■153 雷獣との戦い
落雷による電力チャージとか、そりゃないだろ。それってこのフィールドなら電力回復し放題ってことじゃん。なんかそれズルくない?
まあ、向こうもHPMPSTをポーションとかで回復しまくっている僕らに言われたくはないだろうけどさー。
まさにこのフィールドのためにいるモンスターだよな。いや、このモンスターがいるからこのフィールドがあるのか。
雷獣が再び口を開ける。バチバチとした雷の渦が口の中に現れて、またしても雷撃砲が放たれた。
今度は初見ではないので、みんなすぐに反応し、散開して回避する。しかしそれでも逃げ遅れたAGIの低いプレイヤーたちが何人か巻き添えになったようだ。
サンダーブレス? を撃ったことで雷獣の体からの発光が弱くなった。やはりあれはかなり電力? を消耗するらしい……あれ? ちょっと待て、まさか……!
雷獣の頭上の雷雲がパチッと弾けた瞬間、僕は咄嗟にインベントリから十字手裏剣を取り出して雷獣の頭上へと【投擲】した。
ドォン! と轟音と共に落ちた雷が、僕の投げた手裏剣の方へと落ちる。
あっぶな────っ!? また回復されるところだった!
「シロ兄ちゃん、ナイス!」
「さすがだぜ、シロ!」
ドキドキしている僕の横をミウラとガルガドさんが駆け抜けていく。
それに釣られるように何人かの攻撃班が雷獣へと向かっていった。
「弓使いは時折り鉄の矢を雷獣の上空へ! 当てなくてもいい、落雷による回復を防いでくれ!」
アレンさんが後方部隊へ向けて叫ぶ。金属の矢を一本、インベントリから取り出してすぐに撃つだけなら落雷を受ける可能性は低い。
ミウラたちと戦っている雷獣が再び雷を呼ぼうとするが、そのタイミングでレンたち弓使いたちが、金属製の鏃の矢をその頭上へと放って電力チャージを妨害する。
何もしなくても雷獣の電力は回復しているようだが、落雷を防げばいきなりフルパワーなんて事態にはならないで済む。
『ガロロォッ!』
「ぐはっ!?」
「うぐっ!?」
雷獣の素早い動きに攻撃班のプレイヤー二人が吹っ飛ばされる。
盾職のプレイヤーも攻撃を受けてはいるが、【不動】の効果でなんとか吹っ飛ばされずに後方部隊を守っていた。
「【加速】」
僕は雷獣に接近し、双骨刀・骸焉でその脚を斬り裂く。ここはスピード重視のモンスターを倒すセオリー通り、脚を重点的に狙っていこう。
「【一文字斬り】」
「ガッ!?」
すれ違いざまに右側の三本の脚を斬り裂きながら駆け抜ける。
ぬかるんだ地面をなんとかグリップし、反転。振り向いた雷獣へ向けて、もう一度【一文字斬り】。
今度は左脚三本を斬り裂いていく。
四肢、いや、六肢? を切り裂かれた雷獣は僕から距離を取る。少しは動きが鈍ったか?
