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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第二章:DWO:第二エリア
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■047 準備万端整えて





「【加速】」


 一気に跳ね上がったスピードを活かし、逃げようとしていたフォーチュンラビットの退路をはばむ。同じ兎の名持つ仲間だが、悪く思うなよ。


「【十文字斬り】」


 発動した戦技によってフォーチュンラビットは光の粒によってなって霧散する。

 ドロップは『幸運兎の毛皮』か。お、やっとレベルが上がったな。23になった。

 天社あまつやしろでミヤビさんから【加速】と【二連撃】のスキルをもらって一週間。

 やっと使いこなすコツを掴めてきた。まあ、【二連撃】の方は発動するかが運任せなんで、主に【加速】の方のコツだけど。


「もうだいぶ慣れたようですね」

「おかげさまでね。少しずつだけど熟練度も上がってきてるし、僕の方はブレイドウルフ戦に向けて上々な仕上がりだよ。そっちは?」


 僕が尋ねるとレンは問題無しとばかりに拳を握り締めて、前へと突き出した。


「準備万端整ってます! 私もレベルは24になりましたし、所持スキルもかなり熟練度が上がりました!」


 この数週間で僕らのレベルはレンが24、ウェンディさんが25、ミウラが22、リゼルが24、シズカが22、そして僕がさっき23になった。

 レベルだけを見れば充分にブレイドウルフを討伐可能な圏内にいると思われる。


「不安要素はブレイドウルフの【ハウリング】に対抗する手段がないことですね」


 ウェンディさんが呟く。【威圧耐性】のスキルをランダムボックスで狙ったのだが、誰も出ることがなかった。


「シズカちゃんの【健康】があるからなんとかなるんじゃないかな。それに最悪、シロくんなら【加速】で有効範囲から逃げることもできるんじゃない?」


 リゼルの言う通り、シズカの【健康】は、状態異常にかかりにくくなるスキルだ。みんなが硬直してもシズカだけは動ける可能性は高い。


「【威圧耐性】を手に入れて挑戦する方が少数派ですわ。【ハウリング】を放つ初動作さえ見逃さなければなんとかなると思います」

「だよねー。とりあえずチャレンジして負けたらまた考えりゃいいじゃん」


 シズカに同意して、にししと笑うミウラ。負けたらもう一回『月光石』を集めるんだぞ。面倒だろ。


「ではブレイドウルフ討伐に動きましょう。えっと、まずはブレイドウルフがどこにいるかですよね?」

「はい、お嬢様。七つの『月光石』を合わせれば、マップ上にブレイドウルフの場所が表示されるはずです」


 僕が持つ『緑』と『紫』そして『銀』。レンの『赤』、ミウラの『橙』、リゼルの『黄』と『青』。

 取り出した七つの『月光石』が僕らの持つそれぞれのマップ画面に光を示す。この光点にブレイドウルフがいるんだな?

 ここは……ブルーメンから南西、【嘆きの谷】を抜けた先にある【沈黙の丘】か。

 ちなみにブレイドウルフがいる場所は毎週変わる。ブレイドウルフは強力な結界を張っていて、いかなる侵入者をも阻むが、七つの『月光石』を持っていればその結界を通り抜けられるのだ。通り抜けたあと、七つの『月光石』は砕け散ってしまうのだけれど。

 第一エリアのガイアベアと同じく、ブレイドウルフの戦闘フィールドもパーティやギルドごとに個別に設定されているらしい。

 だから順番待ちなどなく、いつでも倒しに向かえる。


「まさかブレイドウルフにも亜種とかいないよね?」


 ミウラか茶化すように尋ねてくるが、たぶんそれはない。僕の持つ『幻獣図鑑』にはブレイドウルフの亜種ってのは載ってないからな。


「二匹出てくるってのも今回はなしにしてほしいですね」


 苦笑混じりに呟くレン。さすがにそれはないと思うが。親子とかないだろうな?


