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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第一章:DWO:第一エリア
17/181

■016 初伐採




 その日、僕はログインしたと同時に届けられたメールを受けて、共同工房のリンカさんのところへ来ていた。


「これが頼まれていたリング。狙っていた効果はつかなかった。あと【投擲】用のナイフ。安物20本。サービスでナイフベルトも付けておく」

「ありがとうございます」


 僕は加工してもらったサファイアの指輪とナイフを受け取る。


─────────────────

【青天の指輪】 Dランク

 INT(知力)+8


■サファイアが嵌め込まれた指輪。

□装備アイテム/アクセサリー

□複数効果無し/

品質:S(標準品質スタンダード

─────────────────


 あー、INT(知力)かー。あまり僕には関係ないところだな。

 パーティにもあまりINTを重視しているメンバーはいないし……。売るのもなんだし、一応は装備しておくか?

 アクセサリーは五つまで装備できるし、今のところ『兎の足』しか装備してないしな。

 そういやこれはXランクじゃないんだな。オリジナル作品ではないということか。


─────────────────

【スローイングナイフ】 Eランク


■鉄製のナイフ。

□消費アイテム/

□複数効果無し/

品質:HQ(高品質ハイクオリティ

─────────────────


 まあ、ただの投げるナイフだ。一応ナイフベルトに十本差して、腰に装備しておく。ちなみにこのベルトもアクセサリー扱いになる。


─────────────────

【ナイフベルト】 Fランク


■ナイフを収納するベルト。収納できるのは10本まで。

□装備アイテム/アクセサリー

□複数効果無し/

品質:S(標準品質スタンダード

─────────────────


「じゃあ、約束通りこれ」

「毎度あり」


 トレードウィンドウで『エイジャ鉱石』二つと『サンドラ鉱石』二つを表示し、『青天の指輪』と『スローイングナイフ』20本、『ナイフベルト』と交換する。


「というか、僕に良さげなアクセサリーってないですかね?」

「というと?」

「STR(筋力)、AGI(敏捷度)、DEX(器用度)……その辺りが上がるような」

「手持ちにDEXが上がるのがあるけど、カチューシャだからたぶんシロちゃんには似合わない」


 確かにそれはあんまり……なあ。

 アクセサリーはおしゃれアイテムという面もあって、女性的デザインのも多い。髪型を変えるリボンから、バレッタ、ネックレス、ブローチ、指輪、ペンダント、イヤリング等々。

