■141 城主との戦い
■先日の地震で家の中がしっちゃかめっちゃかになり、途方に暮れています……。
日本の城において本丸とは城郭の中心であり、城主が住まう最後の砦である。
間違いなくここにこの城のボスがいる。最後の砦だけあって、本丸天守閣の前には多くのモンスターがひしめいていた。最終防衛線ってところか。
天守閣はそれほど高くもなく、せいぜい三階建てといったところだ。
【登攀】、【軽業】スキル持ちなら登れるんじゃないか? と思ってしまったが、そこにたどり着くのも難しいほど、天守閣前にはモンスターがわらわらと湧いている。
もはや集団戦というより、乱戦となっている。どこから攻撃が来るかわからない。
「おっと!」
飛んできた矢を【心眼】で避ける。ここまでモンスターが多いと【気配察知】が役に立たない。気配だらけだからな。突然死角から攻撃されたら避けられないぞ、こりゃ。
目の前のモンスターと戦いながら、他のプレイヤーの死角から襲おうとしているモンスターをディアボロスの魔力弾で撃ち抜いていく。倒すまではいかないが、襲われていたプレイヤーに気付かせることはできるからな。
しかしこうも乱戦になってしまうと、魔法使いプレイヤーらは範囲魔法を使いにくいだろうと思う。
パーティを組んでいるプレイヤーにはダメージはいかないが、他のプレイヤーはダメージを受けてしまうし。
やはり一体一体地道に潰していくのが一番いいのかね。急がば回れってか。
「【サザンクロス】!」
【六花】のアイリスが放った無数の突きが、落武者ホブゴブリンに十字の風穴を開ける。
しかし仕留めるまでにはいかなかったらしい。ホブゴブリンはアイリスへ向けて手にした六尺棒を大きく振りかぶった。
そのホブゴブリンへ向けて【加速】を発動する。
「【一文字斬り】」
ホブゴブリンの脇をすり抜けるようにして戦技を叩き込む。HPが0になったホブゴブリンは光の粒になって消えた。
「ありがとう、助かったわ」
「いや、これくらい──」
なんでもない、と続けようとした僕へ向けて、アイリスが細剣を繰り出す。
その切っ先が僕の顔の横を通過し、背後に迫っていたスケルトンの頭蓋骨を粉砕した。
「これで貸し借りなしってことで」
にっこりと笑ったアイリスが次の獲物を求めて去っていく。こっわ……。いや、助かったけどさ。
乱戦の最中、何人かのプレイヤーが天守閣へと雪崩れ込んでいった。
たぶんここのボスってレイドボスではないと思うから、何人かのプレイヤーで倒せると思うけど、どれだけ強いかにもよるよな。
最悪、数で押すという形になりかねないけども……。
そんなことを考えながら、僕も天守閣へ向かおうと目の前のモンスターたちを斬り伏せていたとき、ゴガンッ! という破壊音とともに、天守閣の最上階の壁が吹っ飛んだ。
あれ!? あの壁は破壊不能なオブジェクトじゃないのか!?
破壊された城の壁と一緒に何人かのプレイヤーが僕らの前に落ちてくる。
倒れたプレイヤーたちの上に蘇生待ちのカウントダウンが始まる。HPが0になったか。
未だ蘇生薬が発見されていない以上、ほとんどのプレイヤーはカウントを待つことなく、死に戻りを選択してその場から消えた。
やがて彼らが突き破った壁の穴から『そいつ』が姿を表す。
異形。そいつを見た僕の頭にそんな言葉が浮かび上がる。
なぜならそいつは一つの胴体から顔と手足がそれぞれ二人分あったからだ。
後頭部にもう一つの顔、肩から伸びる四本の腕と腰から伸びる四本の足。
背中合わせにした人間の胴体だけを一つに融合したようなそんな姿。
武者鎧を身に纏い、四つの手にはそれぞれ剣と斧、そして弓矢を持っている。
頭には兜、顔には頬当。身長三メートル近いそいつは穴から跳躍し、僕らの前へと降り立った。
「なんだよ、あの阿修羅像の成り損ねみたいなのは……」
「両面宿儺ですね。飛騨地方などに伝えられる鬼神の一種です」
僕のつぶやきを拾い、律儀にも返してくれたのは【スターライト】の分析博士、セイルロットさんだった。
鬼神ね。【鬼神族】とは関係ないのかな?