「では今日は装備やアイテムの準備に費やして、ちょうど日曜ですし、明日ブレイドウルフに挑むことに致しましょう。よろしいですか?」


 ウェンディさんの言葉にみんな小さく頷く。よし、遂にブレイドウルフ戦だ。ワクワクするな。

 




 その後、僕は宿屋へと帰り、自室でポーション類を【調合】していた。

 【調合】の熟練度もそこそこ上がり、『ポーション』、『ハイポーション』はけっこうな確率で良品ができる。MPを回復させる『マナポーション』はまだ粗悪品が混じるが。

 STを回復させる『スタミナポーション』も作っておく。

 おっと。『ミーティア』のマスターに教えてもらった『閃光弾』もいくつか作っておこう。


「なんだかんだでインベントリも圧迫してきてるなあ……」


 僕の場合、いろんなところから手に入れた使い道のわからないアイテムとかもあるから、けっこうな数になる。

 アイテムを収納しておけるインベントリを拡大するには、ギルドを設立してその本拠地、『ギルドホーム』を作る、という手が一番手っ取り早い。

 『ギルドホーム』の恩恵に、「個人インベントリの拡大」というものがあるのだ。

 他にも、


・個人金庫の設置。

・ギルド金庫の設置。

・共有倉庫の設置。

・ギルドポータルエリアの設置。

・宿泊による一時的な能力値上昇。


 等々。また、これらを強化することも可能。ギルドシンボルも設定できる。

 ギルドを設立するにはレベル25のギルドマスターが必要だが、今のところそれに届いているのはウェンディさん一人。しかし、あの人はレンを差し置いてギルドマスターにはなるまい。

 まあ現在レンはレベル24だから、間違いなくブレイドウルフを倒せばレベルが上がるだろう。


「どっちにしろもう少しの我慢だな」


 ある程度のポーションは揃えたので【調合】は終わりにした。半分近くはシズカに渡すつもりだ。【ハウリング】中に回復できる可能性があるのはシズカだしな。

 ブレイドウルフ戦では彼女には回復役ヒーラーとして動いてもらうことになると思う。

 そのシズカとはこれからリンカさんの鍛冶場で会う約束になっているので、インベントリにポーションを突っ込んで宿を出た。

 リンカさんがいつも使っている共同工房に行くため、ブルーメンのポータルエリアから、始まりの町・フライハイトへと跳ぶ。

 一時期、みんな第二エリアへと行ってしまったので静かになってしまうんじゃないかと僕なんかは思っていたが、やっと大量生産されたDWOデモンズのソフトが店に入荷したのを受けて、新人プレイヤーたちがまたフライハイトには溢れていた。

 フライハイト名物、噴水広場の露店街が今日も賑やかに開かれている。

 そういや、ここで初めてトーラスさんと会ったんだよなあ。


「おい、あれ『マフラーさん』じゃね?」

「ホントだ。PKKの『ウサギマフラー』だ」

 

 なんかこちらに向けてチラチラと視線が飛んでくる。

 別に僕はPKKプレイヤーキラーキラーじゃないぞ。倒した相手がPKだったってだけだ。さらに言うなら別にドウメキはPKしたわけじゃないし。

 あの動画のせいか、『忍者さん』やら『マフラーさん』、『ウサギマフラー』と変な通り名が浸透しつつある。別に構わないが、本人を目の前にして話されるとけっこう恥ずかしいのだが。

