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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第二章:DWO:第二エリア
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■038 巫女と賞金首

■バグなのか、ちょっと作品ページ自体がおかしいことになってます。詳しくは活動報告の方に。



「シズカです。よろしくお願いします」

「シロです。こちらこそよろしく」


 ミウラが連れてきた新たなプレイヤーは綺麗な黒髪ロングの少女だった。

 種族は僕と同じ魔人族デモンズ。背丈はミウラより少し高いくらい。三人の中では一番高い。目鼻立ちは幼いながらも整っていて、あと五年もすればかなりの美人さんになると思われる。

 あ、いや、リアルの姿を知らないからそうとも言えないか。レンたちの話によると、それほど現実と変わってはいないみたいだけど。

 というか、僕もこのゲームをしてから感じたのだが、アバター設定時に自分の顔をいじるのってけっこう躊躇うんだよね。

 そりゃ美形にしたいとは思うんだけど。その美形姿でリアルを知ってる友達とか知り合いに会ったら、気まずいよなあ、と。

 だからどうしてもパーツをちょちょいといじるくらいでやめてしまう。

 僕、レン、ウェンディさん、ミウラはもともと知り合いとやろうとこのゲームを始めたから、その傾向が強かったようだ。

 ……まあ、僕以外は元々いじる必要もなかったってのもあるかもしれないが。


「シズカは薙刀なぎなたを使うんだね。槍からの派生だっけ?」

「はい。【槍の心得】から派生する【薙刀術】ですわ。お祖母ばあ様に習っておりますので、使い慣れた武器の方がいいと思いまして」


 なるほど、薙刀の経験者か。それで。

 まあ、そこまではわかるんだ。そこまでは。


「で、なぜに巫女装束?」


 そうなのだ。シズカは白衣びゃくえ緋袴ひばかま、足袋に草履という巫女装束の上から軽装の胸鎧と籠手を装備していた。

 正確には巫女装束に似た服装というか、オリジナルっぽい衣装だが。


「これはレンシ……レンさんからの贈り物ですわ」


 少し照れたようにシズカが袖を持ち上げる。レンが作ったのか。なんかまたメキメキと腕を上げてきているなあ。これもソロモンスキル【ヴァプラの加護】の効果か?


わたくし、祖母の家が神社なものでして。『だったら巫女装束ですね!』とレンさんが」

「自信作です!」


 銀髪ツインテールがドヤ顔で踏ん反り返る。ウザ可愛いが、また目立つ衣装を作ったなあ。


「シズカは【カウンター】とか持ってるんだっけ?」

「はい。あとは弱点を見破る【看破】、力を溜める【チャージ】などですね。あとは【気配察知】と、レアスキルの【健康】もあります」


 ミウラの質問にシズカが答える。【健康】? レアスキルってことは★付きか。どんな効果なんだ?


「レアスキル【健康】は毒や麻痺、眠りなどの状態異常がかかりにくくなるスキルですね」


 ウェンディさんが説明してくれた。おお、それはすごいな。言ってみれば【毒耐性】【麻痺耐性】【睡眠耐性】【暗闇耐性】【混乱耐性】などが全部ひとまとめになっているスキルってことか。


