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☆六等星★RUN AWAY☆  作者: 業務用☆ワセリン
純白の焔姫《ジュンパクノホムラヒメ》
1/3

第1話 運び屋ジョニー①

六等星はただ遠くにあるだけで、実は一等星より大きくて明るいものだってある。遠くにあるだけで、その方に気付けない。人と星は似ているような気さえする。近づいたり離れたり、ぶつかったり、合わさったり。

蒼く澄み渡る空、水平線で空と交わる碧く深い海。その海岸から山岳地帯まで続く広い平野には、漁業と貿易の盛んな国[オーシャニア王国]がある。オーシャニア王国に面する壮大な海の名は[クロートパーズ海]。東から西へと続く海岸には河口で区切られた5つのエリアがあり、東から順に[蒼玉国境海軍基地サファイアボーダーネイビーベース][東真珠海岸イーストパールビーチ][中央貿易港セントラルトレーディングポート][西真珠海岸ウェストパールビーチ][紅玉国境海軍基地ルビーボーダーネイビーベース]となっている。


蒼玉国境海軍基地は正式名称で、通称は蒼玉基地サファイアベースと呼ばれる。名前の由来は、「西海岸の紅玉ルビーに対して」というものが1つ。それと、「いつでも海面が蒼く澄んでいて、ほとんど荒れることのないことのないこと」の2つだ。ここは海沿いに隣の弱小国家[ブルークレイ公国]との、国境を守る基地でもある。


次に東真珠海岸。通称、東海岸イーストビーチ。ここの海は、海に入るとすぐ深くなっており、ここにしか生息しない魚などもいるため、各国の釣りバカが集まる。また河口付近の村では、伝統的に鯨の追い込み漁が行われている。反捕鯨団体オーシャンシェパードからはよく嫌がらせを受けるが、ここの鯨肉は世界一とすら言われるほど評判の名産品だ。にも関わらず、一年に取れる鯨の頭数は決まっているため、かなりのレアグルメとなっている。


次に紹介するのは東の紅玉国境海軍基地。通称は紅玉基地ルビーベース。名前の由来は、赤潮だ。ここは毎年大量のプランクトンが沸く。その為、毎年赤潮が起こるのだ。そして、国境と言いながら、実はこの隣に国はない。ここは人界で最も西にある海岸だ。が、蒼玉基地よりも危険の多い基地である。国境の向こう1キロは草原が続いている。が、その草原より向こうは人の住めない環境となっている。どういうわけなのか、その草原には緑の植物はひとつもない。草と言いながら、葉緑体を持たず、紫色の葉を潮風になびかせている。年に一度赤潮が発生した翌日は、それらの葉が真っ赤に染まり上がっている。海水を吸って生きている、というのが現状での理解である。さらにその草原の向こうに広がるのは、暗黒海ダークオーシャンと呼ばれる荒れた海。年間、晴れることのない海だ。常に雷雨と暴風、それに加え、他には存在しない海洋類。数多の怪物、海獣、魔獣が跋扈ばっこする魔の海域である。この海域には、毎年最新の魔導科学を用いた無人探査艦を送るが、帰った試しはない。


次は西真珠海岸。通称、西海岸ウェストビーチ。ここは沖までなだらかに海底へと続いており、波も穏やかで、観光名所である。東側の河口付近は所有地で、ヌーディストビーチになっている。料金はとらないが、ここの海では、布一枚巻くことも許されない。それでもここには、毎年多数の男女が訪れる。そして、このヌーディストビーチが、西海岸で一番治安がいい。


そしてここは中央貿易港。通称、中央港セントラルポート。この国の海路の貿易は、全てここで行われている。また、この海岸にある街はこの国の首都へとまっすぐ続く水路がある。街にぶつかる前に2つの別れている。この水路はは主に交通に用いられており、夏の間にはボートによる直線レースも行われる。


その水路を下る貨物船がある。水夫かこは至って普通の一般人。魔法も使えなければ、土地も金もない。代々この水路で貨物船による運搬業を営んできた家系の生まれで、妻はいない。しかし、今結婚を前提に付き合っている女性がいる。プロポーズの指輪を買うために、今は少しでも金が欲しいのだ。そんなところに大金の貰える仕事が舞い込んできた。その仕事で、彼は1人の女を中央港の港町[ナーガ]に運んでいるのだ。


