■147 DWOの楽しみ方
なんともおかしなところに遭遇してしまったな。
【傲慢】のギルド、【フローレス】の本拠地である喫茶店の扉を開いたら、言い争いの現場に出くわしてしまった。
今聞こえてきた【グランギニョル】ってのは、さっき行ってきたソウの所属する【銀影騎士団】とタメを張る【傲慢】三大ギルドの一つじゃなかったか?
「あん? なんだオメェは?」
「……客だけど」
所在無げに佇む僕に気がついた【夢魔族】のプレイヤーが睨め付けてくる。
赤髪で蛇のような目をした男性プレイヤーだ。腰に反り返った二つの短剣が装備されている。僕と同じ双剣使いか。
引き連れた残りの四人も全員男性プレイヤーで、それぞれ【魔人族】と【獣人族】が二人ずつ。【獣人族】は狼と狐……かな。尻尾でなんとなくだけど。
というか、その残りの四人の髪色が青、黄、緑、桃色だったもんだから、五人揃って戦隊ヒーローか! とツッコむところだった。
「シロ君いらっしゃい。ハルなら今ちょっと出てるけど、座って待ってて。コーヒーでも出すから」
目の前にいる【夢魔族】の男を無視して、ギルマスのメルティさんが僕に話しかけてきた。
「お邪魔ならまたにしますけど」
「邪魔なわけないじゃない。邪魔なのはこいつらよ」
「んだと!?」
メルティさんの言葉に【夢魔族】の男がいきり立つ。
「何度も言うようだけど、【フローレス】はどこの傘下にもならない。第四エリアのボスならあなたたちだけで行けばいいじゃない。私たちは私たちで気の合うギルドと組んでボス戦に挑むわ」
「つまり俺たち【グランギニョル】と敵対するってことか?」
「それって脅し? PKギルドと手を組んでいるってのは本当みたいね? だったら尚更ごめんだわ」
PKギルドと手を組んでいる? 本当だとしたらタチが悪いな。
PK……つまりプレイヤーキラーは『DWO』ではペナルティが重い。町に入れないし、プレイヤーと取引をすると、その相手プレイヤーはオレンジネーム……犯罪者予備軍となるため、ほとんどのプレイヤーは取引をしてくれない。
ただこれには抜け道もあって、PK……レッドネームのプレイヤーと取引をするとオレンジネームになってしまうが、オレンジネームのプレイヤーと取引をしても問題はないのだ。
つまり、間にオレンジネームのプレイヤーを挟めば取引ができてしまう。まあこれも回数を重ねるとオレンジネームやレッドネームになってしまうらしいが、数回なら問題ない。
さらに言うなら『取引』でなければ問題なくやりとりができる。
つまり、売ったり、買ったり、交換したりしなければいいのだ。無料であげればいい。
PKに無料でアイテムを渡すということは、それはつまりなにか頼み事があるということで……。そしてPKへの頼み事なんて一つしかない。
「ずいぶんと威勢がいいな。装備頼りの弱小ギルドがよ……!」
「あら、それって自虐? その装備頼りの弱小ギルドに頼らなきゃならない【グランギニョル】ってどうなのかしら。情けなくない?」
「このアマ……!」
うわー、メルティさんってこんなに好戦的だったっけ……? 脅しをかけてくる【夢魔族】の男にまったく引いていない。ホント頼りになるギルマスだな。
それにしても装備頼りの弱小ギルドって……。装備ってアレだよな、僕らが売ったやつ。
アレらは全部Aランク装備だからな。ソウの言う通り【傲慢】では話題になってしまっているようだ。
ん? つまりこの【グランギニョル】ってギルドは、【フローレス】の装備による戦力を求めているってことか?
というか……しつこいな、こいつ。もうすでに交渉は決裂してんのにそれ以上話すことなんかあるか?
