16.恐怖の臨時教師
お久しぶりで失礼ですが、さらに失礼にも下品な話です。(二話です)
エロな冗談が苦手な方には向きません。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん……(苦情は活報や感想欄へどうぞ)
ある日、学校に行くと朝のホームルーム前にクラスの女子がニュースを運んできた。
「ねえねえ、速報よ! 担任の谷崎先生、休職するって!」
「え? 入院長引きそうなの?」他の女子が聞き返す。
「うん。具合が悪くなったところのほかに、別の病気も併発してたんだって。ひと月は入院つづけるみたい」
「じゃあ、国語は一年生教えてる吉田先生が二年の授業も掛け持ちか。あの先生、書道部の顧問もやってるから忙しそう」
「それがさあ、谷崎先生も検査の結果次第で退院がいつになるかわかんないんだって。それじゃ困るからしばらく臨時の教師が来るって」
うわあ。谷崎、結構悪かったんだ。伊邪那美が手ぐすね引いてなきゃいいが。
俺の担任の谷崎は数日前に授業を終えた後、体調不良で病院に行った。すると状態があまり良くないとかでとりあえず入院し、検査を受ける事になったという。
その検査の途中で別の病気が見つかったのだろう。これは治療に長くかかりそうだ。
変な神々が身近にウヨウヨいるおかげで、俺はいつの間にか余計な心配までするようになっていた。……もう平和な頃には戻れないのかな。
そんな感慨にふけるうちにホームルームが始まり、俺たちに副担任から国語の臨時教師を紹介するといわれた。
入ってきた教師にクラス中が色めき立った。これは稲櫛の転校以来の衝撃度、いや、確実にそれ以上だ!
教師は女性だった。それも飛び切りの美人。ちょっと目にきつい印象があるが、それもきりっとしていてカッコイイ。整った目鼻立ちに少しつやのある唇。背は高からず低からず、緩いカールのかかった髪を軽く後ろで束にしてまとめている。
そして男子全員の注目となったのは、その体つきだ。
「……おい、気づいたか? エロい、いいカラダしてるよな」
速須の奴は小声でこっそりと、だが、臆面もなくそう言い放った。だが、奴の気持ちはよくわかる。クラスの男ども全員の本音だと思う。
服装は女教師らしく地味で平凡な紺のスーツだ。パッと見はそんなにすらっとした感じではないし、むしろ肉付きがいいほうだと思う。
だが、オトコゴコロとしてはモデルのような細身の女よりは、こういう体形のほうがそそられる。何より胸が絶妙の大きさだ。
小さければ見ごたえがないが、大きすぎるのも今一つだ。巨大なおっぱいなんてテレビのネタやアニメの世界で十分だ。そんなどこか作り物めいた胸より、もしもこの手で触れるものなら、手に包み込んだ時に少しばかり余るくらいの感じがいい。見た目も大事だが男はそういう想像が楽しめるサイズを好んでしまう。
腰だって女子はやたらと細くなることを望んでいるが、腹が出ているのは論外としても腰骨がゴツゴツしているのは色気がない。お尻にかけて適度な丸みがあって、見るからに柔らかそうな感じがあった方がいい。
太ももだって丸太のようなのは勘弁してほしいが、太くない太ももなんて、詐欺みたいなもんじゃないか。
スタイルのバランスはいいが全体にどことなくむっちりしていて、柔らかそうなカラダ……。こういうのをエロいと感じるのは健全な男子なら罪じゃないはずだ。
地味なスーツ越しでもそう思わせるような体の線。「女教師」という認識も手伝ってか魅力も二割以上は増してしまう。ただ、イマドキの下着は色々ごまかせそうだから見たまんまのイメージどおりかはわからないが、どうせ脱いだところが見られるわけではないんだから、想像のネタがこんな身近にあるのはありがたい。だが。
「そこっ! 何をコソコソ話してるっ!」
速須に向かっていきなり叱責が飛んできた。見ると女教師の目がキリキリと吊り上がっている。そしてツカツカとヒールを鳴らし速須の席に近づくと、
