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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第三章:DWO:第三エリア
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■056 本拠地着工




 昨日ギムレットさんたちに売ってもらった『白蝋』を【調合】して、『ワックス』を作った。

 何個か失敗したが、ギルドホームを作ってもらうピスケさんが指定した数は用意できたので良しとしとこう。

 今まで採取したいろんな花からも、『染料』を【調合】できた。これは服や武器防具などの色を変えることにも使えるので、重宝する。ちょっと手を加えて【調合】すれば、『染髪料』にもなるしな。今のところ染める気はないけど。


「あとは『レンガブロック』の素材になる『粘土』か」

 

 『粘土』自体はそんなに珍しいアイテムではない。僕もいくつか持っている。崖や切り通しなどの層から【採掘】で取れるのだ。

 こいつを『レンガブロック』にするには【焼成しょうせい】スキルが必要だが、町の窯元に持って行けば『レンガブロック』と交換してくれる。別に持っていかなくても『レンガブロック』を売ってくれるし。


「面倒だしそれほど高くないから買ってもいいんだけど量がな。これ以上インベントリが圧迫されるのは……」


 インベントリのひとつの枠には一種類99個しか入らない。つまり『レンガブロック』が200個あったら、99個入った枠二つと2個入った枠一つ、計三つの枠が必要になるのだ。

 まあ、それを解消するためにギルドホームを作ろうって話なんだが。

 ギルドホームを作れば、共用の大きなインベントリの設置と、個人インベントリの拡張ができるようになるのだ。だから早いとこ【星降る島】にギルドホームを……あ。


「あー、そうか。あそこはシークレットエリアなんだから、誰も来ることができない。盗まれることもないんだから、『レンガブロック』を島に置きっぱにしてもいいのか」


 レンたち同じギルドの人間が盗むわけはないし、ミヤビさんたちも必要ないだろうしな。

 そうと気付けば即行動。

 とりあえずフレデリカの窯元で、みんなから預かった持ってる『粘土』を全部『レンガブロック』にしてもらう。プラス、持てるだけの『レンガブロック』を売ってもらった。

 今度はそれを持って、今度はポータルエリアから【星降る島】へと転移した。

 インベントリの中にある『レンガブロック』を全て取り出して、島の一箇所に積んでおく。

 よし、インベントリが軽くなったし、『レンガブロック』もこれだけあれば充分だろ。

 積んだレンガの上に腰掛けて一息つく。海風が潮の香りを運び、さざ波の音に癒される。いいねえ。早く本拠地が欲しいね。

 っと、のんびりしてる暇はなかった。やれることをどんどんやっていかないと。トレント狩りをしているリゼルたちの方を手伝うか。

 リゼルに連絡を取るため、僕はギルドメンバーのリストウィンドウを開いた。



          ◇ ◇ ◇



 それから二日後。

 思ったより早く全ての素材が集まり、ギルドホームを建てる準備が整った。


「こ、こ、こ、ここ、ここ、ここって、し、シークレットエリアなんですかぁ⁉︎」

「嘘やろ……。シロちゃん、あんた何しとんねん……」


 連れてきたピスケさんとトーラスさんが口を大きく開いて驚いている。まあ、気持ちはわかる。


「島ひとつ丸ごと……。しかも入るにはシロちゃんの許可がいるって……ムチャクチャやな。今までシロちゃんが手に入れたモンにはいろいろと驚かせられたけど、これは極め付けやで……。なにしたらこうなるんや……」

「まあ、いろいろあって? もらった」

「さっぱりわからんわ!」


 まあいいじゃないか、そこらへんは。まだブツブツと言っているトーラスさんを置いて、ピスケさんに話しかける。


「場所はそこの丘の上にお願いしたいんですけど大丈夫ですか?」

「ふえっ⁉︎ あ、ああ、は、はい、だ、大丈夫、大丈夫です。そ、素材も、ちゃん、ちゃんとありますし、すぐに建て始めますです、はい!」


 話しかけるたびにビクッとされると、ちょっと傷付くな……。

 建てるギルドホームのデザインはウェンディさんが用意した。中世の屋敷っぽくもあるが、魔女の家っぽくもあるデザインだ。なかなかに洒落たデザインだと思う。

 かなり広そうだ。……ウサギ小屋じゃなくてよかったよ。

 

