を貫く衝撃が、店の外へジョニーを吹き飛ばす。


「遅い!何やってたの⁉︎ジョニー‼︎」


ジョニーは目を疑った。そこにいるのは綺麗な白い髪をクルクルとまとめ上げ、汚いローブをまとっても隠せないあどけなさの残る可愛い顔を怒らせた幼馴染だった。


「…ローナ‼︎なんで…ボロいローブと白い髪…白い髪ねぇ…」


老化による白毛だと思っていた。しかし、すぐここにきた目的を思い出す。


「依頼人はローナなの?」


「ええそうよ。さっそくだけど……なんでも運ぶのよね?」


「あぁ。懐かしのローナの依頼とあれば、なんでも!って言ってもヤクだとか死体だとかを運べって言われたら、ローナが落ちぶれたと知った俺が傷付くからねぇ。」


「考えようによってはもっとヤバいわね……私を運んで。」


「?…へ?」


「私、家出するの。」


「…尼さんになるの?」


「それは出家。」


「焼くと美味しいお魚」


「それはホッケ。…じゃなくて家出!私は自由が欲しいの!」


「…その年で思春期?今いくつ?23?親御さんに迷惑かけんなよ!」


「…私は、政略結婚なんてしたくないの!私は…私は!」


「ちょっと待て?政略結婚…て、お前そんなにいいお家柄だっけ?俺と知り合ってしばらく一緒旅したのは覚えてるけど、うちの船に乗ったのは密航だったよな?三年くらいも密航してこの国に届けて…」


「家柄って…あんたね…私はカローラ・スターライン。スターライン王家の第六王女よ。」


「…嘘だろ…絶対嘘だ。今のパンチは長年鍛え上げたボクサーのアッパーばりに鋭かったぜ?」


「護身用に…習ってたのよ…私ね、末っ子だけど格闘術で兄姉には負けないわよ?もちろんあなたにもね。」


「肉弾戦最強でも、ってさ。こんなチンピラだらけのところでそんなこと言い出すからさ、集まってきちゃったじゃない。」


カローラが周りを見ると、辺り一面魔導小銃を持ったチンピラに囲まれている。皆金のないもののようだが、魔導小銃を売って儲けることは考えなかったのだろうか。


「ジョニー…その青龍刀は…あれよね。昔から持ってたあのヤバいやつよね?絶対使だちゃダメよ。」


「わかってるって、それにこいつらなら、魔導小銃持ってもエクスカリバー持ってても『ひのきのぼう』で余裕っしょ。」


「私はモーグリ人形欲しいわ。」


「逃げんのかよ。まあでもそうだね。この人数を殲滅はダルいし、適当に切り開いて逃げよっか。」


ジョニーが右手をあげると、手の甲の刺青が光り金属音とともに手の中に短剣が現れる。白銀に輝くやいばと、白い柄に赤いチェーンの装飾が施された簡素でいて見惚れるような短剣だ。


「短剣・鋼鉄の処女(メタリカーナ)。」


「何度聞いても趣味の悪い名前よね。鋼鉄の処女って…誰のことかしらね!」


お前(モデル)はもう経験済みか?」


「んなわけあるか‼︎てか…あんたもでしょ!」


「んぁ⁉︎まぁな。」


軽々しい口調と反して、その剣戟は重く鋭かった。魔導小銃は銃身を切断され、放とうとしていたものは爆発した。


「まぁ、頼りにはしてるわ!」


カローナは両手を広げ、平を後ろに向ける。すると、両手に赤い光が絡みつく。カッと強く光ったかと思うと、ジャラリという音を出した。


「鎖分銅・鋼の薔薇(アイアンローゼン)。」


腕に絡みついた真っ赤な鎖。カローナが右手を振り上げ、正面に振り下ろす。分銅はジョニーの後ろにいた男の魔導小銃を粉砕、男を絡め取った。その男を重りに振り回して周りのチンピラを蹴散らす。

いつの間にか2人は背を合わせて構えていた。取り囲むチンピラが一斉に魔導小銃を構える。刹那、ジョニーが構えた右手を大きく振った。最前列にいたチンピラたちの薄皮を切った。直後、彼らはバタバタと倒れた。表面的にはなんの問題も無い、問題は体内にある。頸動脈が縦に裂かれたのだ。裂いたのは己の血液中の鉄。

鋼鉄の処女(メタリカーナ)の持っている[呪い]だ。切られた者の体内の鉄分を固められる。ジョジョのメタリカとの違いといえば、形を選んだりできないということ。尖った鉄の結晶を作るだけだ。が、動脈の強い流れに押され血管を裂いた。


「悪性呪術[メタル・イン・ブラッド]…金より命の惜しいやつは帰れ。」


そう凄むジョニーの後ろで、カローナが嘲笑う。


「そんな地味で陰湿な呪い見せても分かんないわよ。威嚇はね、こうやるのよ!」


カローナが鋼の薔薇(アイアンローゼン)を振り回す。グルグルと回っていた分銅に焔が灯る。その分銅を眼前のチンピラに叩きつける。と、爆音とともに火柱が上がる。周りにいたチンピラ数十人を巻きこみ、消し炭にした。


