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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第五章:DWO:第五エリア
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■190 木属性の大蛇





 【フローレス】のギルメンである『付与術師エンチャンター』、エヴァンジェリンさんが付与した、八岐大蛇の防御力低下と前衛プレイヤーへの攻撃力上昇により、敵HPがいくらかは削られ始めた。

 と言っても本当にちょっとずつちょっとずつといった感じで、手応えの無さは否めない。

 支援魔法バフをかけてこれとは……。とんでもない防御力と体力だ。他の首もこうなら、やはり時間がかかるぞ、これは……。

 八岐大蛇が生み出した木の根に絡まれているプレイヤーたちを助けるべく、僕も前線へと向かう。


「【一文字斬り】」


 プレイヤーを拘束していた木の根を斬り、そのまま木属性の頭へと狙いを定める。

 再び【天駆】で、空を駆け上がり、双銃剣グリモアのトリガーを引きっぱなしにし、二つの刃に火属性を纏わせる。


「【ダブルスラッ】……!」


 戦技を放とうとした瞬間、周囲の木々がざわめいたかと思ったら、何百もの木の葉が僕目掛けてまるで手裏剣のように飛んできた。


「く……!」


 放とうとしていた戦技をキャンセルし、木の葉のカッターをいくつか斬り払う。

 しかし飛んできた全ての木の葉を斬ることはできず、いくつものダメージを食らってしまった。

 一つ一つはそんなに大きなダメージではない。だけど、チリも積もればなんとやら、ただでさえ装甲の薄い僕にとってはかなりのダメージとなってしまった。

 切り刻まれ、落ちていく僕を見て木属性の頭がわらったように見えた。この野郎……! ただで済むと思うなよ……!


「【視線投擲】……!」


 落ちながら、木属性の頭の目を睨みつける。きっちり一秒後、二つの手裏剣がその目に連続で突き刺さった。


『グガアァァァァ!?』


 ざまあみろ。本当は弱点である額の宝石を狙いたかったが、この位置からは見えないから無理だった。

 おっと、このまま落ちたら落下ダメージを食らうな。

 僕はまた【セーレの翼】で、【フローレス】のギルマス、メルティさんのいる場所に転移した。


「行ったり来たり忙しいねえ……」

「そういう仕様です」


 なぜか呆れているような目を向けるメルティさんをよそに、インベントリからハイポーションを取り出して一気に呷る。

 目へのダメージはそれなりにあったようだが、普通に鱗がある体を攻撃するよりは多少ダメージが多いかな? という程度だ。

 前線では僕と同じく木の葉カッターを向けられたプレイヤーを魔法使いが【ファイアウォール】で守っている。

 そうか、ああいう防御の仕方があったか。木の葉なんだから火で燃えるのは当たり前だ。

 【ファイアウォール】はあいにくと中級魔法なのでストックにないが、似たような【ファイアバースト】なら弾丸のストックにある。

 これは範囲攻撃をする初級魔法で【ファイアウォール】より範囲は狭いが、自分くらいは守れるはずだ。


「お?」


 ふと戦っている前衛組を見れば、【鬼人族オーガ】の種族スキル【狂化】を発動し、暴風剣『スパイラルゲイル・改』で竜巻を生み出し、飛び上がるミウラが見えた。


「【大回転斬り】!」


 ミウラが空中で縦回転にぐるぐると回り始め、回転ノコギリのように縦回転したまま木属性の頭へと突っ込んでいく。


『ギシャアァァッ!?』


 回転して勢いをつけたミウラの大剣は、狙い違わず木属性の頭の額中央にある宝石に炸裂した。

 確かミウラは【急所狙い】を持っていたな。【急所狙い】は弱点を狙うときに、多少ズレていても補正がかかる、または急所ポイントが大きくなるといった補助スキルだ。

 あの回転でも当てることができたのはそれのおかげだろう。

 【狂化】をしている大剣使いの一撃を弱点に食らい、木属性の頭の上にあるHPゲージが今までになく大きく減った。

 これには他のプレイヤーたちからも歓声が上がる。そのまま落ちたミウラは落下ダメージを食らったようだが、すぐにポーションを飲みながら後方へと退避した。【狂化】で防御力がかなり下がっているからな。一旦クールタイムが終わるまで休んだ方がいい。

 が、やられた木属性の頭は怒り心頭といった感じで、ミウラは大きくヘイトを稼いでしまったらしく、木の葉カッターがミウラへと放たれる。


「【ガーディアンムーブ】」


 そこへウェンディさんが瞬間的にミウラのところまで移動し、大盾で木の葉からミウラを守った。

 同時に別のプレイヤーが【挑発】を使い、ヘイトをそちらへと向けようとしていた。

 不意に、木属性の頭がぐいんと後方の方へ勢いよく向けられる。なんだ? 後ろに何か……? いや、違う!