 僕の手に入れた指輪も微妙なラインだ。ブレスレットやアンクレット、ベルトのバックル、サングラスなど、男性が装備してもおかしくないものも多いんだけどな。


「アクセサリー系ならトーラスの方がいい」

「トーラスさん?」

「【細工】持ち。最近いろいろ作ってる。今日もここに来てる」


 トーラスさん、【細工】スキルも持ってたのか。

 リンカさんの言う通り、トーラスさんが作業をしている作業場へ行ってみることにした。何かいいアクセサリーが手に入るかもしれない。

 No.124と書かれたプレートの区画で、作業台の前に座り、何やら磨いているトーラスさんがいた。


「こんちは」

「ん? おー、なんやシロちゃんやないか。どないしたん?」


 トーラスさんが相変わらず人懐っこい糸目を向けて、怪しい関西弁で話しかけてくる。


「実は何かアクセサリーでいいものがないか探してまして。リンカさんにトーラスさんなら何か持ってるんじゃないかと聞いたもので」

「んー、急ぎなん?」

「今週末にエリアボスを倒しに行く予定なんで、それまでに手に入れば」

「なるほど。何点かあるで。ちょい待ってや」


 作業台の上にいろいろ並べていく。ブレスレット、指輪、ピアス、数珠、ネクタイピン、根付なんてものもある。

 中でも目を引いたのは……。


「このバッジいいですね」

「それか。ええやろ。十二支揃ってるんやで」


 サイズは五百円玉より少し大きめ。ネズミからイノシシまで十二種の動物が象られたバッジだ。

 やっぱり僕としてはウサギのバッジを手に取る。すでに【鑑定済】になっていたので、バッジの性能がすぐにわかった。


─────────────────

【メタルバッジ(兎)】 Xランク

 AGI(敏捷度)+16

 DEX(器用度)+14


■兎を象ったバッジ。

□装備アイテム/アクセサリー

□複数効果無し/

品質:S(標準品質スタンダード

【鑑定済】

─────────────────


「これ、いくらです?」

「シロちゃんなら18000Gのところ16000Gに負けとくで」


 それでもけっこうするな……。Xランクってことは、トーラスさんのオリジナルだろうし仕方ないか。

 16000Gを払いウサギのバッジを手に入れた。さっそく胸元につけてみる。銀ではなく鈍色のバッジが控えめに輝きを放つ。


「なかなか似合っとるやんか」

「そんなもんですかね」


 よくわからんが、まあいいや。これで少しでも強くなったのならありがたい。


「ああ、そうや。シロちゃんにちょっと相談があるんやけど。木材でええ素材とか持ってへんか?」

「木材? なんに使うんです?」

「実はアレンのパーティに弓使いがおってな。この前のエリアボスとの戦いで弓をダメにしてもうたんよ。で、その修復を頼まれたんやけど、もう作り直した方が早いかと思ってな。どうせ作るならええもん作りたいやん?」


 なるほど。確かトーラスさんは【木工】スキルも持ってたんだっけか。でも第三エリアにいったパーティなんだから、いい素材だってあるんじゃないか?

 そう思って聞いてみると、第三の都の近くには伐採できるような森がまだ見つかってないんだそうだ。


「木材はないですねえ。そもそも【伐採】のスキルを持ってないんで、どの木が素材になるかわかりませんよ?」

「そこらへんは必要経費としてわいが出すわ。取って来てくれるなら【伐採】と手斧をセットで譲るで?」

「うーん……」


 また【セーレの翼】で跳ぶのか……。狙って森とかに行けたらいいんだけどな。砂漠とか雪山に行ったら無意味だし。

 っていうか、たぶんトーラスさん、僕のスキルのこと予想ついてるな、これ。「取って来てくれるなら」とか言ってるしさ。

 第二エリアの【クレインの森】なら行けるんだが、あそこにある素材なら、アレンさんたちも手に入れているだろうし。


「確実に手に入れられるかはわかりませんが、一応やってみます。あと、その素材でウチの弓使いの分も作ってもらえますかね?」

「ええで、まかしとき。そんじゃこれ【伐採】と手斧な」


 【伐採】のスキルオーブと手斧をもらって、トーラスさんと別れる。

 さて、レンの弓のためにも頑張って伐採してきますか。

 




 【セーレの翼】をセットしてポータルエリアから転移する。たどり着いたのは平原。遠くには雪山が見える。その麓には森のようなものが広がっていた。あそこまで行けば伐採できそうな木がありそうだが……。


「ダメだな。遠過ぎる」


 ここは【嫉妬】の第四エリアにある【レール平原】。明らかに僕のレベルより高エリアだ。

 見晴らしのいいこういうところでは、身を隠しようもないし、あそこの山近くまで無事でいける可能性は低いだろう。ポータルエリアの近くに【伐採】ポイントがないとな。

 とか考えてるうちに、遠くに見えたカモシカのようなモンスターがこちらへ向かってきている。


「撤退、撤退っと」


 ポータルエリアを出て、再び入る。カモシカがこちらへ来る前に、別エリアへ【セーレの翼】で転移した。

 次に視界に広がったのは森の中だった。お、当たりか? しかし、森の入り口じゃなくて森の中ってのが珍しいな。

 森林浴でもしたいくらいに綺麗な森だ。緑の木洩れ陽がキラキラと輝いている。

 マップ画面で確認すると、【色欲】の第四エリア……ではあるのだが、陸地から離れた孤島にある【フィエリアの森】となっていた。これってやっぱり船を手に入れて来る場所なのだろうか。

