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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第一章:DWO:第一エリア
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■013 考察

PM10:00にももう一話更新します。



「【傲慢】の第一エリアのボスは『シャインレオン』っていう、でっかいライオンだったぜ。やばくなるとたてがみをこう、ピカーッ! って光らせてきてな、目をくらまされるんだ」

「あれは面倒くさかったね~。見極めれば予備動作でわかるようになるけど。私たちも二回やられたよー。三回目でやっと倒せたの」

「倒したときのレベルは?」

「俺が13で遥花が12。五人パーティで他の奴らは13前後かな。それでやっと第二エリアに行けたんだ」

 

 昼休み、霧宮兄妹と食事をしながら情報交換。といっても「罪源」が違うからそのままでは役には立たない情報もたくさんあるが。

 レベル=強さ、ではないにしろ、目安にはなる。やはり第一エリアのボスはレベル12くらいから倒せるみたいだ。あ、でも僕らのパーティは三人だからなあ……。

 パーティは最大で六人まで組める。誰か他に三人誘わないと無理かな?


白兎はくと君は今レベルいくつ?」

「8。ここ数日、採掘ばかりしていてレベル上げどころじゃなかった。おかげでいい武器を作ってもらえたけど」


 実際、双雷剣『紫電一閃』と『電光石火』はかなり強力な武器だ。あれがあればレベルも上がりやすいだろう。


「武器といえば第二の町に着いてわかったんだが、あまり品揃えは第一の町と変わらないんだよな。てっきり強力な武器とかが売ってるかと思ったんだが」

「そうなのか?」

「うん。たぶん、NPCからじゃなく、プレイヤーに作ってもらえってことなんじゃない? 生産職の人たちにしてみれば、その方が助かるし」

「でもよ、あんまりモノが無いと値段を釣り上げられないか心配だな」


 中には「文句を言うならよそへ行きな」的な生産職もいるというが、生産職だって、素材がなければ何もできないのだ。そんなことを繰り返していたら、必ずブーメランになって自分に戻ってくると思う。

 まあ、そんな生産職ばかりじゃないだろうけど。


「そういや第二エリアのボスを倒したところってあるのか?」

「なんでも昨日、【憤怒】のパーティが倒したらしいぜ。で、第三の町に辿り着いたとか」

「へえ。デモンズワールド攻略は【憤怒】が一歩リードか」

「その【憤怒】のパーティメンバーには、レアスキル持ちが何人かいるみたい。詳しくはわかってないみたいだけど」


 レアスキル……ひょっとしてソロモンスキルをいくつか持っているのかもしれないな。なんせ72もあるんだから。強力なスキル持ちなら、エリアボスを倒すのも難しくないのかもしれない。いや、そんな単純じゃないか。


「レアスキルといえば、遥花だって【群狼】を持ってるんだろう? それって公開してるのか?」

「してない。どうせそのうち検証組が公開するでしょ。別にユニークスキルってわけじゃないんだし」


 【群狼】は操る狼系モンスターを強化するレアスキル。レアスキルではあるが、ゲーム中に一つしか存在しないユニークスキルというわけではない。これから誰かが手に入れることだって充分に考えられる。


「そうそう、奏汰かなたもエリアボスのドロップで★付きのレアスキルを手に入れたんだよ。ぷぷっ。どんなスキルだと思う?」

「いや、わからないが……なんで笑う? そんな変なスキルなのか?」


 なぜか笑う遥花を不思議に思いつつも、奏汰のレアスキルが気になった僕は一応聞いてみる。


「【天気読み】ってスキルだよ」


 パックの牛乳をストローで飲みながら奏汰はそう答えた。え? 天気?


「熟練度が上がれば数時間後の天気がわかるようになる。MAXになりゃ100%の的中率らしい」

「……それがレアスキル? いや、それ以前に、天気の変化なんてゲームにあるのか?」


 それはまだ聞いたことがなかったな。僕のログインした日はいつも晴れてたし。


「雨の日とか曇りの日とかもたまにあるよ。そのうち雪とか台風とかも出てくるかもね~」

「そのスキルってなんかの役に立つのか?」

「よくわからん。けど、農業系の生産職には便利なのかもしれないぜ? それに例えば炎のモンスターとかと戦う時は、雨の日を選べる、とか」


 使えるような使えないような……。こういった一見使えなさそうなスキルを活用するのも、このゲームの楽しみ方の一つなのかもしれない。

 確か【釣り】とか【陶芸】とか、趣味スキルって枠があったなあ。いや、それを言ったらウェンディさんの持ってる【料理】も趣味スキルに入るのか。生産スキルでもあるけど。


「それで? そのスキルを育てる気なのか?」

「せっかくのレアスキルだしな。一応、毎日セットして天候を見てる。少しずつだが熟練度は上がってるみたいだし、一日一回だけだから、スロットを圧迫することもないしな」

「ぷぷっ、ね? 変なスキルでしょ?」

「そうかな……。意外と大事なのかも……」


 え? と意外そうな顔をする二人に思いついた事を話す。


「確か【木工】スキルを育てていくと、家とか船を造れるようになるとか。で、船が造れるってことは、航海ができるってことだ。航海と天気は切っても切り離せないだろ? ひょっとして【天気読み】ってそういうことにも使えるんじゃないかと……」