「【乱れ突き】!」
「【アクセルエッジ】!」
スピードがダウンした雷獣に、シズカとおキャンさんの戦技が炸裂する。どちらも手数の多さを活かした戦技だ。雷獣は完全には避けられず、数発のダメージを負う。
「【ストーンレイン】!」
「【スプラッシュエッジ】!」
そこへさらに魔法攻撃が追い討ちをかける。どちらも広範囲魔法だ。ダメージとしてはそこまで高くはないが、確実にヒットする。
「ガッ!」
と、雷獣の頭上にある雷雲がパチッ、と落雷の前兆を見せた。すぐさま弓使いたちが何本もの金属の矢を雷獣の頭上へと射る。
「えっ!?」
雷獣はその身を低く沈み込むと、次の瞬間六本の脚で大きく地面を蹴った。
雨の中、空高く舞い上がった雷獣は、頭上に飛んでいた何本もの矢を突き破り、それよりも上空にその身を躍らせる。
「しまっ……!」
天から轟音が鳴り響き、稲妻が雷獣の体を貫く。
フルチャージ状態になった雷獣は地面に着地するとまるで爆発したかのように四方八方に雷撃を放った。
「きゃっ!?」
「ぐっ!?」
周囲にいたプレイヤーたちが電撃を浴びて、その場にくず折れる。
死に戻ったプレイヤーはいないようだが、けっこうなダメージを受けたようだ。
ダメージをくらい、雷撃で硬直しているプレイヤーたちへ目掛け、雷獣がものすごいスピードで攻撃を加えていく。
一撃を加えたら次、一撃を加えたら次、と、立ち止まることなくプレイヤーの中を突き進む。
「止めろ!」
アレンさんとウェンディさんが大盾を構えて雷獣の攻撃を受け止める。
前脚の攻撃を受け止められた雷獣はそのままアレンさんたちへ向かって雷撃を放った。それも何発も。
「ぐ……! 【ソニックブロウ】!」
『ガァ……ッ!?』
アレンさんの盾から衝撃波のようなものが放たれる。それを正面から受けた雷獣が後方へと吹き飛ばされた。
すぐさま支援部隊からアレンさんたちに回復魔法が飛んでいく。
盾で軽減されたダメージをさらに軽減するレアスキル【鉄壁】を持っているアレンさんはまだしも、他の盾職、ウェンディさんたちのダメージが大きい。
追撃させるわけにはいかないと、僕も【加速】を使って前に出る。ヘイトをこちらに向けなければ。
アレンさんのところへ再び突撃しようとする雷獣の横から攻撃を仕掛ける。
僕に気付いた雷獣は向きを変え、その体から電撃を放ってきた。
【心眼】でそれをギリギリに躱し、雷獣の懐へと飛び込んで戦技を放つ。
「【スパイラルエッジ】!」
回転しながら跳び上がり、刃の渦を首元目掛けて放ったが、向こうも素早くそれに反応してギリギリで躱された。くっ……だけどここで諦めるもんか!
「【ダブルギロチン】!」
『ガアッ!?』
空中でくるんと縦回転を加え、両手の双骨刀をそのまま振り下ろす。
ちょうど左手の双骨刀が、雷獣の右眼を切り裂いたとき、まばゆい閃光が放たれ、気がつけば僕は吹っ飛ばされていた。
「ぐっ!?」
背中からぬかるみの中へ落ちる。至近距離から雷撃を食らったのか? 身体が重い。HPがレッドゾーンまで突入している。
インベントリからハイポーションを取り出して一気飲みすると、身体の重さが抜けた。もう一本飲みフル回復させておく。
幸いにも雷獣は眼を斬り裂かれてもがき苦しみ、そこにプレイヤーたちが押し寄せて、こちらをどうこうする余裕はないようだった。
くそ、攻めすぎたか。もうちょっとで死に戻るところだった。
少しは動きが鈍くなってきたと思うが、それでもかなりのスピードで雷獣は動いている。
あのスピードについていけないプレイヤーは守り一辺倒になってしまうな。
なんとか僕みたいなAGI特化プレイヤーか、盾職が攻撃を防いだ時などの僅かなチャンスに攻撃を加えるしかない。
『ガラァァァァァッ!』
雷獣が咆哮し、光り輝く三つの尻尾が三方向に、ビンッ、と立ったかと思ったら、それが稲妻と化して根本からパンッ! と分離した。
放たれた尻尾は細長い蛇のような稲妻となり、地面をものすごいスピードで這いながらプレイヤーを襲い始める。
「ぐっ!?」
「あがっ!?」
雷の蛇に触れられたプレイヤーがその場に倒れ込む。そばに駆け寄ったプレイヤーが倒れたプレイヤーの様子を見てこちらへと声を上げた。
「麻痺属性の攻撃だ! 直接触れるな!」
麻痺……? 感電するってことか?
僕らの方にも雷蛇の一体がジグザグと稲妻のように這い寄ってくる。くそっ、遠隔操作の雷かよ!?