しつこく食い下がる【グランギニョル】らにいい加減うんざりしてつい口を挟んでしまった。
「いい加減帰ったらどうです? それ以上は営業妨害になりませんかね?」
「あぁ? ゲームの店で営業妨害なんかねぇよ! 誰にも迷惑かけてねぇんだから、関係ないやつは引っ込んでろ!」
「いや、まさに今僕が迷惑してるんだけど。それ以上この店に絡んでくるならGMコールするぞ?」
確かにゲーム内で営業妨害ってのはないかもしれないが、他プレイヤーに迷惑をかけてもOKってわけじゃない。
プレイヤーがしつこい迷惑プレイヤーをなんとかしてくれとGMに通報すれば、内容次第では重いペナルティが課せられることもある。
パワハラやセクハラ、粘着的なプレイヤーとか、ストーカーとかな。
どうやら【フローレス】は僕らが売った装備によって【グランギニョル】に目をつけられたようだからな。責任の一端は僕にもある。こいつらをなんとかしないと。
【銀影騎士団】のように力のあるギルドならこんな脅しはされなかったんだろうが。
「GMコールだぁ? 面白え、やってみろよ。けどよ、もう町の外を歩けなくなるかもしれねぇな、お前。外に出たら誰かにキルされる覚悟をしておくんだなぁ!」
赤髪のプレイヤーが僕に向かってニヤつきながら睨みをきかせてくる。つまり町の外に出たらPKギルドに襲われてキルされるって言いたいんだろうな、こいつは。
まあ、僕はこの領国のプレイヤーじゃないので全然平気ですがね。
「安っぽい脅しだな。【グランギニョル】ってのはそうやって大きくなったのか? 『烏合の衆』って言葉知ってるか?」
「テメェ! 【グランギニョル】に喧嘩売ってんのか!?」
「ちょっと! いい加減にしてよ! 本当に迷惑だから出て行ってくれる!?」
僕らの言い争いにメルティさんがキレる。
あれ? これって僕も出て行けってことかな……?
「ケッ! 後で後悔しても遅いからな! おい、テメェら行くぞ!」
僕らを睨みつけて五人の戦隊チンピラが店を出ていく。嫌がらせに扉を思いっきり、バン! と閉めやがった。
「えっと、僕も出て行ったほうがいいんでしょうか……?」
「なんでよ。シロ君はお客でしょ。アイツらは客じゃないから」
どうやら出ていく必要はないようだ。ホッとしている僕をよそに、まだ怒りが冷めやらぬメルティさんが怒気を吐く。
「あー、もう! ホントムカつく! シエラ! 塩撒いて、塩!」
「はい!」
メルティさんと一緒にいた【魔人族】の女性が小さな壺を持って扉を開け、外へと中身をぶち撒ける。まだ外にあいつらがいるだろうに、なんとも豪快だな……。
シエラさんという金髪ショートカットの女性が、やったった! とばかりに、ムフー、と仁王立ちで息を吐いた。
「ごめんねー。せっかく来てもらったのに馬鹿の相手させちゃって」
「いえ、僕もムカついたので」
あんなのがいるなんて、【グランギニョル】ってギルドも碌なもんじゃなさそうだ。
大手ギルドであればあるほど、規律というか、そのギルド内でのルールが必要になってくる。
一人の迷惑なプレイヤーのせいで、そのギルド全体が不利益を被ることだってあるのだ。
とはいえ、よほどのことをしでかさない限り、一発でギルドから追放なんてことは無いと思う。
何度も注意をしたのに、全く改善する気もないと判断された場合、ギルドマスターにより追放という沙汰が下るのだ。
当然ながらこの追放を受けないのがギルドマスターだ。自分がトップなんだから当たり前だが。
そしてそのギルドマスターが問題を起こすようなプレイヤーを抱えていても、そいつを追放していない場合の理由。
一つはギルドマスターの身内である場合。この場合の身内とは家族だけではなく、リアルでの知り合い、友達、恋人などを含む。身内だから問題を起こしても追放しない。
そしてもう一つは、そのプレイヤーが起こす問題を問題として認識していない。つまり、同じ穴の狢だ。
そのプレイヤーがするようなことを、ギルドマスターもしている。だから追放しない。まったく悪いと思っていないから。
どっちの理由だったとしても碌な奴じゃないと思うね、【グランギニョル】のギルドマスターってのは。
普通、そんなのがギルドマスターだったりすると、大概は愛想を尽かされ、ギルドを脱退するメンバーが出たりするものなんだけど。【エルドラド】みたいにな。
それでも残っているってのは残りのメンバーも『そういう奴ら」なんだろう。これが【傲慢】三大ギルドの一つってのはどうなんだ?
