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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第三章:DWO:第三エリア
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■061 諸行ガチャ無常




『グゴガァァァアアアアァァァァァッ!』


 轟くような断末魔を残して東門を襲ってきたグリーンドラゴンは光の粒と化した。

 僕らが倒した西門のグリーンドラゴンの時と同じように、それまで門を攻撃してきていたモンスターたちは我先にと逃げ出していく。

 それを見て東門を守っていたプレイヤーやNPCたちから歓声が湧き上がった。僕らと同じように西門から助けに入ったプレイヤーたちもその輪に加わっている。


「あんまり活躍できなかったね」

「まあ、いいんじゃないの? 僕らは西門の方で頑張ったしさ」


 ため息混じりにそう零すリゼルに、慰めともつかない言葉を返す。彼女としてはマナポーションが少ないという準備不足もあったため、多少不満なのだろう。


「よお、シロ! お疲れさん!」

「ギムレットさんもお疲れ様です。カシスさんも」


 ギルド【カクテル】のギルマス、【地精族《ドワーフ》】のギムレットさんが肩を叩いてきた。その後ろには【妖精族《アールヴ》】のカシスさんがいる。


「シロさんが来てくれたおかげで助かったよ」

「いや、全然。あんまり活躍できなかったな、って今も話していて」

「でも、その速さで撹乱してたじゃない。おかげでドラゴンが隙だらけだったから、私たちも攻撃に専念できたんだし」


 カシスさんにそう言ってもらえると少しは役に立ったのかな、と思えるが、僕としてはやはり忸怩たるものがある。

 そんな僕の前でギムレットさんがウィンドウを開いて町の情報を整理している。


「西門と東門のドラゴンは倒した。南門のも倒したらしい。あとは北門か」

「北門には私たち西門からの救援も行っているはずだから、そろそろ……あ、ほら」


 ギムレットさんに答えていたリゼルが顔を上げた。

 盛大なファンファーレが響き渡り、公式アナウンスが流れてくる。


『おめでとうございます。緊急クエスト【襲い来る緑】を見事クリアいたしました。参加されたギルドには貢献度に応じてのギルドポイントと「カタログギフト」、プレイヤー全員には記念アイテム「グリーンシード」と【グラスベンの守護者】の称号を贈らせていただきます。なお、個人による獲得経験値、及び、ドロップアイテムは後日運営側から贈らせていただきます。また、総合貢献度が上位百名の方々には特典として「シルバーチケット」を贈らせていただきます』


 どうやら死に戻った者にも記念アイテムと称号は贈られるらしい。本当に参加記念って感じだな。

 ウィンドウを開き、運営からのメールを開くと『グリーンシード』と【グラスベンの守護者】の称号が添付されてあった。

 あれ? もう一通運営からメールが来てるな。


「総合貢献度9位……? 『シルバーチケット』四枚?」

「シロ君、上位入りしたの⁉︎ すごい!」

「やるじゃねぇか!」


 リゼルたちが驚いているが、ギリギリってとこだろうな、これは。僕らは参加するのが少し遅れたし、ドラゴンにトドメもさせなかったし。

 にしてもこの『シルバーチケット』ってなんだろ?

 インベントリに送り込まれた『シルバーチケット』を取り出してみる。


─────────────────────

【シルバーチケット】 Bランク


■銀色のチケット。使用すると……?

□収集アイテム/売買不可

品質:HQ(高品質《ハイクオリティ》)

─────────────────────


 説明になってねえ。「使用すると……?」ってなんだよ。爆発するのか?

 チケットの右側、三分の一に切り取り線が入っていて、ここを千切れば使用できるらしい。

 四枚もあるし、一枚使ってみるか? いやいや、よくわからないで使って後悔するのは嫌だな。どういったことが起こるのか、調べてから使った方が……。


「シロ君、チケット使わないの?」

「え? リゼル、これ知ってるの?」

「知ってるよ。攻略サイトに載ってたもん。これはね、『ガチャ』券だよ。シルバーなら一回、ゴールドなら三回引けるの」


 え? 『ガチャ』ってあのお金入れて回すと、カプセルに入ったおもちゃとかが出てくるあれ? あれなら僕の住んでた島の駄菓子屋にもあったけど。


「『ランダムボックス』と同じようなものか」

「『ランダムボックス』はハズレが多いけど、チケットはアイテムか、武器防具か、スキルかが選べて、全部Cランク以上だからハズレはないんだよ。まあ、自分は使えない武器とかが出ることもあるけど、高く売れるし」


 確かに僕が大剣とか手に入れても使えないし、売るしかないか。優先的にミウラとかギルドメンバーに売るけどさ。

 そんな僕の心を読んだのか、リゼルが『杖や魔法スキルが出たら売ってね』と声をかけてきた。ちゃっかりしてんな。

 そう考えると『アイテムガチャ』の方がいいのかな?