「お客さん、お客さん。」


ひそひそ声で、荷物にかけてある布をほんの少しめくる。と、綺麗な白い髪の女が応答した。


「ついたの?」

「はい、ここから少し行くと検問があって…荷物は全部調べられます。麻薬程度のものなら騙せるんですが、流石に人はちょっ…と。」

「わかった、じゃあ…そうね。適当なところで降ろしてちょうだい。わかってるだろうけど、このことはたとえ彼女にも話してはダメよ。」

「へい!分かってます。」


そう言って水夫は、船を近くの岸につけた。女は目立たないように岸に上がると、颯爽と歩き出した。


「はぁー、一体何だったんだろうな。あんな美人さん、きっとどこかの令嬢だろうかね。きっと政略結婚が嫌で家出したとかだなぁ。」


水夫の予想はかなりあっている。違うのは令嬢というところ。正しくは王女だ。このオーシャニア王国の第六王女[カローナ・スターライン](23)。王女といえど第6番目、政治の世界には入れない。また、自由もない。王家の権力拡大の為に、政略結婚させられるだけのはずだった。しかし、カローナは自由を欲した。結果、家出したのだ。カローナは国を出ようと考えていた。この国の中で、国軍の追っ手から逃げ切るのは難しい。ならば、貿易船で外に行き、適当な国で新たに生きようと考えていた。幸いにも、カローナにはスターライン家の血が流れているおかげで、ある魔法が使える。そこいらの盗賊に負けることはない。カローナはひとまず港に向かった。



その頃、東海岸にて。


「おぉーーーい!きてくれー!やべーよ!」

「なんだな?」


釣りをしていた漁師が、人を釣り上げた。サラサラした綺麗な黒髪の青年で、年の頃は25くらいであろう。瞳の色も黒で、背は170前後。黒のスーツズボンに白いブラウス、灰色のベストと赤のリボン。幅の広い、東洋のものと思しき刀。髪は顎の上くらいまで伸びている。そして、両手の甲に十字の丸で囲んだ刺青がある。


引き上げられた青年は、ひとまずその漁師の男の家で介抱することになった。一人娘のニーナ(17)が様子を見に部屋に入った。まだ眠っているようだ。外傷はないが、溺れていたようだ。濡れてしまった服は乾かし、今はローブを着せている。


「このお兄ちゃん…かっこいいなぁ。うちのパパとは大違い。あぁーー、こんな彼氏ほしいなぁー。」

「なってあげようか?」


青年が口を開いた。


「きゃ!目ぇ覚めたの?」

「うん…」

「…いつから?『彼氏欲しいなぁー』から。」

「……はぁ。…パパ!ママ!目ぇ覚めたよ!」

「本当か!」

「あら!」


助けてくれた漁師と、その妻が駆けつける。


「あんちゃん!気分は?腹減ってねぇか?」

「はい、気分はいいですけど、ペコペコです。」

「じゃあそうね、くさやでも焼こうかしら。」

「くさや?何ですか?それ。」

「東方の国の食べ物でね、とっても美味しいのよ。」

「やめてよママ!あれ美味しいけど、それ以上に臭いじゃない!また異臭騒ぎ起こすつもり?」

「でも、皆さん…召し上がって貰ったらとても喜んで、許して下さったわよ?」

「あたし、学校でからかわれたんだから!」


と、漁師が青年に尋ねる。


「あんちゃん、名前は?どこから来たんだい?」

「あ、そうだ!僕はジョニーです。ジョニー・クラウン。生まれは分かりません。旅を続けているので故郷もないです。」

「そうか!俺はリックだ。こっちは妻のハル。よろしくな!」

「よろしくね。」

「…はい。奥さん…極東の島国の方ですか?」

「えぇ、そうよ。よくわかったわね。こっちの方の人って、あの辺の地域の人は見分けつかないのに。」

「いえ、僕の師匠みたいな人が中華國チャイネアの人だったんです。それでよくあの辺は行きました。懐かしいです。」

「うふ、喜んでくれたなら嬉しいわ。」

「…ところであんちゃん。何してる人だい?あの刀…あれはハルにも見せてちゃんと確認したから言えるけど、中華國の青龍刀だ。あんな物騒なもの持った男が海に現れた…言いたいことはわかるか?」

「海賊…でしょ?違いますよ。私は運び屋でして。金次第では暗黒海までだって運びます。そんな仕事柄、危ない目を切り抜けるための護身用です。それに、見た目の怖さから盗賊には会いにくいので、お守りみたいなものです。」

「成る程な、運び屋か。よかった!仕事柄、海賊は大嫌いでな。」

「ねぇジョニー、旅の話聞かせてよ!」

「えっと…」

「私はニーナ!」

「ニーナちゃん!よろしくね!…どんなのがいい?」

「どんなのがあるの?」

「海に愛された女の話とか?」

「面白そうね!それにして!」


ハルとリックは部屋を出た。料理の準備だろう。ジョニーは話を始めた。


「昔々、カーナという村がありました。その村にはアランシーという、綺麗な青い髪の娘が……」


ジョニーは身振り手振り話を紡ぎ、ニーナはその世界にどんどんと引き込まれた。そして話が終わり、ニーナはファーと息をついた。ジョニーはそれを見て満足そうな笑顔を浮かべる。