不満はあるけど抜けられない、ってプレイヤーもいるかもしれない。なにせPKギルドと繋がっているようなギルマスだ。抜けたらPKされてもおかしくない。
あるいはそれ以上に大手ギルドというものに旨味があるのか。
「【グランギニョル】は元々、好き勝手やってた連中がツルんでできたギルドだからね。愚連隊みたいなものよ。で、そいつらを嫌がるプレイヤーは【銀影騎士団】か【パレード】へ勧誘されるってわけ」
なるほど。やっぱり【グランギニョル】ってのはオレンジネームギリギリのギルドなんだな。PKギルドと繋がりがあるなんて噂があるくらいだ。ルールに抵触していなければ、何をやってもいいと考える奴らなんだろう。
荒くれ者たちが一定数の集まりになるとタチが悪そうだ。
そんなことを考えていると店の扉が突然、バン! と勢いよく開いた。
【グランギニョル】の奴らが戻ってきたのかと一瞬身構えたが、そこには息を切らしたハルの姿が。
「みんな、大丈夫!? あれ!? はっくん?」
入るなり身構えた僕を見て目を丸くするハル。はっくんはやめろ。今はシロだから。
「大丈夫よ。なんとか追っ払ったから」
メルティさんが苦笑いを浮かべながら答える。どうやらシエラさんがギルドチャットで知らせていたようだ。
安心したのか、ハルが脱力したようにテーブル席の椅子に座る。
「よかった〜。まったくもう、あいつらホントにしつこい! 本当にGMコールしてやろうかな!」
「まあGMコールしても注意止まりでしょうね。明確に被害を受けたわけじゃないから……」
確かにメルティさんの言う通り、内容だけで言えば口喧嘩、口論の類だ。脅された、と言ったところで、名指しで脅迫されたわけじゃない。せいぜい匂わされた、というレベルだ。
そもそも『ぶっ殺してやる!』なんて言われたところで、現実世界とは違い、VR世界ではGMは動いてくれない。
粘着プレイヤーやストーカーとして通報するにも、まだ三回ほどなので微妙なところらしい。
「んで、なんでシロ君がここに? なんか約束してたっけ?」
「いや、ソウのところに行ってきたついでに届け物をね」
僕は【銀影騎士団】のついでにリンカさんに渡されたものをインベントリからテーブルの上に出す。ここに来たのはこいつを届けに来たのだ。
「わ!?」
「おお!」
「これって……!」
テーブルに出現したものに三人の目が釘付けになる。
見た目は銃身が長いレトロチックなマスケット銃。それでいてどこかスチームパンク的なデザインが光る、リンカさん作のスナイパーライフルだ。
「頼まれていたメルティさんの銃です。射程距離は以前渡した弓より長いそうですが、その分ブレがあるみたいで、慣れないと命中させるのは難しいらしいですよ」
基本的にはレンが使っているスナイパーライフルと同じものだ。だけどこっちの方が銃身が長いし、がっしりとしている。
まあ、レンの銃は彼女の体格に合わせているから小さくて当たり前なんだけども。
メルティさんがテーブルの上の銃を手に取る。
「思ったより軽いね。弓よりは重いけど、そこまで苦にならない感じ!」
喜びながら銃口を店内のいろんなところに向けるメルティさん。危ないんでこっち向けないで下さい。今、窓から誰かが中を見たら喫茶店強盗かと思われるぞ。
「メルティ、やっぱりどこかのギルドと組んでメガサンドクローラーを倒しに行こうよ。そしたら【グランギニョル】の奴らももう勧誘には来ないって」
ハルが浮かれるメルティさんにそんな言葉をかける。
そもそも【グランギニョル】は【フローレス】の装備が目的なのだ。まあどうせ傘下に取り込んだら入手経路を聞き出そうって腹なんだろうけど。
「あ、それならソウの【銀影騎士団】がオススメだぞ」
「うーん、【銀影騎士団】もウチらの装備を欲しがってたからなぁ……」
僕の提案にメルティさんが難色を示す。いちいち出所を聞かれるのが面倒なんだろう。でもそれももう問題ない。
「大丈夫。さっき【銀影騎士団】にAランク装備と素材を売ってきたから。たぶん近日中にメガサンドクローラーは倒されると思うから、一緒についていった方がいい」
「「「えっ!?」」」
三人の目が丸くなる。
