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【二次創作】異世界転移したら物騒なソシャゲのチュートリアルが始まったけど課金して無双してやった

「一見ただの村を焼くゲームですが、実はとっても……?」

出会いはそんな広告だった。布地の少ないイラスト、安っぽい謳い文句。興味が無かったわけではないが、期待はしていなかった。歩きながらプレイヤー登録していたら、トラックに撥ねられて世界が暗転した。


生きているのか死んでいるのか、それは俺にも分からない。声だけが聞こえる。

女神アリュアストリカと魔王なんとかポルの戦い。野を焼き城を焼き、特に生物の脳を焼くことを好んだ魔王は、女神と三人の勇士たちによって像に封じられた。世界観の説明は始まっている。

やがて視界に色がついた。木々、空、土。その中を漂う白い毛玉の化け物はメッポルと名乗っていた。メッポルなのに語尾はメポだ。ポルではないのか。

「かつてこの世界では、太陽の光の下で様々な生き物が平和に暮らしていたメポ」

白い毛玉はなにやら講釈をたれているが、導入が長すぎる。俺は物語を聞きたいんじゃない。ゲームがしたいんだ。スキップ。

「……と、言うわけメポ。メポはこの世界を再び恐怖と混乱の渦巻く炎罰地獄への法理弑逆を目論む黒のアリュアストリカを倒すため、炎の使い手を捜しているメポ」

「炎に対して炎で戦うのか?」

「そうメポ。炎はいいメポ。身を焦がすような炎熱、夜を裂くような光焔、どれもこれもが素晴らしいメポ。人間、炎は使ったことがあるメポ?」

「いや、うちIHだから」

「そうそう、まずは名前を教えて欲しいメポ」

流れるように無視された。所詮ゲームのプログラムなんてこんなものか、と冷静になる。

「赤口ロメオ」

いつも使っているゲーム用の名前を告げてやると、毛玉は狂ったようにぴょんぴょこ飛び回った。邪魔だ。

「ロメオメポね。分かったメポ。これからよろしくメポ」

「これから?」

「聞いてなかったメポ?君は今日からこのメッポルと一緒に、邪悪なる存在を焼いて浄化する炎の戦士になるんだメポ」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「お前を消す方法」

「ひ、酷いメポ!こんなに愛くるしいメッポルを邪険にするなんて……一応『アバターの変更』でアシスタントの外見を変えられるメポ。ちなみにアバターは『課金』で手に」

「課金。アバター購入。アバターの変更」

「メポ」

「どれどれ……これがかわいいな。これで」

選んだのはウサギのような耳にウサギのような白い……まあ、露出度の高い女の子だ。これで毛玉と話すより数倍マシになった。

「メポ!改めてよろしくお願いするメポ!」

「この後はどうすればいい?」

「チュートリアルメポ。チュートリアル村を焼いて、まずは感覚をつかんで欲しいメポ」

「スキップ」

「メポ。チュートリアルクリアの証にこの『白の双剣』を渡しておくメポ。ちなみにチュートリアルは、後で『遊び方』を聞いてくれればもう一度説明してあげるメポ」

「次はどうすればいい?」

「チュートリアルが終わったら、早速村を焼いてみるメポ。次からメポは手助けしないから、一人で頑張るメポよ」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「ガチャについて」

「『ガチャ』は『ソウル』を使って行う『ソウルガチャ』と、『燃素』を使って行う『バーニングガチャ』があるメポ。ガチャでは魔法が手に入るメポ。手に入れた魔法を使ったり、付け替えたり、強化したりして効率よく村を焼くメポ。ちなみにソウルは村や村人を焼いたり、ログインボーナスなんかでもらえるメポけど、燃素は課金しないと手に入らない貴重なものメポ。ソウルは戦闘中にも使うことが出来るメポ。大切に使うメポよ」

「課金。5万」

「メポ」

「燃素はいくつになる?」

「100円で1つメポ。それに一括購入ボーナスがついて、700メポね」

「100をソウルに変換して、追加で燃素ガチャ。10連続を5回」

「メポ。250燃素を消費してガチャするメポ。残り燃素は350メポ。ガチャを回してもいいメポ?」

「早く」

「おめでとうメポ!『白の炎』『白の炎』『炎天下』『白の残り火』『風力調整』……」

「魔法強化」

「メポ」

「『白の炎』を『白の双剣』を素材にして強化」

「それはさっきメポがあげた魔法メポ。強化素材にすると魔法は消えちゃうメポ。それでもいいメポ?」

「いい」

「メポ……」

表情を曇らせるメッポルとは裏腹に、小気味いいファンファーレのようなものが鳴り響く。

「強化成功!『白の炎』は『白ノ劫火』にランクアップしたメポ!メポのあげた『白の双剣』は消えちゃったメポ……」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「アイテムについて」

「『アイテム』には色々な種類があるメポ。ざっくばらんに言って、村を焼きやすくしたり、自分の力を高めたりするものがあるメポ。これを使うと村を焼くのがもっと楽しくなるメポ」

「なるほど。じゃあ純酸素結晶と……これとこれ」

「アイテムを買ったメポ!次はどうするメポ?」

「村を焼こうかな。ステージ1−1へ」

「メポーーーーーー!早速村に向かうメポ!」

ここ一番の笑顔を見せるメッポルの後に続き、俺はステージ1−1となる村を目指した。


「ここメポ。本番とはいえ、やり方はチュートリアルと変わらないメポ。操作が分からなくなったらメポに聞いて欲しいメポ。何でも答えてあげ」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「特に無し。アイテムを使う」

