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VRMMOはウサギマフラーとともに。  作者: 冬原パトラ
第四章:DWO:第四エリア
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■133 帝国の三巨頭





「【怠惰】の第五エリアはジパングか~。羨ましいな~」


 朝からずーっと遥花はるかのやつはこんな調子だ。よほど羨ましいらしい。登校して朝のHRホームルームが始まるまで、ずっとボヤいている。どんだけだよ。


「【傲慢】の第五エリアはまだ解放されていないんだっけか?」

「ああ。第四エリアの大砂漠にメガサンドクローラーって、でっかいミミズの親分みたいなレイドボスがいてな。こいつを今倒そうと躍起になってる」


 僕の質問に答えたのは教室の机で突っ伏してボヤいている遥花ではなく、その双子の兄の奏汰かなたであった。


「こいつがよ、砂に潜って隠れるもんだから攻撃が当たらなくてな。音に弱いってのはわかったから【錬金術師アルケミスト】に音響弾を作ってもらってる」


 音に弱いのか。地面に潜ったら音を頼りに攻撃してくるのかな?


「【怠惰】の他にも第五エリアに行った領国があったよな?」

「ああ、【憤怒】な。向こうの第五エリアは密林ジャングルだったらしいけど。南米エリアってことなのかね?」


 南米ねえ。こっちはジパング……というか東洋だけども。


「【傲慢】の第五エリアは『摩天楼』とかならいいのにな~」

「いや、さすがにそれはないだろ……」


 机に突っ伏したままボヤく遥花に僕が突っ込む。摩天楼ってなんだよ。ニューヨークか? エリアボスはキングコングか?


「リーゼ遅いね。はっくん一緒に登校しなかったの?」

「いや、今日は一人で来たけど」


 もうじきHRホームルームが始まるというのにリーゼの姿がない。

 リーゼと僕は家がお隣同士だ。故に登校時間がまる被りなので、よく一緒に登校することがある。しかし、登校の約束をしているわけではないので、一緒に登校しない日もたまにある。主に僕が寝坊したとか、ノドカとマドカを起こすのに手間取ったりしたときだが……。

 今日も少し遅れたので、てっきりリーゼの方が先に登校したと思っていたのだが。

 遅いな、と思っているうちにチャイムが鳴り、担任の石川先生が入ってきた。


「おらー、席につけー」


 相変わらずやる気のなさそうな先生の声でみんなが自分の席に戻っていく。僕の隣のリーゼの席だけが空いたままだ。遅刻決定か。


「あー、そうそう。シュテルンさんは風邪のため今日はお休みだそうだ。みんなも気をつけてな」


 僕の隣の空席を見て、思い出したように先生が口を開く。どうやらリーゼは遅刻じゃなく欠席らしい。

 宇宙人でも風邪をひくことがあるんだなぁ、とぼんやり考えていたが、待てよ? と以前リーゼに聞いた話を思い出した。

 確か他の惑星に降りる時は、その星の様々な病気やウィルスに感染しないよう、スキンバリア的なものがあるとか言ってなかったか?

 それにたとえ謎のウィルスに感染しても、転送装置を使えば、転送の際に余分な物を除去できるとかなんとか。

 つまり、リーゼが風邪をひくなんてことはないわけで。

 これはもしや、なにか【連合】のお仕事が入ったか? 変な宇宙人が下りてきてたりしないよね?

 僕は幾ばくかの不安を抱えたまま、授業を受けることになった。



          ◇ ◇ ◇



 一日の授業が終われば部活に入っていない僕は帰宅するだけである。帰り道に今日の夕飯を買って帰らないとな。

 今日は何にするかな……。昨日はカレーだったから、今日はなにか魚でも買って……と、今日の夕飯のことをあれこれと考えながら帰り支度をしていると、遥花と奏汰に声をかけられた。


「はっくん、リーゼのお見舞い行かない?」

「え?」


 お見舞い? リーゼの家にか? 