『シャッ!』
「っと!」
まるで本物の蛇が飛びかかってくるように、稲妻が僕を襲う。
それをなんとか躱して一撃を加えると、思ったよりかなりのダメージが通った。んん? あまり防御力は高くないのか? いや、違う。
「くそっ、武器が通じねえ! 魔法で攻撃してくれ!」
「付与術師! 魔法付与を!」
周りからそんな声が飛んでくる。そうか、この雷の蛇は通常の武器が通じない霊的モンスターなのだ。
僕の持つ『双骨刀・骸焉』は霊的モンスターに25%の追加ダメージという効果がある。それが働いたのだろう。
霊的モンスターには普通の武器は通じないが、魔法が付与、あるいは特殊効果が付いている武器ならダメージが通る。双骨刀も後者の部類で、霊的モンスターにもダメージが通るっぽい。
まさか意味がないと思っていた双骨刀の特殊効果がこんなところで発揮されるとは……。
ならばここは攻めの一手だな。
「【アクセルエッジ】」
『キギィ!?』
左右からそれぞれ四連撃をくらい、雷蛇が仰け反った。25%の追加ダメージということは、合計で二撃分多くダメージを与えているってことだ。手数が多ければ多いほど有利になる。
雷蛇は鎌首をもたげ、臆することなく僕に向けて飛びかかってきた。
「【分身】、【双星斬】」
今度は八人に分かれての左右五連撃。合計八十連撃。25%追加で百連撃分のダメージをくらい、雷蛇は光の粒になって消えた。
雷獣の方を確認すると、切り離された尻尾のうち一つが元に戻っていた。
しかしその尻尾には輝きはない。黒く変色し、力無く項垂れている。
「【スパイラルランス】!」
リゼルの放った風の槍が残りの雷蛇を穿つ。基本、リゼルが使う魔法は火属性と風属性だが、雨が降り続くこのフィールドでは風属性魔法で対抗するしかない。火属性が使えない以上、合成魔法も使えないしな。
「やあぁぁっ!」
リゼルの【スパイラルランス】でダメージを受けたところに、シズカが骨の薙刀を横薙ぎにして雷蛇の首? をスパンと刎ねた。
シズカの薙刀にも特殊効果が付いていたのかな? リンカさんの作る武器は付与宝珠を使って特殊効果が付いているものが多いからな。
武器防具にランダムで様々な効果を与える付与宝珠は課金アイテムだから、本来ならそんなに気安く使えるものではない。狙ったものどころか、マイナスな特殊効果が付くこともあるしね。
だけどもリンカさんはアイテムを素材状態に戻す【復元】を持っているから、変な特殊効果が付いても『やり直し』ができるのだ。一日の回数制限があるとはいえ、これは大きなメリットである。
……あれ? なら僕の双骨刀にもっといい特殊効果が付くまで『やり直し』してくれてもよかったんじゃ……。
ま、まあ、課金アイテムだし、そこまで要求するのは筋違いか。僕がお金を出したらよかったのかもしれないけど。付与宝珠リアルマネーでそこそこするからなぁ……。
雷獣の尻尾が二つになった。シズカの倒した分だろう。こちらも光無く燻んだ色をしている。
『ガロァッ!』
雷獣がひと鳴きすると、最後の雷蛇が空中を駆けて尻尾へと戻っていった。
三本中、二本が光を失っている。HPも半分を切った。少しずつだけど、確実に追い詰めている。ここからが正念場だぞ。
「もう一回こいつを喰らえ!」
【カクテル】のギムレットさんが粘着網の球を投げ、同じギルメンのカシスさんがまたもそれを射ち抜く。
再び雷獣の頭上から粘着質の網が落ちて、やつを絡めとった。
その隙に攻撃班が近寄ってダメージを与えようとするが、雷獣はすぐに全身から稲妻を放ち、粘着網の束縛から逃げ出した。
くそっ、同じ手は通用しないか。あいつの不意をつくような攻撃をしないと……。
待てよ? 【セーレの翼】を使えば……できるか?
