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第六話  変態への告白

「そっか、お前があの時、俺たちを助けてくれたやつなのか!ありがとうな!」


そう言うと、ビプ男は俺に握手を求めてきた。

俺は手を出しかけて、はっと我に返った。


「おい、その右手、洗って来い。」

俺は先程のグロ写メを思い出していたのだ。確か右手で握ってた。

「は?なんで?」

ビプ男は不快感を露にした。

「は、じゃねーだろ。さっきその手で何握ってた?」

あっとビプ男ははにかんだ。

「細かい男だなぁ、わかったよ。」

 そう言うと、ビプ男はしぶしぶ手洗いに向かった。細かいじゃねーわ、全く。

当然だろ。だいいち、あんな画像を送っておいて、どの面さげて人に会えるんだよ。厚顔無恥というのはあの男のためにあるような言葉だ。


 ビプ男がよれたトレーナーで手を拭きながら、手洗いから出てきた。思ったとおり、だらしない男のようだ。とりあえず、俺達はコーヒーを二つ頼んだ。

「あの日、まさか俺達が同じ電車に乗っていたとはなあ。しかも、その後また運命の出会いを果たしているなど、ほんと、わかんねえよな。」

ビプ男はコーヒーを一口すすった。俺は、素朴な疑問を口にした。

「どうして、そんな能力が備わったんだ?」

「知らねえよ。こっちが聞きたい。」

「どうやってその能力に気付いたんだ?」

俺がそう言うと、ビプ男はニヤニヤと笑い出した。

「あの公園、ちょー穴場だったんだよね。下手なAVより抜けるんだぜ?」

うわあ、こいつ最低。本物の変態だ。

「あの電車の異臭騒ぎ以降も俺は覗きをやめなかった。ある日、俺はいつも通り覗きをしながらオナってたら、なんかそんな自分が無性に惨めになってきて、リア充どもめ、爆発しろ!って思ったんだ。そしたらさ、本当に爆発したんだ。」

「そうなんだ。やっぱりあの異臭騒ぎ以来か?」

「ああ、あの日まで、いくらリア充を憎んだって、そんなこと起こるわけがねえ。でも、やり過ぎると俺もヤバいからな。これであの能力を使ったのは3回目だ。俺のこの力は憎しみがエネルギーになっているようだから、それからは極力、覗きはしても楽しませてもらってる、って考えるようにしたんだ。今日もごちそうさまです、って精神でな。」

どっちにしても、お前は最低。俺は一瞬悩んだが、同じ体験をきっかけにこの能力を授かった者同士、信じてもらえると思い、初めて能力を告白した。

「実は俺も、あの日から妙な能力が備わった。」

「へえ、どんな?」

「未来が見えるんだ。」

「マジ?すげえじゃん!」

「俺はすぐに、この能力に気付いた。町の中歩いてて、突然目の前で人が上から降ってきた何かに当たって倒れるビジョンが現れたから、俺は危ない!って叫んだんだ。そしたら、向こうから歩いてくる人がびっくりして立ち止まった。そのあとすぐに、その人の目の前に工事現場の足場が落下してきたんだ。」

「へえ、お前、人助けしたんじゃん。すげえ。」

「それからも似たようなことが何度かあった。自分が怪我する寸前も予測できる。

だから、俺はあの日から一度も怪我をしたことがない。」

「じゃあ、俺がリア充を爆破する時も?」

「あの時は、まずあのカップルが青い炎に包まれるビジョンを見た。その後、爆発音がしたんだ。」

「俺には炎と爆発は同時だったけどな。へえ、不思議なもんだな。予知能力かよ。かっこいいな。じゃあ、宝くじでも買って、大もうけしようぜ。」

「それがだめなんだ。」

「なんで?」

「俺が見えるのは3秒後の未来のみ。せいぜい使えても危険回避くらいだ。」

「そうかぁ。じゃあ宝くじは無理だなぁ。」

俺はようやく長年隠し通してきた能力をまともに聞いてもらえる人間に出会うことができた。


 それがよりによって、こんな30間近の変態だなんて。


「それよかさ、あのオッサンたち、何者なのかな?お前もあの異臭騒ぎで眠くなって、何か針みたいなもので刺されたのか?」

ビプ男が俺と同じ体験を話して来た。

「そう。でも、病院にいったけど、その針の部分は腫れてなかったし、体にも何の異常も無かった。」

「同じだ。俺も。しかも、あの針のあとは綺麗になくなったしな。」

ビプ男は毛深い腕を出してきた。ここまで毛深いとどこが肌だかわからん。

ゴリラかよ。


 俺は、この変態と同じ不思議な体験を有する同士なのだ。

どうせなら、かわいい女の子とかと同士になりたかった。

俺は見果てぬ幻想を抱いたが、俺の目の前には小太りの変態が居るのが現実なのだ。

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