 見回すと【伐採】と【採取】のポイントがいくつかある。よし、ここなら襲われてもすぐさまポータルエリアへ逃げ込むことができるだろう。

 とりあえず近場に生えていた木に登り、僕の腰ほどもある枝の伐採ポイントを手斧で切り始めた。


「意外と切りやすいな。っと、切れた」


 地面に落ちた三メートルほどの枝から、細い枝葉の部分を切り落とし、二メートル半くらいの丸太にする。弓を二つならこれだけで充分だろう。

 【unknown】だったので、一応、鑑定してみる。


────────────────

【フィエリアの原木】 Bランク


■unknown

□木工アイテム/素材

品質:S(標準品質スタンダード

────────────────


 相変わらず役立たずの【鑑定】ですな……。名前とランク、品質以外、詳細がまったくわからん。Dランク以上が鑑定できないわ。いったいどういう物に使うのに適しているのかさっぱりだ。

 【植物学】とか【鉱石学】とか取ろうかなあ。熟練度は上がってきてるんだけどな。

 おっと、何かに使えるかもしれないから、切り落とした枝も回収しとこう。


────────────────

【フィエリアの枝】 Cランク


■unknown

□木工アイテム/素材

品質:S(標準品質スタンダード

────────────────



「おや?」


 フィエリアの枝を切り落とした部分からも採取ポイントが見えた。よく見ると、切り口から無色透明な樹液のようなものが滴り落ちている。触ってみると初めはネバネバとしていたが、そのうち固まってしまった。

 指についた樹液も飴のようにパリパリと砕けて取れる。

 ポーションの瓶を取り出して、木の幹に傷をたくさんつけ、樹液を集めてみる。


────────────────

【フィエリアの樹液】 Cランク


■unknown

□調合アイテム/素材

品質:S(標準品質スタンダード

────────────────


 調合アイテム? 接着剤とかになるのかな?

 蓋をした瓶の中の樹液は固まることなく水飴のような粘質さを保っていた。変なの。

 何かと調合すると、強力な凝固作用を生み出すのかもしれない。

 おっと、他の採取ポイントも忘れずに、っと。僕は目の前の地面に生えていた採取ポイントの草花を、次々と採取していく。


────────────────

【ミルフラウの花】 Bランク


■unknown

□調合アイテム/素材

品質:LQ(低品質ロークオリティ

────────────────


────────────────

【霊薬草】 Cランク


■unknown

□調合アイテム/素材

品質:S(標準品質スタンダード

────────────────


────────────────

【毒薬草】 Cランク


■unknown

□調合アイテム/素材

品質:LQ(低品質ロークオリティ

────────────────


 おい、ちょっとまて。Cランクの霊薬草はいいとして、【毒薬草】ってのはなんだ。毒ってことか? もうすでに触っちゃったし、引き抜いちゃったけど。何もステータスに変化はないが。

 食べると毒なのか、調合すると毒薬になるのかわからないが……まあ、一応取っておこう。

 しかし普通『毒草』とかじゃないのかね? 『薬』が入っているってことは、毒にも薬にもなるってことなのかな。

 黙々と僕は採取する。気が付くとずいぶんとポータルエリアから離れてしまっていた。


「おっとまずい。あんまり離れるとモンスターが出てきたときに、逃げられなく……」

 