とりあえず試してみようと、僕はフィールドを駆けて必要なメンバーに声をかけていった。
ミウラ、ガルガドさん、ギムレットさん、レーヴェさん、アイリス、クローネさん。
【月見兎】、【スターライト】、【カクテル】、【ゾディアック】、【六花】、【ザナドゥ】でのいずれも攻撃力が高いプレイヤーだ。
彼らに作戦の内容を伝え、一時僕とパーティを組んでもらう。
タイミングよく雷獣がアレンさんたちへ攻撃を仕掛けた。アレンさんとウェンディさんを含めた盾職たちが前に出て雷獣の攻撃を受け止める。今だ!
僕は【投擲】を使い、【セーレ】の翼のビーコンである羽根を思いっきり雷獣の頭上へとぶん投げた。
そしてすぐさま【セーレの翼】を起動。
パーティを組んだ僕らは一瞬にして雷獣の頭上へと転移する。そして落下しながら真下の雷獣へ向けて戦技を放つ。
「【双烈斬】!」
「【魔神突き】!」
「【グランブレイク】!」
「【流星脚】!」
「【サザンクロス】!」
「【オーラブレード】!」
「【ダブルギロチン】!」
『ギャフ、ッ!?』
雷獣にしてみたら、突然背中に七発もの戦技を同時に食らったのだ。たまったものではあるまい。
バチッ、と雷獣の体から火花がスパークした瞬間、僕らは急いで背中から退避した。
周囲に稲妻を撒き散らし、雷獣が後ろへと飛び退って僕らと距離を取る。
「シロ、もう一回いけるか!?」
「いやー……完全に警戒しているから無理かな……。下手したら上に電撃放たれてみんなやられますよ?」
ガルガドさんの提案を却下する。さっきのは完全に不意打ちだったからな。粘着網の時のように、ネタバレした戦法を二度も食らうほど間抜けじゃあるまい。
でも今の攻撃でかなりのダメージを与えることができた。大きく前進だ。こっちの被害もかなりのものだが。
なんだかんだですでに四分の一ほど脱落者が出ている。両面宿儺の時よりは少ないが、あの時より参加プレイヤー数が少ないしな。
人が少なくなれば当然こちらの攻め手にも欠けるようになる。やられたのはほとんどが攻撃班のプレイヤーだ。
ただでさえ素早いこいつに一撃を与えるのはなかなかに骨が折れる。数が多いからなんとかなっていた有利さも、時間と共に無くなってきた。
さらに大勢が動き回り過ぎたせいか、足下がどんどんぬかるんでいる。その上……。
「おっとぉ!?」
ドォン! と近くに雷が落ちる。やっぱり落雷の間隔が早くなってないか!?
雷獣が飛び上がり、阻害するために弓使いが射った金属の矢を飛び越えて、その身に雷を受ける。
着地と同時に周囲に雷撃を撒き散らし、再びジャンプ。落雷を受けてチャージ、着地して電撃波、の繰り返しだ。近づくこともできない。それどころか、着地するまでにできるだけ遠くまで逃げないと雷撃を喰らってしまう。
落雷を受けるためにかなり高くジャンプするから、着地までいくらか時間があるってのが救いかな……。
とはいえこのままではジリ貧だ。さっきから雷獣は回復職へ狙いを定めてジャンプしている。
回復職は動きがそれほど速くはないのがほとんどだ。中には回避型の回復職なんてのもいるが、それはごく少数である。
基本的に耐久力を上げて生き残り、減ったHPを回復して立ち回る役だからな。自分が生き残らないと回復することもできないし。
回復職がやられたらもう僕らには全滅する未来しかない。なんとしても彼らを守らないと。
『【タウントロア】!』
複数人の盾職たちが挑発の戦技を発動する。雄々しい咆哮が雷獣のヘイトを集め、標的が回復職たちから彼らへと移った。
『ガロロロッ!』
稲妻のようなヒット&アウェイで、盾職のみんなにダメージが蓄積されていく。
全身に雷を纏っての体当たりだ。衝撃のダメージ自体は防げても、そこから発する雷撃までは止められない。
「【ミラーシールド】!」
一部のプレイヤーが反射スキルを使ったが、雷を返したところで雷獣にはさしたるダメージは与えられない。
「【氷縛】!」
『ガガッ!?』
アイリスの持つソロモンスキル、【クロケルの氷刃】が、雷獣の脚を地面に凍りつかせていく。
六本の脚にまとわりついた泥水が凍って動きを止めた雷獣に、ガルガドさんが大剣を突き出して突っ込んでいく。
「【剛剣突き】!」
『ガフッ……! ガロロロオオォォァァァァ!』
横腹に深々と刺さった大剣をそのままに、雷獣が特大の雷撃をガルガドさんへ向けて放つ。
武器を雷獣に残したまま、盛大に吹っ飛んだガルガドさんが地面に何回もバウンドして動かなくなる。
アレはヤバいぞ……! 完全にレッドゾーンに入ってる!
