■126 悪魔の石像
吹雪の雪山でシロクマに出会った。
シロクマが出るのは北極圏じゃなかったか。ホッキョクグマって言うから確かそのはず。
まあゲームの中だし、プレイヤーなんだから関係ないけど。
シロクマの正体は着ぐるみプレイヤーのレーヴェさんだ。
年中着ぐるみを着て活動し、その素顔は僕もまだ見たことがない。
いや……、素顔は見たことないが、その正体はリゼルと同じ宇宙人プレイヤーじゃないかと僕は疑っている。
ミヤビさんの話から推測するなら、リゼルの所属する【惑星連合】の……。ひょっとしたらリゼルの知り合いかもしれない。
だからといってリゼルに確認してもらう気はない。もしも相手がリゼルの上官だったりしたら、リゼルは立場的にまずい状況になる可能性がある。
ミヤビさんの脅迫のせいとはいえ、地球人である僕に正体をバラしているのだ。下手すりゃクビになるかもしれない。
さらにどこからか僕が『帝国』女皇帝の身内とバレでもしたら、リゼルはスパイ扱いされるかもしれないし、その逆に無理難題を押し付けられるかもしれない。どっちにしろ、あまりいいことはなさそうだ。
ここは黙ってスルーしとこう。お互いの平和のために。
「君たちもレベル上げかい?」
「レーヴェさんはレベル上げに?」
「ああ。ここは仲間を呼ぶモンスターが多いから効率がいいんだよね。天候が変わりやすいのが難点だけど……」
レーヴェさんと話している間にもどんどん吹雪が強くなっていく。こりゃまともに行動するのは難しいぞ。
「こりゃマズいな。あっちに大きな洞穴があった。そこに避難しよう。もう少し経てば吹雪もおさまると思うよ」
レーヴェさんの提案に僕らは従うことにした。確かにこの状態でモンスターに襲われると厳しい。一旦その洞窟に避難させてもらうか。
レーヴェさんの案内に従って雪山を登っていく。こんなに木が生えてなければキラーカリブーにソリを引かせるのにな。
道らしい道もなく、目の前のシロクマがかき分けできた道を僕らは進む。
幸いなことにモンスターが現れることもなく僕らは洞穴へとたどり着いた。
高さは三メートルほどある。広さは十五、六畳ほどの広さで、奥は行き止まりだった。
「まるでクマの家みたい。……あ、ご、ごめんなさい」
「ははは。気にしないでいいよ。私もそう思ったから」
リゼルの言葉にレーヴェさんが笑って返す。
ライオン、カッパ、トラときて、今度はシロクマだ。そのフィールドに適した着ぐるみを選んでいるのだろうか。あの着ぐるみにはなにか特殊効果があるのかもしれない。少なくとも防寒効果はあると思うが。
「あー、つっかれたー……。吹雪の中を歩くのって思ったよりきついね。前が見えないし、バランスも取りにくいしさ」
ミウラが洞窟奥にあった大きな石に腰掛ける。ミウラを含め、レンやシズカたちは小さいから風の影響を受けにくいと思ってたんだが、そんなことはなかったようだ。
外で吹き荒れる吹雪を見ながら、隣に立つレーヴェさんに話しかける。
「この吹雪、どれくらいでやみますかね?」
「そうだなあ。この山の天気は本当にコロコロと変わるから、二十分もすれば落ち着いて……」
「わ────!?」
突然上がったミウラの悲鳴に僕らが振り向くと、さっきまで石の上に座っていたミウラがいない。
「ミウラちゃんは!?」
レンが薄暗い辺りを見回すがミウラの姿は影も形もなくなっていた。なんだ? なにが起こった!?
と思ったら、岩壁の中からにゅっと上半身だけのミウラが現れた。え、なにそれ?
「この洞窟、行き止まりに見えたけど先があるよ! ほらレン、こっちきてみて!」
「ええ!?」
ミウラがレンの手を引いて、再び岩の中へと潜ると、ミウラに続いてレンの姿も岩の中へと消える。
「お嬢様!」
追いかけるようにウェンディさんも岩の中に入っていった。なにこれ?
