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第十九話  脱出計画

 俺たちは、毎日、へんなヘルメットを被せられ、そのヘルメットには

いくつもの電極が繋がれていた。その先にはスーパーコンピューターがつながっており、おそらく俺たちはユウヤの能力が送られているのだろう。

 いつかテレビで見た、あのカルト教団を彷彿させた。

やはり、ここのやつらはイカれている。


 別段電流が流れるわけでもなく、苦痛は無かったのだが、その実験をしたあとは何故か、妙に甘いものが欲しくなる。きっと多くの情報が流れてきて、脳がキャパオーバーになるのだろう。俺たちがそれを訴えると、研究員は甘いものを与えてくれた。こんなところに一日中何をするでもなく、閉じ込められて甘いものを与えられれば太ってしまうだろうな。現に元々太めだったビプ男は顔の形がさらに丸くなった気がする。


 俺たちは定期的に、能力を試すテストをされる。

俺の場合は予知能力なので、ストップウォッチを片手に何秒後の未来が見越せるかどうかをテストされた。今までは3秒後だったのだが、10秒後くらいの未来が見越せるようになった。

 ナナシは、今までは面識があまり無い人間の思念しかわからなかったが、どうやら身近な人間の思念も流れてくるようになったようだ。ナナシの気持ちを慮ればそれは地獄だろうと思った。だが、逆に考えれば、研究員や所長の思念も流れてくるので、これはある意味チャンスだと思った。それぞれの扉は暗証番号を入れないと開かないようになっており、思念を読めば、と思ったのだが、それも叶わなかった。コンピューターによって、ランダムにナンバーが表示されるので、ナンバーは日替わりだし、だいいち中からはどうにもならない。ユウヤにもわからないということだった。

 ビプ男の能力は飛躍的に上がった。きっと、今ビプ男が本気を出せば、人一人くらい焼く尽くすことができるだろう。ある意味、一番危険な能力を持ったビプ男には、特に厳重に注意して研究員達は接していた。ビプ男の部屋だけは、完全防炎だ。


 俺は一つだけ、隠していることがある。俺には予知能力があり、今は10秒後の未来しか見えないので、研究員達は、俺のことを一番軽視していると思う。本当は、俺には今、別の能力が芽生えつつある。最初は扉の外の研究員の顔が見えるようになった。そう、俺には透視能力が芽生えつつあったのだ。俺はそのことを申告せずに秘密にした。俺は無能なふりをし、外の研究員が部屋の中に入る瞬間を観察していた。研究員の指が扉のボタンを押す。俺は扉の外のテンキーの配置を頭に浮かべる。指の動きを見ているのだ。こちらから見るのは逆さまだから、反転させて考えればいい。あとは、上が1なのか、下が1なのかを考えれば良い。普通のパソコンと同じ配列であるのなら、テンキーは下から1、2、3の配列になっているはずだ。今日の開錠の番号は・・・5・7・2・3・・・。


 俺はユウヤに思念を送る。ユウヤはすぐに気付く。

「ユウヤ、協力して欲しい。開錠の番号がわかった。」

「え?どうやってわかったの?コンピューターでランダムで表示されるから、僕にもわからないんだよ?研究員はその番号を開錠まで見ることはできないんだ。」

「俺、透視ができるようになった。」

「嘘!すごい。僕にもできるんだけど、さすがに近くまで行かないと無理だし、そのコンピューターの部屋には僕ですら近づかせてもらえないんだ。」

「透視能力を使って研究員の指の動きを見た。ユウヤ、今日決行だ。」

俺はユウヤを通じてビプ男とナナシにコンタクトを取った。

まずは、ビプ男に騒ぎを起こしてもらう。やつらがビプ男に気を取られてる間にユウヤが俺の部屋の番号を押し、俺が脱出。それぞれの部屋にテンキーがあり、研究員の名札に仕込んである特殊なチップとその部屋の開錠番号を押さなければならない。その名札をユウヤに手に入れておいてもらう必要がある。ナナシと俺が脱出したことをわざと気付かせる。警備が手薄になったのを狙って、ユウヤがビプ男の部屋を開錠する。問題は、ビプ男の警備が手薄になるかどうかだ。そこはユウヤに一芝居打ってもらわなくてはならないのだ。


「よし、行くぞ、お前ら。へっぽこ三人組の力、見せてやろうぜ。」

ユウヤと俺たち3人の頭の中だけで、シュプレヒコールが流れた。

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