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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第三章:DWO:第三エリア
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■057 本拠地完成



「こ、ここ、これで、完成、です」

「やったああ──────っ!」


 ピスケさんの完成宣言にミウラが高くジャンプして喜びを表現する。

 着工から三日、細かいところまでいろいろと手を加えて、やっと僕らのギルドホームが完成した。ギルド【月見兎】の本拠地である。

 出来上がったのは西洋風の洋館と、魔法使いの家を合わせたようなファンタジー色の強い屋敷だった。煙突がいびつに曲がっているあたりや、むやみに蔦が絡んでいるところなんかがこだわりらしい。

 二階には張り出した広いバルコニーなんかもあったりする。


「早く中に入ろうよ! 一番乗りー!」

「待ってミウラちゃん! 私がギルマスなんだから私が先!」

「まあまあ、お二人とも。三人で一緒に入りませんこと?」


 年少組が我先にと玄関へと向かう。おいおい、建てたばかりの家を壊すなよ?

 玄関の扉をくぐると、大きなホールが僕らを出迎える。二階へと上る階段が左右の壁にあり、真上には派手さはないが趣きのあるシャンデリアがぶら下がっていた。


「こ、このギルドホームはギルドメンバーとメンバーが許可登録した者しか入れません。ギ、ギルドウィンドウの許可リストから、ぼ、僕の名前を外してみて下さい」


 ピスケさんに言われるがままに許可リストから彼の名を外すと、ピスケさんが玄関外へと転移された。おお、強制転移か。

 再びリストにピスケさんの名前を入れると、また玄関に入ってこれるようになった。


「もも、もちろん、ホーム内にメンバーがいない時には許可されてても誰も入れません」


 防犯はバッチリか。町中にギルドホームを作るのが一般的だが、中にはフィールドに作るギルドもあるし、変なプレイヤーに浸入されたら嫌だもんな。

 町に入れないPKギルドなんかは基本フィールドにホームを建てる。ま、PKギルドは人目を避けるから、目立つような場所には建てないと思うけど。建てるとしたら見つかりにくい洞窟とか深い森の中だろう。


「い、いい、一階はリビングや応接間、キッチン、食堂、衣装部屋などになります。ち、ち、地下は保管庫です。共有の倉庫と金庫はこちらになります。に、二階はそれぞれの個室が一応八部屋、あ、あと談話室。離れに小さな工房と、畑、もあります。ギ、ギルド専用のポータルエリアは工房横になります」


 ひと通りピスケさんが説明してくれる。へえ、工房まであるのか。僕の【調合】やレンが【縫製】するときに便利かな。

 ギルド専用のポータルエリアってのは、ここから各地のポータルエリアへ直で跳べるって転移陣だ。ここは【月見兎】のギルドメンバーしか使えない。まあ、ここは特殊なシークレットエリアだから、海岸にあるポータルエリアも僕の許可がなければ使えないが……。

 二階へと上ると十二畳ほどの広さの個室が何部屋かあった。ピスケさんのサービスなのか、それぞれ机と棚、ベッドが取り付けられている。これで狭い宿屋暮らしともおさらばってわけだ。

 みんなが集まってくつろげる談話室には一面ガラス張りの窓があり、そこから広いバルコニーへと出ることができた。


「うわああ! 綺麗!」

「見晴らしのいいところですね」


 バルコニーから広がるオーシャンビュー。リゼルとウェンディさんも気に入ったようだ。


「ありがとうございます。予想以上の出来ですよ、ピスケさん」

「あ、ああ、ありがとうござい、ます」


 僕が礼を言うと、ピスケさんは照れたように俯いた。まだビクッとなったり、よそよそしかったりするが、逃げ出さなくなっただけマシになったか?

 ピスケさんに約束していた報酬を渡し、僕たち【月見兎】はついにギルドホームを手に入れた。



          ◇ ◇ ◇



「おお、確かにインベントリの枠が増えてる。さらにギルド共有のインベントリまで開けるようになったぞ」


 ピスケさんが帰ったあと、僕らはいろいろと確認してみることにした。そのうちの一つがインベントリの確認である。

 ギルドホームを手に入れたことによって、僕らの個人インベントリは大きくなった。さらにギルド共有のインベントリも追加されている。

 これはギルドメンバーなら誰でも自由に使っていいというアイテムを入れる共有のインベントリだ。自分にとっては不必要なものなんかをそこに入れておく。そこからメンバーなら誰でも取り出して、自由に使っても構わないというわけだ。

 武器や防具などの装備用の共有インベントリもある。所有権は持ち主のままでレンタルのように使うことができるのだ。強い武器や可愛い服なんかをログインしない日は貸し出すなんてこともできるわけで。

 早速僕も『ポーション(粗悪品)』などを突っ込んでおく。このインベントリの管理はギルマスであるレンの担当だ。アイテムの方のインベントリは、いっぱいになったらレンがまとめて売却する。

 売却したお金はギルド共有の金庫へと入り、みんなの財産となるのだ。

 この金庫はギルドメンバーなら誰でも入金することができるが、引き出すことはギルマスとサブマスの許可がなければできない。

 ちなみにここから誰がいくら引き出したかという通知はギルドメンバーに通知されるらしい。

 個人金庫もギルドホームには設置してあって、ここにお金を入れておけば、デスペナルティで半減することもなくなる。出入金がホームでしかできないのが難点だが。

 その代わり上限がないので、死に戻る可能性があるような危険なクエストでも、行く前に全額入れておけば死んだってへっちゃらだ。

 ま、クエスト中に手に入れた金は半減してしまうけど。


「しかしアレだな、遥花の言ってた通り、ギルドホームを手に入れたら確かに家具とかが欲しくなるな……」


 割り当てられた自室のベッドにゴロンと横になりながら部屋を眺める。ベッドの他は簡素な机と椅子、ガランとした棚があるだけだ。窓にカーテンさえもない。ベッドだって布団はなく、マットレスだけ剥き出し状態だ。


