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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第二章:DWO:第二エリア
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■045 【加速】と【二連撃】





「確かにこれは【二連撃】ですね。一度目の攻撃と同じ場所にわずかに遅れて同じ攻撃が来ます。二回攻撃されているように感じます」


 大盾カイトシールドで僕の攻撃を受けながらウェンディさんが答える。

 【怠惰】の第二エリア、【クレインの森】の人目のないところで、僕らは【PvP】によるちょっとした実験をしていた。

 ミヤビさんからもらった二つ星スキルの検証である。

 【二連撃】は単純に一回の攻撃が二回分になるスキルだった。ガン! という攻撃が、ガガン! という攻撃になる。

 普通に考えて攻撃力二倍だ。これはスゴイ。

 と、思ったのだが、やはりデメリットもある。

 まず、今のところ、このスキルが発動する頻度が低い。二連撃になったりならなかったりだ。これはおそらく熟練度を上げていけば発動率も上がると思われる。

 次に自動発動なので、発動するのを止めることができない。発動してしまうと斬りたくもないのに二回斬ることになる。自分でまったく手加減ができない。これではオーバーキルしてしまうこともあるだろう。

 それと二回攻撃といっても違う場所に攻撃することができるわけではないので、一撃目が防がれると当然二撃目も防がれる。

 おまけに発動するとその分だけSTスタミナを消費する。熟練度が上がって発動率が高くなったらST切れが起こりやすくなるかもしれない。ST配分ができないってのはけっこう痛い。

 ま、それを差し引いてもかなり役立つスキルではあるが。僕は攻撃力が低いのを手数でカバーしているのでこれは助かる。

 そしてもう一つの【加速】だが。

 こちらはそのまま【加速】するスキルだ。移動速度が上がり、普段の数倍のスピードで動ける。素早さをメインにしている僕にはピッタリなスキルである。

 ところがやはりこれにもデメリットはあって。

 【加速】スキルは発動にMPマジックポイントを消費するのである。しかも発動中ずっとだ。

 これは正確にいうと『加速魔法』だと思う。MPを消費し、移動速度を速める。大変便利なスキルではあるが……ではあるが、生憎と僕はMPの値はそれほど高くない。

 魔法系のスキルなんてまったく取ってなかったからなあ……。

 レベルアップで上がっただけのMPの量ではあっという間に尽きてしまう。いいとこトータルで十秒くらいじゃないのか? 

 ちなみに僕らの中では一番MPの多いリゼルが使っても二十秒もつかどうか。

 それにリゼルが【加速】を使っても、もともとAGI(敏捷度)が低いので、僕より遅いだろうと思われる。

 こりゃ今度はMP回復ポーションとかMP回復飴とか作らないとダメかもしれんな。いや、飴のじわじわ回復では追っつかないか。

 僕の場合、一撃がそれほど強くないから雑魚敵でもないと、一気に倒し切ることはできなさそうだ。

 いや、どっちかというと、これは攻撃に使うよりも、逃げたり、避けたりするときに使った方がいいスキルなのかもしれない。

 まあ、これもかなり使えるスキルであることに間違いはない。

 【二連撃】と【加速】。両方を極めれば、かなり強くなれるんじゃないだろうか。道は遠いが。

 次にミヤビさんに会いに行くときはちゃんとお礼を持っていかないとなあ。


「どちらも二つ星スキルなだけあってさすがですわね。ブレイドウルフ戦に向けて心強いですわ」

「【加速】の方は常時発動させるより、ここぞという時のブーストとして使う方がいいでしょうね。初見なら間違いなく不意を突かれるでしょうし」


 シズカが感心したように褒めてくれるが、【二連撃】の方は熟練度が低いから発動するかは運任せだし、【加速】の方はレンの言う通り、常時発動していたらMPが持たない。その時に応じてONとOFFを使い分けた方がいいだろう。


「……ねえ、シロくん。そのスキルって、ミヤビってNPCからもらったんだよね」

「うん、そう。偶然シークレットエリアに迷い込んでさ。そこにいた狐の獣人セリアントロープの女の人に……」


 じっ、と視線を向けてくるリゼルに僕は言葉に詰まる。なんだ?