「【ファイアボール】!」
「【トライアロー】!」
姿を現した霧骸城のボスに、まずは遠距離から魔法と矢の雨が襲いかかる。
だが次の瞬間、両面宿儺は素早い動きでそれらを全て躱し、手にした弓矢を連続で放った。
後方にいた二人の魔法使いプレイヤーがまともに矢を受けて高いダメージを食らってしまう。
なかなかに速い。四本足だからか? 馬みたいなことかね? 関節逆なんだが。
「【縮地】────【居合】」
一瞬にして距離を詰めるスキル【縮地】から、刀術の戦技【居合】へとコンボを繋げたミヤコさんが、両面宿儺へと刀を振り抜いた。
しかしそれは両面宿儺が手にした斧によって無情にも弾かれてしまう。刀を弾かれたその隙を突くように、今度は別の手にあった両面宿儺の剣が、ミヤコさんへ向けて横に一閃された。
バックステップでギリギリにそれを躱したミヤコさんがそのまま後ろに退がると、入れ替わるように今度は白虎の着ぐるみを着た【拳闘士】のレーヴェさんが前に出てくる。
「【螺旋掌】」
回転を加えたレーヴェさんの掌底が、両面宿儺の胴へ向けて放たれる。しかしまたしても両面宿儺はそれを身体を捻るようにして躱し、回転した勢いを乗せた回し蹴りをレーヴェさんへと食らわせた。
「ぐ、ぅ……!」
掌底を繰り出したのとは別の腕でなんとかガードしたレーヴェさんが、蹴られた勢いで遠くまで吹っ飛ぶ。素早い上にパワーもある。これは難敵だな。
「【スタースラッシュ】!」
「【大切断】!」
アレンさんとガルガドさんが左右から同時に戦技を放った。
両面宿儺はアレンさんの方を剣で捌き、ガルガドさんの方はなんと手のひらから繰り出した炎の魔法でガルガドさんを吹っ飛ばした。
「があっ!?」
「ガルガド!?」
魔法まで使ってくるのかよ……! おいおい、ちょっと強すぎないか?
両面宿儺の強さに危機感を感じていると、どこからか飛び出してきた落武者ゴブリンが、ボロボロの槍を僕に向けて突き出してきた。
「こっの……!」
それを躱しながらすれ違い様に横薙ぎの一閃をくれてやる。ああ、もう! 群がっているこいつらが本当に鬱陶しい!
両面宿儺の近くにいるプレイヤーたちも、そっちに集中したいのに、周りのモンスターたちが邪魔で仕方がないようだ。
「【加速】!」
鬱陶しいモンスターたちを相手にせず、猛スピードで回避しながら、僕も両面宿儺へ向けて攻撃を仕掛ける。
伊達眼鏡の弱点看破はどこも点滅していない。くそっ、弱点無しかよ!
「【ダブルギロチン】!」
飛び上がり、両面宿儺へと振り下ろした二つのディアボロスが、相手の剣と斧によって阻まれる。ここまでは想定内だ。
「くらえ!」
『グガッ!?』
そのままの状態から僕は両方の引き金を引く。
放たれた魔力弾がまともに両面宿儺の顔面に二発とも当たり、相手は大きくのけ反った。
そこへ飛び込んでくる影が一人。両面宿儺に攻撃を仕掛けるときから僕には『彼女』が見えていた。
「やれ! ユウ!」
「【天雷】」
のけ反った両面宿儺の横腹に【雷帝】ことユウの稲妻を纏った拳の一撃が炸裂する。
雷が落ちたような轟音とともに、ユウに殴られた両面宿儺が天守閣の壁まで吹っ飛んでいった。
『ゴハァ!?』
天守閣の壁にぶち当たった両面宿儺だが、すぐに体勢を立て直し、ヘイトを稼いだユウへと向けて一直線に突進してきた。
「「【シールドガード】!」」
アレンさんとウェンディさんがユウの前に出て、斧と剣の攻撃を止めた。
その隙に一人のプレイヤーが両面宿儺に斬り掛かったが、残りの腕で放った矢に迎撃されてしまった。
くそっ、あの四本腕は厄介だな。事実上二体の敵と戦っているようなものだ。
盾職の二人から離れた両面宿儺は、手にした不動明王が持ってそうな御大層な剣を天へと翳す。
するとたちまち剣から黒い稲妻のようなものが空へと向かって放たれる。
天へと向かった稲妻は再び降下し、天守閣の屋根へと落雷した。なんだ? 自分の城に攻撃? なにをしている!?