「航海を安全にするスキルってことか?」

「その確率を上げるスキルかもしれないし、全然関係ないかもしれない。ま、僕の想像でしかないけどね」


 だけど奏汰かなたは【天気読み】の熟練度を上げることに決めたみたいだ。

 本当に船で航海できたら面白いだろうなあ。





 その日、ログインするとまだゲーム時間では昼なのに空が曇っていた。なるほど、確かに天気の変化はあるらしい。

 雨とか降らないかな。ちょっと体験してみたい。

 さて、今日はレンは【機織】、ウェンディさんは【料理】と、生産スキルの熟練度を上げるとか言ってたから、僕は狩りをして、二人のレベルに追いつこうと思う。僕もエリアボスを倒して第二の町へ行ってみたいしな。

 宿屋を出て、ポータルエリアへ向かっていると、僕の横を駆けて行った子供が勢いよく転んだ。あーあ、肘と額が擦り剥けて血が滲んでいる。

 その男の子はなんとか我慢して泣かないようにしているようだった。痛そうだな。


「君、ちょっと動かないでくれるかな?」

「え?」


 僕はインベントリの中に眠っていたポーション(粗悪品)を取り出した。

 ポーションは飲むだけじゃなく、振りかけることによっても傷を治す。もちろん飲む方が効果が高いのだが、これくらいの傷なら粗悪品のポーションでも効くだろう。

 パパッと肘と額に振りかけると、あっという間に男の子の傷が治ってしまった。


「兄ちゃん、ありがとう!」


 元気にそう言って、頭をぺこりと下げると、男の子はまた駆け出していく。なかなか礼儀正しい子じゃないか。粗悪品のポーションでも役に立つことがあるんだな。


「優しいのう、お前さんは」


 声がして振り向くと、【竜人族ドラゴニュート】の老爺が立っていた。あれ? この人どこかで……ああ、金庫屋の場所を教えてくれたお爺さんだ。


「大したことじゃないですよ。ちょうど使い道のない自作のポーションが余っていたので」

「なるほどの。お前さん【調合】持ちかい。ちょうどいい。もし、ポーションが余っていたなら一つ売ってくれんかね?」

「いいですよ。ええっと薬草が五つで150Gの、小瓶が20Gだから170Gですかね」

「んん? それは原価じゃろ? それではお前さんの儲けがないではないか」


 呆れたようにお爺さんが僕を見てくる。と、言われてもな。いくら取ればいいかわからないし。


「じゃあ……180Gで」

「お前さん、少しは町の商品の相場を見て歩いた方がいいぞ。ポーションはこの町の店で買ったら最低でも250Gはする。まあ、安く売ってくれるのはありがたいがね」


 結局、180Gでお爺さんにポーションを売った。これでも損はしてないんだから別に構わないとも思える。最近お金に困ってないからかなあ。微妙に小金持ちだからな……。


「ワシはバラムじゃ。お前さんは?」

「シロと言います。よろしくバラムさん」


 バラムさんが差し出してきた手を握り、自己紹介をする。プレイヤーじゃない人とちゃんと知り合いになれたのは初めてかな。


「ワシの家はこの先の本屋じゃ。何か探し物があったらいつでも来なさい。お前さんほどじゃないが、安くしとくよ」


 本屋さんか。何か掘り出し物とかあるかもな。そのうちお邪魔しよう。

 そんなことを考えていたら、ポーン、という音と共にウィンドウが開いた。ん?


───────────────────────

★クエストが発生しました。


■個人クエスト

【本屋へ行ってみよう】

 □未達成

 □報酬 ???