「え、シロ君、【銀影騎士団】にAランク装備売っちゃったの!? なんで!?」
「いや、なんでと言われても。お前がソウに内緒にしようなんて言うからこうなったんだぞ。お前のギルドに売って、向こうに売らないなんてわけにはいかないだろ」
これは自業自得ってもんだろう。どうせこうなるとは思っていたけどね。僕の方にもソウに後ろめたい気持ちがあったから、今はスッキリしている。
「【銀影騎士団】にAランク装備ね……。これはかなり高い確率で第四エリアのボスを倒せるかも。こうなったら私たちも同盟を組ませてもらって、第五エリアへの一番乗りに便乗させてもらいましょう。乗るしかない、このビッグウェーブに!」
メルティさんが銃を突き上げて、決まったとばかりにこちらをニヤリと見遣る。いや、どうしろと。
まあ、【フローレス】が加わればさらに第四エリア突破が確実になると思うけど。
悔しがる【グランギニョル】の連中の顔を見れないのが残念だ。
「シロさん、Aランクの革ってありませんかね? もしあったら売ってほしいんですけど……」
おずおずとシエラさんが僕に話しかけてくる。確かこの人は、【革細工】のスキル持ちだったな。
【フローレス】の防具類を作っているって前にハルから聞いた気がする。
「いくつかはありますけど……」
Aランクの革なら第五エリアで狩ったモンスターからドロップしたものがいくつかある。
【月見兎】の防具類は、レンの【機織】で作った布か、リンカさんが作った金属鎧をメインにしているので、革系はあまり使わない。シズカの胸当てくらいか?
なので別に売っても構わないのだが、これって相場はいくらくらいなんだろう? 【怠惰】と【傲慢】で共通のモンスターなら、シエラさんたちも第五エリアに行けば自分たちで狩れるわけだし。あまりふっかけるのもな。
リンカさんに聞いとけばよかったな……。いや、僕が【鑑定】の熟練度を上げるのをサボっていたからか。
仕方ないのでギルドチャットでリンカさんに革の相場を聞き、適正価格で売った。それでもこちらには結構な儲けが出たけども。
Aランク素材は第五エリアに行くか、ガチャでランダムゲットしないと手に入らないからな……。いや、正確には第四エリアでもごく稀に見つかることもあるらしい。
Aランクの革だって、第四エリアに生息するレアモンスターを倒せば手に入るかもしれないしね。
ただそれをやるにはかなりのリスクと、根気がいるけども……。
「よーし、これで防具もなんとかなる! 準備万端整えて第五エリアへ行くわよ! 暑苦しい砂漠エリアから脱出よ!」
「「おー!」」
【銀影騎士団】と【フローレス】が組めば、たぶん第五エリアへ行くことはできると思う。
ううむ、暑苦しい砂漠エリアを抜けても【傲慢】の第五エリアは火山帯です。また暑いところですよ? とは口が裂けても言えんな、こりゃ。
やる気に満ちた三人に曖昧な笑顔を残し、僕は【傲慢】の領地を後にした。
◇ ◇ ◇
「あれ? 何してるの?」
【星降る島】に帰ってくると、レンたち年少組とウェンディさんが裏庭で何か作業をしていた。
「あ、シロさん、おかえりなさい。今ちょうどみんなで畑を作っていたんです」
畑? ああ、前に言っていた、この島で野菜を作ってみるってやつか。
島にも食べられる野草や木の実などはあるのだが、ニンジンやダイコンのような野菜はない。この島で野菜ができれば、料理の素材として高いバフ効果がつくんじゃないかと僕らは思っている。
「【農耕】スキル持ちのプレイヤーから肥料を分けてもらいました。この島ならいらない気もするのですが、念のために」
ウェンディさんが鍬で土を耕す手を止めて、肥料が入っていた麻袋を取り出す。
思いつきの実験みたいなものだったのに、ずいぶんと本格的だなあ。
ふと畑の横を見ると、なにかの苗みたいなものがいくつか置いてある。細い棒のような物も束になって置いてあるな。
「それを植えるの?」
「はい。これはミニトマトの苗です。リアルなミニトマトと違って『DWO』での品種ですけど」
レンが苗を手に取って教えてくれた。ミニトマトか。初心者には比較的育てやすい野菜なんだっけか?
