[序章1]貴族の奴隷
初めまして。
本作は一応と言う形の処女作になります。
少し残酷な描写があるのでその辺が苦手な方はお戻りになられたほうがいいかもしれません。
ではどうぞ。
-ヴィゴ・セル州関所前-
警備員1「おいおい…今の話は本当か…?」
警備員2「詳しくは知らないが、噂によるとそうらしいぜ?全く物騒な話だ」
1「全くだ。最もこんな夜間の仕事かつ二人っきりの関所でこんな事話すお前も十分物騒だがな」
2「ははっ。全くだな…。そういえば」
その時なんとも可愛らしい声が聞こえ、二人の会話をふさいだ。
?「…すみません……」
1「ん…どうした嬢ちゃん?こんな夜更けに」
見るとどうやらフードをかぶった少女が話しかけているようだ。
少女「…あのぅ、ヴィゴ・セル町へはこっち方面でいいのでしょうか…?」
少女は初々しい態度で光がちらほら見え隠れする丘を指をさし、言う。
2「ああ…。しかし一人で大丈夫か?」
少女「…問題ないです。ただあの町にラズベリーを売りに来ただけですから…。おじさん達もどうぞ。教えてもらったお礼です。では」
少女は淡々とそう言い手に持っていた籠からラズベリーの詰め合わせパックを警備員に無理矢理差し出し、行ってしまった。
2「あっ…。まずったな。礼を言うのを忘れた…」
1「…ラズベリーか…。まあ夜食にでも使えるだろう」
滑稽なものを眺めるような目つきでラズベリーを一つとり、口に放り投げた。
1「…そういえば奴が来る前お前なんか言おうとしてなかったか?」
2「ああ、そうだ。そういやさっきの話にまだ続きがあってね」
1「さっきの話ってのはあの『貴族連続失踪事件』の件か?」
2「そうそう。実はその襲われた貴族の大体は奴隷を持っていて、その奴隷を特に酷い扱いをしている奴が被害にあっているらしい」
1「要するに、犯人は正義の味方気取りをしているって事だな。全く有り難い話しだな」
2「全くだ。はっはっは…」
こうして今日も静寂な夜があけてゆく。
-同時刻 ヴィゴ・セル町 ディレス家庭内-
?「ふぅ…。庭の手入れはこれでおしまいね…」
広大なディレス家の庭を手入れしているメイドの少女はため息混じりに呟く。
メイド「はぁ…次は門の手入れか…。今日も遅くまで仕事ね…」
少女は朧気の無い足取りで門を急ぐ。
よほど疲労困憊なのだろうが…
メイド「でも仕方ないのよねぇ…この家にメイドは私一人だけだし…。しかもわたしは奴隷扱いだし…」
そんな奴隷メイドの彼女の名は「ヴェイン」。
生まれて間もない頃にディレス家買われ、今にいたるまで雇われている。
しかし奴隷を雇うという表現にしていいものか…
ディレス家ヴェインに対する態度は悉く酷かった。それゆえ彼女に青春の二文字は存在しない。
ヴェイン「…はぁ…。一度でいいからお嬢様の言っていた街のショッピングモールとかで自分の物を買ってみたりしたいなぁ…まぁ無理な話か…奴隷だもの…」
?「ごめんください。」
声は目前で発せられた。
この声にヴェインは酷く驚き、言葉を発した対象物を探し、見る。
ヴ「はひっ!? す…すみません…。ご用件はなんでしょうか…?」
よく見ると白い布を頭に巻き、籠を持った少女が目に入った。見た目10~13歳程度だろうか。
少女「ラズベリーを届けに参りました。あなた様が使われる者であるならご主人を呼んでいただけるとありがたいのですが…」
現在深夜3時。
主人が起きているはずは毛頭無い。
ヴ「すみませんが、現在ご主人様は御就寝です。明日の昼から夕方頃にかけてまたお越しいただけると此方とて幸いです」
少女「左様ですか。分かりました。ではまた後日お邪魔させていただきますね。では」