 なる、と振り向いた先に、凶暴そうな二本角の黒馬がこちらを赤い目で見ていた。おい、何回目だこのパターン。馬の頭上に【バイコーン】というプレートがポップする。


「ブルルッ!」

「っとお!」


 突っ込んでくるバイコーンの一撃を躱す。スキルは相変わらずの回避装備にしているが、それでもキツいことには変わりはない。

 一回目はなんとか躱せたが、二回目でバイコーンの一撃をまともに喰らい、一発で死に戻った。無理だよ、コレ……。





 土手っ腹に喰らった痛みに顔を顰めつつ、(と言っても軽く叩かれたくらいの痛みだが)噴水広場から歩き出す。ああ、怖かった。

 何度死んでも慣れない。背中に冷汗がべっとりだ。気安く死に戻りとかできる奴は自殺願望があるぞ、きっと。

 あ、ひょっとしたらこの恐怖感って、現実での死とかに慣れさせないためなのかもしれないなあ。


「もっと回避力が高ければ、躱しながら攻撃もできるんだろうけどなあ。躱すのだけで精一杯だ」


 おかげで【見切り】とか【敏捷度UP(小)】とかの熟練度はけっこう上がってきてるけど。

 金庫のおかげでお金は減ってない。バッジを買ってなかったら、足が出ていくらか減ってたな。

 噴水広場を後にして、共同工房へと戻る。トーラスさんの作業していた炉の前へ行くと、リンカさんもそこに来ていた。


「戻りました~……」

「おう、早かったやんか。で、収穫はできたんか?」

「できましたよ。死に戻りましたけど……」

「あちゃー……。ひょっとしてお金減ったん?」

「いや、金庫以下だったのでそれは大丈夫ですよ」


 どうやら減っていた場合、払ってくれる腹積もりだったようだ。お金は大丈夫だが、弱体化のデスペナは受けてる。

 とりあえずブツを渡そう。インベントリから原木と枝を作業台の上に出す。


「こりゃまた……えらいの持ってきたなあ。Bランクの原木なんて初めて見るで」

「ん。これで弓や杖を作ればかなりのものができる。魔法攻撃力を高める効果はありがたい」


 二人が作業台の上にある素材を見ながら頷き合う。魔法攻撃力を高める? 二人はちゃんと【鑑定】できているのか?

 僕には「unknown」としか表示されないのだが。


「二人とも【植物学】とか取ってるんですか?」


 不思議に思い聞いてみると、二人とも別に【植物学】は取ってないとのこと。じゃあやっぱりかなり【鑑定】の熟練度が高いのか。


「【鑑定】の熟練度を上げるには知らない素材をたくさん鑑定する必要がある。私たち生産職は素材や武器防具、アイテムなどを持ち込まれたり、作り出したりしているから、その機会が多い」

「それと普通に知識やな。武器や防具はしゃあないけど、植物や鉱石は図鑑があればわかるやんか。【植物学】は【鑑定】の熟練度が低くても、未知の植物が鑑定できるスキルや。けど、図鑑とかに載ってるものやったら、普通に読めば鑑定できるようになるで」


 なんてこった。要するに勉強すれば鑑定できるってことか! 普通のことなのに頭からスッポリ抜けていた。

 ゲームだから熟練度が上がれば自然と鑑定できるようになると……。いや、その通りではあるのだが。

 もちろん図鑑に載ってないものは鑑定できないだろうか、今よりはずっとましになるはずだ。


「……ひょっとして、モンスター図鑑ってのもありますかね?」

「あるで。……ははあ、シロちゃん初めてのモンスターで【鑑定】が通じなかったから、それ以降【鑑定】しなかったんやろ?」

「うぐっ!」

「熟練度がゼロの状態なら、初見のモンスターはみんなそう。初心者が陥りやすい罠。初めてはなんの知識もないんだからできなくて当たり前。何回か戦えば特性もドロップアイテムもわかってくる」


 そりゃそうだ。リンカさんの言う通り、現に僕は一角兎がどういったドロップアイテムを落とすか、もう知っている。それが「unknown」なわけがない。

 そうとわかればさっそく図鑑を手に入れるとしよう。そういえば前に出会ったNPCのお爺さん、バラムさんのクエストを放置してたっけ。


─────────────────────

★クエストが発生しました。


■個人クエスト

【本屋へ行ってみよう】

 □未達成

 □報酬 ???


※このクエストはいつでも始めることができます。

─────────────────────


 これこれ。本屋なら図鑑も売っているかもしれない。ついでにクエストもクリアしてレベルも上げておこう。

 トーラスさんから原木と枝のお金をもらったが(かなりの金額になった)、レンの弓を勝手に頼むわけにもいかないので、その分の素材だけは取り置いてもらえるように頼んでおいた。

 後日、レンと一緒に来ることにしよう。

 僕は二人と別れると共同工房を出て、バラムさんの本屋へ向かうことにした。どうせ今はデスペナ中でフィールドに出られないしな。

 どんな本があるかちょっと楽しみになってきた。













DWOデモンズ ちょこっと解説】


■アクセサリーについて①

様々な効果のあるアクセサリーだが、中には収納系のアクセサリーも存在する。

『ウエストポーチ』や、『リュック』、『肩掛けカバン』などは、インベントリ以外にさらにアイテムを入れておくことが可能。

収納しているだけなので、『ウエストポーチ』にSTRの上がる指輪を複数入れていても装備効果は働かない。







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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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