「あ、そうメポ。何を使うメポ?」

「ソウルブースト」

「村を焼いたときの獲得ソウルを増やすアイテムメポ。これで獲得ソウルが増えるメポよ。ステージを始めてもいいメポ?」

「それと純酸素結晶」

「どこに配置するメポ?火元に近すぎると一気に村が燃えちゃうし、かといって遠すぎると着火しなくなっちゃうメポ」

「村の東側に縦に十個。それと井戸と大通りに三個ずつ」

「メポ。ステージを始めてもいいメポ?」

「『風力調整+3』も使う。風力最大、東風」

「メポ……それじゃメッポルの出番が」

「スタート」

「メポ……ステージを始めてもいいメポ?」

「スタート」


俺の完璧な采配によって、村は一瞬で焼け落ちた。『白ノ劫火』を使うことなく。ソウルも大量に入手できた。あんなに村も村人も焼いたのに、メッポルはどこか寂しそうだった。

「せっかく焼いてやったんだからもっと楽しそうにしろよ」

「メポ……複雑な気持ちメポ……メポも村を焼きた」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「キャンセル」

「……次はどうするメポ?」

「村を焼こうかな」

「一度村を焼いた後はスタミナを消費してしまうメポ。今のロメオのスタミナはゼロメポ。これが回復しないうちはメポが村焼きを許さないメポ。無理しちゃ駄目メポ。スタミナは二分で一ずつ回復して」

「課金アイテム。スタミナドリンク」

「メポ」

「今の俺のスタミナは?」

「完全回復してるメポ」

「よし。1−2へ」


「メポ。1−5メポ。次の村はちょっと厄介メポ。見るメポ。この村は小さ」

「なるほどね。家と家との間隔が広いし、よく見ると小川を利用した水路が張り巡らされているのか。だから焼きにくいってことだな。純酸素結晶を使用」

「メポ」

「二十個。全戸に」

「メポ。ステージを始めてもいいメポ?」

「『天候操作』の魔法を使用。村の状態を小雨に」

「メポ。ステージを始めてもいいメポ?」

「ソウル使用。『五行相剋異説・水生火』」

「……メポ。ステージを始めてもいいメポ?」

「スタート」


高い防災意識を持った村も、急に空から炎が降り出したのではひとたまりもなかった。水は燃え、火を消すことも出来ず、更に一度家に火がつけば中の純酸素結晶が爆発的に燃え上がる。炎は拡散し、新たな連鎖を巻き起こす。人間を取り込みながら。

しかし。

「なんか……火の回りが悪い、のか?」

よく燃えてはいるのだが、炎の勢いが弱い。いや。そうではない。炎の速度が遅いのだ。

「何これ」

「メポ。どうやら逸脱した炎量による法理への過干渉(処理落ち)が起こってるみたいメポね」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「法理への過干渉」

「村の焼ける速度が世界の法理を超えてしまうことで起こる一種の時間停滞メポ。時間がゆっくり流れるように見えるだけで、実際はちゃんと燃えているメポ」

「ふーん。ならいいや」

メッポルの言ったとおり、終わってみれば村はきちんと焼けていた。


「メポーーーー」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「キャンセル」

「……いい加減メポを黙らせるためだけにヘルプ開くのやめて欲しいメポ。メポだって頑張って」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「キャンセル」

「レイドボスが出たメポ!」

「ログアウト」

「また来るメポ!一緒に村を焼こうメポ!」

「ログイン」

「あ、来てくれたメポね!ログインボーナスメポ!ソウルを3000あげるメポ!」

「よし。じゃあ続きを」

「……レイドボスが出たメポ!」

「レイドボス?」

「そうメポ。ほら、あの村の……見るメポ」

「あれは……生き残った村人?そんな馬鹿な……」

「村はさっき焼け落ちたはずだ、そう言いたい気持ちは分かるメポ。確かにその通りメポ。あれは村の生き残りじゃないメポ」

「じゃあ誰なんだよ」

「あれは探偵メポ」

「探偵?」

「メポ。奴らは厄介な敵メポ。危険を感じたらすぐ逃げるし、炎の気配にもすぐ気づくし、魔法による法理の書き換えも察知して村人を避難させたりするメポ。奴がいると村を焼くのが困難になるメポ。ここは倒し方を教えるから、とりあえず次のステージで家を一軒だけ残してクリアするメポ」

「一軒だけ?」

「そうメポ。その一軒には……今回はメポが貸してあげるメポが、この純酸素結晶を配置しておくメポ。探偵はその性質上、無事だった家を調べずに居られないメポ。探偵は迂闊だから、証拠を見つけるとすぐ懐に入れちゃうメポ。それを利用して次のステージで探偵を巻き込んで村を焼くんだメポ」

「『直接着火ダイレクトバーン』の魔法を使用」

「アアアアアアアア!!」

探偵は断末魔をあげて黒こげになり、その場に崩れて灰になった。

「直接焼いてもいいんでしょ?」

「メポ……メッポル、こんなつもりでロメオをこっちの世界に呼んだわけじゃないメポ……もっとメポも楽しく村を焼けると思ったメポ……それなのに」

「ヘルプ」

「何が聞きたいメポ?質問をカテゴリから選ぶメポ」

「ゲームの終了方法」

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