「その額の……ううん、なんでもない。シロ君、いいなー。私も星付きのスキルとか欲しい」


 リゼルが手に持った杖で地面を突きながら急に口を尖らせる。んなこと言ってもなあ。

 リゼルに追従して横にいたミウラまでも口を尖らせた。


「なんだかんだでシロ兄ちゃんはリアルラックが高いんだよなー。不公平だぞ、あたしらにも運を分けろー」

「そうか? その割には普段のアイテムドロップとかはみんなの方がいいような気がするけど」

「そうでしょうか? 女子五人の中に男一人というパーティを組んでいる時点でリアルラックの高い勝ち組なのでは?」


 女子? 二十歳はたち超えた人も女子と言うのかな……大人なんだし女性ってのが正しいような気も、と発言者のウェンディさんに視線を向けると、底冷えする視線で弾かれた。


「何か?」

「イエ、ナニモ」


 ま、まあ確かに女子社員とか言うし、間違いではないよな。だが、ハーレムというには半分以上が子供だし、ちょっと違う気がする。

 そのあと対人訓練と称してみんなと【PvP】をした。僕にとって厄介だったのがリゼルの魔法攻撃と、シズカが放つ【チャージ】からの【カウンター】だった。

 リゼルの場合は【ファイアウォール】で防御を固められた後に、範囲攻撃の【ファイアバースト】を撃たれると逃げられない。

 シズカの場合は防御に適している薙刀で防がれ続けた後に、その間【チャージ】していた一撃を【カウンター】で叩き込まれる。これが【二連撃】とまた相性が悪い。

 【カウンター】は相手の攻撃のタイミングに合わせて放つスキルだが、僕の【二連撃】が発動している場合、その判定時間が長く、タイミングが合わせやすいのだ。そりゃそうだ。二回攻撃してるのだから。

 そのせいで【カウンター】を警戒してなかなか攻められなかった。


「まだまだスキル構成を考える余地があるなあ」

「っていうか、あたしもうスロットいっぱいだから変えようがないよー」

「外してオーブに戻せばいいだろ」

「熟練度がもったいないからヤダ」


 ミウラとそんな軽口を叩き合うが、実は僕も人のことは言えない。この【加速】と【二連撃】で使用スロット、予備スロットがいっぱいになってしまった。



■使用スキル(8/8)

【順応性】【短剣術】

【敏捷度UP(小)】

【見切り】【気配察知】

【蹴撃】【加速】【二連撃】


■予備スキル(10/10)

【調合】【セーレの翼】

【採掘】【採取】【鑑定】

【伐採】【毒耐性(小)】

【暗視】【投擲】【隠密】



 とまあ、現在のスキル構成はこんな感じである。

 もし何かさらに取りたいスキルが出てきたら、この中から一つ外してオーブに戻すしかない。そしてその熟練度はリセットされてしまう。

 まあ、この中なら【毒耐性(小)】かなあ……。少ししか熟練度が上がってないし、全て避ければ毒も受けないし。もしものために取ったけど、いらなかったかなぁ、これ。


「シロさんがスキルに慣れるために、今日は【ダリア洞窟】に行ってみませんか?」

「いいね。確かあそこに小ボスみたいのいたよね?」

「オークバトラーですね。手頃な相手かもしれません」


 【ダリア洞窟】とはブルーメンの南にあるここ、【クレインの森】を抜けた先にある洞窟だ。第二エリアでは難易度の高い部類に入る。

 僕らも何度か行ったことがあるが、この洞窟のおいしいところは先ほどウェンディさんが言った小ボスのオークバトラーにある。

 小ボスといっても別に洞窟の奥に一体だけ待ち構えているわけではなく、フラフラと洞窟を何体かうろついているのだ。

 この洞窟のオークバトラーを撃破すると、こいつはまれに『ランダムボックス』と呼ばれる宝箱を落とす。その名の通り中身はランダムで、使えないアイテムから貴重な武器防具、レアスキルなんかも入っていることがあるのだ。

 特にボックスからはスキルオーブが出やすいとの噂だ。もちろんハズレのスキルの方が多いが。

 ドロップするかわからない、出てくる他のモンスターも強いのでソロ狩りには向かない、かといってパーティでは戦いにくい場所、とあまり条件はよくない。が、それを補っても余りある魅力が『ランダムボックス』には秘められているのか、欲に駆られたプレイヤーは【ダリア洞窟】を目指すのである。