もともと【鬼神族】は魔法攻撃にそれほど強くない。HPとVIT《耐久力》の高さでカバーしているだけで。
倒れて動かないガルガドさんへ、【氷縛】の拘束を振り払った雷獣が突っ込んでいく。
「やらせるか! 【ガーディアンムーブ】!」
アレンさんが一瞬にしてガルガドさんの前に現れて、雷獣の攻撃を受け止める。【ガーディアンムーブ】は対象を確実に守る便利な戦技だが、一度使うとしばらくは使えない。
雷獣がアレンさんへ向けて追撃の雷を放とうとした瞬間、飛び込んだギムレットさんが横腹に突き刺さったままのガルガドさんの大剣に、手にしたハンマーを思い切り叩きつけた。
「【メガインパクト】ォ!」
『ガフゥッ!?』
ゴブスッ! と、ガルガドさんの大剣が雷獣の横腹を突き抜けて反対側へと飛び出した。
ヨロリとよろめいた雷獣だったが、なんとか六本の脚で地面を捉え、踏みとどまる。
すると突如雷獣の目が真っ赤に変化し、全身からバチバチと大量の稲妻を放ち始めた。全身の毛という毛が逆立ち、雷光を纏っている。
三本の尻尾が大きな一つの尻尾となり、鎌首をもたげてこちらへと向けられていた。
HPがレッドゾーンに突入し、最終形態に移行したのだ。あんな状態の雷獣を相手にするのはかなり骨が折れる。ここからが踏ん張りどころなんだろう。────普通なら。
ヤツはレッドゾーンに突入した。そう、それはつまり……。
「【首狩り】」
『ガ?』
【加速】で近づいた僕が奥義を発動すると、スパン、と小気味良い音を上げて、雷獣の胴体と首が泣き別れになる。雷獣とて首がある生き物には変わりない。
僕の奥義【首狩り】は首のある相手がレッドゾーンに突入さえすれば、百パーセントの確率で成功する。エリアボスでさえなけりゃ必ず即死の奥義だ。逃げる術はない。
首を刎ねられた雷獣が光の粒となって消える。
最終形態の力を披露することなく、雷獣はその姿を消した。
「両面宿儺の時も思ったけど、なんというか最後があまりにもあっけなさすぎて、拍子抜けするね……」
「まったくだな……」
アレンさんとギムレットさんが力が抜けたようにその場に腰を下ろす。
次の瞬間、不躾なファンファーレが辺りに鳴り響き、ワールドアナウンスが流れてくる。
『おめでとうございます。雷獣討伐に成功しました。討伐に成功したクランである【白銀】の方々には初回討伐報酬が送られます。初討伐おめでとうございます』
そのアナウンスを聞いた後方のプレイヤーから歓声が聞こえてきたと思ったら、ザァザァと降り注いでいた雨がパラパラ、ポツポツ、シトシトと弱まっていき、やがて分厚い雨雲からわずかな晴れ間が覗いてきた。
どうやらこのフィールドは雷獣がいたからこその特殊フィールドだったらしい。
「シロさん、虹が!」
レンの声に見上げると、すっかり雨が上がった空には僕らの勝利を祝うかのような見事な虹が浮かんでいた。
【DWO ちょこっと解説】
■霊的モンスターについて
ゴースト、レイス、スペクターなどに加え、その他ガス系、精霊系モンスターなども霊的モンスターとされる。基本的に霊的モンスターには物理攻撃が効かない。魔法か、魔法付与のかけられた武器、あるいは特殊効果のついた武器ならばダメージを与えられる。