「あくまでかかりにくくなる、というだけですので、レジストに失敗すれば状態異常になってしまいますけれど」

「あれ? ひょっとして【健康】ってブレイドウルフの【ハウリング】も防げる?」

「【威圧耐性】ほどではないでしょうが。一応、抵抗値は高いと思いますわ」


 おお。これは大きなアドバンテージだ。身体が硬直する【ハウリング】を使われても、動ける者がいるのといないのとじゃ大きな差がある。


「これで六人。フルパーティになったな」

「ギルドを作ってランクを上げればパーティ人数も増やせるらしいけど、とりあえずはこの六人でブレイドウルフを目標に頑張ろうよ」


 リゼルの言う通り、当面の目標はそれだな。しかし六人中三人が13歳以下ってのはなぁ……。他にもそういうパーティがいないわけじゃないけど、だいたい家族だったりする。

 それに僕以外全員女の子ってのもな……。たまーに入りにくい話題とかあるんだよなあ。肩身が狭いわけじゃないけど。

 まあ、このパーティはウェンディさんを保護者にした、レン、ミウラ、シズカの四人に、僕とリゼルが付いている、といった形だから仕方ないか。


「とりあえず熟練度上げも兼ねて、『銀の月光石』狙いでシルバードがいるエリアへ行きましょう」


 シルバードはブルーメンの町から東にある【トリス平原】、そのさらに先にある【ギアラ高地】に棲息している。

 僕らはそこを目指すため、ポータルエリアへと足を向けた。





 【ギアラ高地】はその名の通り、垂直に切り立つテーブルマウンテンが多く点在する高地帯で、自然が豊かな場所である。

 第二エリアでもかなり手強いモンスターの棲息する場所で、油断はならない。

 僕らの狙う『銀の月光石』を持つモンスター、『シルバード』は、この【ギアラ高地】全域に棲息している。

 だからけっこう遭遇はするんだけど……。


「行っちゃいましたね……」


 レンが構えていた弓を下げながら小さく呟く。そんなレンに励ますように僕は声をかけた。


「あんな高いところを飛んでたら仕方ないよ。別なのを探そう」


 遭遇はするのだが、なかなか戦闘にはならない。向こうがこちらに気付かないのだ。遠距離攻撃できるレンの矢とリゼルの魔法でも、限度というものがある。


「高原のフィールドだと鳥はなかなか降りてこないんだな。森林部の方に行ってみようか」


 羽休めする木々があった方が降りて来やすいんじゃないかな。僕の提案にみんなも賛成してくれたので、【ギアラ高地】の森林フィールドへと足を踏み入れた。

 ジャングルというほどでもないが、普通の森よりも雑多な木々が生い茂る中を僕らは進む。

 途中、何匹かのモンスターに遭遇したが、率先して僕とシズカが倒した。

 この森では大剣を使うミウラはうまく操れないのだ。同じように大盾を扱うウェンディさんも自由度が制限される。


「【二段突き】」

「ギュラララッ!」


 シズカの放った戦技によって、襲ってきたムカデのモンスター、ブルーセンチピードが光の粒となって消滅する。

 もともと薙刀の経験者だからなのか、シズカの薙刀は美しい軌道を描く。

 もっともそれは開けた場所だけのことで、こういった狭い場所では今のように突きを多用していた。


「関係ないモンスターの方が寄ってくるよね。まあ、レベルアップ・スキルアップになるから無駄じゃないけど」


 リゼルの言う通り、肝心のシルバードがなかなか見つからない。いや、辺りにいるのかもしれないが、こうも木々が密集していると見つけるのが大変だ。

 さっきから【気配察知】を全開にして探っているのだが、まったく────。


「──みんな止まれ。……いた」


 僕が静かに指を差す方向、その木の枝に目的のシルバードが止まっていた。

 シルバードは全身銀色の羽に覆われた鷹のような鳥で、尻羽が長い。体長は一メートル近くもあり、翼を広げた大きさは二メートル半を超える。

 ウェンディさんが言うにはアンデスコンドルとかはもっと大きいらしいけど。

 デカい鳥なだけあって、群れることはなく、大抵個体で飛んでいる。目の前のこいつもそうだろう。

 横にいたレンが弓を引き絞り、【チャージ】を発動する。リゼルも魔法の詠唱を始めた。その間に僕とシズカはシルバードの近くへゆっくりと近づいていく。


「【スパイラルショット】」


 強力な回転により、風をまとった一本の矢が、羽繕いをしていたシルバードの翼を貫く。


「キュアァクアァァ!」

「【ファイアアロー】!」

 