「悪性呪術[フレイム・ローゼン]…炭になりたい奴から御出でなさいな!」


「好戦的だな焔姫ほむらひめ!」


「昔のあだ名よ!あの頃はちょっと中二病こじらせちゃったの!それに今は焔だけじゃないのよ!」


中二病をこじらせただけで、一晩で敵軍を焼き払えるわけはない。そうツッコミを入れたいが我慢した。消し炭にはなりたく無いからだ。

カローナがまた鋼の薔薇(アイアンローゼン)を振り回すと、今度は白い冷気が分銅を覆った。適当なチンピラに投げつける。すると音を立てながら冷気が周囲のチンピラを包んだ。分銅を引くと冷気も消えた。そこに残っていたのはチンピラ数人の凍った死体だ。


「どう?」


「こえーよ。」


「でも、まだチンピラいるわね。」


ここで1つ、2人の誤解を訂正しておく。彼らはチンピラではない。ホームレスに近い存在で、普段は下水道に住んでいる。彼らにはもう何もないのだ。金も家も家族も恋人も誇りも、もう何もないのだ。死ぬことに恐れはないのだ。

この異様な雰囲気からそれをなんとなく感じたジョニーはカローナに声をかけた。


「合図したら、俺の前に道を開けてくれ。さっさと逃げよう。」


ジョニーは鋼鉄の処女(メタリカーナ)を前方のチンピラの心臓に刺す。すると大量の血が噴き出した。それを浴びた周りのチンピラが血を吹き出した。


「[メタル・イン・ブラッド]は感染する!今だ、カローナ!火判!」


「私はラビじゃありません!」


火柱はジョニーの前方に伸びて行き、残ったのは焼けた道。そこを駆け抜ける。呪術感染により、周りのチンピラは2人が駆け抜けるより先に死んで行く。


「これなら私、また開ける意味あった?」


「カローナのお陰でこの状況だ。」


「それどんな仕組み?」


「これで切ると呪いが流れる。体内にね。それが血を固める。その血を浴びた奴は、浴びた血中の鉄結晶で傷が付く。そこから呪い(ウィルス)が流れる。ここまではいいね?で、この呪い(ウィルス)は燃えると死ぬ。そこで燃えないように火から離れた方向に飛び出す。結果として、皮膚を突き破り他人に感染するんだ。それに、この本体である鋼鉄の処女(メタリカーナ)から10m離れても死ぬから、二次被害の心配もない。」


「へぇ〜、で、どこに向かってるの?」


「お世話になってる家、そこで船の準備が整うまでお世話になる。匿ってもらうんだよ。見た感じ、そういうのを助けてしまう人みたいだから。」


「悪い奴ね?」


「海賊船で生まれ育った運び屋さ、悪以外あり得ないだろ?」


ジョニーは悪どく笑った。悪い顔をしているが、カローナには感じ取れた。『ジョニーの性根は悪じゃない』と。

しばらく走ったのち、2人はリック家に着いた。カローナは政治に全く参加していなかったこともあり、国民はその顔を知らない。リックさんはカローナのことも暖かく迎えてくれた。勿論、スターラインの名は隠した。

〈いつか使うかもしれない(裏?)設定集〉

♦︎現王、ナーガ・スターラインには側室が10人いる。

♦︎1ジェヌ=120円(ジェヌ=オーシャニアの通貨)

♦︎魔導科学製品(軍需品以外)カタログ[税抜き価格]

○魔導飛空機(小型[52万ジェヌ]中型[78万ジェヌ]大型[99万ジェヌ])

・どれもこれもマジ速い。

○魔導バイク[18万ジェヌ]

・多少の滑空機能がありかなり頑丈。

○魔導車(乗用車[38万ジェヌ]ワンボックス[51万ジェヌ]軽トラ[76万ジェヌ]トラック[85万ジェヌ]ヒノ●ニトン[?])

・給油の必要がなく、日光や風など、自然にあるマナを燃料とする。その他の性能は同じ。

○魔導チェアー[6000ジェヌ]

・めっちゃ気持ちいい。寝ると、自動で毛布をかけてくれる。

○魔導オ●ナドール[99万8700ジェヌ]

・超一流風俗嬢のテクニックと処女の様な穴と純朴さ、持ち主の望む姿を併せ持つオ●ドール。1番の売れ筋商品。

♦︎現実に存在する科学などは普通に存在している。暗黒界と魔法が存在していた場合の、リアル世界と想定して世界観。

♦︎魔結晶クリスタル魔薬ポーション等の魔導科学製品なしに魔法を使えるのは、星の加護を受けた王家の血筋のみ。

♦︎見つかってはいないが、実はチョコボが生息している地域がある。ジェノバも。

♦︎オーシャニアは世界の中でも特に魔導科学の進んだ先進国。

♦︎オーシャニアのほかに[ファルディアラ帝国]も星結晶クリスターを所持している。

♦︎星結晶クリスターとは、魔結晶(クリスタル)にはない[星の魔法]と[星の呪詛]があり、星の呪詛に耐性のある者のみが[星の魔法]を得られる。その魔法を得たものが次期王となり、国を導く。耐性があるものは一世代に1人しか生まれない。

♦︎星の魔法は星結晶クリスターそれぞれで異なっている。

♦︎星結晶クリスターは本来1つの星に1つのみ。よって、どちらかの星結晶クリスターは[月の星結晶クリスター]だと考えられている。

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