「あのさ、家作る前に、桟橋だけ先に作ってもらえないかなあ。釣りとかしたいんだよね。ダメ?」

「えっ⁉︎ あ、は、はい。さ、先に桟橋ですね。大丈夫です、できます」


 ミウラがピスケさんにそう頼むと、ぴゅうっと砂浜へと駆けていってしまった。あれは急いだんじゃなくて、人見知りスキルが発動して、逃げたんだと見た。って、うおっ⁉︎

 インベントリからでっかい木材を出したかと思うと、ピスケさんがノコギリでスパパン! っと一瞬でいくつかの形に切り分けてしまった。いや、それノコギリの切り方じゃないよね⁉︎

 同じようにサイズを測ることなく、いくつもの同じ長さの板が切り出されていく。それが終わると大きな木槌を取り出して、長く太い杭を海の中へ何本も何本も打ち付けていった。

 まるで早送りでも見ているかのように、打ち付けた杭の横に板が次々と並んでいく。ピスケさんは仕上げとばかりに腰に差してあった金槌で、リズムよく釘を打っていき、あっという間に海へと伸びたかなり長い桟橋が出来上がってしまった。


「で、で、で、できました」


 わずか十分ほどで完成。ゲームとはいえ凄いな……。


「すっごい! やるじゃん、ピスケ兄ちゃん!」


 桟橋の上で再びビクッ、となったピスケさんの横をミウラが駆けていく。

 僕も出来立ての桟橋へと足を踏み入れたが、かなりしっかりとしている。これならボートとかを係留しても問題あるまい。

 みんなが桟橋に集まり、その出来映えを口々に感心していると、それを造った当の本人はぴゅうっ、と丘の上へと走り去り、レンガブロックを並べ始めた。


「ありゃ、照れてるんや。堪忍したってや。あんまり他人との付き合いに慣れてないさかい」


 苦笑しながらトーラスさんが謝る。まあ、誰も気にしてないと思うけど。

 しかし、この風景とサングラスにアロハシャツって似合いすぎだろ。怪しい店の店主から、怪しい観光ガイドにクラスチェンジしてるぞ。


「ネット内で人見知りってどうなんだろうなあ。普通逆のような気もする」

「そうでもないで。ネット内は知り合いがおらんからはっちゃけるゆう奴とは逆に、知り合いがおらんから声もかけられんゆう奴もおるし。そういう奴はソロになりがちやけどな」


 ううむ。それってこういったゲームに向いてないのでは、とも思うが、遊び方は人それぞれだしな。本人が楽しんでいるなら問題ないけどさ。


「まあ、仲良くしたってや。後々、船とか必要になったらまたあいつの世話になるかもしれんで?」

「船かあ。……そういや、ここって船出したらどこへ行くんだろ?」


 僕は桟橋の先の水平線へと視線を向けた。どこまでも海が続いているように見えるが。


「ここってシークレットエリアやろ? 地図上にはない場所やさかい、ひょっとしてループしとるんとちゃうかな……。島の東へ船を走らせれば、島の西に着く、みたいな」


 そんなゲームみたいな、と反論しようとしたが、ゲームだったっけ、これ。


「やあっ!」


 ミウラがインベントリから出したと思われる釣竿を振りかぶり、桟橋から海へと針を投げ入れた。緩やかな弧を描き、エメラルドグリーンの海へ、ポチャンと落ちる。


「あれ? ミウラ、【釣り】スキル取ったのか?」

「ううん、取ってないよ。別にスキルがなくても釣りはできるんだよ。補正が全くないけど、釣れないわけじゃないんだ。【採取】スキルがなくたって『薬草』とか取れるじゃん。アレと一緒だよ」