「みんなそこから離れろ!」


 僕が叫んだ瞬間、何人かのプレイヤーがダッシュして八岐大蛇から離れる。

 直後、まるで鞭のように、大蛇の首が地面スレスレに横に振るわれた。

 巨大な質量の衝撃に、逃げ遅れたプレイヤーたちが勢い良く吹っ飛ばされていく。

 ウェンディさんもそれを喰らって吹っ飛ばされてしまった。

 ウェンディさんは【不動】スキル持ちなのに……! あの攻撃はそれを無効化するのか……!

 幸い、ウェンディさんは防御をしていたようで、受けたダメージも致命傷なレベルではない。

 しかし前線にいたほとんどのプレイヤーが大ダメージを受け、回復に専念していた。

 フッ、フッ、フッ、と大蛇の口からなにかが飛び出してくる。それはプレイヤーに当たることなく、勢いよく地面に突き刺さった。あれは……種?

 野球ボールほどもある種から瞬く間に芽が出て、あっという間に人の大きさほどの花に成長してしまった。

 百合に似ているその花は、ゆらり、とその首を動かすと、近くにいたプレイヤーの方にその花を向けた。

 次の瞬間、百合の花の中から無数の黒い小さな塊が飛び出し、そのプレイヤーを撃ちつける。あれも種か!? 鉄砲百合って百合があるけど、そういうこと!?

 ヤバい、こっち向いた!

 僕らはすぐに散らばって種マシンガンから避難する。ピンポン玉ほどの種が背後にあった木を蜂の巣にしてしまう。マシンガンっていうか、ショットガンだな……!


「【一文字斬り】」


 横から回り込むように鉄砲百合に迫り、その茎を一閃する。くっ、一撃では倒せないか!

 急停止から折り返して、もう一度【一文字斬り】を食らわせる。二文字斬りだ。

 HPがそれでゼロになり、鉄砲百合は光の粒に変わり消え失せる。

 それほど防御力もHPも高くはない。さらにいうならその場から動くこともできないようだ。

 倒すのは難しくないが、僕のように敏捷度が高いか、遠距離攻撃を持っていないと、近づく前に撃たれるな……。

 弾切れはないらしく、ぐりんぐりんと首を揺らめかせて、鉄砲百合は四方八方に種を撃ちまくっていた。


「【ファイアボール】!」


 リゼルの【ファイアボール】が直撃し、鉄砲百合の一つが炎に包まれる。


「【クロスファイア】!」


 レンが【操糸】で操ったいくつもの短銃からもう一つの鉄砲百合へ集中砲火が浴びせられる。

 全ての鉄砲百合を倒したかと思ったら、木属性の頭が再びフッ、フッ、フッ、と鉄砲百合の種を吐き出す。おかわりかよ!?


「たぶん鉄砲百合の種は三つまでしか吐けないと思う! 確実に倒して! その間に本体にも攻撃を!」


 メルティさんからの指示が飛び、鉄砲百合に近づくことができなかったプレイヤーが再び本体へと攻撃を開始する。

 僕は鉄砲百合の処理へと回った。こいつ、倒したすぐそばから種を吐きやがって……!