少女はそう言うと颯爽と去っていった。
ヴ「ラズベリー… 食べたこと無いわね。美味しいのかしら…。ってああ!!もうこんな時間!明日起きれないじゃない!」
奴隷少女は慌ただしく、館へと戻る。もう時計の針は4時を指していた。
レヴィンの雇われている「ディレス家」はこのヴィゴ・セル街の中でも有数と言えるほどの貴族家。それほどの貴族なら奴隷は幾十といていいはずだが、ディレス家はヴェイン一人しか扱っていない。
なぜなら、ディレス家の住民は二人しかいないからだ。その家は兄と妹の二人が住み、両親は二人とも事故で失っている。それ故に資産も少なく、困っているという理由から、奴隷は一人だけなのだそうだ。そのため妹は資産が心配なため、若いながら仕事に出ている。
しかしこのような資産状況だと言うのに時期ディレス家当主の兄はいまだに手を打たず、ヴェインを酷く扱っている。やはり甘く育てられた者はこうなるようだ。
因みに兄と妹の差は5年離れている。
?「…と家の状況はこんなものね。ヴェイン。机の上の整理をお願い。」
ヴ「了解です。お嬢様」
家の状況を書き留めていた妹はメイドに言いつける。彼女の名は、「ディレス・ヘイル」
ヘイル「全く…。お兄様はなにをやっているのかしら。今のままでは資産が底を尽きると言うのに…。ヴェイン。昨日兄様に何かされたりした?もしされたならば失礼だけど少しばかり教えてくれないかしら」
机の整理を一度止め、ヴェインしどろもどろは答える。
ヴ「そう…ですね…。定時のお食事の用意と庭の手入れは基本として、あとは…暴行が過激化しております…」
へ「暴行をやった理由は?」
ヴ「分かりませんが、恐らく苛立ちからでしょうか…」
へ「はぁ…どうしようもない我がままね。やはり改心させるにはあの方法を取るしかないのかしら…」
ヴ「?」
へ「あ、いやこっちの話よ。心配しないで」
ヴ「…失礼しました。あとお嬢様。仕事に行く時間が迫っているのですが…」
へ「あれ!?もうそんな時間?ヤバッ まだ支度してないわよ!」
ヴ「お、お持ち物はこちらに用意しましたっ!」
へ「ありがとうヴェイン!んじゃあ今日も兄様をよろしくね。あと…」
ヴ「…?」
へ「あと、ラズベリーの売り子が来たら中に入れちゃっていいから。んじゃ」
ヘイルは慌ただしく自宅を出て行った。
今の会話からわかるだろうが実は妹のヘイルは奴隷であるヴェインに唯一親しく接している。彼女はあまり我がまま両親の教育を受けていない分しっかりしているのだ。
ヴ「ラズベリーの売り子って昨日の子の事よねぇ…。まあいいか」
ヘイル様が家を出る時間と言うことは、庭の手入れの時間ということ。
私は庭管理の道具を出し、急ぐ。
私はご主人が好きではない。何より我がままですぐ奴隷の私に暴行をする。暴力を振るえばどうにかなるというその精神が何より大嫌い。まあ奴隷だから仕方ないのかもしれないけど… でもっ…
?「ごめんください」
不意に話しかけられ驚き、門を見る。そこには昨夜見た少女が籠を持ちこちらを眺めていた。
ヴ「はっはい?ラズベリーの方ですか?」
少女「はい。昨日も訪問したのですが」
やはり昨日の少女らしい。
ヴ「お嬢様から話を聞いています。どうぞお入りください。…っとその前にお荷物の中身を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
少女「はい。どうぞ…」
荷物の中身を見たが、凶器になるような物は見当たらない…
ヴ「…はい。大丈夫です。どうぞこちらに」
少女「……」
ヴェインは少女を招き入れ、接客対応室まで連れて行き、「少々ここでお待ち下さい」と一声かける。