 あ、そうか。別段、大物とか珍しい魚、あるいはヌシとか狙って釣るのでもなけりゃ、スキルはいらないのか。

 レンとシズカがミウラの投げ入れた釣り糸の先をじっと見ている。リゼルとウェンディさんも海を覗き込む三人を後ろから眺めていた。


「釣れるのかな?」

「シークレットエリアですしね。どんな魚がいるかわかりません。ひょっとして珍しい魚が釣れるかも」

「どうかなー。だったらなおさら【釣り】スキルが必要になると思うけど」


 ウェンディさんのいう通り、珍しい魚がいてもおかしくはないと僕も思う。釣れるか釣れないかはわからないが。できれば美味い魚が釣れてくれるとありがたい。なんだか僕も久しぶりに釣りたくなってきたな。


「こんなことなら僕も釣竿を買っとけばよかったなあ」

「あるで?」


 にんまりとしながらインベントリからトーラスさんが何本かの釣竿を取り出した。え、あるの?

 簡易的なリールもちゃんと付いている釣竿だ。ファンタジーさが無いのはこの際置いておこう。


「一本1500Gやけど、わいとシロちゃんとの仲やさかい、餌付きで1000Gにしとくで。どや?」

「商魂逞しいなあ!」


 まあ、欲しかったのは確かだからいいけど。他の店で買うよりは安いだろうし。僕は1000G払ってトーラスさんから釣竿を一本買った。

 僕が釣竿を買ったのを見て、レンとシズカも同じようにトーラスさんから買った。

 僕が二人に餌を付けてやると、レンたちはミウラの横へと並び、さっそく釣り糸を投げ入れていた。

 僕も自分の釣り針に餌を付けて、釣る準備を完了させる。どれ、久しぶりに釣ってみるかー。


「シロちゃん、釣りに自信がありそうやな?」

「こう見えて島育ちですからね。仲間内では釣りバカと……」

「かかった!」


 ミウラの声が辺りに響く。

 なかなかの大物らしく、右に左に暴れている。


「トーラスさん、タモ! タモ網とかないの⁉︎」

「500Gやけど」

「商魂逞しいなあ!」


 僕らがそんな馬鹿なことを言っている間に、ミウラが釣竿を思い切り引き上げた。


「どっせい!」


 【鬼神族オーガ】のパワーで海中から引きずり出された魚が、水飛沫をキラキラと反射させて、青い空を飛んでいく。

 桟橋の上に、どしゃっ、と落ちた青い魚は、バタバタと板の上でもがいていた。


「釣れましたわ!」

「ミウラちゃん、すごい!」


 シズカとレンが魚に駆け寄る。体長三十センチくらいの鯛に似た魚だ。【鑑定】してみる。


──────────────────

【ヘブンズブルーフィッシュ】 魚類


■特別な場所にしか棲息しない魚。

 肉は白身。淡白で美味。

 食べるとHPが一時的に15%上昇。

──────────────────


「ヘブンズブルーフィッシュ……食べるとHPが一時的に15%上昇……?」

「こらまたえらい魚やで……。なんなんこの島……。なんかヤバイ生物実験とかしてたりせえへんよな?」


 引きつった笑いを浮かべる【鑑定】持ちの僕らをよそに、年少三人娘らは魚を持って、SS(スクリーンショット)を撮っていた。

 その後、僕らも釣りをして何匹かの魚を釣った。どれもこれもなにかしらボーナスのつく食材だったので、それがこの島のデフォルトなのかもしれない。【釣り】スキルがあったらどんなのが釣れるのか想像もつかないな……。

 その後ピスケさんも呼んで、浜辺で魚を焼いて食べた。塩を振っただけのものだったが、かなり美味かった。こんな食材があるならと、ウェンディさんは【料理】スキルを伸ばすことに決めたらしい。

 ひょっとして、島の森に生息している兎とか猪とか鳥とかも、食べると同じような効果があるのだろうか。

 要検証だな、と焼いた魚を頬張りながら僕はそんなことを考えていた。












DWOデモンズ ちょこっと解説】


■ソロモンスキルについて

ソロモン72柱の名が冠された★三つのレアスキル。限りなく入手が困難なレアスキルではあるが、全てが使えるスキルかというとそうでもない。くだらないスキルもある。

72種あるが、ワールド内に72個というわけではない。(DWOデモンズにゲーム内に一つだけしかないなどという、いわゆるユニークスキルは存在しない)

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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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