表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌子の呪いと、呪われた七つ道具  作者: 沫雪(AWAYUKI)
奴隷から自由になるまでの復讐者
10/14

その忌子、ただ歩むばかり

 いや~、仕事が入ると全く余裕がなくなりますね!

 と言う訳でお待たせしました!

 辺境伯一行と分かれて三日後、レイスは国境を目指して道沿いに歩いていた。

 これまでの三日間、一週間分の食糧の調達、必要な情報を収集、ハンター資格の取得を行っていた。


 「暇だ、何も襲って来ない」


 『レイス、それはもう六回も言ってるぞ』


 「早く強くなりたいんだ。その為にも、早く町へ着きたいが、業も稼ぎたい」


 現在は午前、未だ昼には遠い時間だ。

 昼間になれば魔物が積極的に活動するが、朝方ではそうでもない。なので、次の目的地に着く前に歩きながら時間を潰しつつ、充分と感じたりそろそろ早く着かなければばならないと思った時、全速力で到着するためだ。


 「それに、他の武器も使いたい」


 現在レイスが所有する呪われた武器は血贄の刃の他に、スローイングナイフが八本、短剣が五本、弓が一本、ロッドが二本、戦斧の長短で二本、戦鎚が一本ある。大まかに分類して七種はある。

 この内、大罪シリーズには及ばないものの、強力なものは戦斧、戦鎚と弓の三種だ。

 呪われる人間は稀だが、生まれながらに呪われる人間は更に稀だ。前述で紹介した三種の武器は、後者にしか扱えないと言ってもいいだろう。


 『言っとくが、善人でも悪人でもない奴を殺し過ぎるなよ? 業は加算されるが、ペナルティーが発生する』


 「ペナルティー?」


 『そうだ、ペナルティーだ。これが発生すると、ボーナス分の業が減る。一人や二人殺した程度じゃ、悪人狩りをすれば消えるが、一定数貯めるとボーナス分の業が加算されなくなる。更にそれを超えると、幾ら殺しても業が加算されなくなる』


 「う、それは非常に困るし嫌だ……」


 『善人を殺しちゃった場合、ペナルティーが一発で一定数いくし、その上、業も引かれちゃうよ』


 「もっと嫌だ……」


 つまり、戦闘や犯罪に無関係な人間を殺した場合、ペナルティーが発生し、高位の聖職者や神の加護を受けた者を殺害してしまった場合、ボーナス分の業が貰えなくなり業も没収される。

 ただし、無意味に敵対したり、正当な理由や私利私欲の為にレイスを殺害しようとした場合や、汚職などの罪を犯した者は含まれない。


 「そこまで人間を憎んでいる訳じゃないから、別に良いか。俺が最も殺り合いたい奴は悪人だからな」


 『もしもお前が猟奇的な殺人鬼だったらどうしようかと思ったぜ。杞憂に終わって安心したが』


 『私達じゃ止められないからね』


 「わからないよ? もしかしたら、殺ってしまったというのも有り得そうだ。意図してないにも関わらず。その場合、ペナルティーはどうやったら解消できる?」


 『あー……』


 『確かに……』


 もしもの場合、そういうこともあり得る。

 濡れ衣を着せられた人間や、事故で巻き込んだ場合、どうしようもないとしか言えない。


 『その場合は、人の役に立つ事をしたり、助けたりしたり』


 『後は苦しむ事だな……。回復魔法を自分にかけたり、何回も死ぬ事だ』


 「回復魔法を? 何で」


 本来、人を癒やすはずの回復魔法が、何故苦しめる事になるのかレイスにはまだ分からなかった。


 『お前は生きながらに死んでいる。アンデットに似たような存在なんだ』


 『呪われた人は効果が激減するけど、君の場合特殊だからダメージを負うよ』


 レイスは何となく納得した。

 七つの大罪シリーズの呪われた道具なんて、そう簡単に御せる物ではない。

 生まれながらに呪われ、更に強力な呪いを持つ者とは、人より『死』に近い存在かもしれない。

 それならば、回復魔法が仇になるのが納得だ。


 「さて、次はどの武器を使おうか」


 匂いがする。レイスには、今から死んでしまう運命の魔物が近づいているのが分かる。レイスの手によって、収穫される命。

 群れと呼ぶには足りず、小さな群れだ。ゴブリン、オーク、コボルトので混成されている。


 「数が多いな……」


 まずは遠距離から先制攻撃を仕掛けることにした。

 黒く鋭い弓を取り出し、僅かに見える魔物に矢も(ツガ)えずに弦を引き絞る。

 最大まで引き絞り、狙いを定めると黒い矢が現れる。


 『執念の魔弓』

 怨敵を射貫くために造られた弓。

 材料は死んだエルフの骨に、禍々しい怨念を封じ込めた物。

 使用者の生命力を削って矢を生み出し、認識した敵を射貫くまで追尾する。


 「貫けよ!」


 「グギャ……」


 「ギィイ!」


 「ガ……」


 放たれた矢は魔物を貫いた後に、次の魔物の頭部に軌道修正、直線上のゴブリン五体を貫いて消えた。


 「何かどっと抜けた気がした……」


 『ちょい消費が大きいな。普通に射るだけで十分だ』


 弓をしまい、短剣五本取り出し地面に突き刺す。


 「スロウスを使うぞ」


 包帯が解れ、だらりと端が垂れる。スローイングナイフを四本に分け二回取り出し上に放り投げる。その全てのナイフは地面に落ちる事なく包帯に巻き取られ、レイスの周りに浮かぶ。

 片手に二本づつ短剣を持ち、最後の一本は籠に柄が出るように挿す。

 そして、レイスは走り出す。


 「行け!」


 包帯を何度も振り、スローイングナイフを飛ばす。

 ナイフは全てゴブリンやオーク、コボルトに刺さる。しかし、痛がる素振りも見せず迷わずレイスへ突き進む。


 『怨目(エンモク)(シルシ)

 このナイフ自体に殺傷力は無く、対象に傷を付けることはできない。

 ナイフに当たった者は一時的に呪われ、魔法や攻撃が必ず命中する。

 ただし、このナイフを使用中に、敵の攻撃全てが所有者に集中する。


 いよいよ距離がなくなり、レイスは魔物の群れに飲み込まれる。

 レイスは魔物に囲まれ、逃げ場を無くした。魔物達は卑しい顔で見ている。


 「俺が強い……」


 一体のオークに襲いかかり、短剣を首へ突き刺す。続けざまにコボルトに突き刺し、他の二本の短剣を投げつける。

 最後に残った短剣を構え、コボルトを斬りつける。

 数で上回っている筈なのに、たった一人に劣勢を強いられ逃げ出す魔物、どうすればいいかわからない魔物、全てがレイスによって狩られた。


 「まあ、ザコ相手だがアッサリ終わったな」


 『ザコ相手に期待するな、無駄だ』


 「業にはなるがな」


 レイス Lv.Ⅱ【呪Ⅵ】【業肆拾玖】《Mia 4B0》

 スキル:《瘴気抑制》《怠惰》《憤怒》《夜目》《鑑定》

 加護:【死ノ呪イ】【罪業ヲ引キ受ケル者】


 呪われた武器はレイスの元に戻り、足元へ落ちる。それを回収し、目的地へ歩き出す。

 道のりはまだ長い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