「なるほど。行き止まりの幻影があるわけか」
レーヴェさんが岩の中に手を突っ込み、一人頷いている。
僕も岩壁に手を伸ばしてみると、掴めずにスッと手が中に入っていった。幻か。
岩の中に一歩踏み込んでみると、すぐに視界が開け、洞窟が先へと続いている。振り向くとこちら側にも壁の幻があった。
両面に岩壁の絵が描かれたカーテンがぶら下がっていたようなものか?
ミウラが壁にもたれようとしたら擦り抜けてしまったらしい。
リンカさんにリゼル、シズカもこちら側へとやってきた。
洞窟は同じ高さのままずっと奥まで続いている。入口を幻影で隠してるんだ、先にはなにかあるはずに違いない。
「おっと、ここからは氷の洞窟のようだ。気をつけたまえ」
レーヴェさんが足下を見ながら注意を促す。
いつの間にか地面が氷に覆われていた。
地面も壁の氷も、うっすらと光を帯びている。真っ暗じゃないのは助かるけど、なんで光ってるんだろ?
なんにしてもツルツルと滑りやすくなっているから気をつけた方がいいな。
「ひゃわっ!?」
「おっと」
と思っていると、隣を歩いていたレンがバランスを崩して転びそうになっていた。すかさず手を取って転ぶのを防いでやる。
「危なかったね。気をつけて」
「は、はは、はい。あ、あの、しばらく手を掴んでいていいですか……?」
「いいよ」
おずおずとレンが僕の手を握ってくる。照れたような笑みを浮かべるレンの背後で、ウェンディさんがなぜか親指をグッ、と立てていたが、なんだったんだろう?
しかし長いな。もう二百メートルくらいは真っ直ぐ進んだと思うが。そろそろ曲がり角とかあってもよくない? それに……。
「あの、この道だんだんと下りになってませんか?」
僕が思っていたことを隣のレンが言葉にした。
そうなのだ。わずかにだが、だんだんと傾斜がきつくなり、下り坂になってきているような気がする。
これはインベントリからアイゼンを取り出して装備した方がよさそうだ、と思った瞬間、「ひゃっ」という最後尾にいたリゼルの声と、突然の衝撃が後ろから襲ってきた。
「ごめーん!」
「うわわわわっ!?」
一番後ろでコケたリゼルに巻き込まれるように、僕らはみんな足を滑らせて、まるで滑り台を滑るようにひと塊りとなって洞窟の中を滑り下りていく。
うおおおお!? けっこう怖い! いつの間にか洞窟はまるで氷で覆われたチューブの中のようになってた。
真っ直ぐだった洞窟が右に左にと曲がり、そこを勢いよく壁に乗り上げるように僕らは滑り落ちていった。
なんかこういうスポーツがあったような!? リュージュだっけ!? スケルトンだっけ!? ソリに乗ってないからどっちでもないか!? どっちかというとこれはウォータースライダー……!
『うわあああぁぁぁぁぁぁ!』
下り坂の洞窟が途切れ、広い場所に出た。僕らは投げられたボーリングの玉みたいに広い洞窟を滑っていく。勢いが止まらない。このままじゃ反対側にある壁に激突してしまう。
「え、【エアウォール】!」
リゼルが魔法を発動すると、僕らの正面に空気でできた壁が現れ、エアクッションのように衝撃を受け止めた。
【エアウォール】は衝撃を吸収するも、跳ね返すも術者の思い通りになる。リゼルは衝撃吸収のみにしたのだろう、やがて僕らは勢いをなくして、洞窟の壁にぶつかることなく止まることができた。
「ふ、ふぇぇぇぇ……」
僕にしがみついていたレンが腕の中で安堵のため息をついた。
「お嬢様。人前でいつまでも抱き合っているのはどうかと」
「え? あ! はわっ!? す、す、すみません!」
ウェンディさんの忠告に、レンが真っ赤になって僕から離れる。いや、僕もレンが吹き飛ばされないよう抱きしめていたから、おあいこなんだけども。
「全員無事なようだね。なかなかスリリングなアトラクションだった」
「すみません! 私が転んだせいで……!」
リゼルがレーヴェさんに謝っている。いや、あれはあのまま進んでいても結局滑ることになったと思うなあ。氷の上にあの角度で立つのは無理だよ。
そういや滑るのを防ぐ【グリップ】ってスキルがあるんだっけか。それがあれば普通に歩いて来れるのかな?
