対決ミドリマン 仕込み編
「な、何これ?」
要は目の前に広がる光る文字や記号に呆然としていた。
~~~~ステータス~~~~~~~~
ヒバラ・カナメ
レベル:1→8
レベル9までの経験魔素:6%
HP:80→350
MP:20→110
スタミナ:30→230
筋力:28+6
魔力:17+6
耐久力:26+6
敏捷性:18+6
知力:5
器用さ:11
運:13
残りポイント:16
スキル
魔力装身:レベル6
妖者の目:レベル8
魔法
なし
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なぜこんなよく分からない状況になっているのか、時間を巻き戻してみよう。
小学校の二年生に進級したてのある日の事、要はいつものように謎の生物達を探して要は近所の山から公園までを探索していた。
謎の生物達と言うのは例えば全身が真っ黒で尖ったトサカを持つニワトリより一回り大きな鳥の黒ニワトリや、幼児と同じくらいの体格でフサフサの尻尾にシマシマの模様が連なっているワオネズミなどの図鑑にも載っていない生物達だった。
それらの生物達を探してウロウロとしていたところミドリマンに遭遇したのだ。
ミドリマンは今まで要が見てきた謎の生物達よりもずっと大きな体をしておりまるで鬼のような形相をしていた。
体は要よりもずっと大きく身長は150cmと言ったところだろうか。
ただ体が大きいだけだろうとあなどって飛び掛った要だったのだが、素手で殴られただけで数メートルも吹っ飛ばされて両腕でガードしていなかったら死んでいたところだった。
体の奥底まで届くような重い痛みを我慢して、すぐに身を起こして物陰に隠れてやり過ごしたところ要の事を忘れたかのようにどこかに消えてくれた。
それ以来、ミドリマンには姿を見られただけで追い掛け回される日々が続くことになる。
しかし要の家の割と近い場所を徘徊しているらしく数日ごとに命がけの追いかけっこを繰り広げていたのだ。
追いかけっこが始まってからしばらくしての後に気が付いた事なのだが、ミドリマンの縄張りは要が通っている小学校の近所の割と大きな公園だ。
おおよそ1キロ四方になる公園なのだが、ミドリマンはキョロキョロとあたりを見回しながら公園中を大抵ブラブラと歩いている。
「いつも何やってるんだろ?」
要は今までは特にミドリマンの普段の行動に対して特に疑問に思わなかったのだが、よくよく見てみると何かを探している様子だったので興味を持った。
その日は公園の中心にある噴水の近くでキョロキョロと周囲を見回しているミドリマンを柳の根元に隠れながら様子を伺っていた要は、自分の目の前を一匹のワオネズミが通り過ぎるのをやり過ごし歩き去る尻尾を見送っていた。
いきなりだった。
要やワオネズミから数十メートルは離れていた噴水近くをたむろしていたミドリマンが要に向かって走ってきた。
いや自分ではない、ワオネズミが「キィー!」という警戒か威嚇かのような鳴き声を上げたのを聞いてミドリマンに狙われているのは自分では無いと悟った。
ワオネズミは立ち向かう素振りなど微塵も見せずにすぐに身を翻して逃げに入った。
だがミドリマンのほうが足が速く、ワオネズミはすぐに追いつかれてしまい仕方なく反撃に移る。
ぴょんと軽く飛び上がりながらくるりと体を回し自慢の尻尾をミドリマンに叩き付けた。
その攻撃は要にとっては驚異的なスピードでまともに食らうと骨にヒビを入れられるほどのダメージを受けるものだった。
だがミドリマンは何でもない事のようにごつい右手でガシっとその尻尾を掴むと、ワオネズミを振り回し何度も何度も地面に叩きつけた。
すぐにワオネズミはぴくりとも動かなくなり、ミドリマンは持ち上げてしばらくその様子を眺めた後におもむろに頭からバリバリと食べ始めた。
それだけでもおぞましいのに、食い終わったミドリマンの体のある変化に要が気が付いた。
少しばかりミドリマンの体が大きくなっているのだ。
よくよく考えてみれば、初めてこのミドリマンに遭遇した時はもっと小柄だったはずなのだ・・・
「っ!・・・食べるの?