「教師が自己紹介もしないうちに、私語にうつつを抜かすとは余裕だな」
と、仁王立ちで速須をにらみつけ、凄んだ。美人だけに余計迫力がある。
「セ……センセイがあんまり美人なもんですから……」
速須はそういっておべっか笑いを見せるが、女教師はニコリともせず、
「それはありがとう。でも、その美人の顔をゆがませないように私語は慎みなさい。女の臨時教師だと思って、なめんじゃないわよ!」
とても教師が言っていい言葉だとは思えないことを言う。
「他の生徒も聞きなさい。私の名前は天野季華。谷崎先生が戻られるまで、皆さんの国語の授業を担当します。自己紹介はこれで十分ですね?」
えらくシンプルな自己紹介だが、この女教師に突っ込みを入れられるつわものは誰もいないだろう。
「私はしょせん臨時ですし、皆さんと仲良くなれあう気持ちはありません。その代りしっかりと教育を施させていただきます。いいですね?」
あまりの言葉に全員開いた口がふさがらずにいると、
「返事は!」と、えらくドスのきいた声が飛んできた。
「はい!」クラス中の返事がこんなにそろっているのを初めて聞いた。
「よろしい。それから君、名前は?」再び速須を見下ろして聞く。
「速須……」
「そっちは」速須の返事もソコソコのうちに、今度は俺に向かって聞く。
「山佐」
「速須君、山佐君。二人とも昼休みに職員室にいらっしゃい」
「は?」
「問答無用。ホームルームも授業のうち。授業中は私語を慎むように小学生の時に習っているはずです。それが守れないのは小学生並みということ。改めて小学生のしつけを教えてあげます」
……とんでもない教師が来た。しかも速須と俺は目をつけられた……っぽい。
昼休みに俺たちが渋々職員室に行こうとすると、稲櫛に「ちょっときて」と呼び止められた。
「俺たち職員室に行かないと、あのおっかねえ女教師に……」
といいながらも、本当のところ行きたくないものだからついつい稲櫛についていく。人の姿がなくなると稲櫛は開口一番、
「あの人……女神よ。それも天宇受売命様。高天原でもとても位の高い女神」
「え? ……えらく美人だと思ったら」
高須は単純に感想を述べただけだろうが、稲櫛はむっとした。最初に天野先生を見てデレデレしていたのがバレているんだろう。
「なんでそんな女神が学校に来るんだ?」
「きっと咲耶と橘の試験官なんだと思うわ。普通ならそんな高位の神がするほどの仕事じゃないはずだけど……何せあの二人の霊力だと、万が一の判断ミスがあったら困るから」
「困るのか?」
「土地のエネルギーを間違えて活性化させても、小さな地震くらいなら天から抑え込めるけど、大きなエネルギー放出させて地割れとか作ったら……」
「やめてくれー!うちの目の前で大地震起こすな!」俺が思わず口を挟む。
「……そうならないための試験官なの。宇受売命様のお力なら抑え込めるでしょうけど」
「じゃあ、俺たちが呼び出されたのは咲耶と橘のことなのか? 何か聞かれてもあの二人の試験のことなんて、全くわからないぞ」
「それはないと思う。今は普通の人でしかないあなたたちに、試験の手伝いは出来るはずないから」
そりゃそうだ。魂が神の速須はともかく、俺は完全に人間だし、今後もそれを貫く気マンマンなんだし。
「でも、高天原は別で想定外の心配をしているのかもしれないし、もしくは……」
「もしくは?」ごくり。思わず息をのむ。
「二人があんまり鼻の下伸ばしているから、女神の逆鱗に触れたんじゃない?」
そんなことでかよ!
「どっちにしろ、とても高位の女神には違いないわ。二人ともよーく謝って、しっかりお叱りを受け止めてね。試験の前に二人のスケベ心からこの辺を壊滅させられたりしたら、シャレにならないもの」
稲櫛の視線はあくまでも冷たい。特に速須に対して。何だか俺はとばっちりで巻き込まれている気がするが、俺のうち周辺が大地震のピンチとあっては確かにシャレにならない。覚悟を決めて謝り倒すしかなさそうだ。
続きがさらに下品です。苦手な方は回避お願いします。