「まあ、ここを拠点とはするけど、別にリアルに暮らすわけじゃないからな。揃えるのはおいおいでいいか」


 なにか部屋に飾れるようなものを手に入れたら飾ることにしよう。竜の頭の剥製とか? 悪趣味か。

 武器や防具なんかを部屋に飾ったスクショを見たことがあるな。ヌイグルミとか、本なんかでいっぱいの部屋も。部屋ってその人の個性がダイレクトに出るからなあ。

 ま、それもおいおい考えよう。

 僕は部屋を出て一階へと降り、庭へ出て工房へと向かった。

 工房は八畳ほどの広さで区切られたスペースが四つあって、そのうち一つにはすでに織り機が鎮座していた。ここは服飾系であるレンのスペースだな。

 その隣には壁一面に棚が並べられた部屋があった。棚には少しだけだが小さなガラス瓶があり、スポイトや乳鉢、木皿やガラス皿などもあった。

 そして小さなかまどと、その上に乗った鍋。間違いない、ここは【調合】を行う工房だ。

 専用の工房があるなんて贅沢だな。そのうち使わせてもらおう。

 工房を出て、もう一度二階へ上る。談話室を抜けてバルコニーに出ると、ギルドメンバー五人が設置されたテーブルでわいわいと話をしているところだった。


「あ、シロさん。お部屋はどうでした?」

「広さ的にはいいね。殺風景なのはどうにかしたいところだけど」

「お布団と絨毯、カーテンなんかはあとで私が作りますよ」

「そりゃありがたい」


 僕もバルコニーの席に着くと、ウェンディさんがインベントリからカップを取り出し、お茶を注いでくれる。ここらへん、さすがメイドさんというべき気配りの良さを感じる。


「確かに部屋は殺風景だよねー。タンスとかソファとか揃えたい」


 ミウラも同じように感じたようだ。

 家具系のアイテムは店で買うか【木工】スキルで作るか。僕らの場合だと「買う」一択なんだが。


「ま、本当に生活するわけじゃないから、そこらへんは個人個人の趣味で集めりゃいいだろ」

「だね。それはそれとして、第三エリアだけどどこから攻めていく?」


 リゼルが地図をテーブルに映し出した。第三エリアは大きく分けて三つに分かれる。

 まず、海が広がる西海岸エリア。大小様々な島が存在し、第三エリアのボスがいるんじゃないかとされているところがここだ。モンスターの強さは南西に行くほど強くなるとか。あ、あと島のモンスターも強いらしい。

 二つ目は中央エリア。ここは北から山岳地帯、草原、森林、沼地と、多様なエリアになっている。モンスターもピンからキリまでいるようだ。

 三つ目が東内海エリア。北には【嫉妬】との内海が広がり、第四エリアへの扉があるという。内海中央部には西の海と同じく巨大な渦巻きが存在しており、船で【嫉妬】の領国へと浸入しようとしてもバラバラにされるそうだ。


「んと、初めは湾岸都市フレデリカ周辺でいいよね?」

「うん。でもそのまま西海岸を下ってもな。僕らは船を買うお金もないし、船員を雇うお金もない」

「ギルドホームに使っちゃったからね〜」

「ということは、そのまま中央エリアの方へ向かうわけですね?」

「中央草原の方へ行く感じですわね」

「草原には町があるんですね。楽しみです」


 フレデリカから少し南下し、その後中央部へと東へ向かう。僕らは攻略ルートをそんな感じに決めた。その中で情報を集め、第三エリアのボスを捜す。あわよくば初討伐、第三エリア初クリアを目指す……なんてね。

 さすがにそれは無理だろ。制限時間いっぱいにログインして、ネットでも情報を集めまくっているプレイヤーもたくさんいるしな。

 アレンさんたち【スターライト】のギルドメンバーにもそういった情報通で分析好きの人物がいるんだそうだ。

 ブレイドウルフを初討伐した時に流れた【スターライト】のメンバーは六人。アレンさん、ガルガドさん、ジェシカさん、ベルクレアさんには会ったことがあるから、残りのメイリンさん、セイルロットさんのどちらかだろう。

 メイリンさんは格闘系って聞いたからセイルロットさんかな?

 ま、第三エリアのボスを初討伐は無理でも、第一発見者にはなれるかもしれないし。やれるだけやってみよう。


「それじゃギルドの方針も決まりましたし、ギルドホーム完成のお祝いを『ミーティア』でしましょうか」

「さんせーい!」

「いいですわね」


 レンの提案に即座にミウラとシズカが乗る。僕らも異議はない。第二エリアの町、ブルーメンにある『ミーティア』に行くために、僕らは初めてギルドホームのポータルエリアへと向かった。










DWOデモンズ ちょこっと解説】


■家具について

DWOデモンズではギルドホームの部屋を家具で好きに飾ることができる。【木工】スキルなどによる製作された家具などを設置できるが、これらはあくまで趣味のものであって、特殊な能力はない。当たり前ながら、箪笥に服をしまっておくことはできるが、インベントリに繋がっているわけではないので、インベントリから取り出すことはできない。




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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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