もしかして今まで狙われたのはこのためなの!?
このままじゃマズイ、絶対にマズイよ・・・」
そう、ミドリマンは食料を探していたのだ。
だがミドリマンが喰らうのはパンでも野菜でも、そして人でもない。
そもそも要以外の誰にもミドリマンが見えておらず、ミドリマンからは人が見えているのかどうかは分からないが誰かがその前を通っても無関心なのだ。
そしてミドリマンが要以外に関心を持つ者は、同じく人には見えていない得体の知れない生き物達。
ワオネズミと要は物心ついた時からの付き合い、と言うか要するに戦ってきた仲で、最近になってようやく対等以上に渡り合えて倒せるようにはなってきたものの、油断すると思わぬ深手を負わされるほどの相手だったのだ。
それをいとも簡単に殺して喰らう存在。
両肩を抱えてガタガタを身震いしながら絶対にミドリマンを始末すると決意したのはこの時だった。
だが、幾度も本当に死にそうな目に遭いながら逃げ続けた要が出した結論は、まともにやり合っても勝てる相手では無く、いつかは殺されてしまうという事だった。
例えば隙を見て黒ニワトリをも一撃で吹き飛ばせるほどの力を込めた蹴りをミドリマンの膝裏に放っても多少ぐらつくだけで、逆にミドリマンの怒りを買い足をつかまれグルグルと振り回されてコンクリート塀に叩きつけられる。
別の日は木の上でじっと隠れてミドリマンが下を通り過ぎようとするところで飛び降りながら金属バットで頭を殴りつけたところ、ミドリマンは頭を多少かしげただけでギロリと要をにらむとガシっと金属バットを掴み奪われて散々に殴られる始末だった。
そこでようやく罠を仕掛ける事に思い至る要だったのだが、子供の頭で思い付ける罠と言えば特にギミックが必要の無い落とし穴だった。
早速要は近所の霊園の誰も来そうに無い遊歩道を大きくそれた林の中に丁度良い空間を見つけてシャベルでせっせと穴を掘り始める。
だがミドリマンの身長は自分よりも高い事に加え、そこらの動物よりはるかに高い身体能力を持つ事は分かっているのでかなり深めの穴にしなければならない。
最初は葉っぱや腐葉土、気の根っこの層だったが掘り進めると粘土質になり時々大きめの石が出てきた。
さすがに無理かなと思った要だったが最近やたらと体から力がわいてくるので石を掘りだす事もそれほど苦労しなかった。
すぐそばの木にロープをくくり付けて穴から出られなくなる事が無いように、それでいて大胆に掘り進める事数日。
掘り終えたのが深さが三メートルを超える穴だった。
そこに霊園の手押しポンプが付いた井戸から汲んだ水をバケツで何度も穴まで運び汲ミドリマンの腰くらいまでの深さになるまで水を入れた。
続いて穴のカモフラージュに取り掛かる。
細くて長い木の枝を何本も拾ってきて、格子状に穴の上に乗せてから枯葉を集めてから格子の上にかぶせていった。
「おー、大完成!」
子供が作ったにしては上等な落とし穴だったのでは無いだろうか。
周りの落ち葉や腐葉土と区別がそれほど無く違和感も感じない。
さすがにここに誰か人が落ちたら大変なことになる事までは考えが到らなかったのは仕方が無いだろう。
命がけの要にとっては他人の命まで思いやる余裕は全く無かった。
ミドリマンを穴に落とす事に成功したら、止めを刺すための石も集めてあった。
穴を掘る際に出てきた石や20~30㎏ほどにもなる石を霊園の近所にある石屋からこっそりとかっぱらっておいたものだ。
そして翌日が決戦当日と決めて、あらためてミドリマンの事に考えをを巡らせた。