「しかし広いな……」
ぼんやりと光る氷のおかげでなんとなく洞窟内の様子はわかるが、かなり広いと思う。ちょっとした体育館くらいはあるよな。
天井……というか、上は真っ暗でどれだけ高いかわからない。上からツララなんか落ちてきたら、グサッといきそうだな……。一応、気を付けておこう。
こうも薄暗いとなにがあるかわからないな。【暗視】スキルをセットして、と。
「お、見える見える」
いくらか明るくなった周りを確認するようにぐるっと見渡す。【暗視】の熟練度が低いため、昼間のように見えるわけじゃないから、見落とさないようにしないと……お?
「向こうに扉があるな。でもあの前にあるのって……」
僕らが扉のある方へ進んでいくと、扉の前にはそれを守るかのように二体の大きな像が向かい合わせで台座の上に置かれていた。
翼を持った悪魔の像。なんだっけ、こういうモンスターがいたような……。
「ガーゴイルですね。そもそもはヨーロッパなどの装飾された雨樋のことなのですが、ゲームでは主に動く石像とされています」
「ってことはこれも……」
「近づけば動き出すでしょうね」
ウェンディさんが説明をしてくれた。ガーゴイルか。ゲームでは主に侵入者を防ぐ番人として登場することが多いらしい。
番人ね……。ってことは当然、僕らをあの扉の先に行かせる気はないんだろうな。
ここでちょっと作戦タイムだ。近づがなければ戦闘にならないのなら今のうちに回復や準備はしておきたい。
「ガーゴイルはあの通り石のモンスターです。斬撃系は効果が薄いと見ていいでしょう」
「じゃああたしは大剣じゃない方がいいかな?」
「大剣でもダメージは与えられると思いますが、耐久性が大きく削られるかと」
武器の耐久性は強化したり、硬い物を切るなどしてダメージが蓄積されていくと減っていく。そしてこれがゼロになると武器が破壊されてしまうのだ。
ミウラはウェンディさんの説明を聞き、サブウェポンのハンマーに切り替えた。あのハンマーなら耐久性が削られることはないだろう。
やはり斬撃系の武器は使わないほうが良さそうだ。
しかしそうなると、僕、ウェンディさん、シズカの三人は攻撃ができないのだが。いや、ウェンディさんは盾職としてまだやれることがあるが、(盾を使う攻撃は斬撃系ではない)僕とシズカには攻撃手段がない。
あ、僕は【投擲】があるか。いや、あれも斬撃系か……? レンの矢みたいに爆発したり貫いたりはしないよなあ。
「シロ君、刺突系の武器を持ってなかったっけ?」
「あるけど、最近使ってなかったから全然強化してないんだよね……」
リゼルに言われてインベントリから『突剣・鬼爪』を取り出す。第二エリアの【ガンガン岩場】を抜ける時に買った武器だ。サブウェポンも新しくしておくべきだったなあ。
そういえばあそこで初めてレーヴェさんに出会ったんだよな。あの時はライオンの姿だったけど。
まあ、これでもないよりはマシか……。
「シズカはなにか対策が?」
「ご心配なく。こんなこともあろうかと【格闘の心得】を持っております」
シズカはそう言ってインベントリから両手に装備する緋色のガントレットを取り出した。いつの間に……。
「【格闘の心得】から派生する【合気術】を覚えたくて取りました。薙刀の他に合気道も少しやっていましたので」
【合気術】は【格闘術】や【柔術】と同じ、【格闘の心得】から派生するスキルだ。
相手の力を利用して、受け流したり、投げ飛ばしたりするのが主な攻撃方法だというが、ガーゴイルにそれがどれだけ効果があるかはわからない。
幸い? シズカはまだ【合気術】を取ってはいないので、【格闘の心得】の蹴ったり殴ったりの攻撃である。薙刀よりは直接ダメージを与えられるだろう。
……あれ? この中で一番僕が役立たずか?
