第四話 三秒後もクソ
3秒未来が見えて変わったこと。それは危険が予知できることくらいだった。
3秒なんてあっと言う間だ。例えば、ズルしようと考えても3秒では足りないことのほうが圧倒的に多い。宝くじにしても。株なんてものは、まずは軍資金がなければどうにもならない。俺は今、しがない無職だ。それに、元々俺はヘタレだから、この力をそういうことに使うのに罪悪感を感じていたのだ。今思えば、まだ在職して金があるときに、なりふりかまわずその力を使って株で儲ければよかった、と今頃になって後悔している。
いや、やはり在職中は無理か。俺があの会社を辞めた理由を考えてみろ。残業100時間のブラック企業だったからじゃないか。そんなパソコンの前に張り付いてる暇もなかったし、その頃は独立して生活していたので、給料なんて生活にほとんど消えていた。
高校生の時、女の子に告白しようとした時にも、3秒前に見事に玉砕することがわかって、俺は告白せずに終わったのだ。3秒後の俺の世界もクソだ。
俺はコミュ症の上にさらに、変な能力を身につけたため、3秒後の言葉を飲み込む癖がつき、余計に相手の神経を逆撫でするようになった。
3秒後の未来なんて、わかっても何にもいいことなんてないじゃないか。ただふりかかる危険を回避できるだけ、それだけだ。俺は会社を辞め、実家に引きこもった。インターネットの世界に引きこもっている時に、ビプ男、ナナシと知り合ったのだ。俺は、その時はまだ気付かなかった。これが、運命のいたずらということに。
俺は3日ぶりにスカイプを立ち上げた。すぐにビプ男から声がかかった。
「なんだよ、お前ら。俺の力を見せてやったってのに。」
「はいはい、自作でしょ?ご苦労さん。お友達に迷惑かけちゃダメでしょ?
手伝ってもらったんだよね?爆発コントw」
俺が鼻でわらうと、ビプ男はプンプン憤慨した。
「嘘じゃねーってば。じゃあ、今度証明してやるよ。目の前で。」
「え、それは、俺と会おうってこと?それはちょっと・・・。」
俺は難色を示した。俺はコミュ症。たぶん対峙すると全くしゃべれなくなるのだ。
「いいじゃねえか。美人局じゃねえよ、ごらんの通り。しがないオタク男だ。」
それはそうだけど・・・。
「そういや、お前、地元同じだったよな。丸亀公園に金曜日夜7時集合な。あれくらいになったら、ちょっと薄暗くなって、イチャつきだすカップルが居るから。遅れるなよ?あんま暗くなると、爆発した様子が見れないからな。」
ビプ男は勝手に自分で会うことを無理強いしてきた。
「いや、ムリムリ。マジカンベンして。」
「なんだよ、お前。どうせ無職で暇だろ?必ず来いよな。」
そう言うと無理やり、スカイプから落ちた。マジか。
すっぽかそう・・・。
そう思った瞬間、携帯が鳴った。
「絶対に来いよな。来なければしつこく電話してやるから。」
メールにはそう書いてあった。
なんて強引なやつ。
それかと言って、俺はビプ男を着拒否する勇気すら持ち合わせていなかった。
なんだかんだ言って、俺には、ビプ男とナナシしか友人と呼べるやつが居ないのだから。