「おい! あれ見ろ!」
「屋根の上……なんか動いてるぞ!」
「え? あれ……鯱……?」
周りのプレイヤーたちの言葉に、僕も落雷で煙がかっている天守閣の天辺に目を凝らす。
煙の中にキランと一瞬だけ輝きが見えたかと思ったら、隣にいた盾職のプレイヤーが派手な音とともに吹っ飛ばされていた。
「なんだ!?」
わけがわからないまま、僕はその場から後退する。
やがて煙が晴れ、そこに現れたのは宙に浮く黄金の鯱が二匹。
あの鯱って背景オブジェクトじゃなかったのか……。
鯱たちはそのまま天守閣を降りて、両面宿儺の両脇に護衛のように陣取った。
片方の鯱の目が赤く光る。
「っ、攻撃が来るぞ! 回避しろ!」
アレンさんの叫びに反応したプレイヤーが、素早くその場から移動する。
鯱の口からまるでレーザーのような光が放たれ、何人かのプレイヤーとモンスターたちを撃ち抜いた。魔法攻撃か!? 敵味方関係なしか!
もう一匹の鯱から再びレーザーが放たれる。避けきれなかったプレイヤーとモンスターがまたしても犠牲になった。
「おいおい、冗談やないで……移動砲台かいな」
たまたま近くにいたトーラスさんの声が耳に入る。移動砲台か。確かに言い得て妙だ。
「撃つ前に目が赤く光るわ! 光ったら回避行動を!」
「んなこと言われても……! モンスターを相手にしてるときにそんな余裕ねぇよ!」
どうやらあの鯱は連発してレーザーを放つことはできないようだ。だけどもクールタイムをカバーするかのように、その間にもう一匹がレーザーを放ってくる。
常に移動し続けないと、レーザーに撃ち抜かれてしまう状況だ。くそっ、周りのモンスターがホント邪魔だな! むっ!?
「【ミラーシールド】!」
鯱が放ったレーザーをアレンさんが大盾で受け止める。鏡のような輝きを纏った大盾は、レーザーを完全に受け止めると、それを鯱へと速やかに反射した。
魔法攻撃の何割かを跳ね返す戦技【ミラーシールド】か。やっぱりあのレーザーは魔法なんだな。
だけどアレンさんに跳ね返されたレーザーをすいっと余裕でよける鯱。くっ、そう簡単に反射攻撃を受けてはくれないか。
学習能力はあるようで、次に鯱がレーザーで狙ったのは盾職以外のプレイヤーだった。
「くっ、【ガーディアンムーブ】! 【ミラーシールド】!」
アレンさんが狙われたプレイヤーの前に一瞬にして移動した。鯱から放たれたレーザーを再び反射する。
対象への攻撃を自動で受ける【ガーディアンムーブ】を使ったのか。だけどあれってクールタイムが必要で連続では使用できなかったはず。
伊達眼鏡で鯱の弱点を看破する。ちっ、両面宿儺と同じく弱点なしか……いや? 地肌の金色でわかりにくかったが、尻尾が黄色く点滅している。
黄色の属性は……!
「鯱の弱点は尻尾! 雷属性に弱い!」
僕の言葉を受けて、一番最初に動いたのはやはり【雷帝】のユウだった。
鯱の一匹へと向けて一気に駆け出していく。
鯱へ迫るユウを迎え撃とうと両面宿儺がユウの前へと立ち塞がる。邪魔させるか!