「お、なんだ? さっそくチケット使うのか?」


 ギムレットさんが僕の手元にあるチケットを見て、興味深そうにしている。後ろのカシスさんもだ。こういうのって他人が回すのを見ていても楽しいからな。

 ううむ。一枚だけ使ってみるか。

 ピリリッ、とチケットを切り取り線から千切る。

 すると目の前に、ポンッという音とともに、空中に三頭身のデモ子さんが現れた。と、同時に破ったチケットが銀色の大きいコインに変わる。


『チケットをお使いいただきありがとうですの! さっそくですが【アイテム】【武器・防具】【スキル】のうち、どれかを選んで下さいですの!』

「えっと、【アイテム】で」

『了解ですの! 【アイテム】ガチャ、しょ〜か〜ん!』


 手を挙げたデモ子さんの叫びに応じて、目の前に透明な箱にソフトボール大のカプセルがいっぱい詰まった、いわゆるカプセルトイの機械が現れた。箱の部分がデカい。


『さあ、回して下さいですの!』


 周りのみんなからも注目される中、僕はガチャの投入口にコインを入れてハンドルを握る。

 時計回りにガチャリガチャリと一回転させると、大きなカプセルがコロンと転がり、自動的にパカッと開いて、中身が目の前に飛び出してきた。


────────────────────

【星鉱石】 Aランク


■unknown

□精製アイテム/素材

品質:S(標準品質《スタンダード》)

────────────────────



「おおお! すげえ! Aランク鉱石じゃねぇか!」

「当たりだね! よかったじゃない! ……あ、あら?」


 はしゃぐギムレットさん、カシスさんとは対照的に、僕とリゼルはなんともいえない表情で当てた『星鉱石』を見つめていた。

 いや……だって、持ってるもん……コレ……。


「『シロくん、リアルラック無い説』の信憑性が高くなってきたね……」

「言うな……」


 僕もひしひしと感じているんだから。くっ、ここで引き下がるのは男がすたる!


「デモ子さん、【アイテム】ガチャをもう一回だ!」

『ありがとうございまーす!』


 ビリリッ、とチケットをもう一枚切り取り線から千切る。

 コインを入れ、ぐっ、と力を込めて一気にハンドルを回す。

 再び大きなカプセルがコロンと転がって、中身が飛び出してきた。


───────────────────

【魔術師の腕輪】 Aランク

 INT(知力)+48

 MND(精神力)+32


■アルカナシリーズの一つ。

魔法攻撃を高める効果がある。

□装備アイテム/アクセサリー

□複数効果無し/

品質:HQ(高品質《ハイクオリティ》)

───────────────────


「うおお! すげぇじゃねぇか! 立て続けにAランクだぞ!」

「しかもHQ《ハイクオリティ》だよ! 信じられない!」

「シロくん、やった!」


 今度はリゼルも喜んでいる。いや、コレ……僕が装備してもあまり意味ない……。

 リゼルの方を振り向くと、キラキラした目で僕に訴えかけていた。『売って!』と……。

 売るよ、売りますよ。パーティの戦力が上がるなら、なんてことないですよ。

 あと二枚。どうするか。使っちゃうか? でもまたハズレ(ハズレではないのだけれど)だったら……。

 【アイテム】はやめて、【武器・防具】か【スキル】に走るか? いや、【武器・防具】で大剣とかプレートアーマーなんて当たったらそれこそ意味がない。高く売れるかもしれんけど。

 【スキル】の方がまだマシだろう。魔法スキルや武器依存のスキルでもなければ、使えないことはない……はず。よし!


「デモ子さん! 今度は【スキル】ガチャで!」

『了解ですの! 【スキル】ガチャ、しょ〜か〜ん!』


 【アイテム】ガチャの横に、色違いのガチャが現れる。

 三たびハンドルを握って、運命の神に祈りながら回す。三度目の正直、今度こそ!

