呪術師(見倣い)、今後について
転生者として自覚し、呪術師見倣いになると決まった時、今日の所は寝ろと言われた。準備に時間が掛かるし、僕に色々と施したから老体に応えるそうだ。
ここは時の流れが、僕達が居た外界と、この場所は結界が隔ててる為大きくずれている。結界は透明で、その中の時間は早く、空は青くても実際には夜になるまで経っていたらしい。
夜の時間になるまで、僕は死んでいたからまだ分からないけど。これから長い時間を体感するんだろう。
それと別に、気がかりな事がある。
「レイス」
〝何だ〟
『レイス』の扱いについて、今後どう接していようかと悩んだ。
あの時、グラン(呼び方は暫定的に)老師は、自分の【死ノ呪イ】と対極となる【生ノ呪イ】を施したせいで、魂が二つに分離した。これは想定内だったそうだ。
方や【死ノ呪イ】を受けた魂は『レイス』として、もう片方は【生ノ呪イ】を施された魂『来清 春真』として、あやふやだったレイスの存在を極端に分けた。これにより、死者はレイス生者は僕だ。
そこで問題があったのが、生まれ持った呪いは僕の魂を喰らい尽くそうとしたけど、それを老師が対極となる呪いを施した。
その後に残ったのが、双方の主導権問題。
「僕からの提案は、定期的に交替して活動するって言うのがあるんだけど」
〝そんなの、俺だった時、人との接し方が駄目駄目だから面倒だ〟
「いや、慣れろよ」
そもそも、レイシアだったレイスが一番初めの人格で、僕自体は記憶としての知識しか無かった。後天的に、僕としての人格が目覚め、完全に静観を決め込んでいた。
その時までは全くレイシアは気付かなかった、けど、二回死んだ時にいよいよ介入せざる得なくなった。理由は奴隷商人に拾われ、過酷な教育を受けさせられたから。それを覚える為、レイスに代わって表に出た。
記憶は一部欠損したけど、人格はそのままだった。
だけど、一度表に出た影響で、人格と人格の混在が発生した。どうにかしようとした矢先に、また死んでしまい、今度はどうしようもないくらいにグチャグチャになって、ただの奴隷のレイスになった。
「じゃあ多数決だ。スロウス、ラース、僕達は二つの人格に分かれてるんだ。普段はどっちが表に出た方が良い?」
今まで沈黙していた二人に訊く。沈黙していた理由は、グランが黙らせたからだそうだ。
『『レイスより、ハルマがずっと良い!』』
「……」
〝な? そっちが最善だろ〟
『そもそも、レイスは異常! ひたすら殺す事を楽しんでるし、こんなの仮面被っても危ない人だよ!』
〝……ぁあ゛?〟
『オマケに、認めてるのに止めねぇってのが質悪いぜ』
「あ~……なるほ━━━テメェ等好き勝手言いやがるな!?」
『戻った』
『うお、やべ』
ハルマは、主導権が入れ替わる事に対する抵抗を一切してないので、容易にレイスと入れ替わる事ができた。
実は、これがハルマの狙いでもある。
「アレは必要だからやった事で、何も楽しんでやってる訳じゃねぇー!」
『でも、口元が釣り上がってたよ』
「ギクッ」
『それとな、【後○○匹】とか口にしてたしな。完全に皆殺しを目的にしてたな』
流石に反論のしようがないので、レイスは引っ込む事にした。がしかし、ハルマは一向に出て来ようとはしない。
「……あ の 野 郎 ! 引き籠もりやがった!」
〝そもそも、この体は僕のじゃないから。君は表、僕は裏に居る。それが本来在るべき姿。それに加えて、『復讐』が君の目的でしょ? 君が自身で学んで、呼吸をするように扱うべきだよ〟
その言葉に、レイスは「確かにな」と呟いて納得した。暫く考え込んで、それが正しいと思った。
「よし、呪術師になれたら━━━」
ハルマは、やっと分かってくれたと思ったが……。
「━━━片っ端から呪術を色々試してやる。出会う奴を」
『『〝止めろ!!〟』』
「冗談だ」
三人は思った。お前の場合、冗談になってない、と。
彼の危険な部分については、グランにも手伝って貰おうと考えた。