少女は「わかりました」とだけ答え、近場にあった椅子に腰を掛けた。
メイドは主人に来客を伝えるという使命がある。ヴェインは主人に会いたくないが奴隷の身なのでわがままは厳禁。彼女は渋々主人のもとへ急ぐ。そして主人の部屋に着き、部屋をノック…
ヴ「…ご主人様。…失礼します。」
兄「なんだこんな時間に。まだ午前中だろ!!」
ヴ「すみません…。…来客がお見えになっております。いかがなさいますか?一応お嬢様からの訪問の許可は頂いています。」
兄「あ?来客?要件は何つってた?」
ヴ「…ラズベリーの配達だそうです」
兄「ちっ…。どうせヘイルが頼んだのだろうが、最近なりすました族が多いと聞く。どこかの売りかはしらねぇが、危ないからさっさと追っ払え」
ヴ「で…ですがお嬢様が…」
兄「いいから追い払え!俺は今忙しい!それともてめぇは奴隷の分際で主人に逆らうのか?」
ヴ「……すみませんでした…。失礼します…」
ヴェインは主人の部屋を後にし、先ほどの少女のいる接客対応室に向かう。
ヴ「…にしても相変わらずだわ…。あの性格はもう懲り懲りなのに…」
-対応室-
ヴ「…失礼しました。どうやら主人が族かなにかと勘違…あれ?」
接客対応室の扉を開けるとそこにいたはずの少女の姿はなく、少女が座っていた椅子にラズベリーのパックが置いてあるだけだった。
ヴ「どこ行ったのかしら…。待ちきれずに帰っちゃったのかなぁ…?」
ヴェインはとりあえず、置いてあっても仕方ないのでラズベリーを冷蔵庫にいれるため、厨房に向かった。
その時彼女は時刻が8時を回っていることに気がついた。
ヴ「いけない!主人の朝食を作らなきゃ行けない時間だわっ!急がないとまた殴られる…」
彼女はいつも通り朝食の用意を始めた…
少女「…ああ。今日大体見せてもらったわ。なかなか滑降なエサじゃない。」
ラズベリー売りの少女はヴィゴ・セル町の街中の無線電話を片手に呟く。
少女「でも、あまりいい獲物じゃあ無いね。まあ依頼だから仕方なくやるけど…。んじゃ、今日の夜に決行ということで、またお話しましょう。じゃあね」
少女は溜め息を軽くし、電話を切った。
- 明日 夜A.M3:00 -
ヴ「ああ…今日もまた庭手入れかぁ…。いつもの事なんだけどやっぱり辛いわ…」
ヴェインは溜め息混じりに呟く。ここ最近ため息が、非常に多くなっているようだ。
ヴ「…いつまでも嘆いてても仕方ないわ。早く終わらせないと明日も危ないからね!」
そう言い、気合いを入れて作業を始める。
その時、聞き覚えのある、
いやもはや聞き飽きた声が門から聞こえてきた。
少女「…ごめんください」
少女は微かに小声でヴェインを呼んだ。
ヴ「あ、朝の売り子さん。どうしたんですか?いきなりいなくなったのでびっくりしましたよ。」
少女「いや…少し急用が入りまして。そして慌てて出て行った時にこちらに忘れ物をしてしまいまして…」
ヴ「忘れ物…?もしかしてハンカチですか?」
ヴェインがそう言うと少女は黙って頷く。
ヴ「直に取りに戻ってくると思い玄関に置いてあるので少々お待ちください。」
ヴェインが玄関の方を向き、歩き出した。
この時、歩き出した時から5秒後にあんな事が起こるなんて彼女は思いもしなかっただろう。
そう、あることが起きたのだ。
そのあることが彼女のこれからの人生を大きく変えてしまった。
ご観覧有難う御座いました。
小説の方はあまり書かないので、描写に欠けている所があると思います。
ので、気になる点、ここはこうした方がいいな等、アドバイスがありましたら遠慮なく言ってやってください(苦笑)