僕は両手のディアボロスを両面宿儺に向け、引き金を引いて魔力弾を打ち出した。
ユウに向いていた両面宿儺がこちらに気付き、魔力弾をあっさりと躱す。前後にあるあの四つの目には死角などないのかもしれない。
だが、その隙を突いて、ユウが両面宿儺の横をすり抜けた。残念だったな。わずかに気を逸らせれば充分なのさ。
「【雷槍】」
ユウの掌から放たれた稲妻の槍が、レーザーを放とうとしていた鯱の尻尾に炸裂する。
一発で尻尾を破壊された鯱は、そのまま地面へと落ち、光の粒へと変化した。
するともう一匹の鯱が、『嫁さんの仇だ!』とばかりにユウに向けてレーザーを放とうとする。
「【ガーディアンムーブ】。【ミラーシールド】」
ユウの前に一瞬にしてウェンディさんが現れ、鯱の攻撃を反射した。
反射されたレーザーを鯱がすいっと躱すと、見計らっていたようにユウがそこに飛び出し、雷を纏った拳を鯱の尻尾へと食らわせる。
「【天雷】」
両面宿儺に食らわせた時のように、轟音とともに雷属性の一撃が鯱の尻尾を粉々に撃ち砕く。
ユウの職業【強撃者】は、MPとSTを使って一撃の攻撃力を上げることのできる、一撃必殺に特化したジョブだ。
その上弱点属性で攻撃されてはひとたまりもあるまい。
ヘイトを稼いでしまったユウのもとに、両面宿儺が一直線に迫っていく。振りかぶった斧と剣が、同時にユウに振り下ろされた。
「く……!」
なんとかガントレットでガードしたユウだったが、両面宿儺の膂力の前に、塀まで吹っ飛ばされてしまった。
「【大切断】!」
「【疾風突き】!」
いつの間にか接近していたミウラとシズカが、両面宿儺のそれぞれ左右から攻撃を仕掛ける。
しかし両面宿儺の放った矢でミウラが射抜かれ、シズカの薙刀は剣に弾かれてしまう。
矢に吹っ飛ばされたミウラが地面に落ち、薙刀が弾かれたシズカへ向けて、斧の一撃が振り下ろされる。
あの一撃はマズい! 両面宿儺を邪魔すべく、僕はディアボロスの銃口を奴へと向けた。
しかし僕が引き金を引くよりも速く、別の魔弾が両面宿儺の腕を見事に撃ち抜く。
「シズカちゃん、下がって!」
「わ、わかりましたわ!」
レンの指示に従い、シズカがその場から下がると、続けて二発の銃声が響き、両面宿儺の胸と肩に魔弾が炸裂した。
レンのスナイパーライフルか。あんな遠いところからよく当てられるな。
後方にいるレンを振り返り、視線を両面宿儺へと戻す。
被弾した両面宿儺が動きを止める。チャンスと見た僕は、両面宿儺へ向けて【加速】を発動させた。
「【分身】!」
八人に分身した僕が両面宿儺を取り囲む。くらえ! 全方位からの八十連撃!
「【双星斬】!」
両手に持つディアボロスが二つの星の軌跡を描く。そのうちいくつかは防がれてしまったが、それでも大ダメージのはずだ。
【加速】と【分身】でMPがすっからかんになった僕は、すぐさまそこから離脱する。ヒット&アウェイが僕の戦い方だ。
ダメージを受けた両面宿儺は幸いにも追撃してはこなかった。
今のうちにMPを回復せねば……!
インベントリからマナポーションを取り出して一気に飲む。一本だけじゃ全快しないので、続けて二本飲んだ。くそっ、相変わらず不味い……。
ハイマナポーションを作れるようにならないとな……ん?
なんか両面宿儺の様子がおかしい。その場から動かず、キョロキョロと首を回し、注意深く辺りを窺っている。なんだ?
あれ? 頭の上になにかアイコンが回っている。目玉にバツ印の……あ! ディアボロスの【呪い】の効果か!?