 何回か【PvP】も挑まれたしな。興味がなかったので丁重にお断りしたけど。ギルドへの勧誘もあったりしたが、全て断った。

 人目を避けるように【隠密】のスキルを使い、身を隠しながらフライハイトの共同工房へと辿り着く。

 ここはネットカフェの如く、薄い壁で鍛冶場ごとに仕切られているため、他の人の目を気にする必要はない。

 リンカさんのブースにはすでにシズカが来ていて、新しい薙刀を受け取っていた。もちろん素材は僕がシズカに売ったAランク鉱石だ。


「お待たせ。それが新しい武器?」

「はい。以前の薙刀よりも軽くて扱いやすいです。風の属性も付いているんですよ」


 嬉しそうにシズカが薙刀を見せてくる。朱塗りの柄に、銀の刀身が輝いていた。

 西洋のグレイブとかと違って、完全な純和風の薙刀である。


「刀身は『静型』でお願いしました。こちらの方が扱い慣れていますので……」

「『静型』?」

「刀身の幅が細く、反りが少ないのが『静型』。幅が広く、反りが大きいのが『巴型』。それぞれ静御前、巴御前からちなんで付けられている」


 鍛冶場に立つリンカさんが説明してくれた。リンカさんの説明だと、馬上からだと巴型の方が柄が短くて使いやすいらしいが、僕らは馬になんか乗らないしな。同じシズカだし『静型』でよかったんじゃないかね。


「そういや今更だけど、『シズカ』って本名じゃないよね?」


 こっそりと小声でシズカに聞いてみる。


「ふふ。もちろん違いますわ。ミウラさんと同じく、名前と家名をもじって付けました」


 家名って……また古い言い方をするな。彼女もレンたちと同じ学校ならお嬢様だし、当たり前なのかね。

 確かお祖母さんの家が神社だとか言ってたな。実家が、と言わなかったってことは、両親とシズカは神社で暮らしているわけではない、と。そしてセレブ。神社出身のお母さんがどこかの若社長に玉の輿に乗った……とかだろうか。


「どうしました?」

「あ、いや。なんでもない」


 いかんいかん。他人のお宅の詮索をするなど下衆の極み。反省反省。


「シロちゃんにも作った物がある」

「え? 僕に?」


 何枚かに束ねられてリンカさんに手渡されたのは、ずっしりと重い十字手裏剣セット。おい。


─────────────────

【十字手裏剣】 Dランク


■十字型手裏剣。

□投擲アイテム/

□複数効果無し/

品質:HQ(高品質ハイクオリティ

─────────────────


 Xランクじゃないってことは、普通にDWOデモンズに存在するのか、これ……。

 ひょっとしてシークレットエリアに『忍者の隠れ里』とかないだろうな……。

 スローイングナイフが無くなってきたから助かることは助かるけども。

 うお、ご丁寧に兎の刻印がされている。


「この手裏剣の特徴は消費アイテムじゃないこと」

「え? あ、ホントだ。『投擲アイテム』ってなってら」

「つまり拾い集めれば、また使うことが可能。エコ」


 それはそれで面倒な気もするんだが。モンスターに当たって刺さったやつは倒した後にその場に落ちるだろうけど、外れたやつはわざわざ拾い集めにいくの? それも一長一短だなあ。

 ……そういや【投擲】で投げたアイテムのダメージって、【二連撃】の対象になるんだろうか。まあ、なったとしても【二連撃】自体がまだ使えるレベルじゃないけどな。

 それからシズカに彼女が持てるだけのポーション類や、状態回復薬を渡した。明日はこれが僕らの生命線になるかもしれない。

 それとリンカさんには、ドウメキとの戦いで無くなった撒菱まきびしを補充してもらった。これは意外と使えるかもしれないことが判明したしな。

 ブレイドウルフに毒や麻痺が効いた話は聞かないから、ドウメキと同じような手は効かないだろうけど。

 サービスで手裏剣と撒菱を入れるウェストポーチをもらう。これはいいな。邪魔にならない。ジャラジャラとうるさいけど。

 ついでだったので、『双焔剣・白焔』と『双炎剣・黒焔』を打ち直してもらい、耐久性を回復してもらった。

 これで万全の態勢で戦いに挑める。よし、明日はみんなで第二エリアを突破だ!












DWOデモンズ ちょこっと解説】


■武器・防具について①

武器や防具にはそれぞれ耐久性が設定されている。これが尽きてくると攻撃力が落ち、0になれば武器は壊れてしまう。生産スキルを持つ者によって回復することができるが、それにより最大耐久値は下がっていく。つまり、どんな武器でもいつかは壊れるということ。





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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[一言] メインweaponの打ち直し····ついでですか···
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