 僕らは面倒なので今まであまり行くことはなかったが。

 ま、今日はちょうど【クレインの森】にいるし、みんなでその先の【ダリア洞窟】へと行くことに決めた。

 オークバトラーが『ランダムボックス』をドロップするといいけど。





「大量だったね! 今日はドロップ率の高い日なのかなあ!」

 

 ホクホク顔でリゼルがゲットした『ランダムボックス』をインベントリから取り出す。

 なにかの変化があったのか、僕らはオークバトラーとけっこう遭遇し、かなりの『ランダムボックス』を手に入れた。

 一体のオークバトラーをみんなで倒し、みんなは『ランダムボックス』を手に入れたのに、僕だけ『オークの牙』とかいうパターンも多かった。

 おかげで僕がゲットした『ランダムボックス』は一つだけである。

 やはり僕だけリアルラックが低いと思うんだが……。


「『パワーリスト』と『マナポーション』。スキルオーブは【跳躍】と【魔法耐性・火(小)】……。あと『羽毛×10』かー。まあ、外れじゃないかな」


 一番多くボックスを手に入れたミウラが、さっさと箱を開けてそう呟く。

 いいなあ。スキルオーブ二つも出たのか……。でも確かミウラはスキルスロットいっぱいだろ。いや、僕も同じなんだが。


「ミウラちゃん、『羽毛』いらないならあとで売って。お布団作るのに必要だから」

「え? レン、そんなの作るの?」

「いつかギルドハウスを持ったらそれぞれの部屋にほしいじゃない。作るなら良いものを作りたいの」


 そう言うレンは四つの『ランダムボックス』から『聖水』、『ハイポーション』、『グレートヘルム』、【楽器演奏(鍵盤)】のスキルオーブを手に入れていた。

 ウェンディさんもシズカも、ハズレも入っていたらしいが、そこそこ良いものも入っていたらしい。

 そして一番ウキウキしていたリゼルはというと。


「わ! 星付きのスキルオーブだよ! 【合成魔法(初級)】! やった!」


 【合成魔法(初級)】? 聞いたことはあるけど、魔法スキルはほとんどスルーだったからよくわからない。けど、なんか凄そうだな。どんなスキルなんだ?


「属性の違う魔法を掛け合わせて、違う魔法を生み出せるスキルだよ。初級魔法の熟練度が二種類カンストしてないと使えないから、まだ私は使えないけどね! よーし、燃えてきた!」


 確かリゼルは【火属性魔法(初級)】だけがカンストして中級になってたな。あと【風属性魔法(初級)】も持ってるんだっけか。火と風の合成魔法ってなんだ? 温風?

 初めて星付き(レアスキル)をゲットしたからか、テンションが上がっているリゼルに聞くこともできず、僕は自分の『ランダムボックス』を開けてみた。


────────────────────

【平べったい石】 Fランク


■平べったい。水切りに最適。

□消費アイテム

品質:F(最高品質フローレス

────────────────────


 石……。平べったかろうが品質は高かろうが石は石だろう。当然ハズレである。

 はあ……。やっぱり僕のリアルラックは低いと思うんだが。

 【ダリア洞窟】からの帰り道、川辺かわべりでこの石を使って水切りをしてみたが、今まで経験したことのないほどの回数で水面を跳ねていった。アレは石の中ではレアアイテムだったのかもしれない。

 よく考えたらGランクじゃないから売れたはずだ。

 もったいなかったかな?

 













DWOデモンズ ちょこっと解説】


【竜人族】ドラゴニュート

耐久力が高く、防衛職に向く。攻撃力もかなり高い。反面、知力、俊敏さはない。選択すると角と一部に鱗が生える。種族スキル【ブレス】を持つ。


筋■■■■■■■

耐■■■■■■■■■■

知■■■

精■■■

敏■■■

器■■■■

幸■■■■■


種族スキル【ブレス】

様々なブレス攻撃を覚えることができる。






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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[一言] リゼル何を知っているんだ?
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