 枝上で暴れるシルバードのところに、今度はリゼルの放った炎の矢が襲いかかる。

 連続攻撃にたまらず木の枝から落ちたシルバードへ、今度は僕とシズカ、そしてミウラが攻撃を仕掛けた。


「クルァァアアァァッ!」

「【大切断】!」


 先行したミウラの戦技で、シルバードの片翼が切断される。

 シルバードが地上でもがき、倒れこみながらも残った翼をはためかせると、鋭い羽が手裏剣のように飛んできた。


「【旋風輪】!」


 シズカが僕の前に立ち、薙刀の中心を持って、扇風機のように回転させる。飛んできた羽手裏剣がことごとく撃ち落とされていく。

 小学生の女の子に庇ってもらうのは少し情けないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。

 シズカの後ろから彼女の頭を飛び越え、シルバードの前に着地する。射程距離に捉えた敵へ向けて戦技を発動させた。


「【十文字斬り】」


 左手の双炎剣【黒焔】で横に一閃、続けざま右手の【白焔】で縦に一閃。

 レンの戦技とリゼルの魔法でダメージを受けていたシルバードはその攻撃で光の粒となった。


「ふう。飛ばさせないようにするのが大変だな」


 今のは不意打ちが効いたから助かったけど。

 しかしシズカは冷静に対処するなあ。本当にミウラとかと同級生か。

 子供らしい子供のミウラに思わず視線を向けてしまう。


「? なに?」

「……いや、『銀の月光石』がドロップしたかなと思って」

「そんな一発目で出ないよー。『銀鳥の羽』と『銀鳥の尾羽』だった」


 僕も確認してみたが、ミウラと同じドロップアイテムだった。レンが比較的出にくいとされる『銀鳥のくちばし』を手に入れたが、僕らの狙いはそれじゃない。

 結局全員ハズレだった。

 気を取り直して次のシルバードを探すことにする。

 森の緑に銀色ってのは目立つと思ったんだが、案外見つけにくいもんだなぁ。


「レンの【鷹の眼】で見つけられない?」

「こうも木々が多いと難しいの!」


 ミウラの言葉に唇を尖らせてレンが答えた。

 レンは弓を使うため、遠くを見渡せる【鷹の眼】のスキルを持っている。しかしこれは遮蔽物を跳び越えて見れるわけではないので、こういった場面では役に立たないのだろう。


「ん?」


 【気配察知】が何かを捉えた。木の上ではない。森の奥、茂みの中からだ。また青ムカデか?

 茂みの方に注意を向けた僕に向かって、突然鋭い一本の矢が飛んできた。

 これは……! さっきレンが放ったのと同じ、弓戦技【スパイラルショット】⁉︎


「く……ッ! 【風塵斬り】!」


 飛んできた矢を戦技で撃ち落とす。両手に持つ双炎剣『白焔』と『黒焔』の効果により、炎の竜巻が僕の周囲に舞い上がった。


「ち、馬鹿が。外しやがって」


 矢の飛んできた茂みの中から、四人の男たちがぞろぞろと現れた。

 それぞれが異なる得物を持ち、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。

 男たちに僕が視線を向けると、その頭上にネームプレートがポップした。

 通常、プレイヤーのネームプレートは青。NPCは緑だ。

 しかし、犯罪を犯したプレイヤーはオレンジ、NPCはグレーとなる。

 そして、さらに重い罪を犯したプレイヤーは赤となり、NPCは黒になるのだ。

 目の前にいる四人の男たちのネームプレートは全員が赤だった。

 こいつら……賞金首だ。













DWOデモンズ ちょこっと解説】


PKプレイヤーキラーについて①

町ではできない。PKに成功すると所持金の半分と、相手のインベントリから三つランダムで奪える。が、装備アイテム、習得スキルなどは奪えない。スキルオーブ状態ならば奪える。

また、15歳未満のプレイヤーはPKされず、PKできない。






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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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