「ほらリーゼって外国から伯父さんちに来ているじゃない? 風邪ひいて心細くなってるんじゃないかなあーって」

「いや、リーゼの伯父さんも伯母さんも家にいるぞ? 寂しくはないだろ」


 リーゼの伯父さんと伯母さん(ということになっている)は二人とも引退した大学教授だ。大学に赴くこともあるのかもしれないが、基本的には家にいる。風邪ひいた病人の世話くらいは普通にできるはずだし、そもそも病気じゃないと思うし。

 僕の返しが気に入らなかったのか、遥花が睨んでくる。


「それでもお見舞いに行くのが友達ってもんでしょー。あ、もしかして面倒くさいとか思ってる?」

「いや、面倒もなにも家が隣だし……」


 お前のことは面倒だと思っているが。

 うーん、どうするかなあ。リーゼが本当に【連合】の仕事でなにか外せない用があったのなら、僕らがお見舞いに行くこと自体が迷惑になると思うんだが。


「とりあえずメールで、行ってもいいか聞いてみればいいんじゃね? 寝てるかもだし」


 お、奏汰ナイス。事前に知らせればいいのだ。都合が悪ければリーゼの方もなんとか誤魔化すだろう。


「えー、それじゃサプライズじゃなくなっちゃう」

「お見舞いにサプライズはいらんから」


 ぶつくさ言いながら遥花がリーゼにメールを送る。しばらくすると遥花のスマホに返信があった。


「あー、なんか咳が酷くて熱も高いから気持ちだけ貰っとくって。病院には行ったらしいけど、大丈夫かなぁ」


 病院ねえ……。宇宙人のリーゼが病院に行くわけはない。お見舞いに来させないための言い訳かな?

 それとも宇宙人の医者とかに診てもらったとか? いや、病気にならないなら医者に診てもらう必要はないわけだし……なんかよくわからなくなってきたな。

 僕は仮病だと思っているけれど、宇宙人だけの『宇宙風邪』的なものにかかったという線もなくはないのか……?

 結局お見舞いは無しということになって、僕は一人で帰ることになった。

 帰りにスーパーに寄り、安かったので鰹のタタキを買って帰る。刺身系はそのまま食卓に並べられるから楽でいい。さすがに毎日料理するのはね……主婦の皆様はホントすごいと思う。

 リーゼの家の前を通るとき、彼女は今夜はログインしないかもしれないな、と思った。

 第五エリアの情報が揃ってきたので、そろそろ僕らもどうするか決めようって話になっていたのだが。

 まあ、みんなには風邪ひいたと言っておけばいいか。


「ただいまー。あれ?」


 ガチャリと鍵を開けて家の中へと入る。家の中はシーンとしていて、人気が全くない。

 おかしいな、いつもならテレビなりノドカやマドカの騒ぐ声がここまで聞こえてくるんだが。

 何かあったのかと靴を脱いで家に上がろうとしたとき、僕を中心とした光の輪が現れた。僕の身体が光に包まれる。え、これって……!?

 次の瞬間、僕は全く違う場所に立っていた。

 目の前に映るのは広い豪奢な部屋と、天井と壁に広がる無限の大宇宙。

 正面にある高そうな金のテーブルにはミヤビさんとその隣にノドカとマドカ、そして見知らぬ三人の人物が座っていた。


「おお、帰ったかシロ。近うよれ」


 ミヤビさんが機嫌良く僕を手招きする。いや、説明せんかい!

 たぶん、いや間違いなくここは宇宙船の中なんだろうけど、いきなり転送するのはやめてくれないもんかね?

 そう思いつつも逆らう気もなくテーブルに近寄ろうとすると、同席していた三人が立ち上がり、僕の前で跪いた。


「「「皇太子殿下の御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じます」」」

「はい?」


 なんともな間抜けな声が出た。その皇太子殿下ってのやめてくれないかな……。あとその堅苦しい話し方も。

 僕は呼び出した張本人に助けてくれという視線を送る。


「ミヤビさん、これってどういう……」

「かかか。そやつらがどうしてもシロの顔を見たいと言っての。まあ、それぐらいなら構わんと許可した。今のうちに紹介しておいた方がなにかと都合がいいしの」


 都合がいいってなにさ……。

 僕は未だに跪いている三人を見下ろした。

 一人は身体が大きな人物。たぶん男だと思う。歳の頃は四十半ばに見えるが、宇宙人だからあてにならない。赤銅色の肌に石みたいな鱗? のような物が張り付いている。赤い短髪に鋭い目付き、歴戦の戦士といった雰囲気が漂っていた。