「シロさんは【挑発】して回避の盾役ですかね」
「ううむ……。まあ、それしかないか」
僕ら【月見兎】は七人、そこにレーヴェさんが加わって八人。四人ずつ、右と左に分かれて戦うことにした。
片方をレーヴェさん、レン、ウェンディさん、シズカ。
もう片方をリンカさん、ミウラ、リゼル、僕、である。
レーヴェさんとリンカさんが、おそらくガーゴイルには向いている打撃系の攻撃力を持つ。この二人をメインにして戦闘をしようというわけだ。
「よし、じゃあ行こうか」
レーヴェさんを先頭にガーゴイルに近づくと、やはりというか予想通りに、目が赤く光り、石像だった悪魔が動き始め、こちらを向いた。
ドズン、と台座から降り、こちらを威圧的に睨んでくる。
翼はあるが飛べはしないらしい。そりゃ石だもんな。
「よし、じゃあ作戦通りに────」
口を開くと同時に、二体のガーゴイルの目から赤い光線が僕へ向けて放たれた。
「うおおおおお!?」
【心眼】スキルのおかげでなんとかギリギリそれを躱すことができた。光線が当たった地面が、ボボン! と、小さく爆発する。
危な!? そんな飛び道具ありなのかよ!?
僕とウェンディさんはアイコンタクトを取り、小さく頷くと、お互い左右逆方向に走り、【挑発】スキルを発動させる。
『ガ』
『ガガ』
ガーゴイルは狙い通り二手に分かれ僕らを追いかけてくる。
ガーゴイルの攻撃を躱しながら僕が誘導して、ミウラとリンカさんが前に、そして後方にリゼルと距離を取る。
「【スイングハンマー】」
『ガ』
リンカさんの横薙ぎの一撃がガーゴイルの脇腹に決まる。グラッとよろけたが、ガーゴイルはすぐに体勢を立て直し、リンカさんへとビームを放った。
「うっ」
避けきれなかったリンカさんが肩にダメージを受ける。いかん、僕がヘイトを稼いで、こっちに注意を引きつけないと。
「【ダブルギロチン】!」
左右両方の『突剣・鬼爪』をガーゴイルの背中へと叩きつける。
硬った……! 叩きつけた腕が今までにない衝撃を受ける。
振り向いたガーゴイルは僕に鋭い爪の伸びた腕を振り上げた。
「【エアインパクト】!」
『ガ』
リゼルの放った横からの空気圧がガーゴイルを吹っ飛ばす。重い石像が地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がっていった。
「【ヘビィインパクト】!」
倒れているガーゴイルにハンマーを持ったミウラの一撃が決まる。腹に一撃を受けたガーゴイルであったが、そのままミウラの足を掴み、ゴミを投げ捨てるかのように彼女を勢いよくぶん投げた。
「たっ!?」
地面に落ちたミウラが慌てて体勢を整える。ガーゴイルはゆっくりと立ち上がり、こちらへ向けてまた赤いビームを放ってきた。
動きは速くない。攻撃力もそれほど高くはない。だけど、とんでもなくタフなやつだ。ライフゲージがほとんど減っていない。
こりゃあ持久戦になるな……。僕は悪魔の石像を睨みながら、スタミナ切れに気を付けようと思った。
◇ ◇ ◇
「【ボーンクラッシュ】!」
フルスイングしたリンカさんの一撃が、ガーゴイルの頭を見事に砕いた。ガーゴイルはその場に瓦礫となって崩れ落ち、光の粒となって消える。
「や、やっと終わった〜……!」
ミウラがその場にペタンと座り込む。僕も動きを止めて、インベントリからポーションを取り出して一気に飲む。
いや、面倒な敵だった。結局三十分近くもかかってしまった。ひたすら避けて避けて隙を見て攻撃、の一撃離脱《ヒット&アウェイ》の繰り返し。
少しでも気を抜くとビームの餌食になりかねない、神経が疲れる戦闘だったな。
ドロップアイテムは『瓦礫の石』と『石材』……あれだけ苦労したのになんかショボい……。みんなも同じらしい。まあ、石だしな……。