 ガチャガチャリ、コロン。


─────────────────────

スキルオーブ

【知力・精神力UP(中)】★


■INTとMND、両方の基本値を上げる。

─────────────────────


「うおお! 星付きのスキルだッ! どんだけ運がいいんだよ、お前!」

「しかも二つの上昇スキルが一つになってる! かなりのレアスキルだよ、これ!」


 背後から聞こえてくるギムレットさんとカシスさんの声に反して、僕は両手と膝を地面につき、うなだれていた。

 確かに使えないことはない。けれどスキルスロットを一つ埋めてもいるかというと……。

 スキル構成が合わないというだけなのだ。リゼルならメリットがありすぎるスキルだろう。


「……さすがにここまでくると、私も喜べないかなぁ……」

「僕は『リゼル、僕の運を吸い取ってる説』を提唱しようと思う……」


 なんでこーなる。ここまで偏らなくたっていいじゃないか。運がいいのか悪いのか、わからなくなってきたよ、もう。


『あと一枚はどうしますの?』

「いや、いいです……。また今度に取っておきます……」

『わかりましたですの! それではまたですの!』


 デモ子さんがポンッ、と消える。……射幸心に煽られて暴走するとこんなことになるんだなあ。

 打ちひしがれる僕の耳に、無邪気な声が追い討ちをかける。


「シロ兄ちゃん! これ見てこれ見て! チケットのガチャで当たったんだ! すごいでしょ!」

「ぐふッ」


 見事な装飾がされたピカピカの大剣を掲げて、ミウラがこちらへ走ってくる。

 どうやらミウラも上位百名に入ったらしい。レンやシズカ、ウェンディさんと一緒にやってきたミウラが、ニコニコしながら僕に話しかけてくる。


「シルバーチケットが一枚だけだったから、あんまり期待してなかったけど、こんなにいいものがが当たるなんて思わなかったよ!」

「ソレハヨカッタ、ネ」


 おのれ。無欲の勝利だというのか。


「シロくん、気を落とさずに、ね?」


 苦笑気味にリゼルが声をかけてくる。なんだろう、この虚しさは……。


「どうしたんですか、シロさん?」

「レンちゃん、今はそっとしておいてあげて。それより百位内に入ったのって、シロくんとミウラちゃんだけ?」

「いえ、あとシズカちゃんが95位でギリギリ。当たったのはガントレットでしたけど」

「無骨なデザインですが、まあ許容範囲かと。防御力は高いですしね」


 そう言ってシズカが薙刀を持ってない左手を上げてみせる。確かにシズカには似合わない無骨なガントレットだな。古参兵が身につけていそうなデザインだ。

 しかしそのアンバランスさがシズカの清楚さを引き立てるとも言える。それほど悪くはない、かな。


「二人ともいいなー。私もガチャ回したかった……」


 ミウラの大剣とシズカのガントレットを羨ましそうに見つめるレン。こればっかりはなあ。あ。


「僕のチケットがもう一枚あるから、レンが回してみるかい?」

「え⁉︎ いいんですか⁉︎」

「いいよ。どうせ僕が回したってリゼルを喜ばせるだけだから」

「?」

「私のせいじゃないよ⁉︎ シロくんがツイてないだけだよ⁉︎」


 ハッキリ言ったな、こんにゃろ。

 リゼルを軽く睨みながらレンにチケットを渡す。もちろん所有権は僕のままだからレンは回すだけだ。

 それでもレンはワクワクしながらチケットを千切る。さっきと同じようにデモ子さんが現れた。


『【アイテム】【武器・防具】【スキル】のうち、どれか選んで下さいですの!』

「えっと、【スキル】で!」


 ほほう、【スキル】を選んだか。レンの前に【スキル】ガチャがドン、と現れる。

 レンは呼吸を整えながらハンドルを握った。そんなに緊張しなくてもいいのに。


「シロさんの役に立つスキルが出ますように……」


 ええ子や……。ええ子や、この子……。何が出ても受け入れるよ、僕は。

 ガチャリガチャリとレンがハンドルを回していく。やがてコロン、と取り出し口に大きなカプセルが転がってきた。何が当たった?


「あっ!」


 カプセルからスキルオーブを取り出したレンが嬉しそうな声を上げる。ひ、ひょっとしていいのが当たったのか⁉︎


「見てください、シロさん! 【分身】ですって! 星二つのレアスキルですよ!」


 【分身】……ああ、そうきたかー……。確かに何が出ても受け入れるとは思ったけど。また忍者化が進むのか……。

 喜ぶレンの手前嫌そうな顔もできず、「やったなぁ」と彼女を褒めながらスキルオーブを手にする。

 僕は『周りが僕を忍者にしようとしてる説』を提唱してもいいと思う。











【DWO《デモンズ》 ちょこっと解説】


■ガチャについて

【チケット】で手に入るゴールドメダルで三回、シルバーメダルで一回回せる。【アイテム】【武器・防具】【スキル】の三種類から選ぶことができ、基本的にCランク以上のものが出るため、ランダムボックスのように外れがない。チケットは売買不可で、イベントクエスト等でしか手に入れることができない。SSランクのものも極めて低いが出る可能性はある。


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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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