 続く一人は犬の頭をした人物。丸い眼鏡をして垂れ耳の、真っ白く長い髭を生やしたお爺さんだ。犬種としてはマルチーズに近い気がする。もちろん頭部が犬なだけで、身体は人間である。その目はどこか知的な輝きが見える。

 最後の一人は若い女性であった。軍服のような黒い制服に身を包み、肩からは金糸の刺繍が施された白いマントを纏っている。長い金髪を一つにまとめ、後ろに流していた。赤い瞳のその眼は右目だけで、左は黒い眼帯をしていた。


「いつまでも跪いたままでは話ができんじゃろ。三人とも席に戻れ。シロはこっちに座るがよい」

 

 ミヤビさんがノドカとマドカが座っているのとは反対側の椅子をポンポンと叩く。

 あの、その椅子、他の椅子と違ってミヤビさんの座っているやつの次に豪華なんですけど……。絢爛過ぎて座るのが怖いんですが。

 かといって逆らえるわけもなく、借りてきた猫のように指示された椅子に座る。うわ、ふかふかだわ、この椅子。

 

「まずは紹介しようかの。そっちのデカいのがガストフ。帝国宇宙軍の元帥じゃ。で、白い髭のがマルティン。帝国本星で宰相をしとる。最後のがウルスラ。帝国諜報機関の長官じゃな。『帝国の三巨頭』などと呼ばれておる」


 え、なにそれ……。めっちゃ偉い人ですやん……。宰相に宇宙軍の元帥、諜報機関のトップって。いや、横にいる人は皇帝だったか……。今更なのか?


「まさか陛下の御子をこの目にすることができるとは……長生きはするもんですのう」


 そう言ってマルチーズ顔の宰相さん……マルティンさんが涙ぐむ。


「いえ、僕はミヤビさんの子供でなく……」

「ああ、はい。存じております。しかし殿下は陛下の血を継ぎ、龍眼に選ばれた者。この【帝国】の後継者たる資格をお持ちなのです。これを喜ばずにいられましょうか」


 いや、後継者って。継ぐ気はないですよ!?


「じいは大袈裟じゃな」

「何を申しますか! あの手がつけられなかった暴れん坊のお嬢様が子をもうけ、そのすえが生きておられたのですぞ! 奇跡としか言いようがありませぬ!」

「それもなにげに無礼じゃな……」


 苦虫を噛み潰したような顔でミヤビさんが呟く。どうやらこの宰相さんとミヤビさんは気安い仲のようだ。『じい』と言っていたから、ひょっとしてミヤビさんの子供の頃の教育係とかかもしれない。となると、最低でも千年以上生きているわけだが。

 

「宰相殿の仰る通り、これは誠に喜ばしきこと。我が【帝国】の慶事でありますぞ。殿下の存在は皇室、及び【帝国】の希望なのですからな!」


 宇宙軍元帥だというガストフさんが呵々と笑う。そんなに喜んでもらえると嬉しい気もするが、希望ってのはどういうこと?

 言葉の意味がよくわからずキョトンとしている僕に諜報機関の長であるウルスラさんが説明してくれた。


「我が【帝国】の頂点に立つお方は皇帝陛下ただ一人。今まで陛下には血を分けた親族はおられず、帝室と言っても陛下一人だけだったのでございます。しかしそこに殿下が現れた。諦めかけていた帝室の子孫繁栄が夢ではくなったとガストフ殿は言いたいのでしょう」

「その通り! さらにそれが『龍眼』を得たお方となれば、誰も文句を言う者はいまい!」


 帝室? 子孫繁栄? ウルスラさんの説明を聞いてもまだよくわかっていない僕にミヤビさんがからかうように口を開いた。


「つまりはシロに子供をバンバン作ってもらって、わらわの一族をいっぱい増やして欲しいと言っとるわけよ」

「はあ!?」


 なんでそうなる!? いや、帝室にミヤビさんしかいないんだから必然的にそうなるのか……?


