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治療

『それにしてもカナメってレベル1から8まで上がるなんて一体どんな大物倒したの?

  ちょっと魔法野の中を覗かせて貰うね♪

 「魔法野?」

 『え~とね、魔法を使える人間の脳だけに存在する機能の事ね。

  ん~と・・・え?

  マイナーゴブリン一匹片付けただけ?

  いやいや、それだけでレベル8まで上がるわけが無いよね~

  んんん~?、おおー!

  カナメ凄い!小物だけどかなりの数のデモンズを狩ってきたんだ・・・

  うんうん、それでマイナーゴブリンを倒した時点で魔素が飽和状態になって私が感知できたって事ね!』

 「え~と、全然意味が分からないんだけど・・・」

 『気にしない気にしない♪」

 「はぁ・・・色々ありすぎてもう疲れちゃったよ」

 『今日のところは家に帰ってぐっすり寝るのが良いかもね!』

 「うん、そうするよ。

  よいしょ・・・いたたっ!」

 座り込んでいた要は立ち上がろうとしたが、体のあちこちに決して浅くは無い傷を負っているので顔をしかめた。

 『あらら、結構手酷くやられてるね~

  ん~、すぐに怪我を治す方法があるんだけど、やってみる?』

 「そんな事ができるの?

  このくらいの傷ならいつもだったら丸一日かかってようやく治るんだけど」 

 『それでも十分早いんだけど、もっと早く治す方法があるよ~』

 「うん、やってみる!

  その方法って魔法なの?」

 先ほどまで見ていたステータスの項目に魔法という心躍る文字を見つけていた要は期待して聞いた。

 『う~ん、魔法でも怪我は治せるんだけど・・・

  カナメには別の方法で治してもらいたいの!』

 「え~、魔法使えるのなら使ってみたいよ!」

 『確かに魔法なら簡単お手頃なんだけど、もう一つのやり方で治して欲しいの。

  そのやり方なら怪我も治るし強くもなれるんだよ~!」

 「強く・・・なれるの?」

 『うん、そこらのギルド育ちの魔法士の百倍強くなれるよ!』

 「ぎるど?まほうし?」

 『まぁ今は気にしないでいいから。

  じゃあ早速やり方を教え・・・その前に言っておくことがあるの。

  このやり方はね、凄く痛いの。

  そりゃもう大人でも泣いて転げまわっちゃうくらいにね。』

 「・・・え?」

 『でもね、大昔の本当に強かった人たちはみんなこのやり方で強くなったんだよ~

  今の軟弱な連中は皆揃いも揃って手っ取り早く魔法で強くなるんだけどね』

 「・・・うん、やっぱり魔法で」

 痛い、と聞いた時点で止めようと思った要だったのだが

 『ダメったらダメー!

  まだ体も魂も出来上がってない今のうちじゃないと強くなれないんだから!』

 有無を言わせない迫力のスーパーズームでアーダが要に迫る。

 「わぁっ!分かった、分かったから!」

 『うんうん、分かればよろしい!

  まぁ一人で魔力装身を会得したカナメならなんとかなるって。

  じゃあ準備はいい?』

 「うん、うん・・・」

 『まずは脳内の魔法野から湧き出る魔力を体の隅々まで流してね。

  魔力装身はこの作業、動作の事なの。』

 「え~と、魔力って何なのか良く分からないんだけど。

  いつも頭の中から湧いて来る『やる気』の事を言ってるの?」

 『そう、それ!

  間違いないよ!

  中々魔力自体を感じ取るのも難しいんだけど、さすがカナメだね~

  それを体全体に回して・・・』

 「こう・・・かな?」

 魔力を川の流れのようにイメージして体の隅々、手足の指先や髪の毛の一本一本まで流し込む。

 この一連の動作をする事で体の底から力が沸いて、動きが早くなるので要にはそれほど意識せずにできる事だった。

 『そうそう、それが第一段階だね。

  そして次からが重要なの。

  まずは右肩の傷口に一転集中で押し潰すように魔力を集めて圧縮してみて』

 「む、難しい・・・

  ん~~~~」

 魔力を流し込むという作業には筋力は使わない。

 要自身の意思によって体内をある程度自由に魔力を移動させている。

 だが魔力の圧縮という事を考えたことは無かったのだ。

 とりあえず魔力の流れを堰き止めるイメージで右肩に集めてゆく。

 そしてある程度流れが止まったと思った瞬間、要の視界は真っ白になった。

 痛みによって。

 「あ、あれ?」

 要は気が付いたらうつ伏せになって枯葉の上に顔をのせていた。

 『ダイジョーブ?』

 視界には心配そうに要を見上げるオコジョの姿があった。

 「どうなったの・・・?」

 『カナメは魔力圧縮時の痛みで気絶しちゃったんだよ~

  でも上手くいったみたいだね!』

 「どこが!?」

 気絶するほどの痛みを味わっただけで上手くいったと言われても納得できる事ではない。

 『ほら、右肩の傷を見て!

  ちょっと塞がってるでしょ~』

 そんな馬鹿なという表情で傷口を見た要は唖然とする事になる。

 先ほどまではスッパリ開いていた傷口が以前の7割ほどの長さになっているのだ。

 「ほんとに治りかけてる・・・」

 『でしょでしょ~

  この調子でガンガン治しちゃおう!』

 「・・・やっぱりやるの?」

 『痛いだけだって!

  減るものは何も無いんだから!』

 「はぁ・・・そういう物なのかなぁ」

 要は改めて魔力を全身にまとい圧縮に取り掛かった。

 二度目なので痛みをこらえる為に集中しながらの作業となる。

 「右肩に集中・・・あぁぁぁぁっ!」

 今までに味わったことの無い激痛が右肩だけでなく全身を走り回る。

 数々の謎の生物に負わされた傷で相当の痛みを経験してきたはずの要ですら耐えがたい程の苦痛。

 先ほどは全く感じずに気絶した要だったのだが逆に痛みが来ると分かっているだけに気絶する事が無くその痛みを存分に味わってしまった。

 永遠にも等しいと感じる呼吸すらできない数秒間が過ぎて要は枯葉の上に崩れ落ちた。

 「はぁはぁ・・・

  昔の人たちって皆これをやってたの?」

 『うん・・・本当に強くならなきゃいけなかったからね』

 「そうなんだ・・・」

 ゆっくりと起きてなんとか座り込んだ要は右肩の傷をみると、そこは見事に完治していた。

 「・・・これを後何箇所かやらないとダメなんだね?」

 『それだけじゃないよ~

  体全体で圧縮できないとダメなんだよ!』

 「・・・遠慮しときます」

 『ダメダメー!

  もう逃がさないんだから!』

 結局この後何度も気絶しそうになる要がそこにいた・・・

    


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