「どうだった?」

「すっごーーーく興奮した!それって作り話よね!」

「いや、僕の見たまんまの出来事。一切の脚色なしだよ。」

「海って凄いのね!じゃあねじゃあね!私もこの国で有名な昔話してあげる!」

「うん!」

「星々の加護を受ける王様の話。昔々、エドガーという青年がおりました。エドガーは剣の才能があり、15の時に魔獣を退治しました。皆は彼が剣に愛されていると言いました。ですが、実は違います。彼は星々の加護を受けているのでした。彼は幼い頃から夜空が好きで、いつも星を眺めていました。そして、星々のに声をかけるのです。その内彼には、星々の声が聞こえるようになりました。そんなおり、村長の娘が盗賊に攫われたのです。盗賊は村を焼き人を殺し、金を奪って行きました。奇しくもエドガーは村を離れた丘で星々と会話をしていましたので、殺されなかったのです。村から火の手が上がりそのことに気付いたエドガーは、村に駆け戻ります。そこで虫の息の村長から、娘が攫われたと言われました。ですが、エドガーには盗賊の居場所は分かりません。それに倒せる力もありません。好意を抱いていた村長の娘を、助けたくてもできない。途方に暮れていると、星々が声をかけました。『エドガー、盗賊は南の森で今は宴をしています。もう少ししたら、娘は明かされてしまうでしょう。あなたは我々の声が聞こえる特別な存在。貴方に星々の加護を与えます。さぁ、その剣を持ち娘を助けなさい。』エドガーは剣を手に駆け出しました。ですが、森まではとても遠い。これでは間に合わない。そう思った途端、体が宙に浮き高速で森に向かいます。これが加護なのでしょう。森に入ると、盗賊の宴の明かりが見えました。目を凝らせば、盗賊の長らしき人物が服を脱いでいます。焦ったエドガーは剣を投げました。するとその剣は流星のように飛び、盗賊の長の頭を弾き飛ばしました。エドガーが現れると、盗賊たちは恐れをなし、散り散りに逃げて行きました。その後、娘と結婚したエドガーは他の村に住むことにしました。隣の村に行くと、丁度盗賊が襲っているところでした。その盗賊たちを追い払ったあと、エドガーは思いました。盗賊だけやそれに魔獣から人々を守るには、どうしたらいいか。星々のに問いました。すると星々は、この辺の村をまとめて国をつくり、その王になれと言いました。言われた通りにしていき、エドガーは国を立てました。それがこのオーシャニアです。」

「…それって事実だね。」

「えぇ、建国の話よ。」


と、そこにハルが入ってきた。片手にはおたまを持っている。そのあたまの中から美味しそうな匂いがする。


「はい、味見してぇ。お口に合うかしら?」

「…ング……これは?」

「味噌汁。…フフフ、私の故郷のおふくろの味よ!」

「とても美味しいです!体の芯からポカポカしてきて…あったかい味ですね!」

「あら!味噌汁を飲んでポカポカだなんて、綾波みたいね。フフ…よそっちゃうから、貴方も着替えておいで。その服じゃ、食べにくいでしょ?」

「…もう、乾いたんですか?」

「もうっ…て、貴方、三日間も寝てたのよ?」

「…へ?」


ジョニーの口角がひきつる。


「ヤッベェェェーー‼︎仕事すっぽかしタァ!ドウシヨー‼︎」

「仕事って?ジョニー何の仕事なの?どんなの?」

「運ぶものと行き先は、その場で言うからって仕事で、ものすごい大金を貰ってるんですよ!前金だけで50万ドーラ…仕事の後に100万ドーラ。」

「…あらまあ大変。味噌汁飲んでくの?」

「はい、いただきます。こういう金の出し方する客って大概堅気じゃないんですよ。ヤクとかなら、僕らは使わないので…こういう時って盗品とか、魔導結晶マナクリスタルとか、前にあったのが生命結晶ライフクリスタル…その名の通り、人の命を抽出して結晶化したものです。」

「そんなの何に使うの?」

「大体良くあるのは、ヤーさんの親びんの魂を新しい身体ボディに入れるとかなんですよね。あぁーー、マズったなぁー。暫くここに止めて下さい。三日もあれば居場所はバレるので、襲撃に備えて守ります。一応、これは僕の不手際なのでお礼はいりません。」

「いえ、お礼と言ってはなんだけど、ご飯は出すわよ?」

「あ、じゃあお言葉に甘えます。でも、今は味噌汁を食べたら巡回に行ってきます。」


ジョニーはリック家で団欒したのち、青龍刀を腰に下げて街に出た。

ジョニーはジョニー・デップからとりました。[ディ●ニー映画に出てくるジャックを演じる]ジョニー・デップからとりました。

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