※このクエストはいつでも始めることができます。

───────────────────────


 これって町中で起こる個人クエストってやつか。初めてだな。

 特にすぐ受ける必要はないみたいなので、今はスルーすることにしよう。

 バラムさんと別れて、再びポータルエリアへ行こうとしたときに、今度は公式アナウンスが流れてきた。


『【怠惰】の第二エリアボス、ブレイドウルフが初討伐されました。


 討伐パーティの六名、


 【アレン】さん

 【ガルガド】さん

 【ジェシカ】さん

 【メイリン】さん

 【セイルロット】さん

 【べルクレア】さん


 以上の方々に初回討伐報酬が送られます。初討伐おめでとうございます』


 うわ。アレンさんのパーティじゃんか。第二エリアのボスを倒せたんだな。すごいな。

 エリアボスを初討伐すると、こんなアナウンスが流れるんだなあ。

 とりあえず、おめでとうメールを送っておこう。こないだフレンド登録もしたし。

 こっちも負けてられないな。今日は【北の森】じゃなくて【南の平原】に行ってみるか。

 南の平原は南東のエリアボスがいるという洞窟へと続くフィールドだ。そのため、ここに現れる敵はそこそこ強い。

 一度だけみんなと行ったことがあるので、ポータルエリアから転移することができる。僕は足を速めて北にあるポータルエリアへと向かった。





 ポータルエリアで転移した先は牧歌的な平原が続くフィールドであった。時折り岩場や林があって、こうしたところから敵モンスターが襲ってきたりする。

 と、そうしている間にもさっそく出てきたか。

 グルルルル……、と唸りを上げているのはブラックウルフ。灰色狼……グレイウルフの上級種だ。

 いきなりその牙を剥いてブラックウルフが僕へと襲いかかるが、難なく避けることができた。っていうか、赤牛……ブラッドホーンに比べたらなんてことはない。

 背後を取り、右手の双雷剣『紫電一閃』を振り下ろす。


「ギャウッ!」


 続けざま左手の『電光石火』を一閃。そしてとどめの戦技を発動する。


「【スラッシュ】」

「ギャオオオォッ!」


 断末魔の悲鳴を残し、ブラックウルフが光の粒になる。ずいぶんとあっけないな。やっぱりこの双剣のおかげか。

 ドロップアイテムは『黒狼の毛皮』と『黒狼の爪』だった。

 ふむ。僕も強くなっているのかな。

 能力値を見るとやはり一番高いのはAGI(敏捷度)で、その次がDEX(器用度)だが、AGIが頭一つ飛び抜けているな。

 使用スキルが【見切り】【敏捷度UP(小)】とかだから、そこが伸びるのは当たり前か。器用度が上がっているのは【採掘】しまくったからだな、たぶん。あとは【隠密】の分もあるか。

 【蹴撃】とかも使ってみるか。せっかくの戦闘スキルだし、これを育てればSTR(筋力)も伸びるだろ。

 僕は【鑑定】を外して、【蹴撃】をセットした。


─────────────

■使用スキル(7/7)

【順応性】【短剣の心得】

【敏捷度UP(小)】

【見切り】【気配察知】

【隠密】【蹴撃】


■予備スキル(5/10)

【調合】【セーレの翼】

【採掘】【採取】【鑑定】

─────────────


 これでよし、と。

 スキルをセットし直したちょうどいいタイミングで、次のモンスターのご登場だ。

 現れたのは、二本の長い尾羽を持ったダチョウのような鳥だった。茶色い羽毛に覆われているが、目から首筋にかけて赤いラインが流れており、嘴が太く長い。


「確かこいつは【デストリッチ】だったかな、っとぉ!」


 その長い首を鋭い槍のように突き出してきたダチョウモドキの攻撃を、僕は紙一重で躱す。危ない危ない、ちょっと気が抜けていたな。


「ケェッ!」


 ダチョウが今度は反転して、長い尾羽を鞭のように振るってくる。僕はそれをしゃがんで躱し、立ち上がる反動で前へと跳び、全力の蹴りを胴体の側面へと見舞う。


「グアッ!?」


 なかなか重いので、吹っ飛ばすまではいかない。なら、これでどうだ!

 蹴りをローキックに変えて、ダチョウの足を狙う。よろめいたところを右手の『紫電一閃』で斬りつけた。


「ギ……!」


 不意にダチョウの動きが鈍くなり、ヤツの体の周りに痺れたような『麻痺』のエフェクトが現れる。『双雷剣』の追加効果が発動したのだ。ラッキー!

 5%の確率で起こるこの効果は持続時間が10秒しかない。今がチャンスだ!


「うおおおおおぉぉッ!!」


 左右に持った双雷剣で、デストリッチを滅多斬りにし、【スラッシュ】を放ったあと、再び胴体に蹴りを放った。

 パァンッ! とデストリッチが光の粒になり消えていく。

 ふ────っ……。あそこで麻痺が発動するとはツイてたな。もうちょっと手こずるかと思ったが。

 ドロップアイテムは『デストリッチの肉』と『硬いくちばし』か。嘴の方は装備アイテムに使えるらしいから、リンカさんに買い取ってもらおう。

 お、レベルが上がってる。9になったぞ、と。














【DWO ちょこっと解説】


■アイテムについて①

アイテムのランクには『X』ランクというものもあるが、これはランク対象外で規格外というアイテムである。

ゲーム内でほとんど出回っていないアイテムを【錬金】などで製造したり、【縫製】で作ったオリジナルコスチュームなど、プレイヤーによって生み出されたアイテムが基本、Xランクとなる。

時間が経ち、ゲーム内でかなりの数が出回ってしまっていても、ランクはXのままであるので、もはや貴重ではない場合もある。




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