『DWO』のでもそれは同じようで、【農耕】スキルを持っていない僕たちでも、たぶん普通に育てられるらしい。
「苗はお城の方で畑を作っていたプレイヤーさんに譲ってもらいました。十日ほどでできるそうですよ」
え? 十日? ミニトマトってそんなに早くできるもんなの? あ、リアルで十日ってことか? ならゲーム内で三十日ってことかな?
「ミニトマトの収穫には普通は開花から五十日ほどかかるそうです。この品種はゲーム内で十日ほどなので、リアルでは三、四日というところでしょうね」
疑問が顔に浮かんでいたのか、ウェンディさんが答えてくれた。思っていたよりもっと早かった。
五十日かかる収穫を三、四日か。ゲームとはいえ早いなあ。
「普通の品種もありましたよ。そっちは成長がゆっくりだそうです。それでも『DWO』内だと半月でできてしまいますが」
まあそうか。通常の三倍の時が流れる『DWO』では必然的にそうなる。ずっとログインしっぱなしはできないし、どうしたって数日は放置することになるのだ。
僕らのいない時はアシストデュラハンが世話を見てくれるだろうが、こればっかりは仕方がない。
育成期間が短くても育てる楽しみはあるはずだ。
そもそもこれは実験である。この島で野菜を作ったら高いバフ効果がつくのかという。
まあ、つかなくても別に普通に食材として食べればいいだけだし。ついたら……本格的に畑を作るのか、な?
今のところ木の実に山菜、魚に海藻類などで料理をしているが、野菜ができればもっと美味しい料理もできるはずだ。どうせバフがかかるのなら美味しいものを食べたいよな。
「一応、稲の苗ももらってきたんですけど」
「ちょっと待って!? 畑だけじゃなくて、田んぼも作るの!?」
思っていたよりもレンが本気だった。いや、田んぼも作ろうと思えば作れるとは思うけど!
だとしても、どれくらいの広さの田んぼを作ればいいんだろう?
ネットで調べたら、日本人が一年間に食べる米の量は、一人六十キロ程度らしい。これはちょうど一俵に相当し、一反の田んぼからは約八俵収穫できるとか。
僕ら【月見兎】は七人なので、一反あれば充分っぽいな。
……ところで一反ってどれくらいの広さ……? さらにネットで検索。
一反は三百坪……だから坪って……えーっと一反は約九九二平方メートル、か。
……いまいちピンと来ないな。畳六百畳分? やっぱりピンと来ないな……。
バスケのコート二つ分……学校の体育館と同じくらい、か。これが一番わかりやすい気がする。
体育館と同じくらいの田んぼを作るのか? 大変そうだな……。
「お米ができたらおにぎりを作りたいですね!」
屈託なく笑うレンに、僕は大変そうだけども楽しそうだから、まあいいか、とミニトマトの苗を植えるのを手伝うことにした。
ゲームは楽しんだ者勝ちだ。これも『DWO』の楽しみ方の一つには違いない。
米ができるまで『DWO』でも二ヶ月はかかるらしい。今から黄金の稲穂が首を垂れるのが楽しみだ。
【DWO無関係 ちょこっと解説】
■ミニトマト
もともとは飛行機の機内食用に品種改良されたトマト。昭和五十年代後半あたりから家庭の食卓にも並ぶようになったとか。育てやすく、食べやすく、栄養的にもとても優れている野菜で、見た目の可愛らしさなどから愛好家も多い。