「両面宿儺は目が見えていない! 【失明】の【呪い】が付与されたぞ!」
僕が叫ぶと、それに反応して一番近くにいたミウラが暴風剣スパイラルゲイルを思いっきり下から両面宿儺に斬り上げた。
「【昇龍斬】!」
『グガッ!?』
まともに逆袈裟に斬り裂かれた両面宿儺がたたらを踏む。
そこへリンカさんと【カクテル】のギルマス、ギムレットさんがハンマーを振りかぶりながら駆け寄っていく。
「「【スイングハンマー】!」」
『ゴフォッ!?』
左右からすれ違うように駆け寄った、二人のハンマーが両面宿儺の腹と背中(こっちも腹か?)に炸裂した。
「【スパイラルランス】!」
「【トールハンマー】!」
『グ、ガァッ……!』
リゼルとジェシカさんの魔法が失明状態の両面宿儺を直撃した。あの状態では避けられまい。今のあいつなら近接攻撃よりも遠距離攻撃のほうが確実にダメージを与えられる。
両面宿儺のHPが大きく減っていく。すでに四分の一を切っている。
両面宿儺はやたらめったらと弓矢と火魔法を周囲に向けて放つ。
むちゃくちゃな攻撃だが、よく見ていれば躱すことは難しくない。【失明】の効果がどれだけ続くのかわからないが、みんなこの隙を逃すわけもなく、次々と戦技を放っていく。
『グラララァ!』
「っ!? みんな、気をつけろ!」
両面宿儺のHPがレッドゾーンに突入した。と、同時に【失明】の効果が切れる。さらに両面宿儺の武者鎧が吹き飛び、肥大した筋肉が剥き出しとなった。バチバチと黒い稲妻を全身に纏い、明らかにパワーアップ状態になっている。最終形態か。
だがどんなにパワーアップしても無駄だぞ。レッドゾーンに突入したのが運の尽きだ。僕は【加速】を使い、一気に両面宿儺との距離を詰めた。
「【首狩り】」
『ガ?』
えっ? というような声を上げた両面宿儺の首が、スパンと宙を飛ぶ。
首があり、レッドゾーンに突入していれば、【首狩り】の発動確率は相手のレベルに関係なく100%なのだ。
残念ながらエリアボスには効かないらしいが、残念ながらお前はエリアボスじゃない。
バタリと倒れた両面宿儺の身体が、地面に落ちた首とともに光に包まれてその場から消えた。
同じようにプレイヤーたちと戦っていたモンスターたちも光の粒となって消える。きっと城主モンスターを倒したからだろう。
……あれ?
勝ったというのに他のプレイヤーたちがポカンとしてこちらを見ている。え、なに?
そのタイミングで無神経なファンファーレが鳴り響き、その場にいたみんなが、ビクッ! と身体を震わせた。
『おめでとうございます。霧骸城攻略に成功しました。攻略ギルドである【スターライト】、【月見兎】、【六花】、【カクテル】、【ザナドゥ】、【ゾディアック】、並びに参加したソロプレイヤーの方々に初回攻略報酬が送られます。初攻略おめでとうございます』
あれ? これって領国内の全プレイヤーに届くワールドアナウンスだ。エリアボスを倒したわけでもないのにな。
「えっと……勝った、のか?」
「アナウンスでそう言ってたし……勝ったんじゃない?」
「いや、なんかあっさりし過ぎというか、なんというか……」
みんな『なんだかなぁ……』という顔を見合わせている。
え、なにこの空気……。僕のせいですか?
「あー……諸君! とにかく僕らの勝ちだ!」
アレンさんが強引にそう叫ぶと、みんなから堰を切ったような歓声が上がった。
なんかモヤッとするが、まあ、細かいことは気にしないでおこう。
【DWO無関係 ちょこっと解説】
■両面宿儺
仁徳天皇の時代に飛騨に現れたと言われる鬼神。凶賊であったとも地方の豪族であったとも言われる。手が四つ、足が四つ、顔が前後に二つという、異形の姿が伝わっている。様々な伝承があり、飛騨地方では土着神としての英雄的伝説もある。