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第五話  望まざる運命の糸

直前まで、さんざん迷った。

インターネットの関係のどこがいいかって言ったら、顔を合わせなくても

交流できるからであって、俺にとってインターネット上の人と会うなど、

在り得ない話だった。


 つい先程、ビプ男からメールが来て、

「忘れてないだろうな。今日の夕方7時、丸亀公園な。」

と書いてあった。しかも、ビプ男のやろうとしていることは、

下手をすれば犯罪だ。公園でオナニーしながらカップルを覗くなど

変態以外の何者でも無い。俺は、共犯者になりかねないのだ。


俺は返信をした。

「公園でオナニーしながらカップル覗くなんて変態じゃないか。

それって犯罪だぞ?俺は付き合えない。」

すると、すぐに返信が来た。

「そっか、じゃあお前は公園の外からカップルを見てるだけでいい。

別に俺と一緒にいなくていいから、本当に俺がリア充を爆破できるって

ところを見ててくれ。」


 俺は深く溜息をついた。どこまで自己顕示欲の強いやつなんだ。

面倒くさいから、見たって言っておけばいいんだ。でも、あいつ

しつこいからな。その時の状況とかいろいろ突っ込んで聞いてきそうだ。

まぁ、とりあえず陰から隠れて見て、ヤバかったら俺は通りすがりを

装えばいいんだ。だいたい、なんで俺が男の覗きオナニーを観察しなければ

ならないのだ。だんだん腹が立ってきたけど、俺も妙な能力があるので、

ビプ男の能力については実は半信半疑なのだ。見てみたい気持ちも、ないわけでは

ない。


 丸亀公園に着くと、俺はビプ男にメールした。

「どこにいる?」

「ベンチ横の植え込みの中だ。」

そう返事があって、俺はベンチがある場所を見回した。

すると、植え込みからにゅっと手が出て、振り回している。

あそこか。もういい、引っ込んでろ。

すると、ビプ男から写メが届いた。俺はげんなりした。

そっか、出してるか。見たかねえよ、バカ。

ベンチにはカップルが座っていて、なんとなくいい雰囲気になってきた。

そしてそのカップルはキスしはじめたのだ。羨ましい限りである。

俺なんて、もう、何度告ろうとしても玉砕がわかっているから、

恥ずかしながら童貞だ。こんなこと誰にも言えない。

そして、男の手が女の胸のあたりをまさぐり始めたところ、それは起こった。

男と女が突然、青い炎にボッっと包まれて、髪の毛がチリチリと燃え、

爆発音がしたのだ。その場はパニックになったが、男と女には、火傷などの

怪我はないようだ。信じられない話だが、衣服と髪の毛のみが焼けた状態なのだ。

俺は信じられなかった。本当に爆破できた。

その後すぐにビプ男からメールが来た。

「見たか?爆発できただろ?」

確かに。爆発した。


しかし、はやっ!早漏かよ。


俺はそ知らぬ顔で、その場を去った。

「見た。確かに爆発した。」

俺はビプ男にメールを返した。


俺達は、近くのファミレスで落ち合うことにした。


 男と会うだけなのに、俺はドキドキして、そわそわしていた。

俺が先にファミレスに着いて待っていると、入り口から30代くらいに見える

小太りの男が入ってきた。そして、俺を見つけると、ニヤリと笑い、親指を

立ててきた。何のグッジョブだよ。わけわかんねえ。


「はじめまして。って言ってもスカイプでは顔見てるしな。」

そう言うと、小太りの男はニッっと笑った。

俺はさすがに、先程の写メを見たばかりなので笑えない。


こいつが、あの自己顕示欲の塊で、歯に衣を着せない男、ビプ男か。

もう大胆不敵のオーラが満ち溢れているような男だ。


俺は最大限の、警戒のオーラを発した。


「まあ、そんなに警戒すんなよ。それよか、見たか?俺の能力。

嘘じゃなかっただろ?」

「ああ、嘘じゃなかった。マジなのか?超能力者なの?」

「うんにゃ、25歳くらいまではそんなことなかった。なんかさ、

4年前くらいから急にこの能力が使えるようになった。」

え、俺と同じくらいの時期だ。俺も4年前あの異臭騒ぎで。

 

 ま、まさか・・・・。俺は念のため聞いてみた。

「もしかしてさ、その能力がついたのって、電車で異臭騒ぎがあった後か?」

俺は、その小太りの男を見つめて、記憶を呼び戻していた。

すると、ビプ男のほうも、心当たりがあるようで、急に、あっと声を出した。


 「もしかして、あの時、俺と中坊に逃げろって言ったの、お前か?」


俺とビプ男は、どうやら運命の糸で結ばれているらしい。

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