 とはいえ、倒さないとあっという間にこの場が鉄砲百合でいっぱいになってしまう。

 いつしか前線は鉄砲百合を処理するグループと、頭部に攻撃するグループに分かれていた。


『ガルルルッ!』

『ガァッ!』


 ハルの操る狼たちも、鉄砲百合の太い茎に次々と噛みついていく。おお……怖っ。


「「「【ファイアストーム】!」」」


 三人の魔法職から三つの【ファイアストーム】が放たれる。


『グルガァッ……!』


 一定のダメージを与えたあと、ボシュッ! と炎が木属性の体に燃え移った。【燃焼】の追加効果だ。

 

「【燕返し】」


 燃え続ける木属性の頭にミヤコさんが火属性の刀、『千歳桜』で斬りつけ、瞬時に斬り上げる。【刀術】スキルの戦技【燕返し】か。


「【月華斬】!」


 続けてシズカが火属性を付与された薙刀で真っ正面から斬りつける。その後すぐにその場を離れ、そこにリンカさんが『魔王の鉄鎚(ルシファーズハンマー)』を振りかぶって突撃してきた。


「【メガインパクト】」


 大リーグのスラッガーもかくやと言わんばかりのスイングで、リンカさんの『魔王の鉄鎚(ルシファーズハンマー)』が、大蛇の首に叩き込まれる。

  

『ガガッ!』


 今のは効いたろ。そこからちまちまと攻撃を繰り返し、いつしか木属性の頭のHPは三分の一近くまで減っていた。

 順調……なんだろうか。ここまで一時間近くかかっているけど……。ポーションとか持つかね……?



