酒肴
下弦の月がのぼる宵
ひとり手酌の酒盛りだ
酒はあれども肴に乏し
ほどよく酔いのまわる頃
とうとう肴が切れたので
己が酒の肴にも
なっていいかと思いたち
空の小鉢を睨んでいたら
海鼠みたいにおさまった
酒客は君で主が私
夜は更け宴もたけなわに
食い物談義に花が咲く
外で食べるかうちめしか
断然うちめしなのである
食べたいものを自分の好みで
拵えるのが愉しくて
厚焼き玉子に甘海苔添えて
ご飯半膳かきこめば
食後はパリパリサンデーカップ
チョコのほどよい苦みを受けて
舌がウィスキーをねだるんだ
小ぶりのリキュールグラスにいっぱい
安物スコッチを注いで啜る
こんなめしやがほかにあるかい?
酒と肴の混淆に
あまねく酔いのまわる頃
東の空が明けそめて
酒客はぽそっとつぶやいた
朝がこわい