「というか、ミヤビさんの子孫なら他にもいると思うけど……」


 龍眼の瞳がうっすらと見えたという爺さんはもう亡くなっているけど、その妹である百花ももかおばあちゃん、爺さんの息子である父さんに、百花おばあちゃんの娘である一花いちかおばさん、その子供である遥花と奏汰。

 親戚だけでもこれだけいる。さらに因幡家から分家した家の子孫も含めばかなりの数になるんじゃなかろうか。なにせ千年も経ってる。百人以上はいるんじゃないか?


「前も言ったが、『龍眼』の力を持たぬ者はわらわの一族、ひいては後継としては認められぬ。あれから調べた結果わかったのじゃが、地球人は『龍眼』に目覚める素質がかなり低いようじゃ」

「え……? じゃあなんで僕や爺さんは『龍の瞳』が見えたの?」

「母方の血じゃな。シロを調べた結果、シロの母親、そしてその祖父の母親……シロの曾祖母には宇宙人の血が混じっとる。結果、わらわの血と混じって『龍眼』の力を持ち得た……という話じゃ」


 嘘ん……。母さんの方も宇宙人の子孫だったの!? 地球に多過ぎだろ、宇宙人の子孫! それとも僕の周りだけ!?

 母さんもひい祖母さんも宇宙人の子孫で、因幡家はミヤビさんの子孫。宇宙人の血筋が僕で凝縮してしまったということなのだろうか……。


「むろん、シロの子に『龍眼』の力が受け継がれるかはわからん。だが、『龍眼』の力に目覚めた者の嫡子は力に目覚めることが多い。残念ながらわらわの子に力があったかどうかはわからんままじゃったが……」


 あの時代、子供が無事に育つ可能性は低かった。さらに生まれたミヤビさんの子は体が弱く、とても大人にはなれないと思われていたらしい。

 それでもミヤビさんは地球に残す子供に『龍眼』を与えたのだそうだ。その子が生き残る僅かな可能性を信じて。

 そんな子を夫に託し、地上を離れなければならなかった彼女の無念はどれだけだっただろう。

 その後、ミヤビさんの子供は『龍眼』の力に目覚めたのかもしれない。そしてあの時代を生き残り、僕らの祖先となったわけだ。

 

「『龍眼』に目覚めなかったとしてもシロの子じゃ。一族としては扱えんが、ミヤコのように家族としては認めるぞ。だから安心してバンバン作るがいい」

「いや、作らんから!」


 結婚どころか彼女もいないのに子供なんかできるか!

 あけすけな女皇帝にキレていると、真面目な顔をして宰相さんがずいっと僕の方に顔を寄せた。


「それは困ります。陛下は頑として皇配を得ようとはしませんし、もはや殿下だけが頼みの綱なのです。皇帝の一族が途絶えては【帝国】は崩壊してしまいます。そのためにもなんとしても殿下にはお世継ぎを作っていただきませんと!」


 んなこと言われてもさあ……。だいたいミヤビさんより僕の方が先に死ぬんじゃないの?


「ミヤビさんはもう結婚しないんですか?」

「もうつがいを得る気はないの。わらわの夫はあやつ一人だけで充分じゃ。そもそもこの【帝国】はわらわが地球に行く、それだけのために建国したものじゃからな。役目はもう終えとる。なんならじいに譲ってもよいぞ?」

「馬鹿なことを……。そんなことをすればあっという間に【帝国】は分解して戦国乱世に突入しますぞ。陛下という存在あっての【帝国】、故に帝位を継げるのはその一族のみ。つまり殿下と殿下の子孫をおいて他にありませぬ」


 ……ん? 子孫? よく考えたら僕に子供が生まれて、さらに孫とかが生まれてもミヤビさんはずっと生きているわけだよな? 

 ってことは、後継者になるのは僕の子孫の誰かってことか? まだまだ先の話?