          ◇ ◇ ◇



『グガァッ!』


 レンの構えたスナイパーライフルのような火縄銃からの一撃は、狙い違わず木属性の頭の弱点である額の宝石に命中した。

 八岐大蛇との戦いが始まってすでに二時間半以上。未だにどこの頭からも倒したという報告はない。

 【ザナドゥ】担当の水属性、【オデッセイ】担当の土属性が意外と強く、押され気味のようだ。

 もしもここが片付いたら僕らはそっちに回ることになるだろう。

 双剣の僕は土属性相手だとあまり戦力にならないから水属性の方かな……。

 なとど、次のことを考えていると、まだ終わってない! とばかりに木属性の頭から、僕に木の葉カッターが飛んでくる。


「【ファイアバースト】」


 右手に持った双銃剣、白のグリモアから【ファイアバースト】が封じられた弾丸を撃ち出す。

 正面に展開した炎の帯は、向かってくる鋭い木の葉を次々と消し炭に変えていった。

 もう三時間近くも戦っていれば、いい加減相手の攻撃にも慣れてくる。

 すでにこれまでの戦いで対策法は確立しており、なんとなく作業ゲーをしている気持ちになってくる。

 だが、エリアボスがこれで終わるはずがない。相手の体力はすでに残り二割を切るか切らないかというところ。そろそろ……。

 前衛で戦っていたミヤコさんが、首の根本に炎を纏わせた刀の一撃を加えた瞬間、ついにそれは来た。


瀕死状態レッドゲージになったわ! 一旦退いて!」


 メルティさんの言葉に、前衛のプレイヤーたちが波のように退いていく。

 その一方で、瀕死状態レッドゲージまで追い込まれた木属性の頭は、動きをピタリと止めた。

 ズズズズズ、と、小さな地鳴りを足の裏から感じる。次の瞬間、ゴバッ! と大地を割り、地面から無数の根が這い出してきた。

 それはたちまちのうちに鎌首をもたげる頭から長い首に巻き付き、まるで蛇の骨のように奇妙な形に変形して、樹木の鎧となってしまった。

 さらにその鎧の部分からは鋭い棘のようなものが飛び出す。まるで茨の鎧だ。


『シャッ!』


 突然、その茨の棘が四方八方に爆発したかのように飛び散る。


「うっ!?」

「がっ!」


 距離を取っていた前線プレイヤーたちに飛んできた棘が突き刺さった。

 棘と言っても元の大きさがアレだ。一つ一つが普通の槍よりも太い。まともに食らったプレイヤーは、かなりのダメージを受けてしまったようだ。


「見て! 棘が……!」


 誰かの上げた声に大蛇の方に目を向けると、棘を発射しつんつるてんになった樹木の鎧から、ニョキニョキと再び鋭い棘が成長しつつあった。


「やらせるか!」


 何人かのプレイヤーが、棘が再生する前にダメージを与えようと突っ込んでいく。

 だが、しゅるりと地面から伸びた木の根に足を絡め取られ、動きを封じられてしまった。


「マズい……!」


 ゆらりと鞭を打つ前のように巨大な蛇体が起き上がり、その全体重を拘束していたプレイヤーたちに叩きつけた。

 まだ小さいとはいえ、棘ありの巨大な鞭で叩かれたようなものだ。数人のプレイヤーが死に、三十秒のカウントダウンが浮かぶ灰色状態になる。

 何人かは味方から蘇生ポーションを与えられ、なんとかHP1の状態で生き返った。

 が、次の瞬間、またHPが0になり、死亡状態になってしまった。

 よくみると頭上に毒のアイコンが回っている。


「毒を受けてるぞ!?」


 最悪だ。毒のスリップダメージで、生き返った瞬間にまた死んでしまう。

 というか、さっきの棘ミサイルの時は毒の効果はなかったぞ? 本体から切り離されると毒の効果は無くなるのか?

 どっちにしろ、あのボディプレスを食らって死んだらアウトってことか。

 毒を受けたままではどうすることもできず、死亡プレイヤーはそのまま死に戻った。

 本拠地からもう一回ここに駆けつけることもできるかな? デスペナを受けたままじゃたぶん戦えないけど。でも長丁場になりそうだから、デスペナもそのうち消えるかもしれない。

 瀕死状態レッドゲージまで追い込んだんだ。あともう一息。

 僕は木属性の頭へと向けて全速力で駆け出した。


「【天駆】」


 空中を五段ジャンプで駆け上がっていく。木属性の頭は自分よりも高く飛んだ僕を飲み込もうと大きく口を開けた。狙い通り。


「【視線投擲】」


 眼下に見える八岐大蛇のその喉奥に、キールさんから売ってもらった、ナパームスライムの素材からできた焼夷剤と炸裂弾を放り込む。


「食らえ」


 喉の奥へと落ちるその二つ目掛けて、僕は双銃剣グリモア銃爪ひきがねを引く。

 銃口から放たれた【ファイアアロー】がそれに接触するより前に、僕は【セーレの翼】によって三たび地上へと帰還する。

 次の瞬間、ドゥン! と低く腹に響くような音がして、木属性の頭の上に『燃焼』のアイコンが回り始めた。


『ガッ!? ガガッ!?』


 口から煙を吐き出しながら、木属性の頭がのたうち回る。ドゥン、ドゥン、とほんのちょっとずつだが、木属性の頭がスリップダメージを受けていた。

 喉の奥で粘性の焼夷剤による持続ダメージを食らっているのだろう。焼夷剤は【燃焼】の効果を長くする。

 ダメージは蓄積されるはずだ。


「唸れ! 【スパイラルゲイル】!」


 またしてもミウラの作り出した竜巻に乗って、三つの影が舞い上がる。ミウラと、シズカ、後のもう一人は……リンカさん?


