■000 プロローグ
新作です。よろしくお願い致します。初日のみ二時間ごとに一話、計七話予約投稿致します。
『それ』は星の海をフラフラと漂っていた。
蒼く輝く光の玉としか表現できない『それ』は、星々の中に自分と同じように青く輝く宝石のような星を見つけた。
興味を覚えた『それ』は、大気圏を抜け、地上へと降下していく。
特に理由もなく、目についた島国へと向かった。
たまたま『それ』が降り立ったところはその国の首都であったが、そんなことはどうでもいいことのように、様々な都市の光を夜空から眺めていた。
光の玉はさらに降下し、高層ビルの横を飛んでゆく。野球ボールほどの青き光の玉は、誰に認識されることもなくその星の住人たちを観察していた。
ふと、ビルの窓からチカチカと点滅する明かりを見つける。それはPCに繋がれた何台ものディスプレイから漏れる光だったのだが、その横に設置されていた大きな棺桶のようなベッドにはこの星の住人が奇妙な姿で横たわっていた。
頭に妙な被り物を付け、そこから様々なコードが何本も伸びている。隣には白衣を着た別の人物が椅子に座り、何やらタッチパネルのキーボードを叩いていた。薄暗い部屋の中で、ディスプレイからの光だけが男の顔をぼんやりと照らし出している。
やがてその横たわっていた人物が起き上がり、頭の被り物を取り外した。
「お帰り。どうだった『向こう』は?」
キーボードを打っていた男が寝ていた男に話しかける。
「すごいな。本物と変わらない感覚だったよ。まるで異世界に迷い込んだみたいだった」
興奮冷めやらぬ様子でベッドから起き上がった男が椅子に座った男に感想を述べる。それを聞いた椅子に座る男も満更でもない笑顔を浮かべた。
「その感想は嬉しいけど、まだまだこれからさ。完成には数年はかかる。さて、医療室へ行ってバイタルチェックをしよう。なにか体調に変化は?」
「今のところ何も。『向こう』で走り回ったからか、腹が減っているような気もするが」
「ふむ。空腹を感じる、か」
ベッドから男は立ち上がると、隣の男と連れ立って部屋を出て行く。
扉に鍵をかける音がして、二人の足音は遠ざかっていった。
誰も居なくなった部屋に、『それ』は窓を開けることなく幽霊のようにすうっと侵入する。ふわふわと薄暗い部屋の中に浮かびながら、チカチカと光る様々なディスプレイ、その中に広がる画面に『それ』は興味を惹かれた。
青い光の玉がディスプレイの中へと入りこんでいく。
次の瞬間、『それ』はその中のもう一つの世界を認識した。
さらに興味を惹かれた『それ』は、もっと深く、もっと奥へと潜って行く。この世界ならば「繋がる」ことができるのではないか。
そのディスプレイに浮かぶ文字は、新たな可能性を見出された世界。
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その後、いつまで経っても『それ』が出てくることはなかった。