そしてレンにドロップした『鉄扉の鍵』。普通に扉の鍵っぽいな。目の前の鉄扉を開けるためのアイテムだろう。
レンが大きな鍵を取り出し、鍵穴に入れてガチャンと回す。
「「せーの!」」
扉をSTRが強いミウラとレーヴェさんが押すと、ギギギ……と軋むような音を立てて、大きな鉄扉が観音開きに開いていく。
「な……!」
扉を開いた僕らは、目の前に飛び込んで来た光景に思わず絶句してしまった。
その先も周囲が青白く光る氷で包まれたとても広い洞窟であったが、巨大な氷柱が中央にデンと聳え立っていたのだ。
僕らが驚いたのは氷柱にではない。その氷柱の中に閉じ込められた身の丈十メートルはあろう巨人に驚ろいたのだ。
青い肌の巨人は毛皮のような服を着て、まるで原始人のような姿だった。
盛り上がった筋肉に恐るべき膂力を感じる。手にした石斧はとてつもない破壊力を生み出すだろう。
「フロストジャイアント、でしょうか?」
「フロストジャイアント?」
「霜の巨人。北欧神話などに出てくる種族ですね。ゲームなどではけっこうメジャーなモンスターですが」
ウェンディさんの説明を聞いてもう一度目の前の巨人に目をやる。しかしなんだってこんな氷づけになっているんだろうか。
「む?」
僕の前にいたレーヴェさんが小さく声を上げる。
「フロストジャイアントのライフゲージがポップした。戦闘に入っているぞ!」
「なっ!?」
レーヴェさんの声に僕らは武器を構え、凍り付いているフロストジャイアントに警戒を向ける。
しかしいつまで経ってもなにも起こらず、僕らは数分間をなんとも言えない無言の時間で費やした。
「なにも起こりませんね……?」
「てっきり氷を砕いて中から出てくるのかと思ったんだけど」
レンとミウラがそんな会話をしている。うん、僕もそう思った。
フロストジャイアントのライフゲージが出てるってことは、敵モンスターなのは確かだ。でも戦闘にはならない? 凍り付いているから?
「あっ、みんな、下の方を見て! もう一個ライフゲージがある!」
リゼルに言われてフロストジャイアントの膝下辺りを見ると、確かにもう一つのライフゲージがポップしていた。
『永久氷壁』……? これって氷のライフゲージなのか?
氷のライフゲージってどういうことだ? これがゼロになれば氷が死ぬ……砕けるってこと?
でもこの氷、ものすごくライフゲージが多いんですけども。今までのエリアボスより遥かに桁違いなんだが。
「ちょっと攻撃してみるね。【ファイアボール】!」
リゼルが【ファイアボール】を永久氷壁に向けて放つ。ドカン! という爆発音を響かせて【ファイアボール】が永久氷壁に炸裂したが、まったくの無傷だった。ライフゲージは……。
「ほんのちょっと減ったか……?」
本当にちょっぴり。全体の0.1%くらいか? てことは今のを千回くらい繰り返せば氷が砕けるってこと……。
僕がそんなことを考えていると、永久氷壁のライフゲージがピコンと回復し、100%に戻ってしまった。
え!? 回復するなんてそんなのアリか!?
「どうやら休む間もなく攻撃を加え続けないとこの氷は壊れないようだね……」
「壊れたとしてもその次はフロストジャイアントと戦闘ですよね? 厳しくないですか……?」
レーヴェさんと僕は凍りついているフロストジャイアントを見上げながら途方に暮れた。
【DWO無関係 ちょこっと解説】
■ガーゴイル
元はヨーロッパに多く見られる悪魔や怪物の形をした雨樋のことである。ラテン語の『喉』がその名の由来。ゲームなどでは動く悪魔の石像として知られている。狛犬やシーサーと同じ、『魔除け』として意味も持ち、このことからか門番モンスターとしての役割が多く見られる。