「【大切断】!」

「【月華斬】!」

「【ヘビィインパクト】」


 三つの戦技がのたうち回っていた木属性の頭に炸裂した。

 ふらふらと動き回っていたために、弱点である額の宝石に当てるのは無理だったが、かなりのダメージを与えたことには間違いない。

 そして【燃焼】のアイコンに続いて、頭の上にぐるぐると回転する小さな星が現れた。


「ピヨったぞ! 今のうちにやっちまえ!」


 おそらくリンカさんの【ベビィインパクト】による追加効果で、脳震盪を起こしたかのように木属性の頭の動きが止まる。

 それを好機と見たプレイヤーたちが、一斉に動きを止めた八岐大蛇へと群がり、次々と戦技を放っていく。

 やがて気絶ピヨり状態も止まり、我に帰った八岐大蛇の首は、再び鞭のようにその場にいた冒険者たちを容赦なく押し潰した。


「がはっ!?」

「ぐぅっ!?」


 逃げ遅れたプレイヤーたちが大ダメージを受ける。幸いなことに今回は即死したプレイヤーはいなかったようだ。

 二発目の ボディプレスが来る前に、這う這うの体でダメージを受けたプレイヤーたちがその場から逃げ出した。

 木属性の頭が纏った茨の鎧により、毒を受けてしまったプレイヤーたちに回復職から解毒魔法と回復魔法が飛んでいく。

 そうこうしているうちに【燃焼】の効果が消え、再び木属性の頭が鎌首をもたげる。

 かなり追い込んでいる。HPはすでに一割を切っているし。

 すでに戦闘を開始して三時間以上が経っているが、まだどこの頭も討伐完了という知らせがない。

 ひょっとしたら、僕らが討伐一番乗りになるかもしれないぞ。まあ、木属性の頭は比較的楽なんじゃないかって予想はしてたけども。


「【インフェルノ】!」


 『魔王の王笏』を全開にさせた、リゼルの火属性魔法が放たれる。

 恐ろしいほどの規模の火柱が立ち、八岐大蛇の首の一本を丸々焼いていく。


『ギャルララララァ!?』


 木の蛇に火の蛇が絡みついてるようにも見えるな。リゼルの【インフェルノ】によって焼き尽くされた木属性の八岐大蛇から、茨の鎧が消し炭になってボロボロと剥がれた。


「防御力が下がったわ! 一気呵成に攻めて!」


 メルティさんからの言葉にミヤコさんやハルをはじめ、ミウラ、シズカ、リンカさんらが武器を手に突っ込んでいく。

 レンやリゼルも銃や魔法を放ち、ウェンディさんは飛んでくる木の葉のカッターから二人を守っていた。

 僕も負けてはいられない。足に最後の力を入れて八岐大蛇へと駆け出していく。

 【天駆】を使い、一気に八岐大蛇の頭の上まで駆け上がった。


「【分身】」


 七人となった僕が一斉に両手に持った双銃剣グリモアの引金を引き、二つ合わせて十発ずつの【ファイアアロー】を木属性の頭に食らわせる。計七十発の【ファイアアロー】だ。こいつは効いたろう。

 そこからの……!

 双銃剣グリモア銃爪ひきがねを引きっぱなしにし、刀身に火属性を纏わせる。

 弱って躱すこともできない今なら、確実に弱点である額の宝石に決めることができるはずだ。

 

「【ダブルギロチン】!」


 七人の僕が叩きつけるように大きな翡翠色の宝石に二つの刃──足して十四の刃を振り下ろす。


『グギャアアァァァァァァッ!』


 魂消たまげるような声を轟かせて、木属性の頭はのたうち回る。

 分身を解き、【セーレの翼】で地上に戻ると、木属性の頭はもはやボロボロと言ってもいいほどに朽ちていた。


「【クロスファイア】!」


 そこへレンの十字砲火クロスファイアがとどめとばかりに撃ち込まれる。その一撃が決め手となり、木属性の頭のHPはついにゼロになった。

 鎌首をもたげていた頭が力を失うように、その場に地響きを立てて倒れる。

 額についていた翡翠色の宝石に、ピキリとヒビが入り、あっさりと粉々に砕けて散った。


「勝った……?」

「やったの……?」

「やったわ!」


 小さな確認だった言葉がやがて大歓声となってあたりに響き渡った。

 やっとか……。


「長かったー……」


 戦いとしてはそれほど変化のあるものじゃなかったけど、とにかく時間が……。結局四時間近くになってんじゃん……! もうすぐ昼になるぞ……。

 しかしまだ他の七組が戦い続けている。未だ全滅したって話は来てないから、まだなんとか持ち堪えているはずだ。


「他のところの状況を確認してみるわ。みんなは少し休んでいて!」


 チームリーダーであるメルティさんがチャットを繋いで他の組のリーダーと連絡を取り始めた。

 今のうちに諸々回復しないと……。

 倒れた木属性の頭は光の粒とはならず、根本から灰色に色が変わっていた。これは死んでいる……んだよな?

 まさかと思うが、時間が経つと復活、なんてのはやめてくれよ……!

 僕はどうしても嫌な不安が拭えず、回復薬ポーション類を飲みながらも倒れた木属性の頭をずっと睨み続けていた。









新作『桜色ストレンジガール』、第一巻発売中です。よろしくお願い致します。


挿絵(By みてみん)

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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
ヒドラ系の敵は首の切り口を焼くのが再生封じの伝統ですが、ヤマタノオロチはどうなんでしょうね。
ヘビィインパクトじゃない? ベビィの効果とは?
1話で首1本討伐とすると、戦闘終了まで8ヶ月強? なげぇ……
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