 

「まあ、そうですな。少なくともあと千年は大丈夫でしょうが……」

「心配して損した……」


 なんだよ、千年後の僕の子孫の誰かが【帝国】の皇帝になるかもしれないって話か……。

 今すぐ子供を作れとかいう話じゃなくてよかった……。これたぶん先送りにしても大丈夫なやつだ。

 まあ、いつかは僕も結婚して子供が生まれるだろうから……。

 結婚……するのだろうか? まっったく想像ができない。ずっと独り身の可能性も無視できないな……。

 うーん……でもやっぱりまだそんな話は早いって。


「殿下にはハイドラ星の姫なんかがお似合いではないか?」

「馬鹿を言うでない。向こうは水棲種族ではないか。えら呼吸の処置を殿下にせよというのか? それよりもクルゥルゥ星の王族などなら殿下の身分に合うと……」

「ちょっと待ってください、クルゥルゥ星人は確か触手交配でしたよ。殿下には厳しいのでは?」


 ちょっと待って! なんで僕の相手が宇宙人限定になっているの!? あと触手交配ってなに!? 怖い!


「待たんか。シロのつがいは母であるわらわが決める。口出し無用じゃ」

「いや、母じゃないし、自分で決めるし」


 なんだ? 宇宙人は人の話を全く聞かないのか? とにかく勝手に決められても困るのでそこらへんはちゃんと言っておく。知らない間に触手種族の婚約者ができていたなんてのは御免だからな。


「む? シロ、それはなんじゃ?」

「え? ああ、忘れてた」


 ミヤビさんが椅子の足下に置いておいたレジ袋を見つけて僕に尋ねてきた。

 ああ、冷蔵庫に入れないと傷んでしまうな。


「夕飯の食材なんだけど……ここって冷蔵庫ありますかね? 傷んでしまうので……」

「お? それは前に食べた魚の切り身じゃな? あれは美味かった。どれ、よこすのじゃ」

「え? ここで食べるの?」


 僕が驚いている間に、ミヤビさんはパックの鰹のたたきを取り出してテーブルに置いた。


「切り身につけるタレがないのう。真紅しんく、シロの家から取り寄せてくれ」

『了解、マイマスター』


 この宇宙船のメインコンピューターである真紅さんの声がしたかと思うと一瞬にしてテーブルの上に、おそらく我が家から転送したと思われるポン酢と小皿、そして箸が現れた。

 勝手に……これって窃盗なんじゃないっスかね?

 箸を器用に使い、鰹にポン酢をつけてパクリとミヤビさんが頬張る。


「うむ、美味美味。お主らも食べてみよ。地球の料理はフードディスペンサーと違って味わい深いぞ」


 ミヤビさんが他の三人にも鰹を勧める。ノドカとマドカの分も買っておいたから量はあるけど……それ、うちの夕食なんですが。


「むう、これは酒が飲みたくなりますな」

「さっぱりしていて美味いですのう」

「生の魚など初めて食べましたが……興味深い味です」


 三者三様に高評価のようである。地球よりも文明が進んだ惑星では食料などは加工されたものがほとんどで、生でなにかを食べるなんてのはないのだろうか。


「あ、プリンがあるのです!」

「プリンなの!」


 デザートにと買っておいたプリンをノドカとマドカが見つけ、我先にとレジ袋から強奪する。君らもマイペース過ぎるだろ!

 なんというか、僕の知る宇宙人は大雑把でマイペースな人物が多い気がする。悠久の時が流れる大宇宙で暮らしていると、みんなこんな感じになるのかもしれない。

 小さくため息をつきながら、僕は窓の外に広がる無限の大宇宙を眺めた。










DWOデモンズ無関係 ちょこっと解説】


■マルチーズ

世界最古の愛玩犬の一種。その歴史は紀元前1500年まで遡る。マルタ島にフェニキア人の水夫が持ち込んだ犬が元と言われている。性格はほどほどに活発でほどほどに穏やかと言われる中庸な性格のため、初心者でも飼いやすいと言われる。純白でシルクのような長い被毛が特徴だが、放っておくと絡まったり、毛玉ができたりするので定期的なブラッシングが必要。

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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[一言] 初代皇帝さんは自分が一途に純愛貫いておきながら子には好き勝手言うなぁっていう(苦笑) いやあ、でも白兎くんは複数娶って後宮形成するのがいちばんスムーズでみんな幸せになるんじゃないかなな感。…
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